生産改善」カテゴリーアーカイブ

改善「N理論」

 今週のテーマ「運用力』でご紹介した様に、出来高制の給与体系を採用している企業では、作業員が改善に抵抗を示し、監督職が改善に消極的な例を良く見る。

このような状況で、「N理論」を紹介している。N理論は、工場経営の師匠原田則夫師から教わった。

一般的に、生産性は一定のレベルに斬近する曲線で向上する。すなわち技能の習熟とともに一定のレベルまで生産性は上昇するが、斬近点に到達すると上昇しなくなる。更に上昇させる為には、何らかの改善が必要である。

生産量で自分の給与が決まってしまう出来高制で仕事をしている作業員には、改善により生産量が減少してしまうのを恐れる。そのため今まで通りの作業のやり方に固執する。

今週ご紹介した工場でも、作業効率を上げる為に溶接の工具を変更した。
高価な工具を導入する訳だから、当然作業効率(生産量)の向上を見込んでの投資だ。ところが今までと違う工具を使用する事に作業員が躊躇する。新しい工具を使い始めても、慣れないうちは生産量が低下する。作業員達は工具が大きすぎる、重たいなど使わない理由を並べ立てる。実際に新工具は大きく重い。しかし上から吊るしてあり、作業者に負担が無いようにしてある。

それでも作業者の不安は払拭されない。監督職達は無理矢理新工具を使わせて作業効率の良さを実感させ、納得させた。

従来の工具を使っていても、斬近点に近づけばそれ以上の改善は見込めない。新工具によって、慣れるまで一時的に生産性が落ちても、慣れれば生産性の斬近点は上昇する。

この時の生産性の一時的な下降が「N」の字の真ん中の右下がりの部分だ。左端の右肩上がりは、従来方法の習熟による上昇。改善によって一時的に生産性が下降しても結果的に「N」の字の右端の右肩上がりの上昇カーブに乗る、と言うのが「N理論」だ。

この時Nの右端の線を思いっきり長く書く(笑)
改善をしなければ、すぐに斬近点に到達する。しかし改善をすれば斬近点は更に上に行くと説明する。こう説明しておく事で、作業者の不安を取り除く。

全ての改善は、作業者に負担を強いるものであってはならない。何も改善せず生産量だけ上げれば、作業者の負担は増加する。ただ「頑張れ!」と言うのと等しい。作業を楽にする。その結果生産性が上がり、作業員の給与も上がる。これを説明するのが「N理論」だ。


このコラムは、2016年5月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第478号に掲載した記事に加筆しました。

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運用力

 先週はトヨタの中国合弁企業で働いた経験を持つ幹部がいる民営企業で現場指導をしていた。生産現場のレイアウト、生産設備、製品の流し方など随所にさすがと思わせるモノがあった。同業種の中国工場を4社指導した事があるが、4社の中ではダントツのよい工場だ。

しかし現実は、生産投入の仕方、部材の配置など改善の余地が多くある。
生産現場のレイアウト、生産設備、製品の流し方などハード的な改善は簡単に真似をする事が出来る。目で見えるからだ。

一方生産投入の仕方、部材の配置など運用のソフト面は、真似しにくいのかも知れない。
見かけの効率だけ追求し同一部品を大量加工をすれば、生産リードタイムが長くなる。万が一加工不良が混入していれば、後工程のロスや手戻りのロスが発生する。しかも当該工程の改善は間に合わない。
大量に加工した部材の置き場所を確保しなければならず、生産現場のスペースを圧迫する。そのため必要な部材を探すロスや運搬のロスが発生する。

見かけの生産性を追求する最大の要因は、作業員の給与制度にある。生産量に比例する出来高制となっている為に、作業員は改善に不安を感じる。直接作業者を指導している監督職も改善に消極的となる。

