コラム」カテゴリーアーカイブ

パナソニックのレンジ、発煙・発火事故

 経済産業省は20日、松下電器産業(現パナソニック)製の電子レンジ(NE―AT80)から煙が出る事故が7日に宮城県で起きたと発表した。
事故の恐れがあるとして同社が07年5月からリコール(部品交換など)しているレンジ12機種のうちの一つ。一連の発煙・発火事故は18件目で、いまだに169万台が部品交換していない。

 7日の事故は、レンジ裏側の吸気口にほこりが詰まったまま使い続けたため、内部のはんだ付け部にひびが入って火花が飛び、周りの樹脂に火がついたとみられる。一連の事故でけが人は出ていないが、リコールの実施率は昨年末時点で12%にとどまり、リコール後も今回を含めて8件の事故が起きている。同社は昨年11月から折り込みチラシを全国で4500万部配って注意を促している。

(asahi.comより)

 エンドユーザでの使用環境はメーカ設計エンジニアの想定を越えてしまう事がままある。
電子レンジでは、シャンプーした猫を乾かそうとして電子レンジに入れて事故が発生した話が有名だ。電子レンジの加熱原理を理解しているメーカ側は、猫を電子レンジに入れるという「動物虐待」までは想定していない。

しかし今回の事故は「冷却システムが初期の能力を発揮しなくなった場合」に対する想定が不足していたように思う。
記事だけでは判断できないが、半田付けポイントに応力がかかったまま内部温度上昇により、半田クリープの発生が加速したと推定している。
半田接合点にかかる応力と温度に関する設計基準を見逃してしまったか、製造時に応力が発生することを見逃してしまったのだろう。

設計審査、試作サンプル、初回量産品の評価でこのような不良を事前に洗い出す力が、メーカの「品質力」だと思う。


このコラムは、2009年3月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第90号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

米国でのPhilipsの人工呼吸器リコール

米国でのPhilipsの人工呼吸器リコール、周知も修理キット提供も進まず

Philips は 6 月に同社製 CPAP 装置・ASV 装置・人工呼吸器 20 機種以上のリコールを米国で発表しているが、周知も修理キット提供もなかなか進まない状況のようだ 。

(The Verge の記事)

リコールの原因となった問題は防音用部品のポリエステル系ポリウレタンフォーム素材が劣化して発生する細かい粒子や化学物質を患者が吸い込んでしまう可能性があるというもの。Philipsでは睡眠時無呼吸症候群治療用の CPAP / ASV 装置については即時利用を中止するよう求めている。しかし、このような装置は代替品が用意できなければ使用をやめることはできない。COVID-19 パンデミックで米食品医薬品局 (FDA) が緊急使用許可 (EUA) を出した E30 も即時利用中止の対象となっている。

財経新聞より

 タイミングの悪いリコールだ。コロナパンデミックで人工呼吸器が必要な患者が多くいる。そんな状況でのフィリップスの人工呼吸器使用禁止令は医療従事者にとって最悪の事態だろう。もちろん患者にとっては生き死にの問題だ。

この人工呼吸器がどのような構造になっているのかわからないが、私には設計不良のように思える。呼吸用の空気は病床に設置された専用の空気供給口から取られる。防音装置と、患者が吸入する空気は完全に分離できるはずだ。

人工呼吸器を必要とする患者が多くいる中で人工呼吸器の使用を差し止める指令を出すというのも理解できない。いっそ防音機能を停止してでも使用を継続する方法を模索すべきではないか?音がうるさいくらいで人は死なないだろう。

日本フィリップスは、医療機関に公表した文書で以下のように述べている。
「お使いの機器を使用して治療を継続することのメリットが本書に記載するリスクを上回るかどうか、ご判断ください。」
我々はリスクをちゃんと開示した、決断は医師の責任だ、と突き放しているようにしか見えない。


■■ 編集後記

最後まで読んでいただきありがとうございます。

本日ご紹介した事例を「設計不良」と断じましたが、私は患者の呼吸に必要な空気系統に、消音用ポリエステル系ポリウレタンフォームの微細粉末が混入する理由がわかりません。患者ではなく、医療従事者が吸い込む可能性がある、と言うなら、対応策がありそうです。


このコラムは、2021年8月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1177号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

サマースカート販売目標、9倍増を計画 ユニクロ

 ユニクロは18日、発売中の女性用「サマースカート」の販売目標を、昨年の9倍に増やす計画を打ち出した。女性向けの衣料販売を強化する取り組みの一環という。

 すそが波打つ形の「フレア」や段重ねの「ティアード」、ワンピースとしても着られる「2WAY」などデザインは昨年の倍の6種類。レーヨンや綿など柔らかい素材を使って、肌触りの良さにも配慮した。

(asahi.comより)

 不況と言われる中でもユニクロは元気が良い。
このご時勢に9倍の売り上げ計画を立てられる経営者はいるだろうか?

