コラム」カテゴリーアーカイブ

海を渡る「半沢直樹」 復権かけアジアで戦うTBS

 今年のテレビドラマで最高の視聴率をたたき出した「半沢直樹」。TBSテレビ系で放送され日本一有名な銀行マンとなった主人公の半沢直樹が、ついに海を渡る。10月中旬から台湾を皮切りに、アジアの他の国や地域でも放送される見通しだ。TBSテレビは視聴率の低迷にもがいてきた。ただ再び人気ドラマを量産できる体制が整ったことで、今こそアジアに攻め込む好機とみる。CMスポンサーとなる日本企業とタッグを組み、広告とセットでコンテンツを現地に売り込む斬新な手法にも挑む。アジアを舞台に、「ドラマのTBS」と呼ばれた名門の復権をかけた同社の戦いが始まった。

(日経新聞電子版より)

 「半沢直樹」最終回は、リアルタイムで視聴出来た。合法なのか違法なのか分からないが、INTERNETの恩恵だ。
会社員を辞めてもう9年近くになる。それでも、このドラマを見ると会社員時代の心が興奮して眠れなくなる。「空飛ぶタイヤ」「下町ロケット」に引き続き、池井戸潤がますます好きになって来た。

最終回の終わり方を見ると、続編がドラマ化されだろう。
半沢直樹の続編「ロスジェネの逆襲」は既に出版されている。原作を今読むべきかどうか迷う所だ(笑)

ところで日本のTVコンテンツの海外戦略は何ともお寒いものがある。

昔、木村拓哉の「ロングバケーション」を中国中央電視台で放送していた。
中国でも日本のドラマが受け入れられているようで、嬉しかった。しかしその後、日本ドラマの位置は完全に韓国ドラマに奪われている。

以前中国で放送されていた『大長今』(邦題:宮廷女官チャングムの誓い)は全76話ある。
日本のドラマのほとんどが、四半期で完結なので、全10話程度しかない。

視聴率至上主義の現場では、リスク管理のために短く完結させるのだろう。視聴者の方も、娯楽の多様化などで飽きっぽくなっている。そんな事情が有り、日本ドラマそのものがどんどん小粒になっている様な気がする。

TBSの新しい海外戦略は、ドラマコンテンツだけでなくCMスポンサーもセットで提供すると言う。提供するCMスポンサーは日本企業なので、スポンサー側の広告予算を海外に流出することになる。国内売り上げは減っても、将来プラスになると言う戦略なのだろう。

将来を見据えた戦略ならば、アニメも有力なコンテンツになるだろう。
何せ未来そのものである子供が見る。日本アニメファンの子供が大人になった時、きっと日本に有利な市場が出来るだろう。
中国でも「ワンピース」「クレヨンしんちゃん」など子供向きのアニメ番組は相当人気があるようだ。アニメ番組の良い所は、キャラクターグッズ市場と連動させ易い所だろう。(中国では、きちんと版権が回収出来るかどうか、分からないが・苦笑)

日本の製造業(物造り)が空洞化してしまった今、物ばかりではなくサービス等にも焦点を当てたモノ造り産業に転換して行かなければなるまい。例えば、観光業などの産業で海外から顧客を呼ぶ。日本には、四季と言う自然資源、もてなしのココロと言う人的資源がある。
更に、創造性により価値を高める「モノ創り」に力を入れてゆかねばならないだろう。アニメ、ドラマ等のコンテンツもこの範疇だ。

物造り、モノ造り、モノ創りともに人が基本だ。特にモノ創りには者造りが重要となる。


このコラムは、2013年9月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第329号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

不便を楽しむ

 今若者の間で銀塩フィルムを使ったカメラが流行っているそうだ。富士フィルムの「写ルンです」が30周年記念モデルを販売していると聞く。

ディジタルカメラやスマホで撮影した写真で交流するインスタグラムで、「#写ルンです」と検索してみたら36,390件の投稿がヒットした。写ルンですそのものの写真も有るが、写ルンですで撮影した画像をディジタル化して投稿しているようだ。

80年代初めの頃、銀塩写真を大量に撮影していた。しかし重たい一眼レフや交換レンズを持ち歩くのが辛くなり、コンパクトカメラをサブカメラとして買ってみた。その後コンパクトカメラしか持ち歩かなくなった(笑)

