月別アーカイブ: 2020年8月

生産性改善

 中国でバイヤーとして活躍されている方から先週のメルマガ「改善の火をともす」の感想をいただいた。感想というより中国モノ造りを叱咤激励する檄文(読み方によっては愚痴・笑)をいただいた。

この方は定期的にサプライヤーを集めて合同の改善報告会をしておられる。こういうことができる人が本当のバイヤーだと思う。
脅し、すかしでコストダウンを迫る、納期遅れには電話で怒鳴りつける、こういうバイヤーにはできないことだ。

相手に感謝されつつ自社にもメリットをいただく。何事もこうありたいと思う。

メッセージの中に合同改善報告会で中国サプライヤーの社長さんに改善の推進をお願いすると、「改善要員を雇いましたから大丈夫です。」と答えるシーンが出てきたが、思わず苦笑しながら頷いてしまった。
顧客から品質クレームがあると、即座に検査装置を買ってきてこれで大丈夫だと安心する中華系経営者を思い出した。

人を雇えば改善ができる、検査装置を買えば不良が減る、という明るく屈託のない思考回路では改善など不可能だろう。

ところで私も前職時代に生産委託先工場の経営者、品質責任者を自社のインドネシア工場に招き「グローバルQA会議」を開催した事がある。工場の見学、各社からの品質改善の取り組み発表と言う丸1日のプログラムだ。

さすがに全員同業者であり、みな真剣なまなざしで参加してくれた。
しかし自社工場の経営者から「ノウハウの流出」を恐れる声が出て、大変残念に思った。こちらの思惑ではお互いに切磋琢磨してレベルを高めあうことを想定していた。
今持っているノウハウにしがみつく姿勢とは対極の考えかただ。しかも目に見えているところなどたいしたノウハウではない。

そんな訳で2年目に台湾資本の中国工場で第二回グローバルQA会議を開催してその後は継続できなくなってしまった。
無理を承知で開催したので2回も開催できたことでよしと考えているが、少し残念だ。


このコラムは、2009年11月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第125号に掲載した記事に修正・加筆しました。

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行動評価

 毎月1回中国でがんばっている日本人経営者・経営幹部の皆さんと集まって「人財育成勉強会」をしている。
「人材」を「人財」に変えるために、具体的なワークをしたり事例研究をしている。

6ヶ月間「従業員のモチベーションを上げる」をテーマとして取り組んできた。

この勉強会メンバーが基本的に合意している認識は、福利厚生、給与は不満の解消にはなるが、モチベーションを上げるには効果が薄いと言うことだ。一方「公平な評価」はモチベーションを上げる効果があると認識している。

評価において数値評価ができるもの、例えば営業職ならば売り上げ目標に対する達成度などは具体的に数値で評価できる。こういう評価は公平感を維持するのは比較的たやすい。
しかし勤務態度とか勤務意欲などは定量評価が難しい。無理やり点数をつけたとしても、評価者によって大きく異なってしまう。こういう場合は公平感を保証するのは困難となる。

例えばこんな事例もある。
上級管理職で中国人管理職を一人ひとり評価をしていると、人によって大きく評価が変わってしまう。
理由は簡単だ。直属の上司に対しては非常に協力的だが、他部署の上司に対しては何かと理由をつけて仕事を断ってくる。こういう人間に対しては直属の上司の評価は高いが、他の部署の管理職から見ると仕事ができない人間に見えてしまう。

これは評価すべき態度・意欲のありかたとその基準が不明確であるためだ。

そこで期待される勤務態度・意欲を持った人間はどのような行動をとるかを定義する。そしてその行動が取れれば加点する「行動評価主義」を採用すればよいと考えている。

勉強会ではこのテーマに時間を割き、リーダとしての「行動評価基準」を作成した。

これを評価者だけの秘密の評価基準にするのではなく、基準をオープンにする。オープンになっていれば、全ての従業員が会社が期待する行動がどういうものか理解できる。その期待に沿えば給与も上がることが理解できれば、正しい方向に努力するだろう。

上記の例では「部門間協力」「全社的立場での視点」について経営者がどのような行動を期待しているかを明確にしておけば良いわけだ。

いくら機械化を進めて人を減らしても最終的には「人質」が経営に大きな影響を与える。むしろ機械化を進めてゆけば、作業者よりも中間管理職以上の職位の重要性が増す。この人たちの「人質」を上げないことには、機械化投資の負担ばかり増えて業績は上がらないだろう。


このコラムは、2009年11月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第125号に掲載した記事です。

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無駄の反対語は何?

