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製造時にミス、カナダに指導勧告 ボンバル機胴体着陸

 高知空港で昨年3月、全日空機の前脚が出ずに胴体着陸した事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は28日、調査報告書を公表した。
原因として、機体製造元のカナダ・ボンバルディア社がボルトをつけ忘れた可能性を指摘。
品質管理に問題があるとして、カナダ当局に同社を指導するよう勧告した。

 報告書によると、同社は機体を全日空側に引き渡す約1カ月前の05年6月、前脚のテストを実施。その際に関連部品を傷つけ、交換した。
この過程でボルトを一つ付け忘れたとみられる。

(asahi.comより)

 この事故の関連記事は本メルマガ第20号でもご紹介した。

品質管理的にまとめてみると、
「最終検査で見つかった不適合に対し、是正処置とその確認が不十分だった」ということである。

実は私も同じような経験をした事がある。
工場生産のサンプル出荷直前に設計変更が発生し手直しをして出荷することになった。修正作業を完了、検査をして出荷梱包作業を開始した。

あらかた梱包作業が完了したところで、耐圧試験をするのを忘れたことに気が付いた。梱包を解いて耐圧検査をしてみると、不良品が見つかった。

修正作業中に絶縁シートを破損したのに気が付かず再組み立てしてしまったためだ。
サンプル品とはいえ危うく不良品をお客様に出荷してしまうところであった。

それ以来修正作業(中国語では『重工』とか『返工』という)が発生した場合作業の工程をきちんと紙に書き出すことにした。
すなわち、製品の分解→修正作業→組み立て→検査→梱包、全ての工程を書き出し、工程ごとの作業手順を手書きの作業指示書にする。

これをするだけで、うっかり工程を飛ばしてしまうことは激減する。これらの資料を基に作業開始時に作業員を集め説明をする。

こんなひと手間がつまらない不良を防いでくれる。


このコラムは、2008年6月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第37号に掲載した記事です。

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ボンバル社2機種の共同生産取りやめ 三菱重

 三菱重工業は6日、カナダのボンバルディア社と共同生産している民間航空機2機種について、共同生産をやめると発表した。同社が担当してきた胴体部分などの生産は09年以降、ボンバルディア社に移される。

 三菱は「高付加価値製品へ経営資源を集中させるため」と説明するが、うち1機種は70~90人乗りの小型ジェット機で、同社が事業化をめざす初の国産小型ジェット機と競合する。3月末に事業化を正式決定する前に、事業を整理しておくねらいもありそうだ。

(asahi.comより)

 この記事だけを見るとたんに三菱重工の経営的な決断しか見えてこないが、昨年3月13日に発生したボンバルディア社の航空機事故を思い起こすと違う解釈も出てこないだろうか。

昨年3月13日高知空港で全日空ボンバルディア機が胴体着陸するという事故がおきている。前輪格納扉の開閉ボルトが脱落したため、着陸時に前輪を出すことができなかった。

事故調査委員会は、ボンバルディア社が製造直後に行った修理でボルトを付け忘れた可能性が高い、と最終報告書をまとめている。

この事故との関連を考えるのは邪推だろうか?


このコラムは、2008年2月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第20号に掲載した記事です。

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君子の心得

zhāngyuē:“shìjiànwēizhìmìngjiànjìngsāngāi。”

《论语》子张第十九-1

素読文:
ちょういわく:“あやうきをてはいのちいたし、るをてはおもい、まつりにはけいおもい、にはあいおもう。なるのみ。”

解釈:
子張曰く:“士たる者は危機に面しては命をかけてあたり、利を得る局面では義に適うか考え、祭事にあたっては敬虔深く、喪には哀悼の念を抱くかねばならない。”

这是君子之所为。君子の心得です。

QCC活動の活性化

 久しぶりにご相談のメールをいただいた。小集団自主改善活動(QCC活動)に関するご相談だ。電子製品組み立ての日系工場副総経理様からのご相談だ。

「QCCを導入したが、いつの間にか尻すぼみになってしまった。導入直後は皆一生懸命にやってくれたのに、活動内容のレベルが落ちて来た」

経緯の概略は以下の通り。

直接部門は班長以上、間接部門ともに一気に導入した。
日本本社から指導に来てもらい、QC手法などの指導もした。
一年目は、指導のため日本人幹部がテーマ設定から一緒に活動した。
二年目から自主性を尊重する活動としたが、実際活動出来るサークルが減った。
三年目は活動テーマ数2回/年の目標を設定した。目標は達成したが、活動内容のレベルが下がってしまった。