ディジタルカメラが出た時は,画質が悪くて使い物にならないと感じたが、カシオのQV10を購入してみた。現像する手間がいらない。撮った写真をすぐに見る事が出来る、とうい利便性が気に入り、銀塩カメラからはなれてしまった。

その後コンパクトディジカメを使っているが、今ではiPhoneで撮影する事がほとんどだ。

考えてみれば、バブル経済期に利便性を追求し、一眼レフ→コンパクトカメラ→ディジカメ→スマホと推移して来た。

そして最近は銀塩カメラへの回帰が起きている。
写真の楽しみ方は、個人や家族と言う小単位から、SNSで広く拡散している。従って銀塩カメラは、現像の手間のみならず、銀塩フィルムをスキャンしてディジタルデータに変換する作業も必要となる。

どうも時代は、利便性や効率を重視した時代を経て「不便を楽しむ時代」に変化しているようだ。今考えれば不便だった時代に、わざわざ手間とお金をかけて回帰している。

モノへの渇望から自由になった人々は、わざわざ不便を楽しむ様になるのかも知れない。
手っ取り早く食事を済ます食生活から、ゆっくり食事を楽しむ生活に。
一つの店舗で買い物が済ませられるスーパーマーケットから、買い物そのものを楽しむ専門店に。
アマゾンが書籍を販売するリアル書店を作ったのもこの流れなのかも知れない。

「不便を楽しむ」がビジネスチャンスのキーワードになるかも知れない。


このコラムは、22016年5月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第475号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

豊洲市場ターレ事故

 東京都江東区の豊洲市場で8日午前0時過ぎ、市場内を走る小型運搬車、ターレット(ターレ)に乗った運送業の男性(50)が、荷物搬送用のエレベーターの扉に頭や首などを挟まれ、搬送先の病院で死亡した。警視庁によると、豊洲市場では昨年10月の開場以降、エレベーターの扉にぶつかる事故がほかに3件起きており、都は業界団体と連携して安全対策の強化を検討するという。

(朝日新聞デジタルより)

 新任の都知事がちゃぶ台返しをして迷走した豊洲市場で悲惨な事故が発生してしまった。

事故現場のエレベータは、高さ3.13m、幅3.75m、奥行き4.5m。扉は上下に開閉する仕組みとなっている。
事故発生時の様子が防犯カメラに残っており、エレベーターの上側扉が下がりつつあるところに男性が乗り込む様子が映っていた。

豊洲市場では昨年10月の開場以降、エレベーターの扉にぶつかる事故が他に3件発生している。都は業界団体と連携して安全対策の強化を検討するという。ターレが関わる死亡事故は今回で2件目だ。

今までの再発防止対策は、貼り紙などによる「注意喚起」だ。
人の注意力に依存する対策が有効だとは思えない。エレベータに乗り遅れれば戻ってくるまで待たねばならない。仕事の効率を考える人ならば、エレベータの待ち時間をなんとか減らしたいと考える。貼り紙など対策にはならない。

製造業の現場で仕事をしておられる方には、どのようにすべきか気がついておられると思う。このメールマガジンを本件の関係者が読んでおられるとは思えないが、有効な対策の考え方を記しておく。

「人の注意力」に依存する再発防止対策は、効果が実感できない対策の最右翼だ。注意しなくても事故が発生しない対策が本当の対策だ。疲労、心配事など様々な要因で注意力が散漫となることを前提として対策を考えねばならない。

記事によるとエレベータの扉は上下に開閉する構造となっている。上扉が下降中にターレが侵入し事故が発生している。

この状況を分析すれば、上扉が下降を開始した時点では下扉は上昇を開始しておらずターレが扉を通過できたはずだ。

したがって扉開閉の順序を変更し、下扉を先に上昇、ターレが通過できない高さとなったのちに上扉を下降させる。エレベータの制御プログラムを書き換えるだけで、変更可能のはずだ。

最初のエレーベタ事故は、ターレがエレベータ扉に衝突しただけだ。この事故が今回の人身事故につながるという「想像力」があれば、事前に対策が出来ていたはずだ。

今回の問題は、エレベータ設計者の安全考慮不足と考えるべきだ。
エレベータの死亡事故は繰り返し発生してる。それらの原因を設計時に排除する仕組みがなかったのだろうか?