業績不振を「世界不況」「消費者の購買行動」「不景気」に原因を求めても解決することはできない。一社の経営努力で世界経済を動かすことは不可能だ。自分達が制御不可能なところに原因を持ってきても改善することはできない。それはたんなる言い訳になるだけだ。

自分達が制御可能な領域で改善するしか方法はない。

ユニクロと言うと「フリース素材」「カラフルな色ぞろえ」で消費者の心をつかんだという印象を持っている。
今までユニクロのボトムと言えばパンツが定番だった。そこへスカートと言うユニクロにとって新しいサブマーケットに出るから9倍増の売り上げ計画を立てられるのではないだろうか。

では商品開発やマーケティング機能を持たない工場はこのような計画を立てられないのだろうか?

儲かる工場になるためには、生産工場も独自の開発・マーケティングをすべきだと考えている。市場動向をしっかり読み研究開発をすべきだ。

研究開発といっても商品開発だけではない。工場には工場の研究開発がある。
新しい加工技術の検討。既存の加工技術のパフォーマンス(生産性、加工精度)を一桁上げる。顧客の使い方を研究し、顧客満足が得られる納入方法を検討する。

これらを総称して製造工場の研究開発といっても良いだろう。

顧客から貰った仕様でモノ造りをするだけではなく、こちらから仕様が提案できれば顧客との関係は主従関係からパートナーになりうる。


このコラムは、2009年5月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第99号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

高コンテキストと低コンテキスト

 私は「深セン和僑会」という勉強会にほぼ毎月参加している。
3月はJ&G HRアドバイザリー社長の篠崎正芳氏から『グローバル人材は、「違い」を「覚える」のではなく「違い」に「ピン!」と来て行動する!』というテーマで講演をいただいた。

その中で高コンテキストと低コンテキストという話をいただいた。コンテキストというのは「文脈」と訳される事があるが、「共通認識」という意味で捉えて良いだろう。

日本の常識は、高コンテキスト社会に支えられた常識であり、世界の非常識だ。
日本は単一民族の国家であり(正確に言えば、アイヌ民族や沖縄民族を数えるべきかもしれないが)「均一」な社会だ。そのため「阿吽の呼吸」が通じ、多くを語らないのが美徳とされてきた。

一方世界の他の国家は「多様性」に基づいた社会でありコミュニケーションがうまく行われないことを前提としている。そのため低コンテキストな社会になっている。

例えば中国の工場でローカルリーダに指導をすると、必ず言われたことを反復してくる。

まだ中国語が良く分からなかったころは、教えたことに色々いちゃもんをつけているのだと感じていた。何故教えたことを素直に受け入れないのか不思議だった。良く聞いてみるとただこちらの言っていることを反復していただけなのだ。

実はこれは外国人対中国人のコミュニケーションだけではない。
中国人同士の会話に聞き耳を立てていても、同じように相手の言っていることをお互いに確認しあいながら会話が進んでいる。

例えば、日本人同士なら食後「アレ取って」「ハイ」と爪楊枝が出てくる。
中国人同士なら「アレ取って」「アレって爪楊枝のことね。ハイ」となる。

これは中国語という言語がそうできているわけではなく、多様性社会の中に生きている人たちが必然的に身につけなければいけない処世術なのだろう。

世界の主流は「多様性」である。我々日本人がちょっと気を利かせるべきなのだと思う。今時日本国内でも若い人を「宇宙人」と呼んだりして、何を考えているのか分からないと嘆いているので尚更だ。

しかしこの低コンテキスト性は、考えようによっては非常に便利だ。
きちんと時間をかけて意思疎通を図る。中国人たちは元々それができている。我々日本人が、変わらなければいけない。

今日から「○○君。アレどうなっている?」というのは禁句にしよう。


このコラムは、2009年3月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第89号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

合言葉は「絶好調!」 

 どのニュースも暗いものばかりだ。それをわざわざここで紹介することもないだろう。

苦しいときに苦しい顔をしていてはだめだ。
部下はいつもあなたの顔を見ている。いつの間にかあなたの沈んだ気持ちが全社に伝播してしまう。

経営者やリーダはネアカでなければならない。

今、目の前に困難が立ちはだかっているだけだ。まだ死んだわけではない。この困難を乗り越えれば、その向こうには必ずチャンスが待っている。

笑ってこう言おう「絶好調!」
これで自分自身と部下に困難に立ち向かう勇気が与えられる。
ネアカに笑い飛ばそう。笑いは最高の強壮剤であり、開運剤だ。


このコラムは、2008年12月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第72号に掲載した記事です。世界金融危機が発生し暗い世相だった頃に書いた記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

