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精益生産

 精益生産とは中国語でリーンプロダクションのことだ.
マサチューセッツ工科大学がトヨタ生産方式を研究してまとめたのが,リーンプロダクションなので,TPS(トヨタ生産方式)とは親戚関係だ.

年末に企業研修を提供しているパートナーから相談を受けた.バネ製造の中国民営企業に現場リーダ研修を提案したが,精益生産に関する研修を追加して欲しいと,顧客から要求を受けているとのことだ.

バネの生産と言うと,各生産工程をバッチ処理生産をする生産方式が,主流と理解している.その工場の現場リーダにどのように精益生産を教えたらよいか,という相談だ.

私もアイディアはない.
そこで仕事納めの日に工場を訪問し,現場を確認させていただいた.
200余りの顧客に,1万種以上の製品を生産している.生産方式は典型的な工程単位のバッチ生産である.現場は想像以上にきちんとしていた.経営者によると,精益生産により更なる改善をしたいと言う.

既に,「後引き生産方式」を取り入れたと言っている.しかし彼らは,
「受注生産」のことを「後引き生産(Pull Production)」
「計画生産」のことを「押し込み生産(Push Production)」
と理解しているようだ.

彼らのモノ造りには,今の時点では精益生産はハードルが高すぎると判断した.
現場のリーダに精益生産の知識を与えても,それを自工程に応用する能力にはならないだろう.

経営者の真の要求は,現場リーダの問題発見能力・問題解決能力の向上だ.
最近QCC活動を導入し,11サークルが活動を始めたという.

この顧客には,QCC活動の実践指導により,問題発見能力・問題解決能力の向上を目指す研修を提案した.会議室に集合してQCC手法を教える知識研修ではない.現場の問題を解決する実践を通して知識を能力に変換する研修だ.実践訓練を受けたリーダは,職場でQCサークルのリーダとして活躍する.その連鎖で,組織内に改善文化が出来上がるはずだ.


このコラムは、2011年1月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第186号に掲載した記事です。

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中国人とQCC活動

 今年最後の仕事は,お客様の工場に泊まり込んで,QCC活動の指導だ.
初めてQCCをやる人たちなので,QCストーリィを1ステップずつ教え,実際の現場での問題を課題にして活動を進めている.

製造部門から各職場のリーダ,設計部門のリーダ,品証部のリーダを選抜し,製造担当の副総経理も交えてやっている.
サークルの名前を決める所はすんなり決まった.
テーマ選定からケンケンガクガクの盛り上がりとなった.職場の問題を列挙する所から白熱し,37個の問題が出て来た.当分活動テーマには困らないだろう(笑)

その中からテーマとして一つ選ぶ際に,マトリックス図法を使って,重要度,緊急度,効果などに評点を入れてもらったが,全部◎か,QCCで取り上げずに普段の活動で解決する,の二通りとなってしまった(笑)

これじゃ駄目だとコメントしても,全然話を聞いていない(笑)
皆自分の主張をそれぞれに言い合って,収拾がつかなくなる.先が思いやられたが,意外にもすんなり全員一致でテーマが決まる.どうも,普段の苦労や不満が爆発して,白熱した様だ.

テーマはなんと「龍頭換面」となった(笑)
これでは何の事か分からないので,サブテーマを付けてもらうことにした.

現状把握をして,活動の目標を決定しようとしたが,不良のデータがない.不良率を聞いても,全数問題があると言う.
現場を見を見たら一目瞭然だった.私にいわせれば,全部設計問題だ.それを製造部が,何とか苦労して製品に作り上げている,という状況の様だ.更に,モノ造りの精度がきちんと出ていないので,全部現物合わせで生産している,というのが実情だ.
中国企業を相手にしていると,このくらいの事では驚かなくなる(笑)

これでは現状把握が出来ないので,ブレーンストーミングで問題を掘り下げ,KJ法でまとめる作戦を取った.
まずブレーンストーミングが分からない.一人ずつ紙に書いて,それを「投票」し一番多い問題点から着手しようとする(苦笑)彼らはチームで考えるのが苦手の様だ.
何とか誘導し,一番問題のある部位に着目する事した.取り上げた問題は,設計,製造,仕入れ先の問題が絡み合っており,改善の難易度が相当高そうだ.

初めての活動で,こんなに難易度を上げても良いか迷ったが,メンバーが異常に盛り上がっており,これで行くことにした.原因分析と対策の検討に,少し関与しヒントを出すことになるだろう.

目標は,現状3人・8時間の作業を2人・4時間に改善,となった十分挑戦的目標だ.当初彼らが設定したのは,2人・1時間.さすがにこの改善目標は思いとどまってもらった(笑)
久々に面白いコンサル仕事になりそうだ(笑)


このコラムは、2012年12月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第290号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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中国的QCサークル事情

 最近中国でQCサークル活動を指導している中国人と知り合った.中国の経営者は,日本的モノ造りの優位性を信じており,QCサークル活動に対しても少なからぬ期待を持っているようだ.

中国では,既に製造業以外でもQCサークル活動が行われている.
上述の中国人QCサークル指導者は中国の通信系会社(携帯電話キャリア)でもQCサークル活動の指導をしている.

