コラム」カテゴリーアーカイブ

者に語らせるな,モノに語らせよ

 中国で仕事をしていると,部下の報告を鵜呑みにすると痛い目に合うことがしばしばある.

例えば生産日報を見ると毎日1000台とか1200台のようにキリのいい数字が並んでいる.これはおかしい.その日によって不良の数も違っているはずだし,まだ仕掛で完成していないものもあるはずだ.

現場に行って確認してみると,投入台数を生産台数として報告されていることがわかったりする.

生産管理が,部品が欠品しており別の部品を代替に使用して生産を開始しても良いかと相談してくる.そんなはずはない,昨日入荷したコンテナに入っていたはずである.

倉庫に行ってみると,違う場所に該当の部品が置いてあったりする.

何事も担当者の思い違い,理解不足,思惑という色眼鏡を通して報告が上がってくるものだ.
これを部下の出来が悪いと嘆いてはいけない.上司の指導が足りないのである.

上記の例では,担当者が生産現場の班長に聞いた数字を報告しているだけ.きちんと完成品入庫の数字を確認すれば間違いはなかったはずである.

生産管理の人間は,倉庫の担当者から部品の欠品を報告されるとそのまま上司に報告する.きちんと受け入れ記録を調べればIQC(受け入れ検査課)の検査完了データが見つかるはずである.

人に聞いた話をそのまま報告するのではなく,現場・現物を確認して報告をする.
これが本日のテーマ「者に語らせるな,モノに語らせろ」の意味である.


このコラムは、2008年1月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第18号に掲載した記事です。

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エレベーター、扉開いたまま急上昇 東京・台東区

 エス・イー・シーエレベーター(東京都台東区)が保守管理する同区根岸5丁目のビルのエレベーターで、人が降りた直後に扉が開いたまま、突然、かご部分が天井近くまで上昇する事故が起きていたことがわかった。同社管理のエレベーターでは、06年6月に港区で同様の事故があり男子高校生が死亡、警視庁が業務上過失致死容疑で捜査を続けている。

 同社によると、事故は今月11日午後3時ごろ発生。7階建てビルの5階から乗った男性が3階で降りた直後、扉が開いたままの状態でかごの部分が急上昇し、7階を約1メートル過ぎて止まったが、けが人はなかった。制御盤内部の故障が原因とみられるという。エレベーターは30年以上使用している日立製。法定の定期検査を昨年8月に、月1度のメンテナンスを事故3日前の8日に行ったばかりだった。

(asahi.comより)

 メンテナンス直後の事故というのは意外と多いものだ.
特に気をつけたいのが,メンテナンス時に変更した設定の戻し忘れ.メンテナンス作業時に機能を殺しておいた安全装置を戻し忘れると労災事故が発生する可能性がある.

部品の自動実装機,プレスマシンなど作業者の手が機械の中に入ると機械が安全停止するようになっている.このままではメンテナンスができないので,一時的に安全装置を解除してメンテナンスをする.作業完了後に安全装置を戻すのを忘れても,機械は正常に動いているように見えるので気がつかない.

以前こんな例を聞いたことが有る.
装置内でX線を使用しているため,装置内部に手を入れる扉を開けたときはX線が止まるように安全装置がついていた.メンテナンス時にX線が正しく出ているかどうか調べるために,扉の開閉を検出するマイクロスイッチをテープで止めて扉が閉まっている状態にしておいた.点検完了時にマイクロスイッチのテープをはがすのを忘れ運転を開始.このため運転中に扉を開けるたびに作業者がX線に被爆していた.幸いX線の量が微弱であったため人体への影響は心配なかったが,目に見えないだけに深刻な事故だといえよう.

今回のエレベータ事故はメンテナンスから3日後に発生しているので別の原因だと思われるが,メンテナンス作業後の点検項目,方法をチェックリストにしておくとポカよけに役に立つだろう.
今回の事例から,配線コネクタの不完全挿入,ねじの締め忘れなどの想定される原因に対してチェック項目を追加したら良いと考える.

それにしてもこのメンテナンス会社は前回の事故が教訓として活かされていなかった様である.