失敗は成功の母

 エジソンは実験に失敗しても「うまく行かない方法を一つ発見した」と考えたそうだ。まさに99回の失敗から導かれた1回のひらめきで大発明は生まれるのだろう。

出来るまでやる。諦めないでやる。という姿勢があれば失敗はありえない。成功していなくても「その時点で」まだうまく行っていないというだけの話だ。

しかし99回も失敗を続けていると、モチベーションを維持するのが困難になってくる。そこで小さなマイルストーンをいくつもおく。マイルストーンごとの小さな成功体験が、モチベーションの維持に役に立つ。

小さな成功が大きな成功を目指すモチベーションになる。
そして長いスパンで自己成長を実感できるようにする。

しかしこれは時として諸刃の剣となる。過去の成功体験が邪魔をして新しいことに挑戦できなくなる。大会社にありがちだが経営判断をする経営トップ層が皆自身の成功体験を持っている。しかし経営環境は急速に変化している。過去の成功体験が判断を誤らせる事がある。

一方中小企業の経営者はどちらかといえば過去の失敗体験をバネに成長している人が多い。こういう人の方が経営環境の変化に対応が出来ると思える。

また自己成長も同様だ。
自己成長に満足した時点で成長は止まる。謙虚でなければならない。
大きな目標を見据えて、小さな目標を達成する。
次々と仕事のチャンスを与え、成長を実感させる仕組みをOJT計画の中に入れ込んでおく事が重要だ。

失敗は成功の母であると同時に成功は失敗の父でもある。


このコラムは、2008年11月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第64号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

ビデオの活用

 先週の金曜日版でビデオを使って作業教育をし、作業の標準化を図るというビデオの活用法を紹介した。

ビデオの活用でこんな例もある。

以前お客様から、工程をビデオ撮影したMP3ファイルをいただき工程改善の検討を依頼された。
ビデオに映っている各工程のサイクルタイムを測定し、検討をするとできるはずの生産量が上がっていない。

したがって取り置きのムダや、まとめ作業のムダがあるはずだと推定し、一つずつ作業する方法。それを実現するために前工程と納入業者さんの部材納入梱包形態の変更を提案した。

お客様は自働機または半自働機の導入を想定しておられが、費用をかけずに生産性がアップした。

こういう時には改善活動になれている人がビデオを撮影すると、より効果的だ。
また画面に時間を表示するモードで撮影すると、ストップウォッチを片手にデオを見なくて済む。


このコラムは、2009年1月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第80号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

人財のマルチタレント化

Z様のご投稿には、続きがある。

ちょっとひとつ気になったのは、H様の投稿の中に、「手順書らしい文体にするのは班長の仕事」とありました。各企業班長と言う職位の方のスキルや経歴は様々とは思いますが、概して現場の作業者から技能や統率力に秀でた方を、班長に据えられている企業が多いのではないかと思う。僕の日本工場の例をとると、大半は入社後技能職として経歴を積み、30代半ばから後半で班長となるのが、班長の標準的な経歴です。彼らがもっとも苦手とするのが文書化です。つまり入社後文書を書くと言った業務の経験がないのです。
20代の若手に勉強として苦手な業務もやらせるのは良いかもしれませんが、30代も半ばを過ぎた、「長」と付く職位の方に、苦手な業務を押し付けると、中々進まないものです。

実際僕のいた日本の工場もISO9001取得時に、この作業を班長、作業長に押し付けていましたが、結局無理矢理作らせた作業標準は、実際の作業を知っている人しかわからない意味不明な文書が多く、更に実作業を知らないシステム管理者が手を加えより意味不明な文書になって、実効性のないものになってしまった記憶があります。

やはり実務をある程度熟知したホワイトカラーがブリッジにならないと上手く行かないのではないかと思います。また、そのようなブリッジとなる人材そのものを育てる仕組みが必要かと思います。

H様の現場作業員はパートさん、Z様の現場作業員は技能工である。職場の形が違うので、このような差が出たと考えている。

知り合いの中国縫製工場では、ベテランの作業員を監督職に昇格させようとすると、読み書きができないからと辞退してしまうそうだ。

現状を考えるとZ様のご指摘のように、作業を文書化するのは現場よりの技術者のほうが良いだろう。

しかしこれからは、作業員もマルチタレント化をしてゆかないと競争に勝てなくなってゆく。作業者と言えど、PCを使いこなし作業指導書の一つも作れなければ職にあぶれてしまう時代になってゆくだろう。

