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電気掃除機で充電池破裂7件、リコールへ 経産省

 エレクトロラックス・ジャパン(東京都港区)が輸入販売した充電式の電気掃除機「エルゴラピード・アップグレード」で充電池が破裂する事故が7件起き、1人が手のひらをけがしたと経済産業省が3日発表した。充電池のふたの圧着が弱いことが原因とみられる。

(asahi.comより)

エレクトロラックスというとスウェーデンの電気メーカだがこの掃除機は中国で生産されたものだ。内臓のニッケル水素電池が使用中に電気化学反応によって発生した気体により内圧が上がり事故にいたったようだ。

通常は異常内圧が発生すると安全弁が先に働き爆発を防ぐ構造になっている。
今回の事件では電池の封止部分の不具合と安全弁が働かなかったという二重の欠陥があったようだ。

このモデルは従来から、電池の寿命が短いというクレームが発生していた。
このクレームから封止部分の圧着欠陥が想定できなかっただろうか。市場からのクレームをただのクレームとして捉える姿勢からは、今回の事故は予測できなかっただろう。

ところで圧着作業というのはどのように品質保証すべきだろうか?
圧着部分の強度を検査するのは破壊試験になってしまう。
100%検査をすると出荷ができない。抜き取り検査で圧着作業の品質を保証し、製品を保証する形となる。

つまり初物がきちんと圧着できていることを検査する。
これにより設備・治工具が正しく設定されていることを保証する。
更に定期的に抜き取り検査をすることにより、設備・治工具に変化がないことを保証する。
ロットの最終品を検査することにより、一ロット問題なく生産されたことを保証する。
という形になるだろう。

前提は生産工程が要求される圧着強度に対して十分な工程能力を持っていることである。


このコラムは、2009年4月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第92号に掲載した記事です。

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怒ると叱る

 怒ると叱るは似ている様だが、全く違う。
しかし、叱られたことを「怒られた」と言ったり、混乱している面もある。今週は怒る」と「叱る」の違いについて考えてみたい。

「怒る」とは、相手の行動がこちらの期待を下回った時に失望と共に発露する感情。
「叱る」とは、相手の行動がこちらの期待を下回った時に愛情と共に成長を促す行動。

と定義してみたが、いかがだろうか。

この定義に従って考えると「怒る」はたんなる感情の発露であり、生産的な効果は何もない。

「怒る」の特徴は以下の様になる。

  • 過去の行動が怒りの対象となる。
  • 本来、今の行動を指導しなければならないのに、怒りの感情を発露すると、「あの時」こうだった、ああだったと過去の失望が次々と出て来る。こちらの期待が合意されていないため怒りとなる場合が多い。
  • 人格的な否定になり易い。
  • 「積極性が足りない」「協調性が無い」と怒られても何をどう直せば良いか分からない。
  • 相手は反発感を持つだけ。
  • 怒られた相手は、怒りの感情を受け取っただけであり、どうすれば良いか分からないだけでなく、反発心を持つ。
  • 一方「叱る」は次の様な特徴がある。

  • 未来の成長が対象となる。
  • 叱る目的は、好ましくない行動を好ましい行動に変容するために指導する事なので、相手の成長が対象となる。こちらの期待が理解されていない場合は、期待の合意・共有の指導となる。
  • 行動や考え方の指導になる。
     人格が指導の対象ではなく、行動やそれの元になる考え方の指導となる。
  • 指導の成果は相手の成長と感謝。
     愛情を持って叱れば、反発ではなく感謝される。きついことを言っても、 言葉だけに反応しない様に、日頃の関係構築が重要。
  • 日本人は喜怒哀楽を表に出さない人が多い。たまには怒ったり喜んだりを少しオーバーに表現しても良いと思う。
    以前現場で指導する時に、先に怒ってから指導することがあった。中国語がヘタなので、叱っているのが伝わらない事があった(苦笑)そのためまず怒っておいて、これから指導が始まると認識させようとした。

    「怒る」と「叱る」の違いを意識して部下の指導をするだけで、効果が変わる。
    ぜひ意識してみていただきたい。


    このコラムは、2022年4月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第419号に掲載した記事です。

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    京成電鉄脱線事故原因

     東京都葛飾区の京成線青砥(あおと)駅構内で2020年6月に列車が脱線した事故について、国の運輸安全委員会は24日、台車に生じた亀裂の影響で車体のバランスが崩れ、車輪がレールに乗り上げたことが原因とする調査報告書を公表した。約3年半前の定期検査時には亀裂があった可能性も指摘した。

