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ダイソン、ファン吸引術 値下げにも緻密な戦略

 日本の家電大手が「白物家電は成熟市場」として撤退や縮小を決める中、掃除機大手の英ダイソンが快走している。技術者であるジェームズ・ダイソン氏が創業した同社は「消費者調査に頼らない」「広告宣伝費より技術開発に投資」「安売りはしない」という3原則を掲げる。だが、その裏には原則を覆すような緻密な戦略が隠されていた。

全文

(日経新聞電子版より)

 ダイソンは消費者調査をせずに、一般家庭に入り込み消費者を観察している。
技術者が家庭での生活を観察し、商品開発に反映させる。日用品メーカP&Gが実践している手法だ。
ダイソン氏曰く「商品開発では市場調査を先行させない。従来家電に使い慣れている消費者はその『問題』に気付きにくいためだ」

消費者が気が付いていない問題を、メーカが先回りして「問題解決」する。例えばAppleと言うメーカは、消費者がまだ体験したことがないユーザ・イクスペリアンスを提供しようとする。どちらも市場調査では分からない。

白物家電業界が「コモディティ化」しており、業績が上がらない。と言うのは中途半端なメーカの言い訳に過ぎないのではないだろうか?

ダイソンや、先週ご紹介したハイアールの様な商品開発をすれば、市場のハイエンド価格帯を押さえることができる。

日本のメーカは「高品質」「高機能」に対するプライドが高く、コモディティ化した新興国ボリュームゾーンに投入する製品を商品化出来ないでいる。単機能、そこそこの品質の製品を安く販売することでボリュームゾーンを取る事が出来る。
今まで手で洗濯していた人達に、全自動ドラム式洗濯機は必要ない。まずは家事労働の時間を物質的に豊かになる為の活動に充てる。その結果ボリュームゾーンが徐々に上がり、ハイエンド価格帯のマーケットが生まれるはずだ。

日本は自身が、敗戦国から経済大国に成長する過程を、半世紀の間に体験している。その日本の発展のほぼ相似形の新興国市場がなぜ取れないのか?

「高品質」「高機能」で世界を制したと言うプライドが、過去を忘れてしまったのではないだろうか?
天井の白熱電球の横から電熱器の電源を取る為に「二股ソケット」を商品化した。これが大企業パナソニックの最初の一歩だったことを、そして国民の生活向上とともに企業が発展した歴史を思い出す。そうすれば、今発展途上にある国々で必要なのは「高品質」「高機能」ではないことに気が付くはずだ。

その上で「品質」「機能」の他に「感性」に気が付けば、ハイエンド価格帯も制覇出来るだろう。「感性」とは喜び、ワクワク感、感動のことだ。


このコラムは、2015年6月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第429号に掲載した記事です。

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シニアを癒やす南国の風

 日経新聞の記事によると、定年後海外で第二の人生を送る人が増えているという。2013年の推計では、海外に2週間以上滞在した日本人は115.6万人となっている。2013年は2度日本に帰国しているので、115.6万人の内の2人は私だろう(笑)

滞在先として、マレーシア、タイ、ハワイが人気の上位三位となっている。
残念ながら、中国が老後余生を送りたい国のトップ10に入ることはないだろう。

私もそろそろ高齢者と呼ばれる年齢にさしかかって来た。こういう話題が気にかかる(笑)

若い頃は、定年になったら農業をしながら晴耕雨読の生活をするのが夢だった。
しかし今の仕事が楽しくて、当分はそういう生活をする気はない。一応70歳で引退をする予定であるが、中国に住み続けることはないだろう。やはり日本が良い(笑)

家内と二人でニュージーランドに移住して、朝夕は鱒釣り。家内は渓流の脇で客の来ないコーヒーショップを経営。昼間はそのコヒーショップで読書、と言う妄想を抱いたことがあるが、どうも現実味がない。

朝散歩から帰り、納豆と生卵で朝食をする。そんな日本の生活がやはり良い。
しかし日々仕事をしていると、その様な隠居生活がまだ想像がつかない。私の周りにいる年長者達は、会社経営は次の世代にバトンタッチしているが、まだまだ現役で社会活動をされている方が多い。
多分私もそんな余生を送るだろう。南国の風は年寄りには心地よすぎるだろう。


このコラムは、2015年6月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第429号に掲載した記事です。

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試行錯誤

 「試行錯誤」という言葉を見ていて、なんだか変だと感じた(笑)
英語に直せば「Try and Error」試しては失敗する。「Cut and Try」という言葉もある。上手くゆくかどうか分からない事を端から試してみる。