この工場の最重要課題は、経営者から作業員まで全ての人の心を変える事だ。
各工程が部分最適、もっと言えば自分の給料最大化と言う個人最適に陥っているのを、全体最適に変えなければならない。全体最適が出来れば、企業の利益が増え、結果的に従業員の収入増につながるはずだ。
経営者から現場作業者まで、このロジックを理解させ、改善に対する勇気を鼓舞する事が、私たちコンサルチームがまず取り組むべき解決課題だと考えている。


このコラムは、2016年5月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第478号に掲載した記事です。

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常識の壁を越える

 工程を改善するためには,「ダラリ」をなくせば良い.
「ダラリ」というの「ムダ・ムラ・ムリ」のことだ.「ダラリ」をなくせば,生産性だけではなく,品質も良くなるはずだ.

最近訪問した工場で,現場リーダが熱融着剥れ不具合の撲滅に手を焼いている工程を見せていただいた.

1本の材料を冶具にセットし,その端面を熱融着し輪にすると言う工程だ.

冶具は上開きになっており,1本の材料の両端をセット,端面を突き合わせて過熱する構造になっている.
驚いたことに,作業者は冶具の上蓋を開かずに横のスリットから差し込んでセットしている.上蓋は正しくセットされているか確認するために開かれるだけだ.

どう考えてもこの作業にはムリがある.
材料の断面と同じ形をした冶具のスリットから材料を差し込むという作業は簡単には行かず,時間がかかっている.また上蓋を開けて確認しても材料の両端面が正しく突き当たっていないので,何度もやり直しが発生する.
端面が正しく突き当たっていない状態で熱融着作業をすれば,融着部が容易に剥れてしまうだろう.

冶具の上蓋を開けて材料をセットすれば,簡単なはずだ.ナゼ,冶具の上蓋を開けてセットしないのか?と聞いても合理的な回答はない.とにかくだめと言われている様だ.

たぶん元々上蓋を開き材料をセットする手順だったのだが,何らかの不良対策か何かで,横から差し込んだら偶然改善された.その手順の効果を検証しないまま,対策として採用されてしまったのだろう.

論理的な整合性がない「常識」が存在すると,とにかくだめ,としかならない.これが不具合発生の主要因であったりすると,改善は不可能となる.原理に合わない「常識」は疑ってかかるべきだ.
自分たちで造ってしまった「常識」を超えることは,実は意外に難しい.

我々のような外部の人間から見ると,ナゼそんな「非常識」なことをしているのだろうかと思うことでも,気が付かなくなってしまう.

この「常識」を超えるコツは,現象とメカニズムを切り口に不具合の原因を分析する.その分析過程が原理に照らして正しいかどうかを,ステップごとに検証しながら進めることだ.

このような方法で,大元の物理法則(原理)に照らし合わせて考えるようにすれば,馴染みのない技術分野であっても,的を射た分析が出来るものである.

まずはだめな理由をはっきりさせ,その理由を取り除いてゆくことが改善だ.


このコラムは、2010年8月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第168号に掲載した記事に加筆したものです。

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亢竜の悔い

 「亢竜(こうりょう)の悔い」とは、天に昇りつめた竜は後は下がるだけなので悔いを感じる、という意味だ。栄える者は必ず衰える、盛者必衰の理だ。

では悔いを持たぬ様に天に昇りつめる努力を放棄すれば良いのだろうか?
あるがままの今を受け入れる。そんな禅的な世界観を持てば悔いはないだろう。
しかし現代の企業経営とは相容れないモノがある。
年度目標を毎年達成し続ける。毎年増収・増益を継続する。
変化する経営環境の中で、達成し続けるのは困難だ。達成出来る目標にすり替えれば、悔いの代わりに後ろめたさを感じるだろう。

目標だけを追求する限りこのようなジレンマを感じるだろう。
目標の手前にあるべき目的を明確にすることが解決策だと思っている。
目的とは何か。自社の存在意義と言い換えると分かりやすいかも知れない。

