カテゴリー別アーカイブ: コラム

教育・訓練はムダか?

 新入社員に教育・訓練をする。職場異動者に教育・訓練をする。昇格者に教育・訓練をする。経営者にとって従業員への教育・訓練は必須のモノだ。
しかし同時に、せっかく教えても辞めてしまう、と言う悩みを持っている経営者も多いと思う。

教育・訓練がムダだと思っている経営者はいないだろう。しかし教育・訓練を諦めている経営者はいる。

諦める前に方法を考えよう。
教育・訓練が効率よく行われる方法を考える。
従業員が簡単に辞めない方法を考える。

例えば仕事でExcelを使う職員がいる。
(Excelが使えるかどうか、採用時に確認していると思うが、例として考えていただきたい)

この職員にExcelのマニュアルを渡して、勉強して置けといっても、いつまで経っても仕事が出来るようにはならないだろう。普通は仕事をさせながら上司や先輩が手取り足取り教える。したがって新人が仕事に慣れるまでは、一人当たりの作業効率は半減する。
ここが経営者も上司も、教育・訓練に熱心になれないところだろう。

どんな作業でもExcelの全機能を使うわけではない。
限られた機能しか使わない。その限られた機能を効率よく覚える仕掛けを作ればよいのだ。

例えば報告レポート作成作業を分析する。
製造作業員の作業分析と同じだ。
分解した作業ごとに、必要な操作知識をピックアップする。
これを作業マニュアルとして作成すれば良い。

PC作業の場合、作業マニュアルを作成するのは簡単だ。作業のステップごとに、スクリーンショットで操作画面をコピーしてゆけばよいのだ。

製造作業者には作業マニュアルがあるだから、オフィス作業者にも作業マニュアルを準備してやればよい。これでいちいち手取り足取り教えることはなくなる。

しかしこれだけでは、足りない。
たぶんこうして仕事を教えても、すぐ辞めてしまうだろう。マニュアル仕事だけではつまらないからだ。ここに「せっかく教えても、仕事が出来るようになると辞めてしまう」という経営者の悩みがある。

仕事の全体像(任務)が分かるようにしておく。
その任務を果たすための仕事がどうなっていて、その仕事をするための作業はそれぞれどうすればよいかを明確にしておく。こうしておくことにより、新人作業者が自分で能力を上げて行く様にする。これが出来ない人(向上心がない人)は辞めていってもまったく問題はない。

そしてその先に自分で仕事を定義できるようになれば、もう一段上のステップに上れるはずだ。その第一歩が上述のマニュアル作成だ。

マニュアル作成は上司やリーダの仕事だと思うと、すぐに時間が足りないなど「諦めモード」になる。マニュアルを作るのは作業している本人にやらせる。

人の成長モチベーションは、「仕事に必要な能力>現有能力」の状況で向上する。

「仕事に必要な能力>>現有能力」ではモチベーションが萎える。
「仕事に必要な能力≒現有能力」の時はモチベーションはなかなか上がらない。
「仕事に必要な能力<現有能力」の時はモチベーションの維持が困難。

上司やリーダにマニュアル作成の仕事ばかりをさせるのは、「仕事に必要な能力<現有能力」の仕事ばかりを与えると言うことだ。

一方作業員にとってマニュアル作成の仕事は、「仕事に必要な能力>現有能力」となるはずだ。自分の現有能力より少しだけ高い仕事を与え続ける。それが従業員の成長実感となれば、簡単には辞めないだろう。

経営者や上司が、教育・訓練のためにすべき仕事は、マニュアルを作ることではなく、どうすれば従業員を育成できるか考え、仕組みに落とし込むことだ。

我が師・原田則夫氏は、農村からの出稼ぎ作業員に、コストは固定費と変動費に分かれていることを教え、損益分岐点を教えた。これで彼女が退職後も食堂の経営が出来るようにしてやる。自分の日本語通訳に、秘書業務や会計学を教え、転職させて会社経営者とした。

上司は部下・従業員の生涯の幸せのために、育成をする。
部下・従業員は自分の成長のために仕事をする。
この二つがかみ合えば、強い求心力となるはずだ。


このコラムは、2012年2月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第246号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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即戦力なんて存在しない

