失敗から学ぶ」タグアーカイブ

減収減益のボーイング、生産体制のずさんさが明らかに

 米ボーイングは24日、2019年1~3月期の決算を発表した。売上高は前年同期比2%減の229億ドル(約2兆5600億円)で、純利益は同13%減の21億4900万ドルの減収減益だった。

 減収減益の主因は3月10日に発生したエチオピア航空の事故以来、新型機「737MAX」の出荷を停止していることにある。同日のカンファレンスコールでデニス・ミューレンバーグCEOは「社員全員で737MAXの提供を早急に再開できるよう全力を尽くす」と話した。だが、問題解決には経営陣が考えているより長い時間がかかりそう。米国で同社の機体生産体制のずさんさがあばかれ、注目を集めているからだ。

 きっかけは20日に公開されたニューヨーク・タイムズの記事。記事によると、米サウスカロライナ州のノースチャールストン工場では、工具やとがった金属片などを機体の内部に残したまま顧客に引き渡すことがあり、複数回にわたり従業員が管理者に状況を報告していた。物が放置された場所の中には、コック
ピット下の重要機器類の配線が行き交う場所もあったという。十数人以上の従業員らの証言と数百ページに及ぶ社内メールなどを検証した結果、明らかになったとしている。

 同工場が生産しているのは、長距離飛行を可能にして売れ筋となった旅客機「787」。問題の737MAXが生産されているのは同工場ではなく米ワシントン州のレントン工場だが、こうした品質問題が「社風」となっている可能性はある。ここ数年、日本の生産現場でも数多くの品質不正が問題になっているが、そのほとんどで、1工場で発覚した不正は別の工場でも起きていた。

 「品質よりも業績を優先した結果だ」と記事は指摘している。
チャールストンの工場では今年初めから、月間の生産機数を従来の12機から14機に増やし、一方で品質関連の職員を約100人削減していたという。

 品質の改善には従業員の意識や風土の改革が必要になるため、相応の時間がかかる。ボーイングの苦難は、これから長期にわたって続くことになりそうだ。

(日経ビジネスより)

 ボーイング社の737Max機の墜落事故に関しては、本メルマガでも注視した。

大きな墜落事故を立て続けに2件も発生させたのだから、減収減益も当然だ。売り上げが前年同期比2%減、純利益同13%減という程度で済んだと言った方がよかろう。

更に追い打ちをかけるように、787機の生産工場で工具や金属片などが機内に残った状態で納品するという事故を起こしている。これらの残留異物が機内の配線、配管などを損傷すれば即重大事故が発生する。

アパレル関連の工場では、針やカッターナイフの混入は重大事故となる。電気・電子部品、製品でも梱包箱にカッターナイフの折れ刃が混入すれば重クレームとなる。

生産量が17%増えたからとか、品質担当が100人減ったからというのが言い訳となるようでは、重大事故を防ぐ仕組みが不十分であるとしか言いようがない。

マネジメントが現場から全く遊離してしまっているように感じる。
十数人の従業員を会議室に呼びつけて事情聴取をする、何百ページもの社内メールを読む、こんなことをしても現場を理解することはできない。自ら足を運んで現場を見れば、一目で重大な問題が潜んでいることがわかるはずだ。

現場の幹部・監督職にはそれが見えていたのではなかろうか?
金勘定しかできない経営幹部にそれが伝わっていなかったのか?伝えても無駄という諦観が現場にあったのか?

何れにせよモノ造りの企業としては重篤な病に冒されている状態と言わざるを得ない。


このコラムは、2019年5月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第817号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

医療事故

 航空機は一番安全な乗り物だ。空を飛ぶという危なげな航空機の方が地上を走る列車、自動車と比べても安全だ。それは、事故や重大インシデントを徹底的に業界全体で共有し、再発防止・未然防止を図っているからだ。

その対極にあるのが医療業界だろう。
医療事故が公表され業界で事例共有されることはほとんどない。

厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長・白鳥圭輔、愁訴外来科医師・田口公平が活躍する小説「チーム・バチスタの栄光」が発表されたのが2006年。2008年には映画化され、TVドラマも放映されている。
現実には2014年の医療法改正により医療事故調査委員会が設置されている。
よほど医療業界の抵抗が大きかったのだろう(苦笑)