失敗するために試行しているような印象を持つのは、私だけだろうか。

上手くゆく方法をいくつも考え、その組み合わせで最善の方法はどれか検証する。つまり試行が目指すのは「錯誤」ではなく「正解」だ。
実験計画法、タグチメソッドなどの手法も試行錯誤を目指してはいない。効率よく試行、正解に至るための手法と言えるだろう。

つまり私たちが目指すのは、効率よく正しい答えを見つけ成果を得る事。試行錯誤ではなく試行成功だと思うのだ。


このコラムは、2019年6月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第840号に掲載した記事に加筆しました。

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続・列車逆走事故

 6月1日夜に発生した横浜市シーサイドライン自動運転列車逆走事故をメールマガジン835号「列車逆走事故」で取り上げた。

「列車逆走事故」

運輸安全委員会は6月14日に事故原因を発表している。

 横浜市の新交通システム「シーサイドライン」で無人の自動運転車両が逆走した事故で、車両内の電気系統が断線したまま約50分間運行していたことがわかった。国の運輸安全委員会が14日、調査経過を公表した。

 事故は1日に折り返し駅の新杉田駅で起きた。駅側の自動列車運転装置(ATO)が出した方向転換の指示が車両側のモーター制御装置に伝わらず、逆走したとみられる。

 運輸安全委によると、モーターへの指示は、車両内のケーブルを通じて制御装置に伝わる。一方、新杉田駅を出る下り方向への指示と、同駅に向かう上り方向への指示はそれぞれ別のケーブルで伝えていた。

 運転装置の記録から、事故の約50分前に下り運転をしていた際、下り方向の信号を伝えるケーブルが断線したとみられる。シーサイドラインには断線を検知する仕組みがなく、いずれの方向指示もモーターに伝わらなくなった場合は直前までの方向に進むようになっていた。そのため列車はそのまま走り続け、
終点の金沢八景駅で別系統のケーブルを使って上り方向に折り返した。再び新杉田駅に着いた際に断線でモーターの進行方向が切り替わらず、事故が起きたとみられる。

朝日新聞ディジタルより

 駅側ATOから車両側制御装置に「下り方向への指示」「上り方向への指示」が別ケーブルで伝わる。という記述が理解に苦しむ。ケーブル中を「指示」が車両制御装置に伝わる。というと回線中をコマンドが伝わり、それに対しACK・NACK(了解・非了解)の返事が返ってくるイメージを持つ。一方上り・下りの指示がそれぞれ別のケーブルで伝えていた、ということは「指示」というよりON・OFFの電気信号でモーターの回転方向を制御していたのだろう。

問題の根本原因である断線原因について触れていない。断線があることを前提とするならば、ATOと車両制御装置間の通信は双方向とし、コマンドとアクノレッジのやり取りをするようにすべきと考えるがいかがだろう。
装置間の電気信号配線を光ファイバーにすれば二重化しても配線数は少なくなるはずだ。

ところで記事を注意深く読んで見ると「運転装置の記録から、事故の約50分前に下り運転をしていた際、下り方向の信号を伝えるケーブルが断線したとみられる」とある。そのすぐ後に「シーサイドラインには断線を検知する仕組みがなく」と書いている。断線を検出する仕組みがないのに、「約50分前に断線」と断定できるのだろうか?


このコラムは、2019年6月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第841号に掲載した記事に加筆しました。

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ハイアールの“価電”戦略続々!

 中国の家電メーカ・ハイアールが三洋電機の冷蔵庫事業、洗濯機事業を買収して作ったハイアールアジアの事業戦略説明会が6月2日に開催されたそうだ。
日経トレンディの記事「ハイアールの“価電”戦略続々! 新参社長の新発想を旧三洋技術者が形に」から、家電製品の将来を考えてみたい。

ハイアールアジアの社長・伊藤嘉明氏の経歴を見ると、意図的に家電業界を避けてキャリアアップして来られた様にすら見える(笑)家電業界の「新参者」を自らのアイデンティティとされている。