 「即戦力なんて存在しない。だから育てるんだ」スティーブ・ジョブズの言葉だ。

スティーブが創業したピクサーは、ハリウッドでは特異な存在だった様だ。

普通のハリウッド企業は、脚本などのアイディアはお金を出して買う。
必要な人材は、フリーランスで雇用する。
人材は必要な時に、即戦力を買って来ると言う訳だ。
仕事がある時だけに、人材を調達すれば、経営は楽になる。

しかしピクサーは持ち込みのアイディアは使わない。人材は社員として雇用する。
つまり、外のアイディアには金を払わない。その代わり、人財を育てるのに金を使い、内部からアイディアが生まれる様にする。

こういう考え方は、昔の日本企業が持っていた考え方だ。
「家族主義」「人は育てて使う」こういう考え方が、効率優先の短期業績主義経営によって忘れられている。

短期業績主義以外に、従業員の流動性も、中国に於いて日本的経営を難しくする要因となるだろう。折角育てても、すぐに辞めてしまうのでムダだ。人材育成は諦めた、と言う日本人経営者に会った事もある。

しかし、使い捨ての企業に労働者が魅力を感じる事はない。本当の所は、人財育成をしないから人は辞めて行く。即戦力だと思って金で買って来た人材は、すぐに金でよそに買われて行く。

従業員を「人材」(ヒューマンリソース)と考えれば、必要なリソースを金を使って準備をすれば良いと言う考えになるだろう。
しかし本当に使える「人財」はヒューマンキャピタルだ。
人を財産に変えるには、自分たちで磨き上げるしかない。


このコラムは、2013年3月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第301号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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未来を変える

 先週のメールマガジンで、セイコーウオッチ中国の董事長・吉村等氏の対談記事について書かせていただいた。

「中国で100年間生き続ける秘訣」

100年前に中国に進出したセイコーは、今の中国を想像することも出来なかったに違いない。日中戦争があり、共産革命があった。中国は、100年前とは全く違う国になったと言ってもいいだろう。

よく「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」と人はいう。
しかし上記のような中国の変化は想像すらできなかったのだから「未来は変えられる」というのは、疑問が残る。

また日本は少子高齢化が進んでいる。
「未来の年表」という書籍によると、2020年には女性の過半数は50代となり、少子化に拍車がかかる。40年後には日本の人口は9,000万人を割るそうだ。

参考:「未来の年表」河合雅司著

この未来を変えることができるのだろうか?
個人の力では全く不可能だろう。国を挙げて経済環境を改善し「明日はきっと良くなる」と国民全員が実感できなければ無理だろう。ひょっとすると日本は人口減少の帰還不能点を越えてしまっているのかもしれない。とすれば、人口減少という未来は変えられないことになる。

では「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」は根拠のない希望に基づく戯言なのだろうか?

心配性ではあるが楽観的であるという、矛盾した性格の私は、他人も未来も「変えられる」と思っている。しかしちょっと言葉を補う必要はある。

「他人は変えられない。しかし自分が変われば他人に対する態度が変わり、その結果他人の行動が変わる」
「未来は変えられない。しかし自分が変われば未来に対する準備が変わり、その結果未来の意味が変わる」

「能力も意欲もない部下」というのは、上司がそう認識し、そう定義しただけだ。
部下に対する認識・定義を「教えがいのある部下」とすれば、一生懸命指導し、部下の能力と意欲を高めようとする。その結果、部下は上司を信頼し貢献してくれることになる。

「人口減少」という日本の未来は、帰還不能点を越えてしまえば、変える事は出来ない。しかし人口減少の影響を予測すれば、新規事業やサービスを準備する事が出来る。そうすれば人口減少という灰色の未来は、光り輝く希望の未来に変わる。

他人も未来も変わっていない。しかし自分が変われば、変わらない他人や未来の自分に対する意味が変わる。その結果変わらないはずの他人や未来が変わる。

「他人を変える事ができる」と考えることは「不遜」だ。
しかし「他人は変わる事ができる」と考えることは「敬意」であり「尊重」だ。


このコラムは、2017年9月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】560号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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大局に立ち些事に固執