このコラムは、2008年1月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第18号に掲載した記事です。

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中華機の速度計、異常原因は虫? 会社が国交省に報告

 佐賀空港(佐賀市)の滑走路を越えて離陸し、速度計の異常で引き返した中華航空チャーター便(ボーイング737―800型機)について、同社は9日、「速度を計る装置に虫が詰まり、計器が正常に働かなかったとみられる」と国土交通省に報告した。

 同省によると、この装置は「ピトー管」と呼ばれ、機首についている。飛行機が進むときの風圧を測定し、これをもとに速度を算出する仕組み。装置の吸い込み口に虫が詰まっていたが、種類や数は不明という。

(asahi.comより)

現場・現物を見ていないのでいい加減なことはいえないが,一回のフライトでピトー管に虫が詰まってしまうと言うことは,ありえないだろう.そうであればこの手の障害がしょっちゅう世界中で発生しているはずだ.

日常メンテナンスが十分行われていなかったのではなかろうかと想像している.日常点検,メンテナンスと言うのは予防保全活動として重要な役割を担っている.

工場で仕事をしていても,似たような場面に良く出会う.
生産現場を見ていて半田槽のスプレーフラクサーのノズルの動きが遅くなっているのを見つけた.

スプレーフラクサーというのは,半田付け前にプリント基板の半田面にフラックスを吹き付ける機械である.空気圧を利用してノズルを左右に振りながら,コンベア上を流れてくるプリント基板の下からフラックスを吹き付ける仕組みになっている.

早速半田槽のメンテナンスを担当しているエンジニアを呼び,現象を見せた.エンジニアは装置を見るなり「分かりました」と答えノズルを左右に振るための空気圧をちょっと上げた.これで確かにノズルの動きはスムースになった.しかしノズルの動きが遅くなっていた原因に対しては何も対策が打たれていない.

ノズルの摺動部に粘度の高いフラックスがこびりついて,ノズルの動きを阻害している.これに対しては何も改善がされていないのである.これをそのままにして,問題が顕在化するたびに空気圧をあげてゆくと最後には大きな問題となるはずである.

日々の点検,メンテナンスをきちんとやっておくことによりこういう不具合は未然に防ぐ事が出来るわけだ.また上述の例のように,問題が顕在化した時点できちんと対応しておかないと,更に大きな問題となって再現するはずである.


このコラムは、2007年10月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第3号に掲載した記事です。

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急速充電器リコール

 行政法人・製品評価技術基盤機構(nite)によると、アンカー・ジャパン社のUSB急速充電器が市場にて電解コンデンサーの液漏れ発煙事故が発生し、対象製品の回収をしている。

メーカのホームページに回収告知が掲載されている。

2019年4月23日より販売を開始したUSB急速充電器「Anker PowerPort Atom PD4」(以下 本製品)につきまして、製造工程において発生した不良品(初期ロット内40個) が正常品と混在した状態で出荷されていたことが判明致しました。
事故等の発生防止を第一に考え、この度、本製品の回収を実施させていただきますのでご案内申し上げます。(以下略)

メーカは事故原因を以下の様に説明している。
2019年6月7日:顧客から電解コンデンサーの液漏れと発煙が生じたと報告。
2019年6月30日:本不具合の原因を特定。回収を決定。

多分海外の生産委託先との間で、原因特定の作業が進められたのだろう。
何人かは本件で生産委託先に出張しただろう。発煙という最もシビアな故障モードであり、3週間は長いと感じるが、全力で調査をしたのだと思う。

原因を以下の様に発表している。
製造時のリフロー(はんだの接合)工程において、通常よりも長い時間加熱された製品が40個発生。当該製品は出荷不可として廃棄処理がなされる予定でしたが、委託先の製造工場の管理体制に不備があり、正常品と混在した状態で出荷がなされました。

「40個だけリフロー炉で長時間加熱された」というところを突き止めるには、生産委託先の報告を聞いているだけでは見つけられないだろう。

リフロー炉の故障でコンベアが止まり、製品PCBがリフロー炉内で停滞。
停電でPCBがリフロー炉内に取り残された。
などの原因により電解コンデンサが過剰に加熱され「半殺し状態」となり出荷後2ヶ月ほどで寿命モードの故障となったのだろう。こういう事実は現場の記録・記憶をたぐらねば出てこない。生産委託先に原因調査を任せてしまえば、見つからない真実だ。責任の所在が自身にあると判明すれば、リコール費用などを請求される。真実は隠される。