いろいろな企業で現場の班長さん達を観察したり話をしていて、「改善」は自分の仕事ではない、と彼らが捉えていると感じる事がよくある。
作業指示書の通りに作業者に作業させるのが自分の仕事であり、作業の改善は生産技術や上位職の仕事、と考えている様なのだ。
まず、この認識を改め「改善」は自分の仕事と理解させる事から始めるのが良かろう。

二年目に自主活動になったとたん、活動が停滞し始めたのは、この辺が原因だろう。活動の方向性を決めてもらえれば(与えられた仕事)活動出来る。しかし自主的に仕事を作り出すのは、もう一段高い能力だ。

一気に全社活動とするのではなく、プロジェクトチームをいくつか起こして経営幹部が指導をしながら進めて行く。活動の成果を全社員に発表する機会を設ける。発表会を見て、自分もやりたいと自発的に考える様に仕向ける。

活動件数をノルマとすると、活動件数だけ達成しようとする。その結果、簡単に活動が完了するテーマばかりに取り組む様になる。成果実感のない活動をして発表をすると「やらされ感」が高まる。自主性を尊重したつもりが逆効果となる。

テーマ選定に関しては、経営幹部も参加し、職場の問題点などを話し合いつつ決定すると良いだろう。メンバーが自主的に決めた様に、勘違いして貰えれば、なお良い(笑)

日本ではQCC活動は全員参加が原則だが、部分参加からスタートし全員参加に近づけた方が良いだろう。無理矢理全員参加にするよりは、やりたい人が徐々に増え、組織内に「改善文化」が出来上がる様にするのだ。

そして活動成果を褒める。ただ褒めるだけではなく、昇格などの条件に入れる。報奨金として一時金を出すのも良いが、継続して改善する能力は昇格要件になりうるはずだ。
また優秀改善は日本本社のQC大会に派遣する、社外の発表会に参加するなどの報奨も、モチベーション向上につながるだろう。


このコラムは、2014年2月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第349号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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IoT

 今週はブルートゥース(以下BTと略称)関連の記事に注目した。
日立が超小型センサー IoTで部品データ収集
アップル本格参戦 色めきたつブルートゥース市場

初めてBTモジュールと出会ったのは、ロボット犬アイボのリモコンだった。
電源を生産していた生産子会社でAIBOハンディビューワーの委託生産を受けることになった。当時のBTモジュールは10mm×30mm程の大きさだったと記憶している。2002年頃のことだ。今ではTDKのBTモジュールは3mm角だそうだ。

アイボはハンディビューワーとの通信だけだったが、今ならその先にクラウドが有り、アイボが学習した内容はビッグデータとして蓄積され、更なる進化をとげることになっただろう。アイボがやり残したことは、ペッパーに引き継がれて行くだろう。

モノがインターネットにつながった状態(IoT)の先駆けはコマツの建設機械ではないだろうか?世界中で稼働しているコマツの建設機械の稼働状況を、コマツのサービス部門が把握している。同じことがエレベータなどでも出来るはずだ。先週末はアパートにある二台のエレベータが両方とも故障しており、階段を使って14階を二度往復した。いくらOTISのエレベータでもメンテナンスがいい加減ならば、こういうことはしょっちゅう発生するだろう。
中国では機能停止になるまでは「故障」とは考えない。こういうメンテナンス要員を信用せずに、エレベータ各部に振動センサーなどを貼り付け、ネットを介して稼働状況を収集していれば、故障予測をすることができるはずだ。

ネットにつながる為のデバイスがどんどん小さくなり、とんでもないモノがネットにつながっている時代となった。アマゾンが米国で消費者に配っている商品カタログには、製品ごとに小さなパッチがついているそうだ。これを冷蔵庫に貼っておき、牛乳が無くなれば、牛乳のパッチを押す。パッチの中にはBTデバイスが入っており、スマホもしくはPC経由でアマゾンに注文が行く。

自転車の車輪に装着した回転メータは、BT経由でスマホにデータを送り、運動量を積算することができる。

この様な健康系のアプリケーションがネットを活用し始めている。AppleWatchの登場が、この傾向をより加速している様に思う。

AppleWatch分解 快適操作支える「コスト10倍」部品

脈拍や体温を継続的に測定出来れば、健康な人の予防医療に役立つはずだ。
時代はIoTからIoP(Internet on Person)に進化を始めている様に思う。


このコラムは、2015年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第431号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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