 企業の経営者たる者は、大局に着眼し、経営の目的・理念を定め、ビジョンを語り、目標を定めなければならない。そして日々の経営には、些事にこだわる事が必要だ。

1%でも可能性があれば果敢に挑戦する。
99%安心でも、1%を心配する。
経営者とは、こうした相反する気質を併せ持たなければならない。

1%を心配するココロが、些事にこだわるという事だと思っている。

哲学者であり教育者である森信三はこう語った。

学校の再建はまず紙屑を拾うことから。
次には靴箱のカカトが揃うように。
真の教育は、こうした眼前の些事からスタートすることを知らねば、
一校主宰者たるの資格なし

細部に神は宿る。
靴箱の靴がきちんと揃っている。
こうした些事を整える事が、全体を整えることになる。

学校経営も企業経営も、人をマネジメントしなければならないという面では同じだ。
学校は学生を育てることにより、社会に貢献する事が使命。
企業は従業員を育てることにより、利益を上げ社会に貢献する事が使命だ。

そのためには、従業員が仕事を通して育ち、その結果利益が上がると言う組織文化を持たなければならない。その基本が5Sであり、5Sの中で最も重要なのが「躾」だと思っている。

森信三がいう、しつけの三原則とは、

  1. 朝のあいさつをする子に。
    それには先ず親の方からさそい水を出す。
  2. 「ハイ」とはっきり返事のできる子に。
    それには母親が、主人に呼ばれたら必ず「ハイ」と返事をすること。
  3. 席を立ったら必ずイスを入れ、ハキモノを脱いだら必ずそろえる子に。

これは、学校、企業を問わず躾の大原則だろう。

挨拶ごときと考えては駄目だ。挨拶が組織の雰囲気を作る。雰囲気が組織文化の基礎となる。淀んだ雰囲気では、人の志気は上がらない。志気が上がらねば生産性も上がらない。

「ハイ」という返事が、コミュニケーションの基本だ。
コミュニケーションがない所には、信頼関係が発生しない。
コミュニケーションの量と質が高い企業では、ストライキなど発生しない。
まずは「ハイ」という返事がコミュニケーションの量を上げることになる。

椅子をそろえる、履物をそろえる、という事は、ただ見た目を整える事ではない。それは次に使う人への思いやりだ。次工程への思いやりがなければ、良い製品は生産出来ない。

これらを些事と考える経営者は、5Sで最も重要な躾が出来ない。経営者としてまず取り組むべきは、躾だ。
躾は、箸の上げ下ろしの様な些事にこだわりを持たなければならない。

躾とは、良い習慣を身につけさせ、決まりを守るココロを育てる事だ。
良い組織文化を作り、組織の中のコミュニケーションの質と量を上げ、相互に思いやりを持つ組織を作る。これが躾の目標だ。

参考図書:
「修身教授録」森信三著


このコラムは、2012年12月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】289号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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中国で100年間生き続ける秘訣

 セイコーウオッチ中国の董事長・吉村等氏の対談記事を読んだ。グループウェアのサイボウズが開催した上海のセミナーでサイボウズ代表・青野慶久氏との対談だ。

「大事なのは、明日の売上よりも“信用”」中国で100年間生き続けるセイコーブランドの秘密」

セイコーは100年前から中国に進出しているという。清朝が終わり中華民国が樹立してすぐの頃だ。改革開放時に安い労働力を求めて、中国に進出したのとはわけが違う。市場としての中国に進出したのだろう。

以前愛用していた時計のステンレスバンドの接続ピンがなくなり、近所の時計店に駆け込んだことがある。中国人店主は「おお成功」だ、と感嘆の声をあげ、良い時計だと褒めてくれた。セイコーは「成功」ではなく「精工」ではなかろうかと思ったが、私の中国語では通じないだろうと思い黙っていた(笑)

私の感想では、セイコーは中国でブランドを築いていたと思っていた。
しかし満足のゆく業績ではなかったのだろう。外部から吉村等氏がトップとして招聘された。
記事を要約すると、吉村氏の改革は次のようになる。

組織のコミュニケーション量を上げる。

 毎朝上司から挨拶をする、程度の改革ではない。部門の数を減らし部門間のコミュニケーションを少なくした。蛸壺型組織が多い中国では部門の壁が部門間のコミュニケーションの障害となる。逆説的な方法に見えるが、現実的な対策かもしれない。

