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問題解決と問題対処

 1月5日配信のメルマガ「因果関係と相関関係」「ジョブ理論」という書籍をご紹介した。

この書籍の中に日米の自動車工場の比較があった。
米国の自動車業界は、できる限り問題を修復しようとする。
日本の自動車業界は、問題が発生するプロセスを改善しようとする。

米国の自動車業界は、問題を管理しようとした。
問題発生に備え、予備の部品を用意する。問題が発生した製品の修理ラインを作る。生産ラインで発生する問題を管理することで、生産ラインを効率良く稼働する様に考えた。
つまり発生する問題に「対処」する方法を考えた。

一方日本の自動車業界は、生産ラインで発生する問題の原因を徹底的に学習し再発防止を繰り返した。
トヨタが修理工場をなくし、ラインを止めて修理する様にしたのは、問題の再発防止を促進するためだ。生産ラインを改善すれば、生産ラインは高効率で生産できる様になる。
これが問題に対する「解決」だ。

「対処」は問題に対する一時しのぎ。
「解決」は問題の根絶。
と考えていただければわかりやすいかもしれない。

もう一つ例を示そう。

設備点検でネジの緩みを見つけた時に増し締めするのは「問題対処」
設備点検でネジの緩みを見つけた時に原因分析をして対策するのが「問題解決」

問題対処の方が簡単にできる。問題解決には時間がかかることもある。
目先の効率にとらわれ問題対処ばかりしていれば、本当の効率改善は不可能だ。


このコラムは、2018年1月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第619号に掲載した記事に加筆しました。

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問題解決の優劣

 問題に優劣なし、問題解決に優劣有り。
 問題に気付かぬは問題外。
 処置のみするは下。
 再発防止をするは中。
 未然防止をするのが上。

現場の改善指導をしていてこの標語を思いついた。
問題には影響の大小、重軽はある。リコールに発展する市場問題、工程内で発見出来る不良問題など、経営に与える影響の大きさは同じではない。従って問題に対する対応の優先順位や緊急度の違いはある。しかし問題そのものに優劣がある訳ではない。

問題に優劣はなくとも、問題解決には優劣がある。
問題解決を誤って倒産、と言う事例を挙げればきりがないだろう。

使用期限切れ材料で問題を起こした飲料会社は、問題解決を誤り倒産。
ゴキブリ混入問題を起こした食品会社は、工場・設備を作り直し清潔の見える化を徹底した。たった1件の問題にここまで対応し、消費者の信頼を回復。

この差は大きいが、違いは僅かだ。
問題発生時に世間(お客様)から逃れようとするか、真っ向から対応するかの違いだ。

問題解決の優劣を検討してみよう。

「問題に気付かぬは問題外」
 これは説明するまでもないだろう。
職場で発生しているヒヤリハット問題に気が付かず放置した結果、安全事故が発生する。
工程内で発生している慢性不良に気が付かず(麻痺して)放置、客先に流出、最悪市場まで流出。

「処置のみするは下」
 処置とは、発生した問題を正常に復帰させることをいう。次の様な例で理解出来るだろう。
設備から異音が発生。調査の結果扉を固定しているねじが緩んで、扉が設備の振動と共鳴し異音発生と原因が分かった。
ねじのまし締めをするのが処置。
なぜねじが緩んだのかを原因究明しないと問題解決は出来ない。

人為ミスに対し、ミスをした作業者に「注意」「再教育」「罰金」をするのが処置。
なぜ人為ミスが発生するのかを原因究明しないと問題解決は出来ない。

「再発防止をするは中」
 前述の例で言えば、再発防止とは次の様な対策となる。
なぜねじが緩んだ→ねじに振動がかかり続けた。なぜネジに振動がかかった→モータが振動した。なぜモータが振動した→モータのプーリーが偏心。
と解析の深度を深めれば、プーリーの偏心を修正する事が再発防止となる。

人為ミスも同様に解析し、やりにくい、分かりにくい、間違えやすいなど人為ミスが発生する原因を除去する事で再発防止となる。

再発防止の中でもランクが存在する。

  • 人の注意力に依存する対策(例えば目視検査)は下の下。
  • 検査で不良を除去するのは下。
  • 発生原因を除去する生産方法の改善(例えば治具の活用)は中。
  • 発生原因そのものを除去する(例えば設計変更)は上。