     事故があったのは、青砥駅に進入中だった普通列車。8両編成の7両目後方の車輪が脱線した。事故後、脱線車両の後部台車の右側の枠(高さ17センチ、幅18センチ)に最大幅約2・8センチの割れ目が見つかった。報告書によると、亀裂の影響で左右の車輪にかかる重さのバランスが崩れ、右側の車輪がレールに乗り上げたとみられるという。京成電鉄は16年12月の定期検査で異常は確認されなかったとしているが、検査時には亀裂が存在していた可能性を指摘した。

    (朝日新聞より)

     2020年6月12日に発生した京成電鉄脱線事故の事故調査報告が運輸安全委員会から発表された。

    例によって長文の報告書だがご興味のある方は原文に当たっていただきたい。
    要約すると、車両下部に取り付ける台車の補強板の溶接止端部から亀裂が入り車体が傾き脱輪した。幸い駅の手前で減速していたので片側の車輪がレールに乗り上げた程度で、大きな事故にはならなかった。

    部分的に継続して応力がかかる設計となっている。定期点検は外観検査しかしておらず、鋼材内部で亀裂が進行しているのを発見できなかったということの様だ。

    運輸安全委員会は、亀裂の早期発見のため超音波探傷検査を推奨しているが、利用客としては、定期点検より設計的に対処して欲しいものだ。

    原文を見ていただくと、応力が継続的にかかった場合の破断面、ディンプル状断面、ビーチマークなどの写真もあり参考になると思う。


    このコラムは、2022年4月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1276号に掲載した記事です。

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    中国の新エネ車リコール

    中国の新エネ車リコール台数、累計198万台

     中国国家市場監督管理総局は10日、2021年末時点で全国の自動車のリコール(回収・無償修理)台数が9130万台、うち新エネルギー車(NEV)のリコールが229回、198万台だったと明らかにした。消費財のリコールは8027万件、企業への技術改良指導は5800回余りだった。(以下略)

    AFPBB Newsより)

                   

     中国の新聞記事を日本語に翻訳した記事の様だ。
    新エネルギー車と言っているが、EV車のことと考えてよかろう。自動車全体のリコールが9,230万台、NEV車が198万台。自動車全体に対するNEV車の比率が約2.6%なのでNEV車もほぼ同程度リコール修理があった、と言うことだろう。

    記事は、
    中国国家市場監督管理総局は、企業が技術研究開発に力をいれ、製品の安全性能試験を強化するよう誘導し、産業チェーンの質の向上をはかっている。
    と報道している。

    さらに当局は、
    NEV車のリコールについても
    “安全面の重大なリスクを防止・解消、新エネ車産業の旺盛で健全、安全で秩序ある発展を後押しした”と自賛している。続けて、“統計によると、99.9%の自動車のリコールと50%以上の電子機器のリコールは、製品が標準に達したものの、財産・生命の安全を脅かす不具合が使用後に発覚したことで起こっている。同局はこれを受け、「欠陥の発見-安全性に関わる助言-品質の改善」を取り組みの筋道とし、企業が設計、生産、アフターサービスなどでの技術改良と品質向上に力を入れるよう促している。”

    製品がその標準(機能・仕様など)を満たしていることは当たり前である。
    その上で安全性などの問題が発覚しリコールとなる。製造時の問題、使用中の劣化、設計時に想定外の使用方法、などなどの要因でリコールをする事になる。

    最近頻発している日本企業の製品検査不正を省みると、日本企業も姿勢を正す必要がありそうだ。


    このコラムは、2022年4月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第1279号に掲載した記事です。

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    過去は変えられない

     過去を変えるのは不可能だ。タイムマシンが発明されたとしても、過去を変えてしまうと現在が成り立たなくなるというパラドックスがある。

    映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はタイムマシンでうっかり変えてしまった過去を修正する、というストーリィだ。

    タイムマシンはなく、過去も変えられない。しかし絶望することはない。過去が変えられなくても、過去の意味は変えられる。

    過去の失敗を「失敗」と捉えると、失敗を避けることを考え続け、「羹に懲りて膾を吹く」の喩え通り、新たな失敗を招くことになりかねない。

    過去に起こした失敗を「成長の糧」と考えれば、過去の意味が変わる。
    もちろん命がかかる様な失敗を受け入れることはできないが、失敗の裏には改善・成長のタネが隠れている。

    過去は変えられない、しかし過去の意味を変えれば未来が変わる。


    このコラムは、2022年4月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第1278号に掲載した記事です。

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    後悔と反省

     失敗には「後悔」と「反省」がつきものだ。
    失敗してしまったことに後悔する。
    失敗を反省し再発防止をする。

    似ているようだが、時制とベクトルが異なる
    「後悔」は過去を後悔しておりベクトルは過去に向く。
    「反省」は過去の失敗を現在反省しており、ベクトルは未来に向く。