「失敗の科学」という書籍には、2005年米国で発生した医療事故を紹介している。

「失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織」

副鼻腔炎の手術で入院した患者を医療ミスで死亡させてしまった事例だ。
手術の前に麻酔技師が麻酔をかけ、酸素吸入のため気管挿管をしようとするが、うまくゆかない。執刀医、麻酔主任が集まって気管挿管を試みるが、うまくできない。気管挿管に手こずったまま時間が経ち患者は脳死状態となった、という事故だ。気管切開によって気道確保すれば事故には至らなかったはずだ。実際看護師は気管切開のための準備を完了していた。

医師たちは目の前の問題に囚われ、別の解決方法が見えなくなっていた。チームの上下関係により看護婦は代替え解決案を発言できなかった。チームが自由闊達な組織文化を持っていれば、このような視野狭窄を防ぐことができたはずだ。医療界そのものがこういう組織文化を持っているのではなかろうか?

コミュニケーション、上下関係が硬直した組織では、事故事例の共有・再発防止は難しい。


このコラムは、2020年7月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1000号に掲載した記事に加筆したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

アップル、iPhone減産継続 4~6月も3割

 米アップルのスマートフォン(スマホ)、iPhoneの減産が長引いている。国内外の部品メーカーによると、1~3月期に続き、4~6月期も前年同期比3割程度の減産を継続する。昨秋発売の主力モデル「iPhone6s/6sプラス」の販売が低調なため。高性能部品を供給する国内メーカーの工場は稼働率が低下しており、収益圧迫につながるのは避けられない状況だ。
全文はこちら

(日本経済新聞より)

 失敗と言えるかどうか少し微妙だが、iPhone旋風が下火になって来たのは否定出来ない。ジョブズ亡き後、iPhone6/6+、iPhone6S/6S+の投入が戦略的に失敗だったのではなかろうかと愚考している。もしジョブズが生きていたら、iPhone6/6+の試作品を見た時に激怒しただろう。

Appleの強みは、消費者のニーズにより商品開発をするのではなく、消費者がまだ気がつかない価値を提供する所に有ると考えている。

例えば「ポケットに音楽を入れて街に出る」と言う価値は、既にソニーがウォークマンで提供していた。それを更にiTunesと言う仕組みで進化させた。
以来カセットテープやCDが市場から駆逐されてしまった。この様なインパクトを持つ商品(サービス)を新たに提供するのがAppleだ。それに合わせてApple自身も進化し、社名からコンピュータがとれた。

しかしiPhone6/6+以降少し様相が変わった。
その変化の影に三星の影響があっと言うのは、穿った見方だろうか?
スマホ市場で覇を争っている間に、Apple本来の「まだ見たこともない価値」を提供すると言う基本的な姿勢が忘れ去られた様に思う。

iPhoneSEが発表されたが、市場の大方の見方は「廉価版」だ。口の悪い人は過去の資産の使い回しなどといっている。確かにiPhone6S/6S+と同等の性能を持ち、価格が安くなっている。しかし私は「原点回帰」と見た。

自社が市場に提供する価値からぶれてしまい、販売不振を招いた。それを元に巻き戻そうと言うのがiPhoneSEの本来の意味ではないだろうか。

アップル教徒の私は、3DタッチはなくともiPhone6SよりはiPhoneSEを選択する。ついにiPhone4S(iPhone For Steve)をiPhoneSE(iPhone Steve Edition)に替える時が来た(笑)


このコラムは、2016年4月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第472号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

粉じん引火か、幹部ら拘束 中国工場爆発、死者69人に

 中国江蘇省昆山市の経済開発区にある「中栄金属製品」の工場で2日朝に起きた爆発による死者は69人にのぼり、約190人が負傷した。工場で、これだけ大規模な惨事が起きることは中国でも珍しく、事態を重くみた習近平(シーチンピン)指導部は陣頭指揮のため、王勇・国務委員を現地に派遣した。

 国営新華社通信などによると、爆発は自動車のホイールの研磨をする作業場で起きた。工場内の粉じんに引火したのが原因とみられる。当局は同社の幹部ら5人の身柄を拘束し、安全管理などに問題がなかったか事情を聴いている。

