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病院の顧客満足

 病院に行くと何がつらいかというと、延々待たされることである。待たなくて良いように開院前に出かけ受付窓口で並んで待つ。遅くなってしまうと待合室には座る場所もなく立って待つことになる。病人には辛いものがある。健康でないと病院にも行けない(笑)

先日健康診断のために病院に行った。
ここの病院は、患者さんが待っている間快適になるように待合室を大きくし、大型のTVも設置するなど顧客満足を図っているように思える。

しかし何かが違う。

私は胃のレントゲン検査を終え次は泌尿器科の受付で待っているように指示をされた。しかし待てど暮らせど呼ばれない。待っている場所を間違えていないか心配になってきて、そっと診察室をのぞいてみると、医師は文庫本を読んでいる。

これは看護婦さんに待っている場所があっているのか聞いてみなければと思っているところへ、ちょうど事務係がたくさんカルテを抱えて泌尿器科の受付にカルテを置いていった。

単にカルテが回ってこなかったので待たされていたのである。
カルテの運搬をバッチ処理で行っているため、運が悪いと延々待たされることになる。

待っている時間を快適にする事が顧客満足ではなく、待っている時間を短くする事が顧客満足である。

ということに気がついていないのだろうか。

しかも一番給与の高い医師を「手待ち」にしている。工場で言えば、一番高価な設備を遊ばせておくのと同じだ。物の流れをスムースにして、生産効率を上げなければならない。
病院も患者の流れをスムースにして待ち時間を短くして顧客満足を上げなければならない。

大きな病院では天井近くにパイプが通してあり、筒に入ったカルテが空気圧でスーッと跳んでゆくのを見た事がある。また最近ならばイントラネットでカルテを電子化しておけば、紙のカルテを運ぶことなど必要ないはずだ。

中小の病院だってこんな設備投資をしなくても改善できるはずである。患者にカルテを運ばせれば良いだけだ。
ひとつの窓口で診察が終わったらカルテを渡し次の窓口に行くように指示をすれば良い。

こういう方式ならば、待ち時間も少なくなるだろうし、カルテ運搬の事務員も削減できるはずだ。

コストを下げて顧客満足を上げる。
よい方法だと思うのだが。


このコラムは、2013年6月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第315号に掲載した記事に加筆しました。

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早い。高い。美味い。

 普通は「早い。安い。美味い。」という所だ。
飲食店が繁盛するコツと考えられていた。しかし本当にそうだろうか?

業態によっては「遅い。高い。美味い。」の方が繁盛する。
料亭などを考えれば、ご理解いただけるだろう。徹底的に材料や加工技術にこだわり、美味いものを出す。客の方もゆっくりと料理を味わいたいから、「早い」はセールスポイントにはならない。

売り上げ額より、利益額を考えれば、たくさんのお客様に来ていただく必要はない。当然広告費も必要なくなる。

こう言う話は、飲食業だけではないと思う。
我々製造業でも「早い。高い。美味い。」をUSP(Unique Selling Proposition)として成功している企業はある。圧倒的な小回りの良さを実現してしまえば、「安い」を要求される事はない。

例えば、部品を注文したら翌日必要な数量だけ納品される。

お客様に部品を買っていただくと言う発想ではなく、お客様の生産をサポートするサービスを提供していると言う発想に立てば、必要なモノを必要な数だけ必要な時に納入する、と言うサービスになるはずだ。

こう言う小回りの利く部品メーカがあれば、値段で比較され淘汰される事はないだろう。

パナソニックが3Dプリンターを使って、樹脂成型品の金型を作り、家電製品の量産に使うそうだ。

家電製品は既に飽和状態であり、同じ製品が大量に売れる事はないだろう。こう言う成熟製品は、機能競争の次は、デザインなどの嗜好生の方にシフトして行く。つまり多品種少量の方向に行くはずだ。

新製品投入時に、金型製作の期間を短く出来るのは、競争優位の要因になる。また金型が安くなれば、複数のデザインをシリーズ化出来る。

同じ製品を大量に生産するために必要だった金型の寿命は、意味が無くなる。

高くても買っていただけるための方法の一つが、業界で非常識な小回りを達成する事だ。
他にも製品を高く買っていただける方法を、真剣に考えてみよう。


このコラムは、2013年6月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第315号に掲載した記事に加筆しました。

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蚤の跳躍

 先週は、深セン和僑会で居酒屋「てっぺん」の経営者・大嶋啓介さんの講演があった。

元気が出る居酒屋「てっぺん」そしてその元気のもと朝礼で有名な大嶋さんの講演を聞き、ご一緒に食事をさせていただいた。
中国にいて、こんな機会が得られるなんて、夢のようだ。感謝!