例えば企業経営の目的が「従業員の物心両面の幸せを追求する」であるとする。
この場合「給与」「福利厚生」「労働時間」などに具体的な目標が発生するかも知れない。しかしこの目標を達成しても、「従業員の物心両面の幸せを追求する」という目的は存在可能だ。こう考えれば、亢竜の悔いはない。

違う例を考えよう。
改善活動は不具合が存在する事により成り立つ、というパラドックスを内在している。つまり改善活動を継続すれば亢竜の悔いが発生することになる。
不具合がないのだから、皆で楽しく暮らせば良いではないか、このような考えが、盛者必衰の理を招く(笑)

QCC活動でも、あらかた問題点を解決してしまうと、亢竜の悔いが発生する。
それでも活動を継続しようとすると、どんどんつまらないテーマを考え、活動が形骸化する。QCC推進事務局から年間活動件数のノルマなどが課せられると、この傾向は加速する。

QCC活動の本来の目的「メンバーの成長を通して業績に貢献する」にフォーカスすれば、問題点の解決だけでは無くなる。新しい業務への挑戦、飛躍的な品質レベルの達成など、ありたい姿の実現がテーマになりうる。企業が成長する限りテーマは無くならない。
従来の問題解決型の活動とは違い、ありたい姿を実現すると言う課題達成型の活動となる。

また市場や顧客の要求が変化すれば、製品・サービスも変化せねばならない。
何を、どのように変化するかが活動のテーマとなる。

改善活動には「亢竜の悔い」はない。


このコラムは、2017年3月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第519号に掲載した記事です。

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改善指導

読者様からご相談をいただいた。
ご相談者は、経営幹部として中国企業に招聘され、社内改革を進めておられる方だ。

※K様のご相談内容
会社設立して、10年ですが、土足で工場内に入らないようにすることもできていない状態です。
一人でしゃかりきになって、トラブルを起こして意味がないと思っています。
今の段階でも、私の改善や指示のペースについてこれないようで、脱落者が出そうです。
あまり慌てては、墓穴を掘ることになるか もしれません。

今のところは、こういった嘆かわしい状態から脱出して、先生をお呼び出来るぐらいの状態にすることが目標です。

実は私も、コンサル現場で似た様な経験をしたことがある。
この現場では、経営者から生産性の改善を依頼された。初日に現場に入ったら、現場リーダから「何しに来た」と詰問された(笑)
経営幹部(日本人)と現場リーダの間でコミュニケーションが出来ていないと言う大きな問題をまず発見出来た。

経営者の改善イメージは、自動化により、作業員を削減し、生産効率を上げる事だったが、莫大な投資をして全自動化の設備を構築しても、人の作業が必ず残る。

人と機械の調和をとって生産する「自働化」と言うコンセプトでLCA(ロー・コスト・オートメーション)を目指している私としては、現場で働いているリーダや作業員の意欲を高めなければ、改善は上手く行かない。
無理矢理改善をしても、コンサル契約が終わった後も、その効果が維持出来るとは限らない。
現場リーダの改善能力を高める事により、我々の仕事が終わった後も、改善が維持・継続する事を主眼としている。

従って、現場リーダ・作業者とのコミュニケーションや信頼関係は重要だ。

ご相談者の「一人でしゃかりきになって墓穴を掘ることになる」と言う認識は正しいと思う。まず「改善」をするのではなく、まず「関係」を構築するのが良い。

上下・左右・斜め全方位で関係を構築する。
経営者から、信頼と期待を獲得し、全従業員に発破をかけてもらう。
部下から信頼されれば、多少厳しいことを言っても付いて来る様になる。
改革は一部門の努力で達成出来るモノではない。社内全部門の協力・支援が必要だ。一人でしゃかりきに改善をすると、部分最適になったり、他部門から浮いた存在になってしまうことがある。