 「無駄の反対語は何?」—無駄学の東大・西成准教授が自民党国交部会で意見

渋滞学や無駄学の研究で知られる東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻准教授の西成活裕氏は2009年3月12日、自民党本部で開かれた同党政務調査会国土交通部会で「無駄とり」に関する意見を述べた。「皆さん、無駄の反対語が何か分かりますか?」—西成氏は発言の冒頭で、部会に参加した同党の国会議員たちにこう問い掛けた。無駄とは何かを理解していないと、反対語をすぐに思い付くことはできない。西成氏は「頻繁に使用している言葉だが、無駄の定義は実は明確でない」と指摘した。

 では、無駄とは何か。「無駄を定義するには『目的』と『期間』を明確にすることが欠かせない」と西成氏は言う。特に「期間」を定めることは重要だ。組織のメンバー全員が目的を共有していても、目的を達成する期間が異なると、それぞれ違う結論を導き出すからだ。

 例えば、短期的な視点に立つ上司と長期的な視点に立つ上司がいたとする。両者とも、厳しい経済状況の中、コスト削減に迫られていた。そんな時、部下が「スキルアップ講座を受講したい」と言ってきた。部下に講座を受けさせれば、短期的にはコストが掛かる。そのため短期的視点の上司は「受講は無駄だ」と断った。しかし、長期的視点の上司は、「受講が部下の能力やスキルの向上につながれば、将来的には会社の利益につながる」と考え、許可した。この例の場合、両者の目的は「会社の利益を上げること」で同じだ。しかし、目的を達成するまでの期間が異なるので、取る行動が違ったのだ。
つまり、目的だけでなく期間も明確にしなければ、系統立てて会社の無駄とりをすることはできない。

(INTERNET BPnetより)

 一見ムダに思えてもその「目的」を考えれば、ムダではないという事例はいくらでもある。
作業の下準備がその良い例だ。
下準備をきちんとしておけば、効率も良くなるし、品質も良くなる事が多い。
よく「段取り8分」というが、段取りがきちんとできれば仕事の8分は完成したようなものだという意味だ。

以前中国の工場で、壁のペンキ塗りをした事がある。
我々の常識からすれば、マスキングテープを使い養生をしてから塗り始めるのだが、いきなり塗り始めた。その結果床にはペンキが落ち、腰板にもペンキがはみ出した。

後で拭き掃除をすれば良い。拭き掃除は掃除係の仕事。だから自分たちには関係ない、という考え方だろう。
その結果工場をきれいにしようという「目的」に反して、汚してしまいムダな仕事を生んでいる。

人に仕事を頼むときも同じだ。
きちんと仕事の目的・方法を教え、相手が理解できていることを確認した上で作業を開始しなければならない。これは上司にとって手間がかかることだ。ここで「あれやっといて」と指示をすれば手間は省けるが、結局やり直しをすることになる場合が多い。そのたびに部下の無能さを呪い、自分が忙しくなるだけだ。

目的のあるムダを省けばこういうことになる。

更に西成氏は「期間」という時間軸を取り入れて説明している。長期視点に立った日本的経営が、バブル崩壊後多くの経営者には「ムダ」に見えてしまった。そして一斉にムダを排除した。それが現場力の弱体を招き、更に大きなムダを生んでしまった原因だと考えている。

ところで「ムダ」の反対語は何だろうか?実は私も今のところ妙案はない。

成功の反対語はこちら


このコラムは、2009年3月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第89号に掲載した記事です。

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不審物は「見る・かぐ・問う」 北京のバスに警戒要員

 【北京=坂尻信義】 北京では路線バスを標的としたテロを警戒し、8月1日からバス会社が特別要員を車内やバス停に配置、乗車拒否も辞さない姿勢で臨む。

 北京公共交通グループの馮幸福副総経理が中国メディアに明らかにしたところでは、訓練した乗務員5千~7千人に携帯型の安全検査器を持たせて警戒させる。ただ、乗客の手荷物を強引に検査する権限がないため、「一に見る。二にかぐ。三に問う」の構えで警戒にあたらせる。