大嶋さんから聞いた話を、皆さんとシェアしたい。

蚤というのは、1mの跳躍力がある。
しかし蚤を高さ30cmの箱に閉じ込めておくと、箱のふたをはずしても30cmしか跳躍できなくなってしまっていると言う。

インド象が、小さな杭に繋がれただけで逃げてゆかないのと同じだ。
象の力を持ってすれば、杭など簡単に引き抜けるのだが、力が弱い小象の時からずっと杭に繋がれ逃げられないと思い込んでいるだけなのだ。

蚤も象も、自分の中に自ら限界を設け、それに縛られてしまっているのだ。

この寓話は人間にも当てはまる。
成功した人と、成功できない人の違いは唯一つ、「成功すると信じる」ことだけだ。成功すると信じているから最後までやりとおす。実はこの世に成功しない人などいないのだ。ただ成功を諦めた人がいるだけ。

中国人の若者を指導していて「没方法」とか「没弁法」という言葉を良く聞く。彼らもまた30cmしか跳べなくなった蚤だ。

「没方法」と言う前に方法を考えろと言いたい。
当然彼らは、考えたけど駄目だった、やって見たけど駄目だった、と言う。
100個の違う方法を考え、100回試してみただろうか?

実は、すべての方法を試すと言うのは不可能なのだ。すべての方法を試す前に、うまく行ってしまうからだ。

では跳べなくなった蚤を、再び1m跳べるようにするのはどうすればよいか?

難しいことではない、簡単なのだ。
1m跳べる蚤を連れてきて一緒においておけば、再び1m跳べる様になる。

「没方法」青年も同じだ。
貴方が諦めない姿勢を見せてやれば、きっと彼も跳べる様になる。


このコラムは、2010年11月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第177号に掲載した記事です。

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ホスピタリティ

 上海万博を見学した。前回万博を見学したのは1970年の大阪万博だったので、40年ぶりだ。元々人ごみと、並んで待つのが嫌いなので、めったにこういう機会はない。

今回は、上海和僑会に参加したので、その翌日和僑会参加のメンバーと一緒に上海万博会場まで出かけた。

日本館を見学したが、パビリオンの外で1時間待ち、パビリオンの中に入って更に1時間かかった。元々きちんと列を作って、おとなしく並ぶ習慣が無い中国人に混ざって2時間並んでいるのは、一種の精神鍛錬となった。

スキあらば、前に出ようと体を密着してくる。人の耳元で大声でしゃべる。パビリオンの中では、携帯は使わないように、写真撮影はしないようにと何度も注意しているのに、堂々と悪気も無く使っている。
携帯の使用を注意する職員に、お前だって使っているではないかと、職員のハンディートーキーを指差して食って掛かっている輩までいる。
そういう空気はすぐに伝染する。そんな、目が三角になっている人ばかりが並んでいるのだ。楽しいはずが無い。

こういう空間で列を作って待っているのは苦行に他ならない。

しかしタイランドのパビリオンでは、様子が違っていた。
列をコントロールしている職員が、見学客に向かって拡声器で話しかけているのだ。
「タイには行ったことがありますか?」
「タイ語ではニイハオはサワッディーと言います」
などなど、話しかける。
よく聞き取れなかったが、面白いことも言っている様で、日本館に並んでいる見学客と違い笑顔があふれていた。

今まで日本人のもてなしのココロが世界一すばらしいと思っていたが、すっかりタイ人を見直した。

パビリオンを見学してくれる人に対するもてなしは、列に並んでいる時から始まっているはずだ。いくらすばらしい展示をしていても、展示を見る前に気分を害していれば、その効果は半減する。

サービス業に従事しておられる方は、当然こういうことをしっかり考えておられると思う。ではモノ造りでも同様に、こうした「もてなし」を顧客に提供できないだろうか?
考えてみる価値がある。


このコラムは、2010年5月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第152号に掲載した記事に加筆しました。

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サッポロが宇宙ビール5カ月「滞在」した大麦の子孫を使用

 サッポロビールは3日、国際宇宙ステーションに5カ月保管されていた大麦の子孫を使ったビール「スペースバーレイ」を販売すると発表した。
小瓶(330ミリリットル)6本入りを1セットとし、価格は1万円。250セット限定でインターネットで申し込みの受け付けを始めた。

 同社は昨年にも同様のビールを生産し、抽選で60人に無料で提供した。一般に販売するのは今回が初めて。売上金は岡山大学を通じ、子どもの科学教育のために活用するという。

 サッポロはロシア科学アカデミー、岡山大学と共同で、宇宙環境が大麦に与える影響を調べてきた。「タンパク質の性質などから通常の大麦とまったく変わりがないことが確認できた」(岡山大学)ため、商品化に踏み切った。
受付は12月24日正午まで。

(NIKKEI.NETより)