このコラムは、2019年4月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第426号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

孤高社員

 以前のコラムで「支持待ち社員」に対する対処法について検討した。
「指示待ち社員」

今回は「孤高社員」について考えてみたい。
「孤高社員」というのは、自分の得意分野や、自分の仕事だと思っている仕事に対しては、情熱を持って率先して取り組み、力を発揮する社員だ。
こういう社員ならば理想的な社員に見えるが、困った事に興味が無い仕事には取り組まない。他人の仕事には、批判はするが協力はしない。従って組織の中では孤立してしまい「孤高社員」となる。

特に日本企業の様に「和」を重んじ、組織内、組織間の協調で仕事を進める組織には、困った社員となる。

中国人幹部に研修をする機会が多く、たまにこういう人にであう。
講師に向って「こういう研修は自分には不要だ」と平気で言うタイプだ。経営者は当人に不足している技量や、心構えを改善したくて研修に派遣しておられる。「職場に戻って仕事をしていろ」と叱り飛ばす事は出来ない(笑)

こういうタイプの人間は、日本人にもいる。若い頃に同僚にこういうタイプがいた。天才的なアイディアを閃き、仕事もできる。しかし仲間と協調するのは苦手だった。私も彼とは一緒に仕事をしたくないと思っていた。案の定、彼は組織の中で遊離してしまい、重要な仕事は回って来ない。
彼とは別の職場になってしまったが、ある時担当している仕事で行き詰まり、彼ならどんなアイディアを思いつくだろうかと、ふと思ったことがある。出来る事ならば、彼をプロジェクトに参加させたいとさえ思った。

「あいつとは仕事をしたくない」と言うのは私の利己的な感情であり、彼の能力を引き出す事がリーダシップなのだと気が付いた。

上記の孤高中国人社員の日本人上司も、どういう職位を与えたら彼が力を発揮するかと考えておられた。

人にはそれぞれ、ネガティブな側面とポジティブな側面がある。
普通の人はネガティブな側面を押し込み、ポジティブな側面を大きくしようとする。しかしネガティブな側面もポジティブな側面も自分自身であり、ムリにネガティブな側面を押し殺そうとすれば、自己否定に陥りがちだ。そうなれば人のパフォーマンスは十分に発揮されない。

天才肌の人にありがちだが、すごい能力があるのに、コミュニケーションが下手だったり、他人と協調することができなかったり、計画通りに仕事を進める事が苦手だったりすることがある。こういう人の苦手を無理やり克服させると、平凡な人になってしまう。

とんがった社員は、もっと尖らせれば良いのではないかと思っている。苦手な側面は、組織でカバー出来るだろう。

天才的な経営者には、女房役の経営幹部が参謀としてついている事例がよくある。苦手を意識するのではなく、天才性を磨く。そういう「孤高社員」の存在を認めることができる組織が成長することができると考えている。


このコラムは、2015年6月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第426号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

韓非子

 韓非子は性悪説という先入観念があり,今までまったく興味を持たなかった.しかし日本に帰国した折に,何も考えずに韓非子に関する文庫本を買った.長らく放って置いたが,最近ぺらぺらと眺めている.

韓非子の言葉にこんな説があった.

下君は己の能を尽くし
中君は人の力を尽くし
上君は人の智を尽くす.

自分の能力に頼るのは,下級のリーダ
人の力を活用するのは,中級のリーダ
人の智恵を活用するのが,上級のリーダ
ということだろう.

自分で何でもやってしまえば,部下が育たない.いくら高い能力を持っていたとしても,部下10人分の力を発揮できるリーダはいないだろう.従っていくら能力が高くても,それに頼っているうちは本当のリーダとは言えない.

部下の力を活用して,成果を挙げて初めてリーダと言えるだろう.
しかし韓非子はこのレベルでは中級のリーダだと言っている.
つまり部下にいくら力があっても,リーダの指示に従わせるだけでは,たいした働きはしない.命令・指示に従う部下のモチベーションは高くはない.部下の能力を,いかにしたら100%引き出せるかと,悩むことになる.

