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粉じん引火か、幹部ら拘束 中国工場爆発、死者69人に

 中国江蘇省昆山市の経済開発区にある「中栄金属製品」の工場で2日朝に起きた爆発による死者は69人にのぼり、約190人が負傷した。工場で、これだけ大規模な惨事が起きることは中国でも珍しく、事態を重くみた習近平(シーチンピン)指導部は陣頭指揮のため、王勇・国務委員を現地に派遣した。

 国営新華社通信などによると、爆発は自動車のホイールの研磨をする作業場で起きた。工場内の粉じんに引火したのが原因とみられる。当局は同社の幹部ら5人の身柄を拘束し、安全管理などに問題がなかったか事情を聴いている。

 爆発があった工場に通じる道路は2日、警察官らが封鎖した。出入りができなくなったものの、多くの人たちが集まっていた。

 隣の工場の男性工員(24)は「大砲のような、ものすごく大きな音がした。働いている工場のガラスが割れた」。近くの工場に勤務する趙東舟さん(28)は、けが人を運ぶなど救援活動に参加。「全身がやけどで真っ黒になった人たちが次々と出てきた。焼けてしまって、服も身につけていなかった」と興奮気味に話した。

 姉が爆発のあった工場で働いているという許雨朋さん(32)はネットで事故を知って駆けつけた。「何が起きたのか、まったくわからない。姉の携帯電話もつながらない。心配でたまらない」と顔をゆがめた。

 ホームページなどによると、同社は1998年に設立された台湾企業。従業員は約450人で、アルミニウムのめっき加工などを手がけている。中国メディアは、同社が米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)に部品を供給していると伝えた。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、同開発区には昨年7月時点で、200社以上の日本企業のほか、約2千社の台湾企業などが入居している。

 日本企業の駐在員らでつくる昆山市日本人同郷会は、日本企業への被害は確認していないという。

(朝日新聞電子版より)

 爆発と言うと、引火性の高い物質が原因と考えがちだが、引火性の無い物質が爆発を起こすことがある。それが「粉塵爆発」だ。

引火性が全くない綿や小麦粉でも爆発は発生する。粉塵爆発の条件は、

  1. 空気中に一定の割合で微粒子粉塵が存在する。
  2. 発火エネルギー
  3. 酸素

この3点が揃うと粉塵爆発を起こす。

アルミニウムは引火性も燃焼性も無い。しかしアルミニウムの微粒子が空気中に一定の割合で存在すると、爆発を起こすことがある。

爆発の引き金となる発火エネルギーは、開閉器や電動機からのスパーク、稼働部分の摩擦熱が原因となる。また静電気放電によるスパークですら原因となる。

小さな発火エネルギーでも、局所的に空気中の浮遊微粒子が加熱され、そのエネルギーが近隣の浮遊微粒子に一気に連鎖し、爆発が起きる。

アルミ粉は、水と激しく反応し水素を放出する。放水消化をすると、二次爆発が発生する可能性もある。作業現場に消化スプリンクラーが設置されていると更に被害を拡大することになる。

綿や小麦粉の粉塵で爆発が起きた事例もある。
粉塵が発生する現場は注意が必要だ。

対策は、
清掃、排気により空気中の粉塵を減らす。
粉塵環境の電設設備は、防爆対応品とする。
静電気の発生を抑える。(アイオナイザーはコロナ放電によりイオンを作っているので、逆に発火エネルギーを与えることになるかもしれない)

あなたの工場は大丈夫だろうか?
アルミニウムと言うキーワードではなく、粉塵と言うキーワドに着目すれば、金属加工だけではなく、木工、紙、粉体製品にも、適用範囲が広がる。


このコラムは、2014年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第373号に掲載した記事です。

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爆発事故

愛知・豊田自動織機の工場で爆発、社員1人死亡

 7日午前5時10分ごろ、愛知県大府市江端町1丁目の豊田自動織機大府工場内で爆発があり、作業をしていた同市共和町の同社員高木甲子朗(こうしろう)さん(24)が全身にやけどを負って病院に運ばれたが、間もなく死亡した。爆発があった建物の屋根が曲がり、窓ガラス約50枚が吹き飛んだ。東海署は業務上過失致死の疑いで捜査している。

