月別アーカイブ: 2020年6月

君子は党せず

chénbài(1)wèn:“zhāogōng(2)zhī?”kǒngyuē:“zhī。”kǒng退tuì
(3)(4)érjìnzhīyuē:“wénjūndǎng(5)jūndǎngjūn(6)wéitóngxìng(7)wèizhīmèng(8)jūnérzhīshúzhī?”
gàoyuē:“qiūxìnggǒu(9)yǒuguòrénzhīzhī。”

《论语》述而第七-31

(1)陈司败:陳(国名)の司敗(司法長官)
(2)昭公:魯の君主。礼を知る君子とされていた。
(3)揖:両手を胸の前に出して組み頭を下げる礼。
(4)巫马期:孔子の弟子。姓は巫马、名は施。あざなは期
(5)党:包庇。仲間内でかばうこと。
(6)取:めとる。
(7)为同姓:例の規定では同性の婚姻は認められない。魯国、呉国の君主はともに姫姓。
(8)吴孟子:魯国の王妃。同性を隠すためにつけた名前。
(9)苟:いやしくも。仮に〜ならば。

素読文:
ちんはいう:“昭公しょうこうれいれるか?”こういわく:“れいれり。”こう退しりぞく。
巫馬期ふばきゆうしてこれすすめていわく:“われく、くんとうせず、と。くんまたとうするか。きみめとる。同姓どうせいたり。これ呉孟子ごもうしう。きみにしてれいらば、たれれいらざらんと。”
巫馬期ふばきもっぐ。わく:“きゅうさいわいなり。いやしくもあやまちれば、ひとかならこれる”

解釈:
孔子は述而第七-5で“甚矣吾衰也!久矣吾不复梦见周公。”といっています。孔子は夢にまで見るほど周公を敬愛してます。周公が礼を知っているかと問われ、即座に周公は礼の人だと答えてしまったのでしょう。
多分孔子にとって『党』という評価は受け入れがたいものかと思います。孔子の凄さは陈司败の指摘を「ありがたいことだ」と言えるところだと思います。

ビール、2割値上げの店も 安売り規制、戸惑いの声

 お酒の過度な安売りを規制する改正酒税法などが1日施行され、ビールや発泡酒の値上げが相次いでいる。ねらいは街の小規模な酒屋さんを守ることだが、一気に2割の値上げに踏み切る店もある一方、違法な安売りの基準があいまいで、戸惑いの声も広がる。

(以下略)

全文

(朝日新聞電子版より)

 このニュースのどこが失敗なのか?と言う疑問をもたれる方もあるだろう。確かに失敗とは言い切れない。しかし過去から弱者保護の名目で行って来た政策は、うまくいっていない。むしろ弱者をより弱者にしてしまっていると言った方が適切ではなかろうか?

例えば農業。日本程美味い米を普通に生産出来る国は他にはないだろう。農協により農家の経営努力を奪い、日本の農家が世界市場に目を向けるのを妨げていたのではなかろうか。近年、志の高い農業経営者が様々な方法で結果を出している。

町の小さな酒屋さんの経営が難しいのは、想像にかたくはない。資本力,販売力が有る安売り酒販店、スーパーマーケットなど競争相手がどんどん増える。更に異業種のネット通販が参入して来る。この様な経営環境の変化に対応して行くのが「経営」でありそれを放棄してしまっては、成長はあり得ない。

人が物を買う時の判断基準は「価格」だけだろうか?
「あなたから買いたい」と言われる酒屋を目指したらどうだろう。新聞記事には、80代の女性が6缶パックのビールを毎週3回買うと有った。ひとパック2kg以上あるはずだ。他の食材も合わせれば、老齢の婦人には相当の負担になるだろう。毎晩冷えた缶ビールを3缶ずつ届けたらどうだろう。ひょっとすると、本当は瓶ビールを飲みたいのに、重いので缶ビールで我慢しているのかも知れない。酒屋ならこの欲求を満たす事が出来る。

「ご用聞き」と言う昔からの習慣は、顧客の要求をより深く理解するためのシステムだ。コンビニのPOSから集めたビッグデータよりも、対面で聞き取る顧客要求の方がより即効性があるはずだ。その上ビッグデータでは不可能だが、顧客との関係性を深める事が出来る。

最近問題になっている宅配便の再配達問題も、町の酒屋さんが配達を受託する事で、緩和出来る可能性がある。発送品の受付代行は以前からやっている。中元,歳暮の季節に進物として酒類を送る人が多いからだろう。受付代行だけではなく、配達も代行する。酒屋さんが配達のついでに、宅配便も配る。宅配便配達時にご用聞きのチャンスがあるはずだ。

今回の規制で、消費者物価指数を僅かに上げる効果はあると思うが、本当に町の酒屋さんの経営が楽になるだろうか?重要な事は町の酒屋さん自身が経営改善のために工夫を凝らす事だろう。