リフロー炉でもディップ槽でも同じことは発生する。現場の班長さんレベルで判断し、不良品処理ができる様にしなければならない。

昔会社員だった頃生産委託先工場に出張している折に停電があった。

「現場力」

リコールとは関係ない話だが、現場力を鍛えられるのは現場だと思う。


このコラムは、2019年7月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第853号に掲載した記事です。

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続・チームビルディング

 先週に引き続きチームビルディングについて考える。先週はチームメンバーの選定に関して愚考した。

「チームビルディング」

本日はチームの文化について考えたい。
「チーム文化」というとちょっと大げさだが、チームリーダのリーダシップのあり方、もしくはチームの統治スタイルといったほうが良いかもしれない。

古典的チーム文化は命令・服従型チーム。リーダが指示を出しメンバーが従う。古典的と書いたが、今でも主流のスタイルだろう。強いリーダシップでチームを引っ張ってゆくスタイルだ。

リーダがメンバーを説得し、メンバーが納得して行動するのが「説得・納得型チーム」

リーダが活動目的をメンバーに提示し、メンバーが共感して自主的に行動するのが「感動・共感型チーム」

  • 命令・服従型チーム:単純明快な統治スタイルだが、成果はリーダの個人的資質(能力、人柄など)に依存する。リーダの魅力がチームのパフォーマンスを決定する。最悪メンバーの方向性がバラバラになると成果は期待できない。
  • 説得・納得型チーム:リーダがメンバーに活動内容を説得しメンバーの協力を得るスタイル。チームに強権的な雰囲気は発生しないが、納得出来ない者があるとパフォーマンスは低下する。チームの成果はリーダの力量を超えない。
  • 感動・共感型チーム:リーダの活動に対する目的に共感したメンバーが自主的に活動する。リーダがメンバーに対して感動を与えることができれば共感が強化される。感動と共感を共有するチームはパフォーマンスが上がる。

命令・服従型のチームがパフォーマンスを発揮するのは限られた状況でのみだ。

例えば火事が発生している現場で消火活動の重要性を説得するリーダはいない。「消化器持って来い!」「火を消せ!」これでチームがきちんと機能するのは、リーダの力ではない。危機的状況によりチームの使命が共有されるからだ。

説得・納得で得た納得は「認識」のレベルだ。
「認識」が変わっても「行動」は変わらない。

感動・共感は直接「意識」の共有に働きかける。
「意識」が変われば「行動」も変わる。


このコラムは、2019年7月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第852号に掲載した記事です。

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続・成功の反対語

 第89号「成功の反対語は何?」に関してアンケートメールをいただいた.

I様のメッセージ

今週、特に良かった言葉です
・失敗の向こう側にある成功
・勇気を持って一歩を踏み出そう
メルマガ配信される月曜日が楽しみです

F様のメッセージ

第89号の今日のテーマに感動しました。
本当にそうですよね。100%を用意しようと思っていたら、なかなか行動に移せず、気が付くと時間だけがどんどん過ぎてしまっています。
60%で動き始めてこそ、次が見えてくるんですよね。
その事を今一度、心に留め置いて、何事にも躊躇せずに前向きに進めていこうと再認識させていただけました。
いつも、本当に有難うございます。

K様のメッセージ

この文章を読み、あるマンガのセリフを思い出しました。
「人の足を止めるのは”絶望”ではなく”諦観(あきらめ)”、人の足を進めるのは”希望”ではなく”意思”」
「ヒトは絶望するから足を止めるんじゃない。
絶望から這い出ることを”諦め”てしまったから足を止めるんだ。
ヒトは希望があるから前に進むんじゃない。
希望を探そうという”意思”で前に進むんだ」
中々良いセリフだと思いませんか?
(私は精神年齢が低いので、マンガでも何でも、すぐに影響を受けてしまいます・・・)
余談が長くなりましたが、「ムダ」の反対語は思いついていません(笑)
出てきそうで出てこないですね。
皆さんの意見があれば、是非聞きたいですね。

I様,F様,K様メールありがとうございます.

実は私もまだ「ムダ」の反対語が思いつかない.
思いついた方があれば是非ご投稿いただきたい.