「未然防止をするのが上」
 未然防止とは、まだ発生しない問題に対し対策を実施する予防保全だ。
例えば次の様な問題に対する事前対策が未然防止対策だ。

  • 工程内で発生したヒヤリハット。
  • 設計、生産に於ける潜在不良。(FMEAが活用出来る)
  • 他社事例、異業種事例。

このコラムは、2017年6月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第533号に掲載した記事に加筆しました。

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続・問題解決の心得

 先週配信のメールマガジンで問題解決の心得について考えた。
「問題解決の心得」

先週はその事例になりそうな問題が発生したので、今週は続編として問題解決の心得について考えてみたい。

オフィスのネット接続に問題が発生した。
調べ物をする必要があり、検索サイトにアクセスした。検索サイトからの応答がなくアクセスできない。VPNを介してアクセスしようと考えたが、VPNも接続できない。こういうことは、中国の長城ファイアウォールの内側にいると、しばしばある(苦笑)

まずはWifiの管理画面を開いてみる。
ここですぐに原因がわかった。Wifiルーターが応答していない。
原因はわからないが、こういうことがしばしばありWifiルーターをリセットで対処していた。(固有技術はないが、経験的対処法がわかっている状態)

その結果Wifiの管理画面を開くことができた。
管理画面から、ISPのサーバに接続できていないことがわかった。
同様にISPにつながっているモデムもリセット。しかし復旧はしない。
ISPのサービス窓口に電話すると、こういう場合の問題点は次の3つだ、と指摘された。
1)ISPサーバへのログインIDが間違っている。
2)ISPサーバへのパスワードが間違っている。
3)モデムが壊れている。

当然1)と2)は問題ない。電話の向こうのサービス担当者は、モデムが壊れているから買い換えろという。

どうも納得できないが、既に7年も使っているモデムだ。そういうこともあろうと、近所の電気屋に行くことにした。サンプルとして使っているモデムを持参することにした。
モデムを持ち出す時に気がついた。モデムとWifiルーターを接続しているケーブルが抜けかかっていた。

ケーブルを挿し直して、問題は解決した。

問題解決をステップに分けると、以下の様になる。
1)問題の把握
2)解決課題の設定
3)問題発生の要因を列挙
4)要因から問題発生の原因を絞り込む
5)対策検討・実施
6)効果の確認
7)歯止め

今回の問題は、問題発生の要因列挙が不足していた、ということになる。
全ての要素を挙げて、可能性のある故障モードを全てあげる。
ISPのサーバ→電話回線→モデム→Wifiルーター→PC
それぞれに、ハード、ソフトの要因がありうる。
さらに一つの要素を掘り下げる。
例えばモデムならば、以下の要素があるはずだ。
・電源
・電話線(RJ11コネクタ)
・イーサネット線(RJ45コネクタ)
・モデム本体
それぞれに故障原因となる要因があるはずだ。
この様に全ての要素を分解して故障要因を挙げれば、漏れはなくなる。

ISPのサービス窓口担当者がこういう発想を持っていれば、もっと適切な対応ができただろう。

今回の原因は、私が粗忽にも過去の経験からいきなりWifiルータのリセットをした際にモデムのRJ45コネクタが外れかかってしまったことだ。次回から問題発生時の点検手順を変更しなければならない。


このコラムは、2017年7月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第540号に掲載した記事に加筆しました。

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問題解決の心得

 工程内不良の改善活動を指導していて、しばしば感じる事がある。
問題の原因を「経験」から判断し、決め打ちで対策を考える傾向がある様に感じる。

例えば。機械加工で寸法不良が多発する。その原因を加工設備の精度不足が原因と決め打ちし、その他の要因を考えない。対策として高価な加工設備を導入することになる。たいていの場合ここで改善活動は頓挫する。特に加工設備に関する固有技術がない場合はこういう傾向が強い。

しかし寸法不良が発生する要因は他にもある。
・加工原点がずれている。
・設備の使い方に問題がある。
・加工材料に問題がある。
・測定方法に問題がある。

まずは設備の加工精度を仕様書で確認するのが第一歩だろう。その上で、考えられる要因を一つずつ確認していく。
この様なアプローチが必要だと考えている。

今QCC活動を指導しているお客様で、設備不良による工程内不良の改善に取り組んでいるサークルがある。彼らは製品の加工法などに関しては固有技術がある。しかし設備内の電源故障が設備不良の大部分を占めている。電源に関する固有技術は残念ながらない。設備メーカも、電源は購入している。自ら設計する能力はない。