(asahi.comより)

北京だけではなく深センでも安全強化が進んでいる。
香港がオリンピック馬術会場となっているため、テロ警戒が必要なのだろう。

しばしば利用する深セン羅湖のバスターミナルにも新たにX線検査装置が追加され、バス利用者の荷物を検査している。

今までは二階にある切符売り場からエスカレータを降りたところに1台だけX線検査装置が設置されており、時々気が向くと検査、という状況であった。このエスカレータ以外にもバスターミナルに入る事が可能であり「ザル状態」であった。

最近は厳格に検査をし始めている。地方に向かう乗客などは大きな荷物を二つも三つも持っており、大変な混雑である。
今のところエスカレータを下りたところのX線検査はそれほど人が並んでおらず、一度2階に上がってからバスターミナルに入るのがすばやく荷物検査をクリアする「裏技」である。

しかしエスカレータを降りてすぐの場所にX線検査装置が設置されており、この「裏技」を多くの人が気が付いてしまうと危険なことになる。検査待ちの人の列がエスカレータまで伸びてしまうと、上から降りてくる人たちが将棋倒しになりかねない。

安全強化がアダにならない事を祈るばかりである。


このコラムは、2008年8月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第45号に掲載した記事です。

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非常識なパフォーマンス

 不良率、生産性などのパフォーマンスを業界内だけで比較をしていると「井の中の蛙」になってしまう。

例えばセットメーカは電子部品業者に対し不良20ppm以下の納入品質を要求されるところが多い。部品にもよるだろうが、まったく実現不可能な品質レベルではない。がんばれば何とか達成できる。

しかしこの要求を電源装置にも適用されて、大いに弱った。
電源装置の中には、電子部品、機構部品が200点ほど入っている。それぞれの部品が20ppmの品質レベルなのに電源も同じ品質要求では不公平ではないかと、お客様に苦情を呈した事がある(笑)

このお客様に収めた電源装置は生産開始初期につまらない不良を何度か出してしまったため、最終的には20ppmを切れなかったが、0ppmを何ロットも継続した。

電源屋は電源屋の常識で品質レベルを考えていると、そこそこのところで止まってしまう。電子部品業界の常識レベルにチャレンジすることにより、更に上のレベルに到達できるわけだ。

一方自動車関連部品やモジュールを生産されている方々は、初めから不良ゼロが常識である。
ひとつには人の命を預かる部品であるということ、更に部品不良が発生すると最終の完成車組み立て工程が止まってしまう。という理由により不良ゼロが常識なのである。この常識は自動車関連の部品メーカであれば、ネジ屋にも適用される。

このように業界を越えてパフォーマンス評価をすると、更に高い目標がでてくるものだ。

同じような作業をしているにもかかわらず、業界内比較をしてしまうとこの程度で十分というレベルになってしまう。ベストプラクティスを業界の外に求め、それにチャレンジする。同業者の中では非常識なパフォーマンスを実現することにより、業界内で圧倒的な競争優位が得られるであろう。


このコラムは、2008年8月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第45号に掲載した記事です。

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君子は憂えず惧れず

niúwènjūn
yuē:“jūnyōu。”
yuē:“yōuwèizhījūn”。
yuē:“nèixǐngjiùyōu。”

《论语》颜渊篇第十二-4

素読文:
司馬しばぎゅうくんう。
わく:“くんうれえずおそれず。”
わく:“うれえずおそれず、こここれくんうか。”
わく:“うちかえりみてやましからずんば、なにをかうれなにをかおそれん。”

解釈:
司馬牛が孔子に君子とは何かを問う。
孔子曰く、君子はくよくよ悩まず、何事も惧れない。
司馬牛が重ねて問う、くよくよ悩まず、何事も惧れなければ、君子と言えるでしょうか。
孔子曰く、自己を省みて疚しいことがなければ、何を憂い何を惧れることがあろうか。

君子たる者心に疚しいところがないので、何事も憂えず、何事も惧れない、ということでしょう。