このコラムは、2009年3月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第90号に掲載した記事です。

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成功の反対語は何?

 国語の勉強では「成功」の反対語は「失敗」と教えるだろう.しかし実社会では「成功」の反対語は「失敗」ではない.

成功するための第一の秘訣は成功するまでやめないことだ.
何度失敗しても成功するまで諦めずにやり続ければ,必ず成功する.
一つ一つの失敗から学習して成功への手がかりを一つずつ積み上げてゆけば良いのだ.

成功とは積み上げられた失敗を登りきった所にあるものだと思う.
従って成功の反対側に失敗があるのではなく,成功は失敗の向こう側にある.

では成功の反対語は何だろうか?
「何もやらないこと」が成功の反対語だ.

失敗を怖れて一歩を踏み出さない.これでは成功するはずがない.
最初の一歩はゼロから一への無限大の重みがある.

目的地までの地図が100%そろうまで待っていては,いつまで経っても出発はできないだろう.60%見えたら出発すれば良い.60%まで到達しなければ残りの20%の行程は見えない事だってある.80%まで到達すれば,次の10%が見えてくるものだ.


このコラムは、2009年3月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第89号に掲載した記事です。

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シンドラー事故、検察側が控訴 元課長の無罪判決

 東京都港区の公共住宅で2006年、高校2年の市川大輔さん(当時16)が死亡したエレベーター事故で、業務上過失致死の罪に問われた「シンドラーエレベータ」の元保守第2課長の原田隆一被告(46)を無罪とした東京地裁判決について、東京地検は9日、控訴したと発表した。

 9月29日にあった地裁判決は、原田元課長を無罪(求刑・禁錮1年6カ月)とする一方、保守会社「エス・イー・シーエレベーター」の幹部ら3人を、禁錮1年6カ月~1年2カ月執行猶予3年の有罪とした。エス社の幹部側は即日控訴していた。

(朝日新聞電子版より)

 エレベータの扉が閉まらない状態で上昇を始め、エレベーターの床と天井の間に挟まれ死亡する、という考えられない事故だ。裁判ではブレーキ部品の異常摩耗が、メンテナンス時に発見できたかどうかが争点になったようだ。

しかしブレーキ部品の摩耗という1故障だけで、致命事故につながる様では十分な安全設計ができているとは思えない。故障状態でも正常に動作することを要求する訳ではない。最悪、ブレーキ部品が摩耗した場合事故に至らない様にブレーキ機能のバックアップを用意する、またはアラームをだして動作を停止する。

メンテナンスだけで事故を防ぐのは限界がある。
少なくとも摩耗を可視化しなければ、見逃しはあり得る。例えばタイヤは摩耗すると、交換の警告サインが出る様に路面との接地部分がデザインされている。

以前、近所のホテルでエレベータが最上階から地下2階まで落下する事故があった。この時は、定員13人(1000kg)に対して21人乗客が乗っていた。事故の直接原因は、牽引ワイヤの断裂とかブレーキ故障かもしれないが、13人を超えて乗ってもアラームが発生しなかったところにも原因があるはずだ。

この事故事例から、エレベータのメンテナンス時に積載オーバー検出機能はどのように検査しているのか疑問に思っている。中国だけではなく日本でもエレベータの点検作業に出会うことはしばしばある。しかし重量オーバの検査用錘りは見たことがない。重量センサーの出力を擬似的に操作する方法では、重量センサーそのものの故障を検査発見できない。

また検査記録も単純に、レ点を入れるだけでは本当に検査したかどうか不明だ。検査を行ったことが証明できるような記録を残さなければならない。

例えば、半田ごてのコテ先温度の検査では、合格のレ点を記録するだけでは不十分だ。コテ先の測定温度を記録しなければならない。

今回の事故も摩耗が事故前に発生していたかどうかが、争点になった。メンテナンス記録に摩耗が点検検査されており、交換修理の要不要を正しく判断したという記録が残っていれば、裁判が長期化することはなかっただろう。というより、事故そのものが発生しなかっただろう。

工場の中には、点検検査の記録(チェックシート)がたくさんあるはずだ。何かあった時に、証拠として機能するかどうか見直しされてはいかがだろうか。


このコラムは、2015年10月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第445号に掲載した記事です。