前述の顧問先で、私がとった信頼関係構築の方法を紹介しよう。

まず経営幹部を叱り飛ばした(笑)部下に対する「ホウレンソウ」が全く出来ていない、こういう状態は仕事の管理など不可能だ。「叱り飛ばした」と言うのは相当誇張が入っているが、現在は歳をとった分、老練になった(笑)

次に現場リーダの信頼を得る方法を考えた。
言葉を尽くしてもムリだ。こちら側の能力が圧倒的に高い事を実感させる。「言う事を聞いた方が得だ」と分かってから、初めて言葉で意欲を高める事が出来る様になる。

具体的には、現場を観察してリーダ達が困っている事を探した。
当然聞いただけでは、何も答えない。信頼していない相手に「困っている」などと言いたくないのが人情だ。

観察の結果、どのラインも共通の作業工程がボトルネックになっているのを発見した。単純な人作業なのだが、熟練度の差が大きく、その工程で大量に滞留している。作業者を観察し、その作業動作のキーポイントを見つける。
そしてリーダに、ビデオ動画を見せてキーポイントを解説、上手く作業する方法の指導方法を教えた。リーダは即各ラインの班長を呼び、もう一度説明してくれと頼んで来た。心の中で「やった!」とガッツポーズを作ったモノだ(笑)


このコラムは、2014年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第373号に掲載した記事に加筆したものです。

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視線を上げる

 以前メルマガで、二宮尊徳の「遠きを計る者は富み、近くを計る者は貧す」と言う言葉をご紹介した。

「遠きを見て計る」
参考:「二宮尊徳の経営学」童門冬二著

言うまでもないが、企業の中でも遠くが見えている者は仕事ができる。
目の前を見て仕事をしている者より、視線を上げ遠くを見て仕事をする者が大きな成果を出せるはずだ。

職位が上がれば視線も上げる必要がある。逆に言えば現状の職位より一つ二つ上位職の視線を持っている者が昇進するのだろう。

昨年から始めたQCC道場では、二期でのべ14サークルの指導をした。
経理、課長クラスがリーダのサークル、班長・組長クラスだけのサークルが混在した状態で実践活動を指導した。

例えば班長・組長だけのサークルは、作業効率改善のテーマで3人の作業を2人で出来るようにする、という目標を立てたりする。33%も効率が上がる。立派なテーマではあるが、少し視線を上げて課全体を見渡すことができれば、同じ改善で10人の作業を6人にすることも可能だろう。

当然班長・組長が任されている仕事の範囲からすれば、3人を2人に改善するだけで十分だ。しかし普段から視線を上げる訓練をしておけば、上位職に昇進しても即力を発揮できるだろう。

誰でもちょっとしたきっかけで、視線を上げることができる。「目から鱗が落ちる」と言うが、まさに上を遮っていた頭の中のフィルターがポロリと落下し視界が広がる。

教えるより気づかせる。
指導者対学習者の学びだけではなく、学習者相互の学びの効果を入れる。
QCC道場はこんな考え方で視線を上げ、実践により問題発見、問題解決能力と意欲を高めることを目指している。


このコラムは、2018年4月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第648号に掲載した記事に加筆したものです。

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人誑し改善

 「人誑し改善」などというと何か怪しげなことのように聞こえるが,メンバーをその気にさせるための「人誑し」だ.女性の関心を言葉巧みに惹きつけて,こちらの思い通りに動かしてしまうのが「女誑し」だ.それを女性に限らずやってしまうので「人誑し」といっている.

改善をするためにはまず現場のリーダがその気にならなければうまくゆかない.
トップダウンで「こうヤレ!」とやれば手っ取り早いように見える.
しかしリーダがその気になっていないと暫くすると元の木阿弥になってしまう.
そこで「人誑し」を駆使する.

特に私たちのように外部の人間が改善をする場合は「人誑し」が必要だ.外部の人間なので,リーダたちに対する「人事考課」という伝家の宝刀は抜けない.
彼らは外部の人間のいうことを聞かなくても何も困らない.上司に対しては改善策を試してみたがうまくゆかなかったと報告しておけば丸く事は収まる.
今までの方法でできているのに,変えるための余計なエネルギーは使いたくは無いだろう.今までどおりやっておけば何も苦労をすることは無い.

