経済規模で世界一に上り詰める勢いの中国。だが、同国の経済関連統計の信頼性には相変わらず疑問が付きまとう。
事前予想と大きくかけ離れた中国の月次貿易統計に今年、エコノミストらが異議を唱えた。3週間ほど前には、景気の先行きを示す指標のひとつ、製造業購買担当者景気指数(PMI)で、中国国家統計局と金融機関の数字が正反対の内容を示した。さらに、インフレ率の計算方法についても疑問が投げ掛けられている。
中国の統計の信頼性については、ほかならぬ李克強首相がかつて疑問を呈したことがある。内部告発サイト「ウィキリークス」が10年に公開した米外交公電によると、今年3月に首相に就任した李氏は、遼寧省で党委書記を務めていた07年、当時の駐中米国大使に、中国の一部の統計は「人為的なもの」で信頼できないと話した。
米外交公電によれば、李氏は遼寧省の経済動向を判断する際に注目するのは電力消費、鉄道貨物取扱量、銀行融資の3つだけで、「他の統計、特に国内総生産(GDP)は参考にする程度だ」と笑いながら話したという。
■データ粉飾の強い動機
統計上では中国の経済規模は10年に日本を抜いて世界2位となった。アナリストらは、米国が100年以上守ってきた世界首位の座を中国に奪われるのも時間の問題だとみている。
北京大学の教授(財政学)で、米シンクタンク、カーネギー国際平和財団の上席研究員でもあるマイケル・ペティス氏は、中国が統計を集計するスピードについて、経済規模がはるかに小さいフランスよりもずっと速いと指摘。フランスの統計は中国の統計に比べて質がかなり高いとされている。
中国についてのコンサルタント会社の代表で、在中国日本大使館経済部参事官を務めた経歴も持つ津上俊哉氏によると、中国の地方政府トップの評価は主に実績に基づいて行われる。地方の経済をどの程度、発展させたかという点が最も重視され、発展の度合いの指標とされるのがGDPだという。津上氏は「地方政府のトップは昇進のため、GDPを増加させようと過酷な競争を繰り広げている。彼らは統計も扱うため、データ粉飾の強い動機が生まれる」と説明した。
■公式GDPは実態より大きい?
中国の地方政府が発表するGDPの合計が、国全体のGDPを大きく上回ることはよく知られている。
中国のGDP成長率は公式統計で11年が9.3%、12年が7.8%とされているが、英銀スタンダード・チャータードのエコノミスト、スティーブン・グリーン氏は今年発表したレポートの中で、同じ年の中国のGDP成長率をそれぞれ公式統計を大きく下回る7.2%、5.5%と算出した。
北京大学のHSBCビジネススクールで教えているクリストファー・ボールディング氏は今月発表した論文で、歪められた消費者物価指数(特に住宅関連)は、中国の経済規模を実態よりもかなり大きくみせていると論評した。
英ロンドンのキャピタル・エコノミクスの中国エコノミスト、ワン・チンウェイ氏はAFPに、「データが信頼できるものでなければ、どんな政策や改革の意思決定も間違ったものになるだろう」と述べた。
(AFP BBNewsより)
統計がウソであると言う論調には肯首し難いものがある。統計が不正確(もしくは恣意的に操作がある)、もしくは統計を使ってウソをつくと言うのはあり得るが、統計そのものがウソだと言う事はない。
中国の経済指標に対し、世界中のエコノミストから疑問符を投げかけられているのは、上記の統計データが不正確だ、と言う事だ。しかもその不正確さは恣意的なものがある、と言う疑惑をもたれている。(公開の秘密と言ってよいレベルだと思うが・笑)
中国の場合は、国家経営が事業部制の会社の様になっており、各省長は業績により評価され、中央からの考課・査定が決定する。
中国のソーシャル・クライマー(社会登山家?笑)たちは、人民の幸福よりは共産党内での自分の地位に関心がある。粉飾決算まがいの事が行われていても不思議ではなかろう。
日本でも少し大きな会社では、似た様な事が発生しているだろう。
もっとも本当にウソをついてしまえば、背任行為になるので、仕入れ先に支払い延期のお願いをしたりする。利益が出ている様に見えれば、来期の予算割当が増え、事業部の経営自由度が増える。こんな事情で、経営データが操作される。
その結果、期末を高収益で終わっても、期初の四半期は大赤字なんて事を繰り返すことになる。
李首相は、経営判断の指標として電力消費、鉄道貨物取扱量、銀行融資の3つを使っていたそうだ。最終的には、総収入から総支出を差し引いた利益で判断すれば良いのだが、たいていの場合タイムラグがあり、リアルタイムに判断する材料にするのは難しい。業績の「代用特性」として電力消費、鉄道貨物、銀行融資を使う、と言う事だ。
この代用特性が間違っていると、経営はあらぬ方向に行く。
例えば売上額を、業績の代用特性にすると、売り上げを確保するために値引きをする。売り易い商品を、原価率に関係なく拡販する。と言うことになる。
同様に、長期的指標、短期的指標の違いも重要だ。
短期売り上げを重視すれば、無理な販売をすることになり、顧客は疲弊する。そして、顧客の生涯売上額を減らすことになる。その結果,新規顧客開拓に多額の経費が必要となり、収益体質が悪くなる。
ところで、正しい統計データであっても、嘘をつく事は可能だ。
データのバラツキを無視してデータを恣意的に分析する、と言うのがよくある手口(笑)だ。
例えば、既に2,3年生産している製品でも工程内不良率は,生産のたびに変動する。特に問題が発生していなくても、毎回同じ工程内不良率と言う事はまれだ。平均工程内不良率が0.9%、今回生産の工程内不良率が0.8%だったとき、これがバラツキによるモノか、不良率が改善したのかは判断出来ない。統計的に検証する必要がある。
不良率の実力は0.9%ではなく、0.9%±○%と表現しなければならない。
テレビの視聴率も同様だ。
視聴率の算出は、全世帯で計測している訳ではない。モニターとなっている世帯に取り付けられた機械で計測する。いわゆるサンプリング調査だ。サンプル数は関東一円で300世帯だそうだ。従って発表される視聴率には大きな誤差が含まれることになる。
視聴率のコンマ何%の上下で一喜一憂する事は、意味がない。
このコラムは、2013年8月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第324号に掲載した記事です。
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