 爆発があった工場に通じる道路は2日、警察官らが封鎖した。出入りができなくなったものの、多くの人たちが集まっていた。

 隣の工場の男性工員(24)は「大砲のような、ものすごく大きな音がした。働いている工場のガラスが割れた」。近くの工場に勤務する趙東舟さん(28)は、けが人を運ぶなど救援活動に参加。「全身がやけどで真っ黒になった人たちが次々と出てきた。焼けてしまって、服も身につけていなかった」と興奮気味に話した。

 姉が爆発のあった工場で働いているという許雨朋さん(32)はネットで事故を知って駆けつけた。「何が起きたのか、まったくわからない。姉の携帯電話もつながらない。心配でたまらない」と顔をゆがめた。

 ホームページなどによると、同社は1998年に設立された台湾企業。従業員は約450人で、アルミニウムのめっき加工などを手がけている。中国メディアは、同社が米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)に部品を供給していると伝えた。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、同開発区には昨年7月時点で、200社以上の日本企業のほか、約2千社の台湾企業などが入居している。

 日本企業の駐在員らでつくる昆山市日本人同郷会は、日本企業への被害は確認していないという。

(朝日新聞電子版より)

 爆発と言うと、引火性の高い物質が原因と考えがちだが、引火性の無い物質が爆発を起こすことがある。それが「粉塵爆発」だ。

引火性が全くない綿や小麦粉でも爆発は発生する。粉塵爆発の条件は、

  1. 空気中に一定の割合で微粒子粉塵が存在する。
  2. 発火エネルギー
  3. 酸素

この3点が揃うと粉塵爆発を起こす。

アルミニウムは引火性も燃焼性も無い。しかしアルミニウムの微粒子が空気中に一定の割合で存在すると、爆発を起こすことがある。

爆発の引き金となる発火エネルギーは、開閉器や電動機からのスパーク、稼働部分の摩擦熱が原因となる。また静電気放電によるスパークですら原因となる。

小さな発火エネルギーでも、局所的に空気中の浮遊微粒子が加熱され、そのエネルギーが近隣の浮遊微粒子に一気に連鎖し、爆発が起きる。

アルミ粉は、水と激しく反応し水素を放出する。放水消化をすると、二次爆発が発生する可能性もある。作業現場に消化スプリンクラーが設置されていると更に被害を拡大することになる。

綿や小麦粉の粉塵で爆発が起きた事例もある。
粉塵が発生する現場は注意が必要だ。

対策は、
清掃、排気により空気中の粉塵を減らす。
粉塵環境の電設設備は、防爆対応品とする。
静電気の発生を抑える。(アイオナイザーはコロナ放電によりイオンを作っているので、逆に発火エネルギーを与えることになるかもしれない)

あなたの工場は大丈夫だろうか?
アルミニウムと言うキーワードではなく、粉塵と言うキーワドに着目すれば、金属加工だけではなく、木工、紙、粉体製品にも、適用範囲が広がる。


このコラムは、2014年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第373号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

ビール、2割値上げの店も 安売り規制、戸惑いの声

 お酒の過度な安売りを規制する改正酒税法などが1日施行され、ビールや発泡酒の値上げが相次いでいる。ねらいは街の小規模な酒屋さんを守ることだが、一気に2割の値上げに踏み切る店もある一方、違法な安売りの基準があいまいで、戸惑いの声も広がる。

(以下略)

全文

(朝日新聞電子版より)

 このニュースのどこが失敗なのか?と言う疑問をもたれる方もあるだろう。確かに失敗とは言い切れない。しかし過去から弱者保護の名目で行って来た政策は、うまくいっていない。むしろ弱者をより弱者にしてしまっていると言った方が適切ではなかろうか?

例えば農業。日本程美味い米を普通に生産出来る国は他にはないだろう。農協により農家の経営努力を奪い、日本の農家が世界市場に目を向けるのを妨げていたのではなかろうか。近年、志の高い農業経営者が様々な方法で結果を出している。

町の小さな酒屋さんの経営が難しいのは、想像にかたくはない。資本力,販売力が有る安売り酒販店、スーパーマーケットなど競争相手がどんどん増える。更に異業種のネット通販が参入して来る。この様な経営環境の変化に対応して行くのが「経営」でありそれを放棄してしまっては、成長はあり得ない。