このコラムは、2017年6月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第531号に掲載した記事です。

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アリの社会

 アリの社会には「2:6:2の法則」があるそうだ。全体の2割のアリが、食料の8割を集めて来る。これはパレートの法則だ。「2:6:2の法則」はよく働くアリは全体の2割、普通に働くアリが6割、遊んでいるアリが2割、と言う比率になっていると言う法則だ。興味深い事に、働かない2割のアリを排除してしまうと、残った8割のアリがまた2:6:2の比率となり働かないアリが2割出て来ると言う。

ひょっとするとこれは人間社会にも共通の事かも知れないと気がついた。
つまり、組織の中で業績に貢献していない2割の社員を解雇しても、再び2割の社員が業績に貢献しなくなる。つまり遊んでいる社員2割は必要悪であり、首にしてはいけないと言う事になる。興味がわいて来て文献を調べてみた。

昆虫学者の研究によると、アリは仕事に対する閾値を持っており、目の前の仕事の緊急度が閾値を越えると行動を起こすそうだ。この閾値は個体ごとに違っており、閾値の低いアリが2割おり、彼らは非常に一生懸命働く。閾値が高いアリも2割おり、彼らはよほどの事がなければ行動を起こさない。残りの6割が普通に働くのだそうだ。

そしてこの閾値は、疲労によっても変化する。つまり疲れてしまったアリは、仕事に対する閾値が上がり働かなくなる。つまりさぼっているのではなく、疲労を回復するために休憩している、と言う事になる。彼らが休んでいる間に二番手の2割のアリ達が一生懸命に働くと言うのである。

もし全てのアリが同じ閾値であれば、皆がワァーと一生懸命に働く。経営者(女王アリ?)にとってはありがたい事かも知れないが、その結果全員が一気に疲労してしまう。これではアリの社会全体が機能しなくなる。閾値が違っており、頑張ったアリから順番に休憩に入る、と言うメカニズムになっているのだそうだ。

これは人間の組織でも同様なメカニズムが働くのではないだろうか?
トップ人財の貢献度が落ちて来ると、二番手の行動閾値が下がり頑張り始める。アリの社会ほど単純ではないかも知れないが、人間の組織でもこういう現象はあり得るだろう。

経営者としては、二番手三番手の社員の可能性を信じて、一番手を積極的に休ませる。休んでいる間に、二番手三番手が経験を積んで能力も上がるはずだ。


このコラムは、2017年6月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第531号に掲載した記事に加筆しました。

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伝承者と継承者

 メルマガの2本のコラムを書いていて、自分の仕事を内省して見た。

「アメーバ経営」
「超巨大恐竜、なぜ急成長 秘密は骨に…」

コンサルタントの仕事というのは、人比例ビジネスだ。コンサルタントの人数で売り上げ額上限が決まってしまう。設備産業と同じだ。設備稼働率の上限で売り上げ額上限が決まる。更に売上額を上げようとすれば、単価を上げるしかない。

昨年は、私の可動率が50%ほどになった。意外にもこの程度で、新規のお客様をお断りしなければならない事態が発生した。単発の仕事ならば受けられるが、長期の仕事となるとスケジュールの調整が困難になる。

コラムに書いた様に、既存の経営資源を活かし、新規のビジネスを立ち上げることが出来ると、レバレッジが効くだろう。しかしコンサル業の経営資源を活かした新規ビジネスとは何だろう?

工場経営の師匠・原田師の声がよみがえって来た。
「君は改善屋だが、工場再生の仕事も面白いよ」
原田師の工場再生手腕や経営哲学に感銘し、原田師に教えを受けた者として、多くの経営者に「原田式経営哲学」を伝えて来た。しかし私にとって、師匠の遺言にも近い原田師の上の言葉は胸の深くにしまい込んだままだ。

原田師も稲盛氏も再生した企業は、経営には失敗しているが、お客様はあった。
営業能力がない私でもこういう状況ならば、工場の再生ができるだろうと根拠のない自信がわいて来た(笑)

今の所、何らあてはない。
私の友人やお客様の経営者は皆優秀で、倒産にひんしている様な工場はない。しかし意思表示をしておけば、何らかの進展はあるだろう。
事業継承者がないなど様々な理由で、工場を閉めたい。
中国から徹底したいけど、撤退に大きな費用と時間がかかる。
等々のピンチがチャンスとなる。

少なくとも意思表示をしておく事により、自分自身の潜在意識が活躍するはずだ。潜在意識は、私を原田式経営哲学の「伝承者」から「継承者」切り替えた。


このコラムは、2017年1月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第510号に掲載した記事です。