上級のリーダは,部下に自ら考えさせる.
自ら考えることにより,部下は成長する.そして命令・指示で動くよりは,自らの考えで動いた方がモチベーションは高くなる.この場合は,いかにすれば100%以上の能力を部下が発揮するかを,考えることになる.

この話をクライアントの中国人幹部たちに話してみた.
一人がこの話に異を唱えた.彼曰く;
100しか仕事が出来ない人に150の仕事を与えたら,仕事の質が落ちる,本人は疲弊する.良いことはない,と言う主張だ.

もっともに聞こえる主張だが,仕事に対する能力は仕事を与えることによってしか成長しない,と言うことを忘れているようだ.

100の能力の者に200も300も仕事を与えたらば,彼の指摘のようになるだろう.しかし少しがんばれば達成出来そうな目標を与える,そしてそれを達成することにより,部下は成長するはずだ.
その時に150の仕事をこなすための方法をこと細かく教えてしまうと,中級リーダと同じことをしていることになる.


このコラムは、2010年8月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第168号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

トヨタ、北米でリコール カローラなど136万台

 【ニューヨーク=山川一基】トヨタ自動車は26日、米国、カナダ、メキシコで販売した主力車の「カローラ」と「カローラマトリックス」計約136万台をリコール(回収・無償修理)する、と発表した。エンジンを制御する電子部品の不具合でエンジンが止まる恐れがあるという。

 対象車は2005~08年型で、そのうち米国向けが113万台。制御システムに使われる電子基板が使用中にひび割れる可能性があり、エンジンがかからなくなったり、運転中にエンジンが止まったりする恐れがあるという。

 日本など北米以外で販売されたカローラなどは部品が違うため、リコールを実施する予定はないという。

 トヨタによると、この不具合によるとみられる事故が3件報告されており、そのうち1件は軽傷事故だった。この問題を巡っては、米高速道路交通安全局(NHTSA)が消費者からの苦情を受けて本格調査に乗り出した、と発表したばかりだった。

 また米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)も同日、トヨタの2車種と同じ機構を使い、米工場でトヨタと共同生産していたポンティアック「バイブ」(05~08年型)約19万9千台をリコールすると発表した。

(asahi.comより)

 トヨタは以前中国で,68万8千台のリコールをしている.それを上回る台数のリコールとなってしまった.米国でフロアマットの問題対象は380万台だったが,これはリコールとは違い,注意文書の配送だけだった.したがって136万台と言うのは過去最大規模のリコールではないだろうか?

ところで今回の不良は,報道によると,プリント基板のひび割れが原因だ.プリント基板が経年変化によりひび割れるとすると,機械的ストレスが継続的にかかっていたと思われる.

  • プリント基板が,筐体ケースとぶつかっている.
  • プリント基板の固定ねじ穴の位置がずれており,ネジ締めでストレスが発生.

しかしこんな簡単な不良を,生産時に見逃し,3年間も生産し続けたとは思えない.

プリント基板アッセイの半田接合点に,ひび割れが発生したのではないだろうか?半田接合点に機械的ストレスをかけ続けると,経年変化でひび割れが発生する(半田クリープ)

  • 半田付け後に半田結合点にストレスを与えるような実装方法だった.半田付け後にネジ締めがある場合などは,要注意.
  • プリント基板端の部品が傾いて実装され,筐体ケースにぶつかり半田接合点にストレスがかかり続けた.
  • プリント基板アッセイ内の重量部品が,自動車に実装後半田結合点にストレスを与える方向になった.(例えば重量部品が実装されているプリント基板アッセイが半田面を上にして実装されれば、重量部品の半田結合点には常にストレスがかかり続けることになる)

こういう予測される不適合を,設計時,量産移行時に洗い出せる仕組み(例えばFMEAやレビュー制度)を持つ必要がある.
この予測力の広さと深さが,それぞれの企業のノウハウだ.


このコラムは、2010年8月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第168号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

ベンチャー・中小企業支援

 ネットのニュースで,郵便事業会社(JP日本郵便)が,集配に使う電気自動車1030台を岐阜県のベンチャー企業から購入する,と言う記事を見た.

こういう記事を見るとうれしくなる.