その新参者が発表した新製品は、

  • 扉が液晶ディスプレイで出来ている冷蔵庫
    冷蔵庫の扉に液晶ディスプレイがついている訳ではない。扉そのものが32”の液晶ディスプレイで出来ている。
  • R2D2型移動式冷蔵庫
    スターウォーズに出て来るロボットコンビのR2D2の形をした小型冷蔵庫。呼ぶとそばまで来て冷えたビールを体内から取り出すことができる。
  • 移動式冷蔵庫
    キャリーバック型の冷蔵庫。冷凍食品を買った後カフェでのんびりお茶する事が出来る。
  • 水を使わない洗濯機
    オゾンのエアシャワーでスーツやジャケットを洗浄。
  • スケルトン洗濯機
    洗濯機の中で洗濯物が水流に乗り漂っているのを眺める洗濯機。

などなど、誰がそんなモノを買うんだ、と突っ込みたくなる製品ばかりだ。しかしそんな製品が有ったら楽しいだろうなぁと自分も思ってしまう(笑)

伊藤社長の説明によると、彼らが造っているモノは「家電」ではなく「価電」であり「可電」だと言う。つまり「冷やす」「保存する」「洗う」「乾かす」と言う基本機能で差別化出来なくなったコモディティ製品の新たな「価値」や「可能性」を提供する、と言うコンセプトだ。

洗濯機の歴史を見ると、洗濯機が商品化されたことにより家庭労働の負担が劇的に軽減された。それまではタライの前に腰を下ろし、洗い板を使って手で洗っていたのだ。それが自動となる。更に脱水機が付く。その上洗濯槽と脱水槽が一つとなり、洗濯物を移すことが必要なくなった。更に乾燥機も一体化し
洗濯物を干す手間すら要らなくなった。

ここまで来ると、もう新たに追加する機能が見当たらなくなる。洗濯物がからまない様に水流を工夫する。夜でも洗濯出来る様に静粛性を上げる。
買ってもらう為に値段を下げる、と言う方向に行かざるを得なくなる。

国内マーケットが縮小方向に向い、成長する新興国市場を目指しても、今までのプライドが有り、そこそこ品質・単機能の新興国ボリュームゾーンに訴求する製品が作れない。そんな所が、従来の家電メーカが抱えている悩みだった。

そこに新参者・伊藤社長が、商品開発に新たなコンセプトを持ち込んだ。
開発設計者は、価格競争に勝つ製品ではなく、自分たちが欲しい物、お客様のワクワクする物を設計することになる。仕事が楽しいに違いない。

三洋電機が中国企業に買われてしまったと聞いた時には、元三洋電機の方々の思いを考え、国の産業に対する憂いが有った。しかしこの記事を読む限りでは、元三洋電機の方々は仕合せに働いておられると言う印象を持った。何よりだ。

そして伊藤社長の考え方は、我々も大いに参考にすべきだと感じる。
基本機能や基本性能では差別化することが困難になり、コモディティ化した製品や部品を生産している企業も、この発想をもって「価値」や「可能性」を高めたいモノだ。

例えは悪いが、製品の機能を上げる、性能を上げるのを、ど真ん中直球勝負とと例えるならば、変化球で目先を変える、更に言えばボール球を振らせる作戦が伊藤社長の発想の様に思える。


このコラムは、6月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第428号に掲載した記事です。

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法輪転ずれば、食輪転ず

 中国人の管理職・監督職の皆さんに「何のために仕事をするのか?」と聞くことがしばしばある。彼らは怪訝な顔をして「家族のため」「生きるため」「金を稼ぐため」など超現実的な事を話してくれる。

「働く事を通して自己成長しよう」という方向に持っていきたい私の下心が満たされることはない(笑)

仏教に「法輪ほうりん転ずれば食輪じきりん転ず」という言葉がある。法輪(仏教の修行)を一生懸命にしていれば、食輪も回る(生活が出来る)と
いう意味だそうだ。

仕事に打ち込むことにより自己成長する。その結果給料が上がり家族を幸せにする事ができる。これが「法輪転ずれば、食輪転ずる」の意味だろう。

つまり「食べるために働く」のではなく「働くために食べる」

昔の打工妹(出稼ぎ女工)たちは、食べるために働いていた。今の中国はもうそういう時代ではない。しかし昔の打工妹の真剣さを、今の若者と比較すると、物足りなく感じる。

「食輪は転じたが、法輪はもう少し」というところだろうか。


このコラムは、2019年6月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第837号に掲載した記事です。

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雑巾がけ

 私が小学生の頃(コミック「三丁目の夕日」の頃)は、教室の清掃は児童の仕事だった。床は雑巾がけをした。以前中国企業の指導をしたおりに、仲間の中国人コンサルにそんな話をしたことがある。

中国では、学校でも職場でも「清潔工」と呼ばれる専門の清掃担当者がいる。
汚す人と掃除する人の役割分担が明確になっている(笑)
私たちの世代は汚した人が掃除すると躾けられた。

