投稿者「master@QmHP」のアーカイブ

知的生産技術

 人にはそれぞれ能力の限界があり、分相応な成果しか出せない。
もっともらしい言葉だが、本当にそうだろうか。例えばアイディアの創出などは能力よりも技術ではなかろうか。

ブレインストーミングは、複数人で考えることにより一人ひとりの能力の合計プラスアルファの成果を出すことができる。また新QC七つ道具などにより、創出したアイディアを整理整頓して具体的な施策に落とし込むのも技術の助けによるものと言えるだろう。

天才に対して凡人が太刀打ちできないとしても、チームで適切な技術を使えば天才を超えるアイディアを創出することができるかもしれない。

一人でも同様にできるだろう。一人でブレインストーミングはできない。一人の場合はブレインダンプ(頭の中にあるものを全て吐き出すこと)し、ポストイットに書き出す。これを大きな模造紙、またはホワイトボード上に新QC七つ道具を駆使してアイディアを煮詰めてゆく。

当然複数人でやる方がメンバー間の交互作用の分だけメリットがある。しかし一人の方が良い点が一つだけある。PCやタブレット端末を活用できる点だ。画面は模造紙やホワイトボードより小さいが、拡大縮小で画面を大きく使える。新QC七つ道具の活用に向いているノートアプリも多くある。

ポストイット+模造紙を超える効果があるように思う。
しかしチームでアイディアを出すときはポストイット+模造紙の方がやり易いだろう。


このコラムは、2020年9月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1038号に掲載した記事です。

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天才と凡才

 人の能力は三段階に分かれるという。

  • 言語化されていなくてもできてしまう
  • 言語化され教えて貰えばできる
  • 言語化され教えてもらってもできない

※出展を忘れてしまったが「ラクをしないと成果は出ない」日垣隆著だと思う。

1が天才、2が凡才(凡庸な人ではなく普通の人)3は愚才という分類で良かろう。

天才は何でも楽々できてしまう人ではない(と凡人の私は想像する)。
他人がうまくできていることを言葉を通さず理解できる。それを努力を通して自分のものにできる人を天才というのだろう。つまり暗黙知をそのまま理解し体現できる人。

人から教えられることは言語化され形式知となった事柄だ。形式知を与えれば努力を通して自分の能力とできる。このレベルが凡才となる。凡才は天才よりランクが一つ下がるように思えるが、必ずしもそうではない(と凡才の私は思慮する)。
なぜならば、天才は暗黙知をそのまま自分の暗黙知としてしまうため、他人に教えることができない。一方凡才は暗黙知→言語化のプロセスで形式知化しているので他人教えることができる。例えば超一流のスポーツ選手が超一流のコーチにはならないのと同じだ。

稀に天才で教え上手がいるかもしれないが、我々凡才が天才に勝るところは後進を育成するとことにある(と凡才の私は確信する)。

凡才万歳である。

こちら↓もどうぞ
「天才と凡人の違い」


このコラムは、2021年1月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1085号に掲載した記事です。

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天才と凡人の違い

 天才と凡人というと少し大袈裟だが、仕事ができる人と普通の人程度の差と考えていただきたい。

例えば改善のアイディアを考えている場合で比較してみよう。
天才:101個目に偉大なアイディアが出るのを知っている。
   →天才はアイディアを量産する
凡人:1個目から偉大なアイディアが出ないのを恐れている。
   →凡人はこれもダメ、あれもダメと最初の1個のアイディアが出ない

天才:たくさん失敗することがうまくいくコツと知っている。
   →何度も試してうまくいく方法を見つける。
凡人:失敗を恐れてうまくいく方法を考え続ける。
   →何も成果が出ない。