 6本で1万円もするビールにどう価値を求めるか。
たった250セットしかないという希少価値と、宇宙帰りの大麦という浪漫が1万円に見合うと感じるかどうかであろう。

コスト的な観点から考えれば250万円の売り上げでは、大麦を宇宙に5ヶ月保管した上で栽培し、ビールにすることは不可能だろう。サッポロビールはビジネスとして「スペースバーレイ」を販売したわけではないはずだ。

しかしこの事例は顧客が価値を感じる部分、希少価値、浪漫に徹底的にコストをかける。という戦略を示唆している。

顧客価値に対し積極的にコストをかけ、その「物語性」をアピールする。
これによりとんでもない販売価格を実現できるのだ。

例えば今私がキーボードをたたいているMacBook Pro。
このノートPCの筐体はアルミを削りだして作ったものだ。普通のノートPCはプラスチック成型の筐体であり、明らかにコストがかかっている。
しかしキーボードのタッチ感覚、そのデザインなど所有者の価値認識を的確に捉えており、同等機能PCの2倍の定価で販売されている。それに加え「アップル社」という物語性がその価値を支えている。

こういう戦略は顧客から受け取った図面どおりの生産をしていては絶対に出てこない。どのようにしたら顧客に価値を与えられるかを考え抜く必要がある。顧客すらまだ気がついていない価値をこちらから提供できれば、顧客-業者という関係から、一気に顧客に不可欠なパートナーとなることができる。

ところで6本1万円のビール、私は買うことはないだろう。
いくらビール好きとはいえ、「スペースバーレイ」に物語性を感じられない。
ビールと宇宙がつながっていないのだ。

しかも宇宙帰りの大麦が「タンパク質の性質などから通常の大麦とまったく変わりがないことが確認できた」というのでは最悪だ。これではずっと地球で育った大麦のビールと同じ味しかしない。


このコラムは、2009年12月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第129号に掲載した記事に加筆しました。

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エレベーターに一時閉じ込め 中津駅、昨秋から6回目

 16日午後0時5分ごろ、大分県中津市のJR中津駅で、3階のホームと2階を結ぶ斜行型エレベーターが途中で止まり、60代の女性客が閉じ込められるトラブルがあった。女性は約30分後に救出され、けがはなかった。
JR九州大分支社が同日発表した。昨年9月の設置後、過去5回、乗客が閉じ込められるなどの故障があったという。

 同支社によると、故障したエレベーターは長さ約20メートルの斜行型(定員9人)で、階段横に設置している。女性1人が3階から乗り、数メートル下ったところで停止。エレベーターの異常を知らせるブザーなどで駅員が駆けつけ、約30分後に業者がドアを開けた。駅員らが階段から、
ガラス張りの同機の横で中の女性を励ましたという。

 過去5回の故障では、計6人の乗客が3~12分間閉じ込められた。
11月末の定期点検で異常はなかったが、12月12日にも同様の閉じ込め故障があり、部品を交換したばかりだったという。中津駅は今回の原因が判明するまで同機の使用を中止する。

(asahi.comより)

 私は中国のアパートで2度エレベータに閉じ込められたことがある。
しかしこのニュースは中国ではなく日本だ。15ヶ月の間に6度も同じような事故があるというのは、根本的な問題が未解決のままだということだろう。しかも定期点検後2週間で事故が発生している。点検方法にも問題があると考えた方がよさそうだ。

事故が発生した時は当然事故に対する処置は行われる。そして問題点の修復も行われたであろう。しかし再発防止が行われなかったのではなかろうか。

これは工場で生産した製品がお客様で不具合を起こしたときと同じだ。
以下の不具合に対する処置が必要だ。

  • 現品処置
     不具合発生現品に対して問題を収束させる。
  • 不具合の修復
     不良品を修理または交換し修復する。場合によっては問題が拡大しない様に同一ロット品に対し処置を行う。
  • 再発防止
     不具合の発生原因を突き止め、不具合が再発しないように対策を実施する。
  • 水平展開
     他機種でも同じ問題が発生する可能性があるか調査し、未然防止対策を実施する。

これらの一連の処置が終わって初めて不具合対応が収束する。

JRはこれらの処置をエレベータメーカに対してきちんと要求しなければならない。ただエレベータの保守要員が来てエレベータの中から人を救助しただけでは、上記の現品処置が行われただけだ。


このコラムは、2009年12月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第131号に掲載した記事に加筆しました。

当時エレベータに閉じ込められたのは2回だけでしたが、その後何度も閉じ込められ閉じ込められた回数をカウントするのをやめました(笑)

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原因に対策

 「フランクル回想録・20世紀を生きて」という書籍に、田舎に引っ越した男が早朝の鶏の鳴き声で睡眠不足となる。男は鶏の餌に睡眠薬を混ぜて問題解決した。というエピソードが出ているらしい。