しかし電源に関する固有技術がないからと言って諦める訳には行かない。
故障のたびに電源メーカに修理を依頼する。しかしこれは現状復帰の処置だ。改善をしなければ、電源は再び故障する。いつ故障するか分からなければ、工程内不良を改善する事は出来ない。

まずは不良の現物を見る事だ。
今までは修理だけしていたので、不良現物の内部は見た事がない。不良現品の写真が残っていたので観察してみる。すると電源内の部品が破損しているのが分かる。
ではその部品が破損する原因は何か?
破損した部品(電解コンデンサ)の周辺を観察すると、プリント基板が変色し、銅箔の回路パターンが腐食している。電解コンデンサの寿命モードの故障と推定出来る。寿命モード故障に大きな影響を与えるのは、温度だ。ここまで分析が進めば温度が上昇する要因を検討すれば良い。
・周辺の環境温度が高い。
・部品自体が温度上昇している。

部品自体の温度上昇は、設計に依存する要因だ。電源に関する固有技術が必要となる。ここからはこの事実を元に電源メーカと原因追及を進めることになる。
原因追及を電源メーカだけに任せるのではなく、一緒に議論する。初めは何も分からないかも知れない。しかし「信頼性技術」はどんな製品にも共通する技術だ。固有技術がない分野であっても得られる知見は多い。電源を設計する事は出来なくても、どんな電源を選ぶべきかは分かるはずだ。

別の企業では、リチウム電池不良が多発しておりリチウム電池を供給しているメーカのエンジニアが、工程に貼り付いて選別・調整していた。しかし自社のエンジニアは現場にはいない。この企業の技術部門長には、自社のエンジニアも現場に貼り付ける様に指導した。リチウム電池や充電回路に関する固有技術はなくても、少なくともどんな電池を採用してはいけないかは分かる様になる。

私自身も前職時代に周辺装置を担当していた事がある。周辺装置に関する固有技術は社内にはない。周辺装置は全て購入品だ。しかし問題が発生するたびに購入先の品質エンジニア、設計エンジニアと一緒に原因分析、対策の検討に立ち会った。この経験が社内や自分自身への信頼性技術蓄積に貢献したと考えている。

上述のQCC活動に取り組んだサークルはとりあえず電源の環境温度を下げてみることにした。他の熱源から距離を置く、冷却ファンを設置する、などの対策を試している。即座に改善は出来ないかも知れない。しかし寿命モードの故障はアレニウスの法則に従って故障間隔は伸びるはずだ。これで一件落着とはならないかも知れない。設備メーカ、電源メーカとともに更に原因究明を深める事が必要だろう。これらの経験から得られた知見を蓄積する事により、設備導入時の選定基準を持つ事が出来る様になる。

実際には、上記の活動後設備故障は激減し、加工不良が発生したロットの損失金額(修復および再処理費用)は、年間で350万元程度節約できた。


このコラムは、2017年7月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第537号に掲載した記事に加筆しました。

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続・因果関係と相関関係

 先週のメルマガ「因果関係と相関関係」では、相関関係を因果関係と間違えてしまうと問題は解決しない、と書いた。当たり前のことだが、ではそうならないためにどうするか、という肝心な部分が抜けていた。

もう一度先週の事例で検証してみよう。

“アイスクリームの売り上げ高と森林火災はどちらも夏に増えるので相関関係 がある。しかしそれは因果関係ではない。”

森林火災が発生する(結果)→アイスクリームの売り上げが高いから(原因)これはどう考えても成立はしない。因果関係を逆から読んでみると分かり易い。“アイスクリームがたくさん売れると森林火災が発生する。”これは論理的に成り立たない。

アイスクリームの売り上げが高い時に森林火災が多い。
森林火災が多い時にアイスクリームの売り上げが高い。
因果関係を逆にしても両者ともに成り立つ。
つまり相関関係はあるが、因果関係はないということだ。

不良発生(結果)→新人が作業したから(原因)
因果関係を逆から読むと、新人が作業をすると不良が発生する。一見因果関係のように見える。しかし新人が作業しても不良が発生しない場合もある。原因と結果を逆から読んだ時に原因→結果として成り立たない。