天才:失敗したアイディアを自慢する。
   →周りからアイディアを提供される。
凡人:失敗したアイディアを隠す。
   →誰もアドバイスできない。

天才:できる方法を実行して証明する。
   →すぐ結果が出る。
凡人:できる方法を探して説明する。
   →説明だけなので結果は出ない。

天才:できない理由を覆すのに燃える。
   →当然結果につながる。
凡人:できない理由を説明するのが得意。
   →できない理由を説明しても結果は出ない。

私たちが実践しているQCC道場では、メンバーのブレインストーミングで活動テーマを決めたり、原因分析、改善対策のアイディア出しを行います。
「天才」がメンバーをリードしているサークルは問題ありませんが、「凡人」が仕切っているサークルは少しだけ我々が介入する必要があります。


このコラムは、2021年9月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1194号に掲載した記事です。

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孝とは

yóuwènxiàoyuē:“jīnzhīxiàozhěshìwèinéngyǎngzhìquǎnjiēnéngyǒuyǎngjìngbié。”

《论语》为政第二-7

素読文:

ゆうこうう。いわく:“いまこうは、やしなうをう。けんいたるまで、みなやしなうことり。けいせずんばなにもっわかたんや。”

解釈:

子游が孝とは何かを孔子に問うた。
孔子曰く:“最近では、親を養うことが孝だと言われている。しかし犬や馬でも養っている。これを孝とは言わぬ。尊敬の念がなければ孝とは言えない。”

不満と不安

 誰もが、生活上であれ仕事上であれ不満と不安を持っているものだ。
太っているから女性(男性)にモテない、このままいくと結婚できないかも。
こういう不満や不安は放置しておいても、何も解決しない。放置しておけばむしろ不満・不安は増長する。

仕事も同様だ。生産リードタイムが長い。このままでは顧客納期が守れない。顧客が流出し、売り上げが減少するかもしれない。これも同様な「不満と不安問題」だ。この不安と不満も放置しておいても、何も解決しない。むしろ増長する。

どちらの「不満・不安問題」も行動を起こさなければ解消はしない。

太っているならば、食事制限をする、運動をするなどの行動を起こさねば現状は変わらず、不安は解消しない。
仕事もリードタイム短縮の行動を起こさねば不安は解消されない。

そう考えれば「不満と不安」は具体的な行動を起こす起爆剤と言えるだろう。逆に言えば、不満も不安もない人(会社)は成長しない、ということだ。

したがって不満を不安に感じるのではなく、不満を成長の糧とすれば不安ではなく、成長が手に入るはずだ。


このコラムは、2021年10月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1196号に掲載した記事です。

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失敗から学ぶ:知床・観光船事故

出航可否、基準は 法に基づく規程、業者作成「縛りにならず」

知床・観光船事故

 北海道斜里町の知床半島沖で消息を絶った観光船「KAZU1(カズワン)」荒天が予想され、漁船も出航を控えるなかで、乗員・乗客26人を乗せて港を出た。出航の判断や安全確保にはどのようなルールがあるのか。

(略)

 出航できるかどうかの基準は、各事業者が海上運送法に基づいて作成する「安全管理規程」で定めている。この規程は、安全確保のためのルールを事業者自身が決め、国土交通省に届け出るものだ。違反すれば罰金刑などの罰則がある。

(略)

 こうした取り決めについて、船会社に法律的なアドバイスをする海事代理士の春山勝さんは「あってないような基準」と指摘する。規程を作成する際の実態として、「台風などで絶対に運航できないぐらいの基準をつくり、縛りにならないようにすることが多い」と内情を明かす。

 福井県の東尋坊観光遊覧船は、岩場が多いため、海から陸に向かう風の風速が10メートル以上、それ以外は13メートル以上なら出航しないと定めている。波の高さ0.8メートル以上、視程300メートル以下でも運航をやめる。

(朝日新聞より)

 事故発生後、海底に沈む観光船は発見できたが、人命の救助は絶望的な状況だ。

板子一枚下は地獄、という格言があるが海上での事故には大きな犠牲が伴う事が多いだろう。航空機の場合も同様だが、運行基準や事故原因の調査が格段に違う。航空機は自動車より安全だ。