鶏の鳴き声がうるさくて睡眠不足(早朝に起きてしまう)問題の原因である鶏の鳴き声を除去する(時間をずらす)という意味では、秀逸な問題解決方法と言えるかもしれない。しかしこの対策の実施が許されるかどうかは微妙だ。

問題の原因をもっと広角でとらえる必要がある。原因には「田舎に引っ越した」も入るはずだ。これは自責なので対策は可能だろう。

また睡眠不足の原因は起床時刻だけではないはずだ。就寝時刻を早くすれば早朝に起床しても睡眠不足にはならない。鶏の鳴き声の時間をずらすのは問題かもしれないが、自分の睡眠時間帯をずらすのは何ら問題はない。

鶏の鳴き声が大きいのが睡眠不足の原因と定義すれば、防音が対策となる。防音装置が高額ならば耳栓でも良かろう(笑)

今回ご紹介した書籍「フランクル回想録・20世紀を生きて」は2011年11月の出版ですが、もう絶版になっているようです。著者は精神療法の創始者だそうです。しかし9年足らずで絶版になってしまうとは…


このコラムは、2020年10月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1045号に掲載した記事です。

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空気を作る

 「KY」は我々の業界では「危険(K)予知(Y)」という意味で使われる。「KYT」は危険予知訓練だ。
しかしいつの頃からか「KY」が空気(K)読めない人(Y)という意味で使われ始めた。昨今では「KY」を危険予知と解釈する人は少数派に陥っているだろう。

残念なことではあるが、組織人である以上「空気を読む」能力は必要だろう。
特に日本の組織は「KY」では仕事にならない面もある。「阿吽の呼吸」「打てば響く」が尊重される。しかし組織のリーダはメンバーに空気を読む能力を期待してはダメだろう。きちんと説明責任を果たすべきだ。

リーダーに必要な能力は「空気を読む能力」ではなく「空気を作る能力」だ。組織の存在意義、課題、目標を明確にし、それを実現するために、組織の空気を作る。
今時「男は黙って××」とか「良きに計らえ」なとというリーダもないだろうが、メンバーが自ら動くように空気を作る。当然黙っていてはダメだが、いちいち指示しなくてもメンバーが動けるようにしておくということだ。


このコラムは、2021年7月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1166号に掲載した記事です。

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ユーザ・エクスペリエンス

 「おもてなしの経営学 アップルがソニーを越えた理由」という本を読んだ。

著者の中島聡氏は、初期の月間アスキーに高校生アルバイトとしてプログラムを書いたりしていた伝説の人である。またマイクロソフトでウインドウズのユーザインタフェイスを設計した人としても有名だ。

「ユーザ・エクスペリエンス」という言葉はソフトウェア・ユーザビリティを越えた「使いごごち」のような概念の言葉である。中島氏はこの言葉に「おもてなし」という日本語を当てている。

ギーク(エンジニア)オタクっぽい本であるが、製品やサービスをどう設計しなければならないか、という観点で読むとモノ造りへのこだわりが見えてくる。

造る側(サービスを提供する側)のこだわりは「床屋の美学」(自己満足)である。ユーザのためのこだわりを持たなければならない。

ビルゲイツのこだわりは市場を取ること、相手に勝つこと。
一方アップルのスティーブジョブスのこだわりはユーザに感動を与えること。
このこだわりがあるからアップルはコンピュータメーカから脱皮できた。

これが「おもてなしの経営学」である。


このコラムは、2008年10月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第55号に掲載した記事です。

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大阪市の電車型おもちゃに不具合 電池が60度まで過熱

 大阪市交通局は22日、市営交通案内所などで販売していた電車型玩具「スルッとKANSAI どこでも電車 大阪市交通局66系」に、電源を切った状態でもコントローラー内の電池が60度近くまで過熱する不具合が見つかったと発表した。被害の報告はないという。
発売元の「スルッとKANSAI」は同種玩具5種類の販売を中止し、発売済みの商品については不具合があれば点検済みの商品との交換か返金に応じる。

この記事には原因が書いてないが、製造不良により電池を過放電させるような短絡路ができていたのであろう。

では何故この不良が見つからなかったのか?
電池で動作するこの製品の機能検査は、電池ではなくDC電源を使ったのではないだろうか?
DC電源ならば1A軽く流せても、電池にとっては厳しい値となる。

また検査に電池を使っていても機能検査が短時間ですんでしまえば、気がつかないこともありうる。

検査項目に消費電力を入れておけばこのような不良は発見可能になるはずだ。単純にDC電源に電流制限をかけておくだけでも良いだろう。

このようなよその製品の事故記事から、自社製品の不良未然防止対策を考える事が出来る。
このような事例を集めて自社製品用のFMEA(故障モード影響解析)の項目を充実してゆく事が出来る。

今回の事故の教訓は
「ショート事故は0Ωショートとは限らない」ということだろう。


このコラムは、2008年8月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第48号に掲載した記事です。

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