(asahi.comより)

壮絶な事故である.
報道によると作業現場は,

「製造ラインから流れてきたアルミ製のピストン部品(長さ12センチ、直径3センチ)を4本ずつ、液体の入ったステンレス製の水槽(長さ1メートル、奥行き60センチ、高さ40センチ)の中に入れ、不良品がないか調べる作業をしていた。
 液体は塩化ナトリウムを液化させたものとみられ、温度は530度に保たれていた」

530℃に加熱され液体となった塩化ナトリウムというのが想像を絶する.固体を加熱すれば液体となるというのは理屈としてわかっていても,食塩が液体になっている様子を想像する事が出来ない.

実際どんな作業なのかは想像ができないが,作業員の安全は十分に考慮されていたのだろうか?

高温の液体塩化ナトリウムの水槽内に何かを入れて,塩素と結合してしまうとナトリウムが単体になってしまう.ナトリウムが高温化で激しく反応したら大変なことになる.化学の知識がないのでこんな想像をしてしまうが,恐ろしく危険な作業をしていたのではないだろうか?

薬剤を水槽に投入後爆発があったと報道されている.
職場に不要な物(あってはならない物)がおいてあり,誤って投入してしまったのではないだろうか?

以前プラスチックケースを組立てる工程に防錆スプレーが置いてあったのを見て班長を叱った事がある.
こちらは作業員が危険になるようなことはないが,防錆スプレーをプラスチック材料にかけたりすると,「油脂クレージング割れ」が発生する.

プラスチックの油脂クレージング割れ

この不良は時間がかかって発生するので,工程の中では発見できない厄介な不良である.
もちろん防錆スプレーがおいてあるだけで,プラスチックに油脂が付着するはずはない.しかし作業員が誤ってこれを使う可能性はある.したがって防錆スプレーはプラスチック組立工程にはあってはならない物なのだ.

この報道の最後に,
「爆発があった工程は当面止まる見込みだが、同社は顧客への供給に影響はないとしている」
と付記されている.若い従業員を亡くしてしまったのに顧客への影響しかコメントはないのだろうかと悲しくなる.


このコラムは、2008年5月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第33号に掲載した記事を改題・修正しました。

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火災事故の本質

 先週先々週と思わぬ原因による、火災もしくは爆発事故についてコラムを書いた。

粉塵爆発
うどん屋火災

S様からこんなご感想をいただいた。

※S様のコメント

「火種がなければ火災は起きない」との思い込みがもたらした事故にも見えます。
「失敗」は水平展開することで「学び」になるのだと思いました。
「失敗に学んだのか」。社内でもよく聞く言葉ですが、「問題の本質は何か」まで掘り下げていかないと再発してしまうことを時々感じます。

コメントいただいた通り「本質」が重要だと思う。

火災事故の「本質」は
・酸素の存在
・可燃物の存在
・可燃物の発火温度以上の熱源(火種)
以上の3点が同じ場所、同じタイミングで揃うことだ。

そして酸素が十分に供給され続ければ、爆発事故になる。

「油の酸化熱」が火種となり、うどん屋火災事故が発生している。

1996年山梨厚生病院で発生した事故は、高気圧酸素治療装置内に使い捨てカイロを持ち込み爆発事故を起こした。
使い捨てカイロの発熱は鉄の酸化熱だ。高気圧酸素が満たされた治療装置内で酸化熱が火種となりアクリルの下着が、高気圧酸素下で爆発的に燃焼した事故だ。この事故の「本質」を社会が共有していれば、うどん屋の火災は発生していないはずだ。

1969年の飛行船ヒンデンブルク号爆発事故は静電気放電が火種となった。
水素を充填した飛行船はもはや見かけないが、静電気による事故は未だにある。

世の中の事故はほとんどが既知の原因による再発事故だ。

個別の事故原因・不良原因ではなく、事故の本質・不良の本質に目を向け対策をしなければならない。


このコラムは、2018年3月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第646号に掲載した記事です。

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