船舶の事故を調べてみると、2012年から2021年の十年間で遊漁船の死傷事故は7件あった。他船の走行波によるもの、乗船者の不注意による転落が原因であり天候による事故はない。

カズワンの事故は、天候に対する判断ミスと考えるべきだろう。法による縛りがなければ何をしてもいいというわけではない。どんな事業も最優先は安全だ。司法がどう判断するのかはわからないが、このような姿勢の企業は世間が許さないだろう。


このコラムは、2022年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1291号に掲載した記事です。

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異業種からの気づき

 ベンチマーキングはコンピュータの処理速度を比較するテスト、という意味で使われ始めたと認識している。いつの頃からか、企業のパフォーマンス比較という意味で使わられるようになった。ベンチマーキングにより優れた企業を見つけ、それをベストプラクティスする。つまり、優れた企業を見つけたらその真似をする。私は前職の社長が、ジャック・ウェルチとの懇談で聞いたと教えられた。

大野耐一が米国スーパーマケットの商品陳列をベンチマーキングしJIT、後引き生産方式を考え出したのは有名な話だ。

私たちはベンチマーキングをもっと直接的にTMP(トータル・マル・パクリ)と呼んでいる(笑)
マルパクリではその本質・真髄は解らないだろうと反論される方も多い。
しかし物事の本質・真髄とは形から入って極めるものだと、私は理解している。茶道、花道、能、歌舞伎などの伝統芸能は、理論から勉強してその真髄を学ぶのではなく、まず形から入り真髄を極める。

TMPを実践し、それが習慣となれば真髄が身についたことになると考えている。5S、KY、改善活動など理論を理解して何も起こらない。実践し、それが習慣になるまで継続して初めて成果が得られる。まずは実践してみることだ。

ただし、同業者からのTMPは推奨していない。なぜなら業界トップ同業者をTMPしてもその企業を超えることはできないからだ。異業種からのTMPならば同業内でトップになる可能性がある。


このコラムは、2013年1月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第291号に掲載した記事です。

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継続は力か

 「継続は力か」というタイトルにした。「継続は力なり」と断定調ではない。どちらかというと「継続は力かもしれない」「継続すれば力になるといいなぁ」という程度の話だ。

実はこのメルマガは2007年10月1日に第一号を配信している。今週の配信で15年目に突入した。
たまに読者様からご感想のメールをいただくこともある。そういう時は継続の意欲が盛り上がるが、普段は継続意欲というよりは、習慣になっている感じだ。

金曜日あたりからソワソワしだし、土日で次週分を書き上げている。
次回配信で1200号となる。536号までは1回の配信にコラムを3本書いていた。総配信コラム数は2,272本となる。自分ながらよく継続できたと思う。

中国における製造業に関するテーマでメルマガを配信し続けていれば、お客様が増えるかもしれないという期待を持って始めたが、その効果はほとんどない。
メールマガジンを配信し続けても仕事のご依頼はほとんどない。
継続により得られたのは継続力だけかもしれない(苦笑)

それでも自分自身の頭の整理や思考訓練にはなっている。
最近は「ボケ防止」と称してパズルをやっているが、メルマガ配信も同様な効果はあるかもしれない。もうしばらく続けようと思う。


このコラムは、2021年10月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1199号に掲載した記事です。

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礼を持ってす

mèng(1)wènxiàoyuē:“wéi(2)。”

fánchí(3),gàozhīyuē:“mèngsūnwènxiàoduìyuē‘无wéi。’”

fánchíyuē:“wèi?”yuē:“shēngshìzhīzàngzhīzhī。”

《论语》为政第二-5

(1)孟懿子:魯の家老。孟孫氏。懿はおくりな(死後に贈る称号)
(2)违:礼を踏み外すこと
(3)樊迟御:樊迟(孔子の弟子。姓は樊、名はしゅ、字あざなは子迟)が御者をする。