新人作業と不良発生の因果関係の間に、作業がやりにくい、作業に熟練か必要などの要因が隠れているから、相関関係はあるが直接の因果関係はない。

相関関係と因果関係を見分けるのは、相関関係は逆にしても成り立つ。因果関係は逆にすると矛盾する。と覚えておくと良いだろう。

しかし相関関係があるということは、因果関係が潜んでいる可能性がある。

森林火災とアイスクリームの例で言えば、
夏になると高温になる→アイスクリームが売れる。
夏になると高温低湿度になる→森林火災が起きやすくなる。
気候は制御できないかもしれないが、夏に火災予防活動をすることはできる。

新人作業と不良発生の例で言えば、
作業しにくい→作業不良が発生し易い→不良が発生する
新人→作業に不慣れ→作業不良が発生し易い→不良が発生する
つまり「作業しにくい」「作業に不慣れ」を解決すれば不良を減らせる。


このコラムは、2018年1月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第614号に掲載した記事です。

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因果関係と相関関係

 問題解決のための必須条件は正しい原因分析だ。一時的に問題が解決した様に見えても、正しい原因に対策出来ていなければ、問題は必ず再発する。

例えば「作業ミス発生」という問題の原因を調査した時に、作業ミスをした作業員の勤続年数を調査して見た。明らかに勤続年数と作業ミス件数に負の相関が見られる。特に1年未満の作業員の作業ミス件数が多いことがわかった。
従って作業ミスの原因は新人が作業をしたことにある。
ちゃんとデータにより確認をして、正しい分析をした様に見える。しかしこの調査で明らかになったことは、因果関係ではなく相関関係だ。

原因は「〇〇作業がやりにくい」「〇〇作業に習熟度が必要」となるはずだ。
そして対策は〇〇作業の改善となる。新人作業が原因となれば、新人には作業させない、とか教育訓練という非現実的または効果の期待できない対策となる。「〇〇作業がやりにくい」と原因が特定できれば、作業改善ができなくとも具体的な教育訓練方法を改善案とできるはずだ。

今「ジョブ理論」という書籍を読んでいるが、この書籍にもわかりやすい例で因果関係と相関関係の取り違いが紹介してあった。

アイスクリームの売り上げ高と森林火災はどちらも夏に増えるので相関関係がある。しかしそれは因果関係ではない。「ハーゲンダッツを買ったからといって誰もモンタナ州の森に火をつけたりはしない」

参考:「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」クレイトン・クリステンセン著


このコラムは、2018年1月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第611号に掲載した記事です。

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不良原因分析

 顧客クレームや工程内不良に対する原因分析、再発防止対策検討は日常的に行われていると思う。顧客クレームは無い方が良いが、工程内不良が無いと改善のチャンスが無くなる。工程内不良の処置(修復、やり直し、在庫の全数再検査)に追いまくられ、改善のチャンスを逃してしまってはもったいない。
本当の原因を特定する事により、有効な再発防止が可能になる。原因分析で手を抜くと、有効な再発防止が出来ずに「慢性不具合」となる。

原因分析のコツについて書いてみたい。

我々の様な凡人が天才と同水準の仕事をするためには、一人ではなく複数で智慧を出し合う。そのための手法がQC手法に代表される管理技術だ。
魚骨図が原因分析手法としてよく活用される。
しかし魚骨図は、原因分析手法というより原因となりうる要因を沢山列挙する手法と言った方が良い。何も無い所から要因を列挙するより、中骨として、例えば人、物、設備、方法の4Mで分類すると、要因を発想しやすくなる。
他人の発想を図にまとめて可視化する事により、更に新しい発想が出る。
このようにして列挙した要因が、真の原因かどうか検証する。それが原因分析のプロセスだ。

問題の要因を発生原因と流出原因に分けて、再発防止対策を考えるとよい。
発生原因が根本的な原因であり、流出原因は根本問題を見逃してしまう原因だ。

例えば、製品内に金属異物があり絶縁不良発生、という問題を考えてみよう。
金属異物が発生する、というのが根本問題だ。絶縁検査で不良を発見しているので流出問題は無い、と考えてはいけない。
発生した金属異物を自工程で発見出来ない、除去出来ない、というのが流出だ。