民営化されたとは言え,JP日本郵便は元々国営企業で頭が固い人たちばかりそろっていると思っていた.そういう会社が,大手の企業ではなくベンチャー企業から,資材を購入する,と言うのがうれしい.

過去の実績を頼りに,資材の調達をしていれば,何かあっても調達担当者の責任になることはないだろう.しかしベンチャー企業に発注し,何か問題があれば担当者の責任となる.

こんな雰囲気が公官庁にはあると思っていた.

日本の産業を元気にするためには,中小企業企業やベンチャー企業が元気にならなければならない.戦後日本の成長を支えたのは,中小企業の存在だ.

国は中小企業やベンチャー企業の育成を狙った政策を出しているようだが,一番効果があるのは,注文が中小企業・ベンチャー企業に入ることだ.

活力のある組織は,過去の実績だけで調達先を決めない.現在持っている技術,商品で調達先を決めている.米国のNASAが日本の町工場から部品を調達するなどということが起こる.

税制の改定や,中小企業・ベンチャー企業向けの融資も重要だが,頭の固い公官庁に調達の一定比率を中小企業に出すように義務付けてしまってはどうだろうか.


このコラムは、2010年8月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第167号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

続・異常感度を上げる

 先週のメルマガ記事「異常感度を上げる」では,中国工場での正常と異常の閾値が我々が期待するレベルと大いに異なっている、という事例をご紹介した。この記事にたくさんの方に共感していただけたようで,コメントのメッセージを7件頂いた.
異常を異常と感じない事例を紹介いただいた方もあり,なるほどと,一人で頷いていた.事例を他の読者様とも共有したいと思う.

  • 3本並んだ蛍光灯が「チカチカ」していても、誰も取り換えようとも取り換え依頼をお願しようともしない。
  • 食堂に並んだ蛇口が壊れても、他が使えるので、問題ない。
  • 日本でギァから異音がすれば、大騒ぎになるが中国では、機械が動いている限り問題にならない。
  • 中国の露天でマグカップを買う、自宅に帰ってよく洗うとヒビがある。今のところ中身も漏れず、使用上なんら問題なければ、没問題となる。執拗に交換を迫れば応じてくれるが、交換したヒビのあるマグカップは、再び店頭に陳列される。

私が一番驚いたのは,中国工場で見たトイレのロック.
扉の取っ手の下にくるりと回すレバーがついており,固定部分に引っ掛けて外から扉を引いても開かないタイプのロックだ.
しかし扉は外から押して開くようになっており,ロックは機能しない.この扉が出来てすでに,何年もたっているようだが,そのまま使っていた.

このような代替のない機能不全まで,放置されているのに驚いた.

このような状況を打破するために,TPM(Total Productive Maintenance)の自主保全活動を,導入すると良いだろうと思っている.

I様からはこんなコメントを頂いた.

 小生、中国深せんに赴任中です。小生の専門はTPMです。中国でまさかTPMをやる事になるとは夢にも思いませんでした。日本の仲間は、TPMは中国人にはムリだと言っていましたし、小生もそうだと思っていました。が、違っていました。日本よりすんなり受け入れられたのです。苦労はしましたが、根付きつつあります。

大変心強いメッセージを頂き,私もTPMの導入推進に自信が持てた.


このコラムは、2010年8月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第167号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

競争より協調

 他人と競争する事で、人のパフォーマンスは上がる。スポーツ競技は、練習中に世界記録が出る事は無いそうだ。(公認記録が練習中にでる事が無いのは当たり前だが、一人で練習している時に世界記録越える事は無い)試合中にライバルと競争する事により、より高い記録を達成する事が出来る。
格闘競技でも同じだろう。自分より格下の相手と戦って最高の試合が出来た、と言う事は無いはずだ。実力が拮抗する相手、自分よりわずかに強い相手と戦った時に最高の試合が出来るはずだ。

競争をする事により、実力以上の結果を出す事が出来る。そしてその結果が自信となり、自分の実力となる。競争環境が無い所で成長する為には、昨日の自分との競争を常に継続する事で成長が可能になる。

企業内での仕事も同様だろう。競争が有れば、個人は努力し能力を高める。
確かにそのようなメカニズムは働いているだろう。しかしこのメカニズムが機能する為には条件が必要だ。受注量が無限に有れば、純粋な競争で生産能力を上げれば、その分個人に成果が分配されるだろう。
しかし受注量は有限であり、競争はゼロサムの競争となる。