強いプロダクトを持ち、フォーカスする。

 技術的に真似できない強さ。これは多くの日系企業が持っていると思う。そして市場で売れる強さ。吉村氏はデザイン、機能、価格帯でオンリーワンのポジションを見つけ、そこにフォーカスしている。

利害関係者を巻き込む。

 中国ではECマーケットが急速に成長している。ECマーケットで成功するのはプラットホームを提供している企業を喜ばせること。そのようなコンテンツをどんどん上げてゆけば、プラットホーム企業は集客のためにより目立つようにしてくれるという。いわゆる「Win-Win」の関係を作る。具体的には時計職人を紹介する動画コンテンツをあげると、アクセスが増える。アクセスが増えるとプラットホーム企業は喜び、よりアクセスが集まるところにコンテンツを置いてもらえる。

過去の成功事例は成功事例ではない。

 一般的に言えば過去の失敗事例を防ぎ、過去の成功事例を再生することが、成長への道のように思える。確かに失敗事例は、方程式化することにより再発を防止することができる。しかし過去の成功事例は、足かせとなることの方が多い。それは成功事例が成り立つ要因が時間とともに変化してしまうためだと考えている。つまり昨日の成功事例を方程式化できても、今日は適用できなくなってしまうということだ。

スピード

 前項の事例で説明したのと同様に、昨日の戦略は明日も使えるかどうか不明だ。むしろ昨日の戦略は明日には使えないと考え、今日中に行動する、その方がうまくゆく確率が上がるだろう。
吉村氏は11月11日(光棍節。本来独身者の日であったが、なぜかネット特売の日になっている)ならば今(8月)の戦略が通用するだろうが、春節には別のことを考えなくてはならない、と言っている。

いかがだろうか?
100年とは言わずとも、あなたの会社が10年20年後も中国で戦えるように、信頼される企業になるヒントとなっただろうか?


このコラムは、2017年9月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第557号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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整理の定義

 先週のコラムでは、定義をすることが重要であると書いた。
そしてあなたの会社では5Sの「整理」が定義出来ているだろうか、と問題提起した。

5Sは元々日本で考え出された工場管理の方法であるが、いまや中国でも日系企業ばかりではなく、中華系企業も盛んに5Sの標語を掲示してある。

しかし何か違和感を感じている。日系の工場も含めて「見せ掛けの5S」になっているように思える。

本来5Sとは生産性改善、品質改善の基本であって、モノ造りだけではなく全ての会社に適用可能である。5Sの目的は「儲かること」でなければならないと考えている。

「明日お客様がいらっしゃるから5Sを徹底するように」と発破をかけること自体が5Sの本当の意味を理解していないことだといえる。

5Sにおける整理の定義は、
「要るモノと要らないモノを区別して、要らないモノを捨てる」
と言う事になっている。

そして、先週のコラムに書いた様に定義には目的と方法論が入っているべきだ。
しかし5Sの定義は方法論だけになっている。
Howはあるが、Whyがない。まだ片手落ちだ。

何のために(目的)整理をするのだろうか?

要らないモノを捨てて、有効スペースを増やす。
有効スペースが増えれば、単位面積当たりの生産性があがる。

要らないモノを捨てて、作業スペースを増やす。
作業スペースが増えれば、不良リスクが減る、作業性が改善できる。

今必要ない製品在庫や、中間在庫を捨てて、キャッシュフローを改善する。
外部に倉庫を借りていれば、倉庫の賃料を節約できる。

整理の目的は、一言で言ってしまえば「業績改善・貢献」だ。
しかしこれでは、定義が不明確となり解釈にバラツキが出る可能性がある。一つずつ丁寧に「有効スペースを増やすため」「作業スペースを増やすため」「キャッシュフローを改善するため」と目的を定義に入れた方が良いだろう。

このように定義すれば「整理」と言った時に何をどんな風にすべきか明確になるだろう。


このコラムは、2012年2月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第243号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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改善の定義

 定義をすると言うことは重要であるが、意外と疎かにされているのではないだろうか。

例えば5Sの定義は出来ているだろうか?
整理・整頓・清掃・清潔・躾け、全て言葉として理解できる。
しかし5Sで整理と言った時に、何のために何をどうすればよいのかは、言葉の理解とは別ものだ。
全員が、整理とは何のために何をどうしなければならないのか、理解できるようにするのが定義だ。

空間の2点を決定すれば、直線は唯一つに定義できる。
同様に目的(何のために)と方法論(何をどうする)の2点を決定しておけば、モノゴトは定義が出来るはずだ。

では「改善」はどのように定義をしたら良いか?