人が物を買う時の判断基準は「価格」だけだろうか?
「あなたから買いたい」と言われる酒屋を目指したらどうだろう。新聞記事には、80代の女性が6缶パックのビールを毎週3回買うと有った。ひとパック2kg以上あるはずだ。他の食材も合わせれば、老齢の婦人には相当の負担になるだろう。毎晩冷えた缶ビールを3缶ずつ届けたらどうだろう。ひょっとすると、本当は瓶ビールを飲みたいのに、重いので缶ビールで我慢しているのかも知れない。酒屋ならこの欲求を満たす事が出来る。

「ご用聞き」と言う昔からの習慣は、顧客の要求をより深く理解するためのシステムだ。コンビニのPOSから集めたビッグデータよりも、対面で聞き取る顧客要求の方がより即効性があるはずだ。その上ビッグデータでは不可能だが、顧客との関係性を深める事が出来る。

最近問題になっている宅配便の再配達問題も、町の酒屋さんが配達を受託する事で、緩和出来る可能性がある。発送品の受付代行は以前からやっている。中元,歳暮の季節に進物として酒類を送る人が多いからだろう。受付代行だけではなく、配達も代行する。酒屋さんが配達のついでに、宅配便も配る。宅配便配達時にご用聞きのチャンスがあるはずだ。

今回の規制で、消費者物価指数を僅かに上げる効果はあると思うが、本当に町の酒屋さんの経営が楽になるだろうか?重要な事は町の酒屋さん自身が経営改善のために工夫を凝らす事だろう。


このコラムは、2017年6月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第531号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

超巨大恐竜、なぜ急成長 秘密は骨に…

超巨大恐竜、なぜ急成長 秘密は骨に…

長い首と尾を持つ「竜脚類」と呼ぶ恐竜の仲間は地球に現れた最大の陸上動物といわれる。多くの種類が体長20メートル、体重10トンを超した。中には約40メートル、80トンに成長したと推定される化石も見つかっている。なぜ、ここまで巨大になったのか。成長が早い特殊な骨のでき方など、複数の特徴を併せ持ったからだとわかってきた。
 (以下略)

全文

(日本経済新聞電子版より)

 体長40m、体重80tもあったといわれる長い首と尾を持つ恐竜「竜脚類」の記事に興味を引かれた。
竜脚類の卵は最大で30cm程度。ダチョウの卵の3倍程度しかない。孵化直後は体長50cmだそうだ。その後急成長し死ぬまで成長し続けるらしい。

彼らが急速に成長出来る理由が解説してあった。記事によると、

  1. 骨の構造。先ず粗な組織が出来上がり、その隙間を埋める様に密になる。四季を通じて成長出来る。
  2. 高効率の呼吸器官。吐く時も吸う時も肺に空気が送り込まれ、ほ乳類の倍の効率で酸素吸収が出来る。
  3. 環境の適合:恐竜時代は火山活動により空気中の二酸化炭素濃度が高かった。そのため植物の成長が早く、餌が豊富にあった。草食なので捕食に必要なエネルギーが少なくて済む。
  4. 小さな頭:植物の餌を丸呑みしていたので、歯や口の回りの筋肉が発達する必要がなく頭が小さくて済むため、エネルギー消費が少なくても済む。

これらの特徴を、ビジネスの成長に応用出来るだろうか?

  1. 新規事業を素早く立ち上げ、現有経営資源を使って徐々に新規事業を強化。
  2. 材料を買う時、製品を売る時共に利益が発生する仕組みを作る。
  3. 経営環境への適合は、成長以前の企業存続の必須条件。
  4. 最小のエネルギーで最大の価値を創造する。

こういう事が出来れば、企業は急速に大きくなるだろう。しかし恐竜が絶滅したのは,急激な環境変化(氷河期)への対応が遅れたためだ。この時不利に働いたのは、巨大な体と小さな脳だろう。

失敗から学ぶとすれば、急激に成長しない。効率優先で思考停止する事を抑制しなければならない(笑)


このコラムは、2017年1月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第510号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

自動ブレーキ「誤作動」

 

「自動ブレーキ『誤作動』米が調査 日産SUV」

 日産自動車の北米向けSUV(スポーツ用多目的車)「ローグ」(日本名・エクストレイル)について、自動ブレーキが誤作動する恐れがあるとして、米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が調査に入った。米メディアが12日、一斉に報じた。

 調査対象は2017年と18年のモデルで、計約55万台。障害物がないのに自動ブレーキが突然作動するなどの不具合が指摘されている。これまでに800人以上が苦情を訴え、14件の事故、5人の負傷者が報告されているという。