QCC活動などで鍛え、作業者のマルチタレント化を進めてゆかなければならないと感じている。

雇用を守るということは、従業員の能力を高めてやることだ。


このコラムは、2009年1月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第79号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

人財の育成

先週の記事「工場見学会」にメルマガ読者Z様からこんなメールをいただいた。

今週の雑感も、まったくその通りです。以前僕は中国で和服の縫製指導をしている女性から、「ものづくりを突き詰めていくと、結局は人づくりに辿り着く。だから私は、目指せ人事部長なのよ。」と聞かされたことがあります。また人材も設備と同じように広義のハードです。ソフトは買ってくることは出来ないのですね。それは美しい草木も、それにあった気候風土の中でなければ枯れてしまうのと同じですよね。
これは林様の工場指導そのものですよね。つまり、工場の改善方法を指導するのではなく、改善方法を自ら生み出せる体質への転換を指導するということです。本当に素晴らしいことです。

あまり褒めすぎなので、ちょっと居心地が悪い。おっしゃることはその通りだと思う。品質改善も生産性改善も最後は人だ。

人は学ぶ能力、努力する能力を持っている。これをきちんと引き出してあげるのが指導者の役割だ。
機械や設備は買ってきたその日から減価償却が始まり価値が下がる。しかし人は適切な指導をすれば雇ったその日から成長し価値が上がる。


このコラムは、2009年1月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第78号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

工場見学会

 先週私の工場経営の師匠からこんなメールが届いた。

昨日シンセン市内の現地系の某大手電子企業の幹部20名の訪問がありました。6時間の受入れ応対は全て弊社幹部で行った訳ですが、訪問直後の挨拶席上で弊社の人事部長が冒頭、

『皆さんの訪問を歓迎します!。・・・しかし、その前に皆さんにお聞きしたい事があります。
今日皆さん方がこの工場に来られた目的は見学ですか?、それとも遊覧ですか?』
と突然切り出したのです。
相手側の董事長が『当然見学です!』と答えるのに対して、
『皆さんの中で、今、記述ノートか手帳を何人が持っていますか?。私が見る限り20名中3名です。見学に来るのに記述する手帳も持たず手ぶらで来るような姿勢が古い中国の管理者の姿勢です。
又、皆さんの会社は製品を造る工場で、しかも今日は休日では無いと先程あの方に伺いました。
・・・なのに、今皆さんは私服でバラバラの服装身なりをされている。
皆さんの身なりと記述本も持たないその姿勢が、今のあなた方の悩みや問題を生み出しているのではないのでしょうか!?』

と話したのです。(もちろん、相手は董事長・総経理以下全員がこれを素直に受入れ、帰り際には『可能ならここの社員を出来るだけ多く受入れ、うちの会社の体質を大幅に変えたい』という中国的発言まで出てました(笑)。

大変すばらしい話で感動した。
ここに出てくる人事部長さんは若い中国人だ。
中国大手の会社から来られたおそらく年長者の董事長、総経理に対してまるで講義を受けに来た学生を叱るように諭される。なかなかできることではない。

このような中国人幹部を育てられた、正しく言えばこのような中国人幹部が育つ仕組みと仕掛けを作られた師匠の偉業に大変感心をした。

ちなみに私は勤め人時代に、日系のお客様の納期対応クレームに謝罪に行く際生産委託先の工場長(台湾人)を連れて行った事がある。お客様のローカルスタッフは彼の名刺にある職位を見てやけに腰が低かった。こちらはお詫びに訪問しているにもかかわらず、対応がすごく丁寧だった。

人を見ず職位を見ているのだ。それ以降もこういう人種が多いと感じてる。これは日本も同じかもしれない。

しかも董事長、総経理ともにそれを素直に受け入れたという点がすごい。面子を重視する人達が、訪問先の若い部長さんにガツンとやられたら怒り出すはずだ。それをすんなり受け入れさせたというのは、その部長さんの人格力だ。

「可能ならここの社員を出来るだけ多く受入れ、うちの会社の体質を大幅に変えたい」という当事長さんのコメントは笑うに笑えない。

企業の最強の競争力源泉は、このような経営幹部が育つ仕組みと仕掛け、企業文化そのものだ。よそから優秀な人材を受け入れることではない。


このコラムは、2009年1月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第77号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】