改善の目的と方法論は、
目的:仕事の期待成果を効率的に達成する。
方法論:仕事のやり方を選択または変更する。
となるだろう。

つまり改善を定義すると、以下の様になる。
「仕事の期待成果を効率的に達成するために、仕事のやり方を選択または変更すること」

従って改善とは仕事そのものである。

「日々の生産・出荷に終われて、改善の時間が無い」と言うのは言い訳に聞こえる。時間がないから仕事をしないと言う理屈はありえない。

しかし、優先順位があるのも事実だ。まずは出荷をしなければ、改善をしても意味はない。

問題は、改善と言う課題に対して、時間と言うリソースが不足している。
このような問題を解決することが「経営」だ。

必ずしもこういう問題を放置しているわけではないと思う。
しかし有効な解決策を見出していない状態は、ただ悩んでいるだけと同じだ。
このような状態が続けば、近い将来出荷さえままならなくなるだろう。

時間リソースは一人ひとり有限だ。しかし借りてくることは出来る。借りてきた時間で改善をする。改善できた時間で更に改善する。
このようにして、組織の中に改善文化を築けば、強い競争力を手に入れることが出来る。
このような決断をすることが「経営」と言うことだろう。


このコラムは、2012年1月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第242号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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QCC活動

 私は幾分ヘソが曲がっている様で(大いにヘソが曲がっていると言う知人は多いが)大学院を卒業後、従業員30人程度の会社に就職した。コンサル会社ではない。製造業だ。開発型のファブレス企業でもない。製造部門の作業員も入れて30人の立派な零細企業だ(笑)

そこから突然1部上場企業に転職した。最初に配属された製品開発部署の課員が30人以上いた。

零細企業では、今日の飯の種を設計する(設計期間1週間なんて当たり前)。しかし転職先では1年後、2年後に商品化する製品の設計をしている。大いに規模の格差を実感した。更にカルチャーショックを受けたのは「QCC活動」だ。実際の開発業務とは別のテーマをサークルごとに自由に取り組むことが出来るのに大いに感激した。長期にわたる開発プロジェクトの合間に、短期間で完結出来るテーマに取り組むことが、気分転換にもなっていた。

自分自身の意志とは逆に、社内のQCC活動が徐々に形骸化して行った。
そんな折に、品質部門を担当することになり、活動する側から指導する側に立場が変わり、どうすれば再び活発になるかを考えた。そのお陰で、事業部の代表サークルが社内の成果発表会で好成績を取れる様になった。

独立後、中国工場の指導でも顧客の現場リーダ、管理者でチームを作りQCC的に改善をするスタイルでやっている。

QCCスタイルで活動することにより、自主性や協調性を養う、改善手法や取り組み方を実体験を通して教えることができる。この方法により、契約期間が終了した後も、顧客社内で改善が継続する様になる。

日本のQCC活動と少し違っているのは、テーマを経営幹部とサークルメンバーが一緒に選定するところだ。ボトムアップでも、トップダウンでもなく、トップ・ボトム協調型と言えば良いだろうか。活動テーマ選定に関しては、サークルの自主性を損なわない様にトップが関与するスタイルだ。その後の活動はメンバーの自主活動となる。

これにより、経営層が狙いたい成果と、メンバーの自主性、改善能力向上を目指すことができる。


このコラムは、2015年6月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第430号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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信じる力

 私は心配症だ。
品質保証の仕事をしていると、心配し続けることになる。一種の職業病だろう。

例えば、
作業台の上で不良品が製品に混じったらどうしよう。
倉庫の中で、違う部品が混じったらどうしよう。
運搬中に製品が荷崩れしたらどうしよう。
こんなことをいつも心配しているから、不具合を未然に防げるのだと思う。

自分自身の事はあまり心配していない。きっとうまく行くといつも考えているからだ(笑)
今月の売り上げが少ないと心配することはあるが、たいてい次の日には忘れている。独立してここまでやって来れたのは、自分の事を心配しないからだろう。

部下も同様だ。
部下を信じていれば、きっと出来る。
信じる力が足りないと、仕事を任せることが出来ない。仕事を任せなければ部下の成長はない。部下のことを心配していると、うまく行かない。

部下は信じて用いる。心配しないで部下に仕事を任せる。
信じてもらえれば、それに応えようとする。その結果成長する。

部下を信用すれば、部下は信頼と感謝を返してくれる。
信用とは、信じて任せるが、責任は自分で取ると覚悟を決めること。
部下を信じるということは、自分自身を信じることだ。


このコラムは、2012年6月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第261号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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人手不足で品質低下?