 日産にとってローグは北米での主力車種。日産はソフトウェアの無償改修を促す通知を顧客に出した。NHTSAの調査結果次第では、リコール(回収・無償修理)に発展する可能性もある。

 日産によると、ローグは米国、韓国、九州の3カ所で生産しているが、調査対象の車の詳しい生産地は分からないという。日産広報は「今のところ、日本のエクストレイルに同様の問題が出ているという話は聞いていない」としている。

(朝日新聞より)

 ゴーン会長、西川社長の報酬疑惑、19年度1Qの営業益98.5%減、などに続き日産自動車のネガティブな報道が続いている。

今回発生したブレーキの誤動作は、必要な時にブレーキが効かないわけではなく、不必要な時にブレーキが作動してしまう問題だ。必要な時にブレーキが効かなければ、かなり深刻な問題になる。しかし不必要な時にブレーキが作動しても、追突されるなどの人身事故につながりかねない。

新聞記事には「ローグは米国、韓国、九州の3カ所で生産しているが、調査対象の車の詳しい生産地は分からないという」とある。ソフトウェアの問題であれば、どこで生産しても同じ欠陥が内在しているはずだ。生産地ごとに採用している購入部品に含まれるソフトウェアの問題なのだろうか?

当然、ブレーキの動作に影響のある重要安全部品に対する評価は徹底的に実施したはずだ。
しかしこの手のソフトウェアの信頼性評価は簡単ではない。
「ブレーキが効かなければならない時に、ブレーキが正しく動作する」ということを検証するのはさほど難しくはないはずだ。つまり、ブレーキが効くべき場合は「ブレーキペダルが踏まれた」「前方または後方に障害物がある」など条件を特的できる。

しかし「ブレーキが効く必要がない時に、ブレーキが作動しない」を検証する場合、「ブレーキが効く必要がない」という条件をもれなくあげることは困難だろう。従って完成車での検証(妥当性評価)には無限大の組み合わせが発生する。

このような場合ソフトウェア単体の検証で問題ないことを確認することになる。
通常この検証はソフトウェア設計部門で行う。これが仕入先の設計であれば、完成車メーカとしてどのように評価するのかが問題となるはずだ。


このコラムは、2019年9月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第877号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

ゴーン被告の国外逃亡

 保釈中のカルロス・ゴーン被告が国外逃亡したというニュースが年末から年始にかけて、巷間を賑わした。

ニュースによると、コントラバス(もしくは音響設備)のケースにゴーン被告を隠し、プライベートジェットに乗って日本を出国したようだ。仰天した。まるで映画のようだ。

このような前代未聞の大失態を演じた原因を考えてみた。

  1. 本来の根本原因は、ゴーン被告が自由に不正を働くことができた日産の企業ガバナンスに問題があった。不正を正す者はなかったのだろうか?司法取引を持ちかけ内部告発をする以前に、内からの自浄作用が働く組織ではなかったようだ。
  2. 証拠隠滅、海外逃亡の可能性が指摘されていたにもかかわらず、保釈を許可した裁判所の判断も原因の一部だ。海外から日本の司法制度に批判が集まっていた。しかしそれに怯んだら、その司法制度に従順に従ってきた日本国民に申し訳ないとは思わなかったのか。他国が批判すべき事柄ではないはずだ。
  3. ゴーン被告にパスポートの携行を許した。フランスパスポートを鍵付きのケースに入れて携行を許したようだが、鍵を壊せばそのまま使えるとは考えることができなかったのだろうか。
  4. 出国審査の甘さはどう弁解してもアウトだろう。去年は保安検査でナイフを携行している乗客をそのまま通してしまう、という大失態*をしている。
    プライベートジェットならばテロを起こす心配はないと考えているのか?テロはなくても、輸出禁制品の持ち出し、検疫などが疎かになっていたと言わざるを得ないだろう。搭乗荷物を検査すれば、中に人間が入っており、有名な人物であることはすぐに分かっただろう。

*伊丹空港保安検査

当然事前に考えうる事柄ばかりだ。最悪を想定して備えなければならない。
空振りをしても痛くも痒くもないはずだ。今回のようにど真ん中のストライクを見逃せば、世界の笑いものになる。もっと恐ろしいのは、日本は犯罪天国だと舐められることだ。