根本原因、流出原因に対してそれぞれ再発防止対策を考える。
この時に重要な事は、根本原因を根絶させる事が出来れば、流出対策は不要だという事だ。流出対策に重きを置いている再発防止対策をしばしば見かける。

流出防止対策は製品に付加価値を与えない。前出の例で言えば、加工時に発生した金属異物を除去するという作業や、耐圧検査は付加価値を生んでいない。品質を保証するための付帯作業だ。可能であれば削除、出来る限り短縮したい作業だ。しかし全数検査を2度やる等という対策をしばしば見る。
根本原因対策に重きを置けば、従来行っていた付加価値を生まない検査作業を削減出来る事すらある。


このコラムは、2016年12月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第507号に掲載した記事に加筆したものです。

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問題解決の第一歩・認識

 先週のコラムでは、問題解決の第一歩は問題を正しく定義する事だ、と書かせていただいた。

完成品倉庫が狭いのが問題ではない。問題を正しく定義すれば、出荷量より多く生産する事である。

完成品倉庫が狭いという「現象」は簡単に認識出来る。
従って、完成品倉庫が狭いという解決課題を定義しがちだ。解決課題が間違っていれば、問題は解決しない。

しかし実際の生産現場では、問題を認識出来ていない事が多い。
認識は出来ていても、「こんなモノだ」という現実受け入れ型の「諦め」が改善のチャンスをつぶすことになる。

例えば、エンジンのクランクシャフトを鍛造加工して、要求精度に仕上げる。
この方法では歩留まりは70%ほどだそうだ。従って後工程で切削加工をする。これが「諦め」だ。

歩留まり70%を受け入れてしまうと、削り代(けずりしろ)をみこんで鍛造加工し切削加工を追加することになる。材料も追加加工もムダだ。

歩留まり70%を諦めなければ、方法を考えることになる。
鍛造加工前に、たたいてあらかた形を作る。これだけで歩留まりは90%になったそうだ。

ダイキャスト成形をする時は、金型を交換して数ショットはきちんとした製品が出来ない。これを「試し打ち」として諦めてしまえば、改善はない。
試し打ちがムダであるという認識を持つことにより、改善が出来る。

試し打ちがムダだという認識を持てば、なぜ金型交換後のショットがうまく行かないか考える。金型の温度が上がっていないから、材料が金型の隅まで回らない。では金型の温度を上げれば良いだけだ。
金型の温度を上げる方法はいくらでも思いつくはずだ。


このコラムは、2012年8月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第270号に掲載した記事に加筆したものです。

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問題解決の第一歩

 問題解決の手法は沢山ある。
問題解決の一番重要なステップは、まず始めに課題を正しく定義する事だ。

例えば、
「受注が多くて出荷が間に合わない」というのは課題ではなく、現象だ。
正しい課題は「生産能力がなりない」ということだ。

同様な例を挙げると、
「製品倉庫が狭い」というのは課題ではなく「出荷より沢山生産してしまう」
ことが課題だ。

出荷不良を「検査をしているのに不良が顧客に流出する」と課題定義してしまうと「検査を強化する」という不毛な解決案が出て来る。
正しい課題は「工程内で不良が発生する」という事であり、これに対策をすれば「工程内不良をなくす」という本質解決を目指すことになる。
もちろん一足飛びに、工程内不良をなくす事はなかなか難しい。暫定的に検査強化をする事もあるだろう。しかしあくまでも「暫定対策」であることを明確にしておかなければならない。

問題の表層を見入るのではなく、本質を見て課題を定義しなければならない。

もう一つ重要なのは、課題を「自責」で定義する事だ。

上述の「出荷が間に合わない」を、顧客の注文が多い(他責)とすれば自分たちでは解決が出来ない。生産能力不足(自責)と課題を定義するから改善が出来る。

極端な例を挙げたが、意外とこの落とし穴にはまっている例を良く見る。

従業員の能力が足りないから、単純作業だけさせる。というのは、課題を従業員の問題(他責)として定義しているから、効果的な問題解決が出来ない。
従業員の育成が不足している(自責)と課題を定義すれば、いくつも解決案が出て来るはずだ。

「他責」は愚痴やあきらめしか生まない。
「自責」が工夫と改善を生む。


このコラムは、2012年8月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第269号に掲載した記事に加筆したものです。

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