 日本経済新聞の電子版に「反日だけでない中国リスク 人手不足で品質低下が顕著」と言う解説記事がでていた。
有料会員限定の記事だが、登録をすると無料で読める(一ヶ月20本まで)。
電子製品の組み立てをしておられる方には、この記事が参考になると思う。

記事の解説を要約すると、
「反日」という政治リスクによる、日本製品の買い控えが日本メーカに脅威をもたらしているが、もう一方で、生産委託先の中国工場の品質低下が深刻な影響を与えている。その主要因は、人手不足による熟練工の不足だ。

確かに、機械加工など技能工による作業が中心の生産は、作業員の熟練度が、直接製品品質を左右することがある。

しかし記事の事例として上がっていた電子製品の組み立ては、比較的単純作業が多く、かつ製品検査を機械化出来る割合が多いので、それほど作業員の熟練で出荷品質が左右されることはない。

  • 半田手直し作業による、回路ショート・オープン、疑似半田、半田ボール。
  • 半田手直し作業による、プリント基板の破損。
  • プリント基板割り代の取り忘れ。
  • 組み立て干渉による筐体の嵌合不良。
  • プラスチック成型部品の成型不良。
  • 解説記事には、上記の事例が紹介されていた。はっきり言えば、熟練以前の問題だ。

確かに、電子製品の高機能・小型化に伴い、プリント基板の実装密度向上、微細化が半田付け作業を難しくしている。しかし半田付け作業は、正しい方法で訓練すれば、2、3日で作業が出来る様になる。

更に、工程内不良が後工程に流出してしまうのも問題だ。
例えば、半田手直し作業が完了した製品を、工程の何処に復帰させるか、をきちっと検討するだけで、流出が防げる。
プリント基板の割り代取り忘れなどは、簡単な治具を用意するだけで、次工程流出を防止出来る。

通常は、プリント基板アッセイ単体状態でICT(インサーキットテスタ)検査を実施する。上記の半田付け手直し作業による不良のほとんどは、ICTで見つかるはずだ。ICTで検出不可能な不良モードを見つけたら、検査方法を改善する。
ICTの変更では検出不可能と分かれば、代替え検査を検討する。この様な努力を継続しなくてはならない。(本来こういう作業は、量産開始前にFMEAを実施し、先に潜在する問題をつぶしておく)

2000年当初、中国の生産委託先工場(台湾系企業)に生産委託をした電源製品(部品点数200点弱の小型アダプター電源)は、生産開始翌月から工程内不良が100ppmを切った。検査がうまく出来ていなくて工程内不良率が低かった訳ではない。この製品は顧客、市場からの不良返却は数ppmだった。

この製品は自社工場で先に生産を立ち上げており、3ヶ月の初期流動期間に発生した工程内不良を、即フィードバックし設計変更、工程変更を繰り返した。その結果、生産委託先に移管した当月から工程内不良率が100ppm台、翌月から100ppm未満となった。

若年労働者の製造業離れ、仕事に対する忍耐力不足などにより、作業員が定着しないことが主要原因の様に捉えられているが、本当にそうだろうか?

2000年前後にも、作業員の流動性は高かった。
確かに当時の作業員の「忍耐力」は抜群に高かった。それは彼女たちに「家族の生活を支える」という大きな使命を持っていたからだろう。当時は工場経営者は特に彼女たちの労働意欲を高める努力をしなくても、労働者が自ら労働意欲を高めた。その結果、少しでも賃金の良い工場にすぐに転職して行った。しかし募集をすれば、すぐに出稼ぎ労働者を集めることができた。

非常に楽に労務管理が出来た訳だが、これが続くはずはない。
努力すべきことは努力する。工夫すべきことは工夫する。
これが本来の経営だろう。


このコラムは、2012年12月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】288号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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