ところで,本家であるはずの日系中国工場のQCサークル活動状況は,あまりぱっとしない.大手企業はQCサークル活動を導入しており,グループ会社間で交流会を開催しているところもある.
しかし中堅・中小の工場ではQCサークル活動を導入しているところは多くはない.

QCサークル活動は,活動そのものによる改善効果だけではなく,チームワーク,仕事を通した求心力の醸成,問題解決能力,プレゼンテーション能力などの開発が期待できる.

中堅・中小企業の場合,適切な指導者が社内にいないなどの理由があり,QCサークル活動の挿入に踏み切れない.また外部から指導者を招聘すれば,費用の負担が大きくなる.などの理由により,なかなかQCサークル活動が活性化しないようだ.

また日本でQCサークル活動が停滞しているのも一つの要因だろう.
しかし中国では,リーダクラス育成のためのOJT効果を期待してQCサークル活動を再生できると考えている.

異業種交流の形をとって,QCサークル活動を導入するなどの方法を考えれば,中堅・中小企業にも比較的容易に導入可能だと思う.

日本で生まれ,日本の経済発展に貢献したQCサークル活動が,中国企業だけで活性化しているのを見るのは大変残念だ.

こちらの記事もご参照ください.「中国的QCC事情」


このコラムは、2010年10月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第154号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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QCサークル活動

 日本でQCサークル活動をしておられた方に,QCサークル活動にネガティブな印象を持たれている方が多い様な気がする.投入した工数に対して成果が少ないと感じるのであろう.「バブル崩壊」前後にQCサークル活動が停滞し始めたという印象を持っている.活動が停滞し,活動件数がノルマとなると,成果の出る活動が少なくなる.そしてさらに活動が停滞する.一種の悪循環だ.
しかし日本のモノ造りが力を付けたのは,QCサークル活動に代表される現場の創意工夫があったからだ.

私は前職時代,開発設計部,品質保証部で仕事をして来た.全社にQC活動推進組織があるが,各事業部の品質保証部の責任者は,QC推進組織にも名前が入っているので,当然ネガティブな感覚など持ってはいられない(笑)
設計部門と営業部門が主体のファブレス事業部内で,いかにしてQCサークル活動を活性化するか考える側だった.

推進側に回って,いかにして技術者のやる気を上げるかに苦心した.
その時に感じたのは,「草の根活動」なんだから,サークルの自主性に任せるという考え方の上司の元で活動しているサークルの活性度が低かった.自主性に任せるとは聞こえが良いが,放置状態だ.活動件数がノルマ化しては活発な活動は期待出来ない.

中国でもQCサークル活動に取り組んでいる企業は多くある.
中国企業で,QCサークル活動を指導したこともある.最後の成果発表には,経営者も参加して,大いに盛り上がった.
日系企業のお客様は,日本本社の発表会に代表を送り込み,金賞を取って来た.更に顧客企業が開催する,ベンダーを含めた発表会でも第二位を獲得した.

QCサークルという名前を使っていなくても,プロジェクト活動などの名前で同様な活動をして成果を出している企業も多い.
QCサークル活動が停滞している企業との違いは,テーマ選定や目標設定に上司が積極的に関わっているところだろう.

活動による成果,メンバーの成長,ノウハウの横展開・蓄積の効果があり,一石三鳥だ.
こういう状態になればQCサークル活動に対する経営者の意欲も高まるはずだ.

中国・華南では広東省質量協会,広東省科学諮詢服務中心主催のQCサークル活動成果発表会が毎年開催されている.残念ながら,私が考えている様な発表会・交流会にはなっていない.60余りのサークルが,2日間ぶっ通しで発表を行う.質疑応答や講評も無しだ.

ならば自分でもっと意義のあるQCサークル成果発表会を開催しようと,野望(笑)を持っている.

まずは,QCサークル活動の底上げをするために「改善道場」を始める事にした.6社前後からチームを派遣してもらい,合同で各1テーマ活動を完結してもらう.
異業種のサークルも一緒に活動するので,刺激になるはずだ.

その次のステップとして,QCサークル活動の成果を発表し合う交流会を開催したいと考えている.
この交流会で,異業種のQCサークルとの交流を通して,更に意欲を高める.
大手の企業は,日本本社のQC大会に優秀サークルを派遣する事ができるが,中堅,中小企業も同様な効果をもっと手軽に得られればと考えている.


このコラムは、2012年9月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第274号に掲載した記事に加筆修正したものです。

6年前の「QCC道場」の構想(当時は改善道場という名前で考えていた様です)が実現しています。

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QCC活動の役割分担

 QCCによる改善活動と,日常の改善活動には役割分担があってよいはずだ.大掛かりな改善や,複数の部門の協力がなければ達成できないような改善は複数部門合同のQCC活動に任せるのが良い.

指導先で「顧客提供サンプルの合格率アップ」という活動をしているサークルがあった.事務機器業界の顧客には,サンプル提出後一発合格しているのに,新規業界の顧客向けサンプルは,合格率が低いという.