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機能検証と妥当性検証

 先週の「失敗から学ぶ:「Galaxy Fold」発売延期」に読者様からコメントを
いただいた。

※I様のコメント

何時も楽しく拝読させて頂いています。
激動の中国で数十年、頑張っていらっしゃる姿に、感動すら覚えます。

さて、今回のメール内容で珍しく「アレ」と思ったのでメールさせて頂きました。

完成を待たずに販売に走る典型と言へば、Windowsが上がると考えます。
当時、某ゲイツらはDOSからの更なるシェアー拡大など狙い、キャラティカルデザインからUNIX系が試していたグラフィカルデザインを模したWindows3.0(もっと前のバージョンもありますが割愛)を無償配布し、市場の反応を見て、間も無くWindows95を販売致しました。
これは、今でも続いている通り、不具合発生毎にバージョンアップの形で、時には有料にて修正しています。
ソフトウェアとハード的に縛りがあるスマートフォンやタブレットを、同じ土俵で考えるのは浅はかかもしれませんが、モノづくりはとりあえずやってみようの精神が大事です。
サムスンのやり方は、顧客を無視していますが、市場で使ってもらい、データーを蓄積させて行く形と考えれば、間違いではありません。
何時もの先生(勝手にそう呼んでいます)の意見なら、そこを突いて来るかなと思ったので、初めてメール致しました。

日本に戻って既に7年経ちますので、感覚に変化があるかも知れませんが、モノづくりの現場は忘れていないつもりです。

これからも有益な情報、よろしくお願いいたします。”

 ご指摘の通り、ハードウェアとソフトウェアは同列に考えるのはむつかしいと思う。

市販ソフトウェアの場合は開発費以外の変動費コストはかなり低くなる。したがってα版、β版と称して市場にばらまき、反応を見る(バグ取りをする)のはアリだと思う。

しかしハードウェアの場合は1台ごとにコストがかかっているのでサンプルバージョンを無料配布して市場の反応を見ることはできないだろう。
以前頻発したリチウムイオン電池の発煙・発火事故などが発生すれば、無料配布なのだから、というのは免責にはならない。

巨大化・複雑化するソフトウェアの信頼性検証は相当困難だろう。どれだけ検証評価をしても「バグはもう一つある」というのが業界の常識の様だ。そんな訳で銀行システムや、航空券発券システムがダウンしても「バグならしょうがないか」という諦めが社会的に許容されているように見える。

しかし今回の事例のようにハード購入後わずか数ヶ月で壊れてしまうというのは、購入者にとって許容できるレベルではないと思う。当然生産者にとっても無償保証期間内の故障なので莫大な品質損失が発生する。

先週の記事は、「そんなことにならないように事前検証をしっかりしましょう」というつもりで書いた。

ソフトウェアのバグも社会的に大きな損失を与える可能性大だが、どうすれば良いか、実は私にもわからない(苦笑)
「10連休後にアクセスが集中したら」の様に過去事例から検証パターンを作ることくらいしか思いつかない。
そういう意味ではI様がご指摘の通り「市場で使ってもらい、データーを蓄積させて行く」ことになる。(業務システムでは不可能だろうが)

しかしハードウェアの機能検証、妥当性検証は、もっと簡単に出来そうだ。

例えばスマホの寿命を5年(機能の進化が激しいのでもっと短い?)とし、1日の開閉回数を10回とすれば、10×365×5=18,250回程度の開閉試験を実施すれば確認できるはずだ。

保護シートを剥がしてしまったために故障したという事例もあった様だが、妥当性検証評価に「ユーザが間違って保護シートを剥がしたら」という仮定を評価項目に加えることはそんなに難しくはないだろう。


このコラムは、2019年5月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第824号に掲載した記事に加筆したものです。

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恒心

yuē:“shèngrénérjiànzhījiànjūnzhě(1)。“
yuēshànrénérjiànzhījiànyǒuhéngzhě(2)érwéiyǒu(3)érwéiyíng(4)yuēérwéitài(5)nányǒuhéng。”

《论语》述而第七-26

(1)斯:すなわち
(2)有恒者:心が安定した者
(3)亡而为有:有りもしないのに有るように見せる
(4)虚而为盈:虚しいのに充実しているように見せる
(5)约而为泰:困窮しているのに安泰のように見せる

素読文:
わく:“聖人せいじんわれこれず。くんしゃるをば、ここなり。”
わく:“善人ぜんにんわれこれず。つねものるをば、ここなり。くしてりとし、なしくしててりとし、やくにしてたいなりとす。かたいかなつねること。”

解釈:
孔子曰く:“この世で聖人に巡り合うことは望めない。君子に出会えれば満足だ。”
孔子曰く:“この世で善人に出会うことは望めない。せめて心が安定した者に会えればそれで良い。何もないのに有りそうに見せる者、虚しいのに充実しているように見せかける者、困窮しているのに安泰であるように見せかける者ばかりだ。”

君子たる者、恒心を持ち続けなければならない。