素読文:
もう懿子いしこうう。いわく:“たがうことかれ、と。”
はんぎょたり。これつげいわく:“孟孫もうそんこうわれう。われこたえていわく、たがうことかれ、と。はんいわく:“なんいいぞや”と。いわく:“きてはこれつかうるにれいもってし、してはこれほうむるにれいもってし、これまつるにれいもってす、と。”

解釈:
孟懿子が『孝』とは何かを尋ねた。
帰るときに、孔子は御者をしている弟子の樊遅に、孟懿子が孝の道を私にたずねたので、私は「はずれないようにしなさい」と教えたと話して聞かせた。樊遅はどういう意味かと尋ねた。
「はずれない」とは親が生きているうちは礼を尽くし、死しては礼を持って葬り、礼を持って祀ることだ。つまり「礼を外さずになさい」という意味だ。

TOTOのトイレ製品、欧州で狙う「華麗な地位」

 日本の輸出品といえば車と家電だけかと思ったら大間違い。生活用品をはじめ、実に多くの日本製品が海外で使われている。欧州のトイレ市場に参入を図るTOTOの試みを見てみよう――。本連載「日本ブランドが世界を巡る」では、日本で売れている製品の工業デザインやパッケージが、海外進出の際にどう変化しているかに迫る。ものづくり企業のマーケティング担当者や製品開発者をはじめ、多くのビジネスパーソンに役立つはずだ。

(日本経済新聞より)

 TOTOの欧州市場戦略を紹介する記事が出ていた。TOTOの便器は、中国でもちょっと別格の扱いで、ショールームに展示してある。
中国の一流ホテルでは、アメリカンスタンダードの便器をよく見かけるが、TOTOの便器はもう一段上の水準という印象を受ける。

TOTOの便器が汚れ難いのはなぜか?
それは便器の表面がナノメートルの精度で平らだからだ。安物の湯のみなどはすぐに茶渋がついてしまうが、高級磁器の湯のみは茶渋がつかない。これと同じ原理なのだ。
汚れや茶渋は、表面の荒さに引っかかる。全く平らならば水を流すだけで汚れは流れ落ちてしまう。

「汚れがつかない」という要求品質を、便器表面の平滑度という品質要素を徹底的に磨き上げて実現している。便器はかなりの大きさであり、しかも量産でその平滑度を実現しなければならない。相当難易度の高い、製造技術の開発が必要になるだろう。

こういう品質を追求した製品開発、モノ造りが日本の強みだと考えている。
そこまでコストをかけなくても、と考えればそこいらにあるモノと同様にコスト競争にさらされる。

またもう一つの日本のモノ造りの強さは、ウォシュレットに代表される様な徹底的にユーザの使い勝手を追求するところだろう。
中島聡が言うところの「おもてなし」、サイトウ・アキヒロがいう「ゲームニクス」と共通したモノだ。

参考図書
「おもてなしの経済学」中島聡著
 
「ゲームニクスとは何か」サイトウ・アキヒロ著

1980年代の後半に、コンピュータ周辺装置のマーケティング会社が開催したセミナーに参加したことがある。欧米、日本のプリンターメーカの開発者がパネルディスカッションをした。
PCの普及により、紙の消費が減ると言われていたのに、むしろ紙が増えている。という話を、日本人パネラーが「日本ではトイレの紙の消費削減にも成功しているのに……」と発言した。
その瞬間に、欧米のパネラーが一斉に日本人パネラーに視線を送ったのを、鮮明に覚えている。

当時日本では当たり前だったウォシュレットは、世界ではまだその存在すら知られていなかったのだ。

余談だが、パネルディスカッションの同時通訳が、「パルプの消費」という日本語を「consumption of Pope」と聞こえてビックリした。「紙の消費」ならぬ「神の消費」だ(笑)


このコラムは、2013年1月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第291号に掲載した記事です。

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