当時指導していた中国企業からは「精益生産系統」(TPS)を指導してくれと依頼されていたが、TPSを実践できるレベルにはなく、これがTPSだといって5Sの指導をしていた(笑)仲間の中国人コンサルも日本の小学校におおいに興味を持ったようだが、今では子供達が教室の雑巾掛けをすることはないのかもしれない。

私の友人の工場は、従業員全員で床の雑巾がけをしている。
1万クラスのクリーンルームの塵埃度を測定すると、千クラスの値となる。多分毎日床を雑巾がけをしているからだと思う。クリーンルームの中は極力歩かない、掃除機をかけない。これは床に堆積した埃が空中に舞い上がるからだ。床を雑巾がけすればクリーン度が上がる、これにはちゃんと因果関係があるように思う。

ところで、当時指導した中国企業は我々に騙されて(笑)TPSの代わりに5Sの指導を受けたわけだが、5Sだけでも生産性は3倍以上になった。


このコラムは、2018年11月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第750号に掲載した記事です。

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続・統計の活用

 1月14日配信のメールマガジン「統計の活用」で厚労省「毎月勤労統計」の不適切調査問題を取り上げた。最終的には大臣の俸給返納、担当官僚の懲罰で幕引きとなったようだ。

問題を再度整理すると以下のようになる。

  • 厚労省が発表している毎月勤労統計は、従業員500名以上の事業所からの回答を回収し平均給与などを調査、発表している。
  • 規則では全事業所のデータを収集することになっていた。
  • 東京都に関しては対象事業所の1/3をサンプリング抽出し全国平均を算出。
  • 18年から、東京都のサンプリング合計を3倍して全国平均を算出

この問題の本質は、財務省に正確無比な全数データがあるのだからそれを使うべきだと申し上げた。

この意見は事情を知らぬ者の寝言だったようだ。
税務署が持っているデータは、その他の用途には使えないよう法律で決められているそうだ。役所の縦割り行政の弊害という指摘は正しかったが、法律から変えねばならないというのは、役人にはどうにもできないことだ。

統計を担当する職員が足りなかったのではないか、という予測は正しかったようだ。2004年には6000人いた職員が2000人に減っているそうだ。主に農水省の職員が減ったらしいが、厚労省も300人から200人に減っているという。

4000人もリストラしたのだろうか?
公務員は安定した職業だと思っていたが、それは過去の話なのかもしれない。
しかし統計担当の職員を各省庁が個別に抱えるというのも無駄の多い話だ。統計処理が担当ならばどの省庁の仕事でも同じようにできるはずだ。ここにも縦割り行政の弊害がある。


このコラムは、2019年1月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第778号に掲載した記事です。

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統計の活用

「誰がなぜ、こっそり補正? 厚労省の統計、広がる不信感」

 「毎月勤労統計」の不適切調査問題で、厚生労働省が11日に公表した検証結果では、なぜ不適切な調査が始まり、どうして昨年1月調査分から本来の調査手法に近づける補正がされていたのか疑問点が多く残った。ほかの政府統計への影響もまだ見通せず、野党は追及姿勢を強めている。

 「真実を統計で客観的に伝えることが使命。意図的な操作はまったくない」

 厚労省の中井雅之参事官は11日の検証結果の会見で、昨年1月調査分から補正したのは賃金の伸び率が高く出やすいやり方に変更する意図的な操作だったのではと質問されると、こう強く否定した。

(以下略)

全文

(朝日新聞デジタルより)

 1月12日付の電子版記事だ。
内容をかいつまんで説明すると以下の様になる。

・厚労省が発表している毎月勤労統計は、従業員500名以上の事業所からの回答
 を回収し平均給与などを調査、発表している。
・規則では全事業所のデータを収集することになっていた。
・東京都に関しては対象事業所の1/3をサンプリング抽出し全国平均を算出。
・18年から、東京都のサンプリング合計を3倍して全国平均を算出。

東京都分は1/3の事業所しか調査していないため、全国平均に与える影響が
小さくなる。それを補正するために東京都のサンプリング合計を3倍にして
平均給与を計算する様に変更した訳だ。東京都は給与が高めの企業が多いため、
計算方法変更後に平均給与が上昇した様に見えている。

新聞の論調は、アベノミクスに忖度し計算方法を変更したのではないか、との
論調だ(苦笑)