プライベートジェットを使えば、麻薬や違法ドラッグを日本に持ち込み放題。日本の優秀な印刷技術で作った偽札を持ち出し放題。日本は犯罪天国と見られかねない。


このコラムは、2020年1月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第925号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

N-WGNのリコール

電動パーキングブレーキのリコール

 ホンダは12月12日、電動パーキングブレーキの不具合で生産を停止している軽自動車『N-WGN』『N-WGNカスタム』のリコール(回収・無償修理)を国土交通省へ届け出た。
対象となるのは2019年7月4日~8月30日に製造された9437台。

不具合箇所は電動パーキングブレーキアクチュエータとスプリングパッケージの2つ。

電動パーキングブレーキアクチュエータについては、モータ配線接続部の圧着端子の加締めが不十分、またはモータのコンミテータおよびブラシの製造が不適切なため、走行振動でモータ内の接触抵抗が一時的に増加するとモータ回路断線検知信号が乱れてVSA(車両挙動安定化制御システム)が異常を検知し、故障と判定することがある。そのため、警告灯、警告表示が点灯して、駐車ブレーキが作動・解除できなくなるおそれがある。

(response.jpより)

 ホンダはこの市場不良で、新車の販売も延期している。
公表されている情報から問題を推測し問題を以下のように整理した。

  • 圧着(加締め)不良
  • モータ内部品(コンミンテータ、ブラシ)の製造不良により、制御システムが故障と判断し、駐車ブレーキの作動・解除ができなくなる。

圧着作業が正しくできたかどうか検査しようとすれば、圧着強度の測定(破壊検査)が必要となり全数検査はできない。正しい工具、作業員の技能(作業法及び目視検査)で品質を保証することになる。このような作業(作業者の技能に品質が依存する作業)工程を「特殊工程」という。

モータ内部品の製造問題は、精度を保証する工程能力(Cpk)が不足していたのだろう。これは製造設備の精度だけでなく、設計時の精度配分の考慮不足もありうる。

この問題を上流工程(設計時)で保証するためには、設計標準を持つべきだ。
もちろん具体的な公差を決定するような標準ではない。可動側、固定側の公差をどう分配するかを標準化する。設計が悪ければ、量産試作時に後戻りが発生。それを「経営判断」で量産開始をすると、工程内不良で悩むことになる。最悪顧客が使用開始した後の環境ファクターのばらつきで市場不良が発生する。

そして量産試作時に工程能力が足りていることを確認する。
手間がかかるようだが、この過程で手を抜くと大きな損失を招くことになる。

本件に戻って考察をすると「電動パーキングブレーキ」は本当に必要な機能なのだろうか?設計より前の商品企画時にどんな議論があったのか、そこから考え直さなければ、問題は形を変えて再発するだろう。


このコラムは、2020年1月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第934号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

頭と胸挟まれ死亡 立体駐車場の点検中 名古屋

 23日午前10時50分ごろ、名古屋市中村区名駅3丁目の立体駐車場「エムテックサンパーキング」で、設備点検をしていた愛知県蟹江町蟹江本町のビルメンテナンス会社員佐藤洋一さん(49)が自動車運搬用のエレベーターに頭と胸を挟まれ死亡した。中村署は、駐車場の男性アルバイト従業員(51)が過ってエレベーターを作動させたとみて、業務上過失致死の疑いもあるとみて調べている。

(asahi.comより)

 痛ましい事故が発生してしまった.
以前メンテナンス作業によって引き起こされた事故について解説をした.

今回はメンテナンス作業中の事故である.
装置は安全を考慮して設計してあるはずだが,メンテナンス作業中の安全までは考慮してないであろう.そもそも安全装置そのものも点検をしなければならないので,メンテナンス作業に万全の安全性を考慮して設計するということは不可能であろう.

従って現場での作業安全確保のための仕掛けを造りこんでおく必要がある.例えば操作盤に「メンテナンス作業中」などの札を下げ,安易にスイッチ操作しないようなポカ除けを準備しておく.メンテナンス中は操作スイッチにカバーを付けはずさないと操作できないようにする.
などの工夫をしなければならない.

あなたの工場ではメンテナンス中の作業安全をどのように確保されているだろうか.再度点検されることをお勧めする.


このコラムは、2008年2月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第22号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】