上位ポストを目指して競争すれば、それぞれが自分の能力を高める努力をするだろう。しかしポストは一つしか無い。

良い競争が続いていれば良いが、組織内の競争は間違った方向に行きやすい。
良い競争とは、各自が自分の能力を高める競争だ。間違った競争は、相手の能力を下げる(能力が低く見える様にする)競争だ。
間違った競争の事例は数限りなくある。あなたも組織内で働いていれば、1度や2度は不愉快な思いをした事が有るだろう。

競争は有るべきだと思うが、チームや組織での協力・協調が有る事が前提だ。
組織の能力を伸ばす事を前提に個人の競争が無ければ、組織の能力はゼロサムになりかねない。


このコラムは、2016年5月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第475号に掲載した記事を修正・加筆したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

自動運転、異業種とタッグ 車大手グーグル参入に危機感

 クルマに革命をもたらすといわれる自動運転の分野で、世界の自動車大手が競うように異業種との提携を加速させている。背景には、「頭脳」に当たる制御ソフトで米グーグルに主導権を握られれば、車体を提供するだけの「下請け」になりかねない、との危機感がある。

(朝日新聞デジタルより)

 記事は米国ラスベガスで開催中の家電見本市(CES)の現地レポートだ。トヨタが、CESに自動運転のデモで出展している。家電もITも車もどんどん境界が曖昧になり、業界が融合し始めているようだ。

記事の中に自動運転関連で自動車メーカが異業種と提携した例が出ていた。

  • BMW:百度と提携。
  • アウディ、BMW、ダイムラー:ディジタル地図会社を買収。
    これらの買収、提携は地図データの入手を目的としているのだろう。
  • トヨタ:ITベンチャーに出資。
  • GM:配車サービスドフト会社に出資。
    自動運転アルゴリズムの開発を目的に出資。
  • 日産:NASAと共同研究。
    詳細は記事になかったが、衛星写真を解析して自動運転ルートの探索を開発するつもりだろうか?

航空宇宙産業と自動車業界、ベンチャー企業のAI技術と自動車業界などの異なる分野の協業により新しい価値の創造が生まれる。

これは自動車業界に限った事ではない。
コンビニ大手はPOSデータと言うビッグデータを持っている。これを解析し広告業界に販売する事も可能だろう。例えば屋外の電光掲示板に、今コンビニで売れている商品の広告をリアルタイムで流す。多分普通の広告の何倍もの宣伝効果があるはずだ。広告主の商品が売れる。しかもその店舗が、自社のコンビニであれば広告費をいただいて自社の売り上げ増になる。

部品の生産や加工の請負をしている企業は、単独では下請けの域を脱する事が難しいかも知れない。
絶対緩まないナットを生産し、点検・まし締めのコストダウンを提供する。
片手で簡単に回せるナットで金型交換の段取り時間短縮を提供する。
このようなアイディアで、顧客に新しい価値を提供する事が出来るのは限られた企業だけだろうか?

斬新なアイディアが思い浮かばなくても、異業種との協業により新たな価値が生まれるかもしれない。往々にして自業種では当たり前の事が、他業種では新しいアイディアで有ったりする。又は業界が変われば、同じアイディアでも提供する価値が変わる事もあり得る。
例えば、航空会社は旅客機により「移動」と言う価値を提供する。
同じ旅客機でも、旅行会社は旅により「体験」と言う価値を提供する。
同じ旅行でも、研修会社は研修旅行により「学び」と言う価値を提供する。

異業種との交流で新しい価値を生む。
買収や出資は難しくても、志と夢が共有できれば協業は出来るはずだ。
志や夢が有る方は、是非自社技術やアイディアの棚卸しをしていただきたい。準備ができていなければ、チャンスが来た時に乗り遅れてしまう。

今年のテーマ「交流」は、生産現場や経営管理のベストプラクティスばかりではなく、このような新規ビジネスの創造も含んでいる。一人で考えても実現不可能な事を、交流の力で実現可能にしたいと考えている。


このコラムは、2016年1月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第458号に掲載した記事を修正・加筆したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】