しかし問題はそこではないと思う。
なぜ東京だけサンプリング調査なのか?更に言えば、基礎データとして事業所
からの回答をそのまま使っているところだ。

ここを指摘すれば、東京都の事業所数が多くて職員を増やさねば対応できない、
などの理由が返ってくるのだろうか(苦笑)

しかし本当の問題は、縦割りの官僚組織にある。
平均給与を計算したいのであれば、税務署のデータを使えば勤労者一人一人の
正確なデータが手に入るはずだ。

厚労省から財務省に一言お願いすればよかったはずだ。
野党に転落しさらに分裂してしまった前政権の「事業仕分け」は何だったのか
と言いたいところだ。

誰だって正確な統計データはすでに有るとわかっていたはずだ。
それをわざわざ人手をかけて不正確な統計情報を公開していた訳だ。


このコラムは、2019年1月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第771号に掲載した記事です。

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誤操作

 中国メディアによると、香港発大連行き中国国際航空106便で10日、機体が約7千メートル急降下するトラブルがあった。中国の航空当局は13日、操縦室内で電子たばこを吸った副操縦士が、空調装置を誤操作したことが原因とする調査結果を発表した。

 トラブルは10日午後7時半(日本時間午後8時半)ごろに発生。高度約1万メートルを飛行中の操縦室内で電子たばこを吸っていた副操縦士が、煙が客室に漏れるのを防ごうと空調装置を操作した際、誤って客室内の空調システムを停止させた。そのため客室内の酸素が不足し、高度約3千メートルまで緊急降下したという。

 客室では天井から酸素マスクが下りたが、その後空調が復旧し、機体は再び通常の高度に上昇。午後10時半(日本時間午後11時半)ごろ、大連空港に着陸した。乗員・乗客計162人にけがはなかった。(瀋陽=平賀拓哉)

(asahi.comより)

 基本的には、コックピットで操縦士が喫煙するなど論外だ。電子タバコでも方式によっては、一酸化炭素を吸入することになる。

血液中のヘモグロビンは肺で酸素と結合し体全体に酸素を配給している。
ヘモグロビンは一酸化炭素との親和性も高い。一酸化炭素との親和性は高度に依存し、上空にゆけば一酸化炭素と結合しやすくなる。従って操縦中の喫煙は、相対的低酸素症を引き起こし、事故などで急減圧の際に脳に十分な酸素が配給されず、判断力等の低下につながる可能性がある。米国FAAでは、乗務時はもとより乗務8時間前からの喫煙を禁じているそうだ。

当然この事故の原因は副操縦士の規則違反にある。
飲酒の様に、喫煙による血中ヘモグロビンの一酸化炭素親和性を測定出来れば類似の事故は再発防止できるかもしれない。しかしあまり現実的とは思えない。それよりは、今回の事故で見つかった「誤操作」のリスクを解消する対策の方が有効だと思うがいかがだろう。

この事例では、副操縦士の人為ミスは「情報の誤り」「認識の誤り」「判断の誤り」「行動の誤り」の内の「行動の誤り」に分類される。

「行動の誤り」を防止するためには、
・行動そのものを取りやめる。
・行動の誤りを誘発する要因を排除する。
という対策が考えられる。

  • 行動そのものは取りやめる対策
    記事から判断すると、客室の酸素濃度が低下すると自動的に高度を下げる機能が装備されているようだ。この機能を外してしまうと本当に空調設備の故障が発生した時に困る。
    上空では客室空調設備の停止ができないようにインターロックをかけておく。
    上空で意図的に客室空調を止める必要がなければ、この対策は有効だろう。
    操縦室も空調を止める必要があるのだろうか(もちろん喫煙以外に・笑)
  • 行動の誤りを誘発する要因を排除する対策
    「押し間違えた」という人為ミスを誘発する要因を考える。
    似ているので押し間違える。
    近くにあって一緒に押してしまう。

    客室設備の操作盤と操縦室内の操作盤を分ける。
    スイッチの色・形を客室系と操縦室系で別にする。
    などが考えられる。
    操作盤の配置変更は、難しくてもスイッチの色・形の変更は現場レベルでも可能だ。

航空機会社の新機種設計にこのアイディアを取り入れれば未然防止となる。

我々製造業でも、職場での喫煙が重大な事故原因となる可能性がある。
工場そのもの、設備、従業員に甚大な被害が発生するだけでなく地域社会にも被害は拡大するだろう。

このような重大リスク対策を従業員のモラルだけに頼っていても良いだろうか?


このコラムは、2018年7月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第694号に掲載した記事です。

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