この手の問題は,顧客の要求仕様を把握する営業,その要求仕様を図面に落とす設計,サンプルを製作する生産技・製造,品質を確認する品証の協力がなければならない.
したがって複数部門合同のQCC活動に適したテーマと考えていた.

しかし活動内容の発表を聞いて考え直した.
今まで不合格となった試作サンプルは3件しかないということだ.
ならば,QCC活動でまとめて対策を検討するまでもない.その都度不良の原因調査と再発防止対策を検討する方が効率が良い.それがきちんと回る仕組みを作ればよいのだ.

例えば,サンプルを出荷する前に,営業,設計,生産技,製造,品証で出荷判定会議をする.サンプルが不合格となったら,このメンバーで原因調査,再発防止をきちんと実施する.

QCC活動では「歯止め」を行う.不具合の再発防止,水平展開,未然防止などをさして「歯止め」といっている.

例えば仕様の確認不足でサンプル不合格となった場合,「仕様確認チェックシート」などを作り仕様確認作業を標準化することである.しかし一番大きな歯止めは,前述した出荷判定会議である.

サンプル不合格の原因は,仕様の未確認だけではない.
製造の問題,治具の問題,測定方法などいろいろな問題があるはずである.それらの問題が出てくるたびに,問題解決の行動を起こすのではない.問題が発生したら自動的にアクションがとられる仕組みを準備しておくのだ.

何をすれば良いかわかっている改善活動は、QCC活動ではなくすぐに改善すべきだ。


このコラムは、2011年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第210号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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第二期QCC道場終了

第二期QCC道場は、3月9日合同成果発表会で終了しました。

QCC道場に参加したメンバーに感想をいただいています。

  • 第1期に参加した後、参加メンバー一人一人がチームリーダとなりQCC活動を社内展開しました。社内の改善風土が高まっています。
  • 活動を通して有形無形の効果がありました。品質改善、生産性向上の金額に換算できる有形効果の他に、メンバーの品質意識、改善意欲が高まりました。
  • 第1期、第2期の活動を通して、QCC活動のレベルが上がり、品質、生産効率、納期の改善で会社に貢献できました。今後もQCC活動を継続します。
  • QCC活動で会社に大きな貢献ができました。全ての会社にも効果があると思います。

またメンバーを送り出した経営幹部の方からもコメントをいただきました。

  • メンバーに改善の楽しさを味わって欲しくQCC道場に参加させました。
  • データに基づき考える力、自分の活動をQCストーリィに沿って他人に伝える力を身につけてほしい。
  • 問題解決能力と、問題発見能力を身につけるいい機会だと思った。
  • QCC活動により、現場の品質意識、改善意識を高める事が出来ると思いました。
  • 現場の自主的な改善能力が不足しており、日本人赴任者が苦労している。今回の成果を見てタイや日本国内の工場にもQCC活動を広めたい。

こういうご感想をいただいて、私たち自身もモチベーションが上がっています。
今回の活動では、問題の要因に対して統計的手法を活用して原因の特定をしたサークルもあります。参加いただいたサークルの成長が、私たちの報酬です。

4月から第三期QCC道場を開始します。

QCC活動

 私は幾分ヘソが曲がっている様で(大いにヘソが曲がっていると言う知人は多いが)大学院を卒業後、従業員30人程度の会社に就職した。コンサル会社ではない。製造業だ。開発型のファブレス企業でもない。製造部門の作業員も入れて30人の立派な零細企業だ(笑)

そこから突然1部上場企業に転職した。最初に配属された製品開発部署の課員が30人以上いた。

零細企業では、今日の飯の種を設計する(設計期間1週間なんて当たり前)。しかし転職先では1年後、2年後に商品化する製品の設計をしている。大いに規模の格差を実感した。更にカルチャーショックを受けたのは「QCC活動」だ。実際の開発業務とは別のテーマをサークルごとに自由に取り組むことが出来るのに大いに感激した。長期にわたる開発プロジェクトの合間に、短期間で完結出来るテーマに取り組むことが、気分転換にもなっていた。

自分自身の意志とは逆に、社内のQCC活動が徐々に形骸化して行った。
そんな折に、品質部門を担当することになり、活動する側から指導する側に立場が変わり、どうすれば再び活発になるかを考えた。そのお陰で、事業部の代表サークルが社内の成果発表会で好成績を取れる様になった。

独立後、中国工場の指導でも顧客の現場リーダ、管理者でチームを作りQCC的に改善をするスタイルでやっている。

QCCスタイルで活動することにより、自主性や協調性を養う、改善手法や取り組み方を実体験を通して教えることができる。この方法により、契約期間が終了した後も、顧客社内で改善が継続する様になる。

日本のQCC活動と少し違っているのは、テーマを経営幹部とサークルメンバーが一緒に選定するところだ。ボトムアップでも、トップダウンでもなく、トップ・ボトム協調型と言えば良いだろうか。活動テーマ選定に関しては、サークルの自主性を損なわない様にトップが関与するスタイルだ。その後の活動はメンバーの自主活動となる。

これにより、経営層が狙いたい成果と、メンバーの自主性、改善能力向上を目指すことができる。


このコラムは、2015年6月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第430号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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