    過去の失敗を後悔しても意味はない。
    過去の失敗は反省し、未来のために再発防止を考える。

    失敗を後悔していても明るい未来は来ない。反省するから未来の失敗を未然に防ぐことができる。失敗を後悔する無駄を止め、失敗を反省し原因を分析。それにより再発を防ぐ。

    後悔して(いるフリをして)暗い顔をしていても意味はない。
    反省して明るい未来を目指したい。


    このコラムは、2022年9月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第1345号に掲載した記事です。

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    未来予測



     そろそろ年度末となり今期の業績見込み、来年度の業績予測をされている
と思う。
    これを未来予測と位置付けると、科学空想小説(SF)と関連付ける
ことができるかも知れない。
    ロボットが活躍する未来を築いたロボット工学の
元祖といえば「ロボット三原則」を提唱した小説家アイザック・アシモフを
上げることができるだろう。
    「ロボット三原則」は1957年に発表されている。

アシモフは1950年代の実績からロボット社会を予測したのだろうか?
    
1950年代後半にようやくテレビ(白黒)洗濯機(脱水機能なし)冷蔵庫が
普及し始めた頃だ。こんな時代から未来を予測してロボットを考えたはずは
ない。アシモフはロボットが活躍する未来を予測したのではなく、可能性を
見出したと考えたほうがよさそうだ。



    一方、業績予測は実績を積み上げて来季の業績を予測する。
ただの言葉遊びのように思われるかも知れないが、業績予測は今までの積み
上げしかできない。しかし「業績の可能性」と考えれば過去の実績を考慮する
必要は無くなる。可能性を追求すれば予測より遥かに楽しい未来が描けると
思うが如何だろう。


    このコラムは、2022年4月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第1248号に掲載した記事です。

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    問題と答え

     「勝者はいつも答えを出そうとする。敗者はいつも問題点しか出さない」友人が紹介してくれた言葉だ。

    文句ばかり言って行動を起こさない人は「敗者」と呼ばれてもやむを得ない。
    問題に対して答え(解決方法)を見つけようとする人は「勝者」に一歩近づく。その上で解決行動を取らねば「勝者」にはなれない。

    しかし問題点を出す人が必ずしも敗者とは言えないだろう。
    問題点に気が付かない人は、解決行動には至らない。問題点を言って終わりにしたとき「敗者」が決定する。

    したがって「問題点を出す」と「答えを出そうとする」は勝者の一連の行動と考えた方が良さそうだ。真の勝者は問題点を見つけ、その解決方法を考え、解決する、と言う一連の行動を取れる人と考えた方が良かろう。

    もちろん人には得手・不得手がある。問題点しか出さない人も、解決方法を考える人、解決行動を起こす人とチームになれば「勝者」になることができる。
    組織の中で敗者と勝者の色分けをするより、それぞれの力を発揮する「場」を作ることを考えた方が組織が活性化するはずだ。


    このコラムは、2022年4月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1286号に掲載した記事です。

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    流出防止と再発防止

     顧客に不良品が流出した場合、当然改善対策を要求される。
    この時注意しなければならないのは、流出対策と再発対策の違いだ。流出対策とは不良品が顧客(次工程)に流出しない様にする対策だ。一方再発対策は不良が再発しない様にする対策となる。

    検査工程で不良を検出できないのであれば検査方法を変更するなり改善が必要となる。しかし「ダブルチェック」「検査員の再指導」などの対策は、あまり効果を期待できないだろう。

    流出防止より再発防止の方が効果は高いはずだ。検査ではなく作業そのものを改善、もしくは設計を変更し不良が発生しない様にする。

    検査で不良を除去するという考え方は、検査を完璧にするという課題を解決しなければならない。しかし不良を作らない(作業方法または設計を改善)様にすれば、流出防止は不要となるはずだ。


    このコラムは、2022年3月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1270号に掲載した記事です。

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    ロシアとウクライナ

     タイトルから珍しく政治的な話かと期待(?)された方も有るかも知れない。
    しかしヒトラー下のドイツとロシアの独ソ戦争を、女性狙撃兵たちの体験から語る小説「同志少女よ、敵を撃て」の中にある一節をご紹介したい。

    「ナチスドイツはウクライナを奴隷化するために戦った。ソ連は目的のためにウクライナを奴隷化した」

    小説中でウクライナ出身の少女狙撃兵が語った言葉だ。

    著者の逢坂冬馬氏は本作「同志少女よ、敵を撃て」でアガサ・クリスティー賞大賞を受賞し作家デビューしている。本作は2021年11月の出版なので、現在報道されているロシアのウクライナ侵攻とは無関係だろう。

    しかし本作でウクライナ出身の少女に語らせた「ナチスドイツはウクライナを奴隷化するために戦った。ソ連は目的のためにウクライナを奴隷化した」という一節は今のウクライナの状況を言い当てているのではなかろうか?


    このコラムは、2022年5月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1287号に掲載した記事です。

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