それを一歩踏み出すためのモチベーションを与えるのが「人誑し」だ.

やる気にさせるためにはまず「メリット」を理解してもらうことだ.
例えば,改善をすると○○%生産性が上る.というのは彼らにはそれほど高いメリットにはならない.改善するために作業者に頑張ってもらわなければならないようだと,メリットどころかデメリットになる.リーダたちは嫌がる作業者を説得するという余計なエネルギーを使わなければならない.

従ってメリットは「作業者が楽になる」「作業が安全になる」などなど作業者よりのメリットを前面に出す必要がある.その上でリーダ個人のメリットを訴求する.

更にこちらを信頼させる事が重要だ.
きっとうまくゆくという確信を持たせることだ.自分自身で不安を持っていれば,確実に相手に伝わる.まず自分自身で理論武装をしておく必要がある.
例えば,簡単に改善できそうだということを具体的に現在の方法と比較して理解させる.これを分かりやすくやる.

このあたりの作業が言葉巧みに相手の関心を惹くという「人誑し」の技術だろう.間違ってはいけないのは「人誑し」であっても「詐欺師」になってはいけないということだ.

仕事上で相手が困っていることをいとも簡単に解決してあげる.一種のプレゼント作戦だ.こちらが味方であること,解決能力があることを印象付けることも狙いだ.

最後にこの改善がワクワクするほど楽しいと思い込んでもらう.
言うほどは簡単ではないが,仕事が楽しいと思い込んでしまえばものすごいパフォーマンスを発揮する.
私は事あるごとに褒めるという作戦をとっている.


このコラムは、2009年8月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第111号に掲載した記事です。

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班長研修(仕事の教え方、人の扱い方)

生産現場の監督職にとって重要な能力は部下に対する「仕事の教え方」「人の扱い方」です。
中国生産現場の班長さん、組長さんの能力開発として日本産業訓練協会のTWIをご紹介します。

上の表紙をクリックして動画をご覧ください

副総経理の役割

 
今年は中国企業の指導が増えている。中国企業の経営幹部に対して、豪華な応接セットのある執務室に一日座っていると言うイメージを持っていた。
しかし最近指導している中国企業の製造担当副総経理は、生産現場を歩いている事が多い。彼と話をしたいときは、オフィスを尋ねるより現場を探した方が早い(笑)

経営幹部となっても現場を重視し、現場で作業員に話しかけている。立派な経営幹部だと思っていた。しかし、彼は自分の仕事を間違えている様だ。5Sや品質意識の指導時には、製造部門が忙しい事を理由に製造部門の部課長を出席させない。

生産現場の5Sが乱れているからムダな作業ばかりしていて忙しい。品質問題が多発しているために、手戻り作業、修正作業が発生し、より忙しくなっている。こういう状況は、足しげく現場に出かけているので了解しているはずだ。

自分一人で現場を支えるのは無理な話だ。現場を支える部下を育成する。育成の度合いを確認し、不足点があれば再指導する。そのために現場の巡視をする。これが彼がやらねばならない仕事だ。現場で直接作業員を指導すれば、部下である部課長・監督職の仕事を奪うことになる。

本来副総経理の仕事は、現状を打破するために長期的な戦略を考える事だ。生産方式の革新、生産設備の導入など部課長ができない仕事に時間を使う。今日しなければならない仕事の比率はうんと低いはずだ。

改善実践研修に現場の部課長を参加させないと言われた時は、副総経理が現場改善の「癌」だと感じ、怒りすら覚えた。しかしよく考えると、彼が重要な事に気がつく様に指導する事が、私の仕事だ。
こう考えると「怒り」は自分の「出番」に変わる(笑)


このコラムは、2016年7月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第484号に掲載した記事です。

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