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統計思考力

 以前「統計学が最強の学問である」という本を空港の書店で発見し、一気に読んだ。

「統計学が最強の学問である」西内 啓著

先週末は「統計思考力」という本をBOOK OFFで見つけ即買いした(笑)

不透明な時代を見抜く「統計思考力」神永 正博著

どちらも数式を使わずに、統計学の意味を伝えようという趣旨で書かれている。

私は製造現場で統計学を応用できる様に指導をしている。
統計学の意味を理解するだけではなく、実際に活用しなければならない。
しかし私も、極力数式を使わない様にしている。
数式はExcelが勝手に計算してくれるので、その意味を理解してもらう様にしている。数式で説明してしまった方が簡単だが、その数式を見て理解するにはある程度の素養が必要となる。

そんな訳で、この二人の著者の努力には大いに共感できる。

私の場合は現場で応用するという必然性がある人に教えているので、彼らより楽だろうと思う。統計理論や確立理論となじみのない人に対して、統計学に興味を持ってもらう様に書かねばならない。このつかみがなければ、本は手にとられない。

神永氏は「ゆとり世代は学力が低い」は本当か?という問いでつかみに成功している様に思う。
少なくとも「統計力」などというマニアックな分野で出版し、文庫化を果たしている。多分多くの人がこの本を手にしたのだろう。じっくりこの本を分析し、どうしたら数学に興味がない人をこちらの世界に引き込めるか研究したい(笑)


このコラムは、2015年10月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第445号に掲載した記事です。

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眼力と手腕

 一流のデザイナーになるためには、一流のデザインを沢山見ること。一流のデザインを沢山見ていれば、一流の基準を自分の中に持つことができる。

お名前は失念したが、ある女流書家が「目より手が遅い」と言っておられた。
子供の頃から書道をやって来たので、良いお手本は山ほど見ている。しかし手本をまねようとする自分の手は、目ほどは速く熟練しない。いつも、自分には才能がないと思っていたそうだ。しかし、お手本と自分の書のギャップを埋めるために努力したから、今一流と呼ばれている。
お手本を持っていない人は、成長出来ない。

手本により「眼力」を養う。眼力によって認識する自己基準と現状ギャップを埋める努力により「手腕」を磨く事で成長出来る。

他人のデザインや、書を沢山見ていても、悪い点にばかり目が行く人は、評論家にはなれるかもしれないが、一流のデザイナーや書家にはなれない。一流になる人は、他人の作品に良い点を見出すことができる人だろう。

悪い点ばかり目につく人は「自己基準」を成長出来ないのだろう。

私の仕事も同様だと思う。
業種を越えて、色々な工場を見ている。製品設計エンジニアだった頃からいろいろな業種の工場現場を30年近く見て来た。そのため多くの引き出しが自分の中に蓄積出来た。これは自分で意図して作り上げたキャリアではない。たまたまそうなっただけだ。いつも思うが自分の人生は、本当についていると感じる。

普通に会社経営をしていると、こういう経験を積むのは難しいだろう。
しかし経営者には、沢山の従業員と接するチャンスがある。沢山の優秀な人間とそうでもない人間を見続けることができる。優秀・普通を分ける基準や、原因を多くの事例から抽出出来る。

人材育成に関して、実験と検証が出来るのは実際にたくさんの人を雇用して経営をしている人だ。

私は、独立して最初の顧客(台資企業)で1年半専属で仕事をした。
この期間に人材マネジメントの多くを学んだ。しかし台湾人から見ると、日本人は中国人の民族性を理解していない様に見えるらしく(笑)人事制度に関わる様な提案は、スルーされた。
それでも現場で、人材育成の方法について仮説検証を繰り返す事が出来た。

そうして出来た「基準」を元に、多くの経営者の考え方を聞いたり、手法を見るたびに基準が成長する。しかし目は肥えても、腕は肥えない(苦笑)実際に多くの従業員を雇用されている経営者の方が、仮説検証が出来、成果に結びつけることがしやすいはずだ。

そういう志の高い経営者の方々と、仕事で相互成長する機会がある。
お客様を支援することにより、お客様が経営者として成長する。その過程で自分自身も成長出来る。
本当に有り難い職業だと思っている。


このコラムは、2013年12月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第338号に掲載した記事です。

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