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円安や中国の爆食でピンチ 高級食材を確保せよ

 急激な円安や中国の爆食、さらには乱獲による資源枯渇――。今、キャビアやクロマグロなどの高級食材が仕入れにくくなっている。大量に必要とする外食チェーンにとっては、メニューが消える大ピンチだ。国産に切り替えたり、自ら養殖に乗り出したりと仕入れ改革で危機を好機に変える取り組みが、厨房の裏側で進む。高級食材の争奪戦を追った。

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(日本経済新聞より)

 タイトルだけを見ると日本にネガティブな記事の様に見えるが、記事を読むと日本に大いにチャンスが有ると、元気になった。

オマール海老が昨年比で1.5倍となっている。しかしカナダの業者に仕入れ先を変更することにより、3割以上安くなっていると言う。この業者は特殊冷凍技術を使っており、冷凍でも味は落ちない。記事には書いてないが、カナダの業者が使用している特殊冷凍技術とは、千葉県・アビー社の冷凍技術だろう。
冷凍する際に、食物内の水分が氷結し細胞組織を破壊するので、味が落ちる。
アビーの技術は、磁界をかけ水分を振動させながら冷凍する。そのため水分子のまま凍結するので、細胞組織を破壊しない、と言うメカニズムらしい。

日本はマグロ、フグなどの養殖にも成功し、ビジネス化が始まっている。
また、昔から日本のフカヒレやアワビは香港で高値取引されている。
アビー社の冷凍技術を使えば、日本の食材を世界中に届ける事が可能だ。
和食が世界遺産に登録されたのも、追い風となるだろう。

日本食材の安全・安心・美味は、金が有り余っている中国富裕層に、ばか売れするだろう。

政府や役人が、お荷物だと思って助成金漬けにしていた農業・漁業が本当の力を発揮するチャンスがそこまで来ている。


このコラムは、2015年1月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第407号に掲載した記事です。

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チームビルディング

 お客様の現場で改善活動などの指導をする時に、チームを作って指導する様にしている。さすがに一人一人の人選は無理だが、部門ごとにチームを作る、部門混成でチームを作る、など場合に応じてお願いしている。

社内で何らかのプロジェクトを起こす時に、どのようにチームの人選をしておられるだろう?

  • 能力、職責など適任と思われる者を選ぶ
  • 問題意識を持っている者を選ぶ
  • やる気がありそうな者を選ぶ
  • 成長を期待して選ぶ

問題意識を持っている者を見分けるのは簡単だ。当該の問題に不満を持つ者を選べばよい。例えば食堂の食事に不満を持っている者を食堂改善プロジェクトのリーダとする。
やる気があるかないかは「公募方式」でメンバーを集めればよかろう。

募集にはコツがある。
探検家・アーネスト・シャクルトンが新聞に掲載した南極探検隊員募集広告が参考になるかもしれない。

求む隊員。
 至難の旅。
 わずかな報酬。
 極寒。
 暗黒の日々。
 絶えざる危険。
 生還の保障はない。
 成功の暁には名誉と賞賛を得る。

過酷な条件で生命の危機すらある。しかし得られる報酬は名誉と賞賛のみ。
こんな広告に人が集まるのだろうか?と思うが、広告を見て5000人の人が応募している。多分思いつきで応募した人は限りなく少ないだろう。生きて帰れる保証のない冒険なのだ。

当然社内プロジェクトには冒険家の心をくすぐる要素はあるはずもない。金銭的な報酬は単純労働者には有効でも、プロジェクトメンバーには効果はないだろう。

自己成長、社内の居場所(上司・仲間からの承認)、メンバーとの連帯感などが、冒険家に与えられる名誉と賞賛と同等の報酬ではないだろうか?


このコラムは、2019年7月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第849号に掲載した記事です。

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部品1個1円の商売から200億円企業へ 鯖江の零細

 アベノミクスの恩恵が地方まで届かないという声も聞くが、それならば自らの技術力を頼りに、世界を舞台に戦うことを選択した地方企業がある。福井県鯖江市のメガネフレーム製造・販売会社シャルマンだ。

◆80歳でも一人で海外出張

 元はメガネの部品を細々と作る下請け会社だったが、チタン合金の開発、加工・接合の高い技術を生かして、メガネフレームの完成品メーカーに脱皮。縮む国内市場から世界の市場で勝負するため、中国に製造拠点を設け、海外80カ国で販売する体制を構築した。

全文はこちら

(日本経済新聞電子版より)

 バブル崩壊以降出口が見えない不況が続いた。アベノミクスで景気回復の予感が芽生えたが、消費税増税でまた後退。ようやく大企業を中心に業績が上がった。中小・零細企業にも「トリクルダウン効果」の恩恵があると経済学者は言う。しかし待てど暮らせど、景気のいい話は自分の所には来ない。

そんな感覚の中小企業経営者が多い様に感じている。

しかしへこんでいる場合ではない。バブル崩壊も、増税も、一企業経営者が制御出来るモノではない。ここに業績不振の原因を求めれば、改善の方法はない。
少なくとも、バブル崩壊以降20年間経営を続けているのだ。会社には従業員がおり、電気もついている(笑)もっと自信を持って頑張っていただきたい。

今週のニュースは中小企業経営者に、夢と希望を与えてくれる様なニュースだ。

元々シャルマンは、眼鏡用の部品を生産していた。顧客から与えられた図面に従って部品を黙々と生産する。典型的な下請け工場だ。その彼らが、眼鏡のフレームの設計生産に取り組み始めた。

更に眼鏡素材のチタンの開発、チタンの加工技術の開発まで手を伸ばしている。中小・零細企業に研究開発など無理、と諦めればチャンスは一切来ない。彼らは大学の研究室と共同開発をしている。自分に無い力は、その力を持っている人を探し、仲間になれば良いのだ。

その努力の結果、1個1円の部品から1本数万円の自社ブランド眼鏡フレームの生産にシフトする事が出来た。売り上げ金額も利益も桁が変わってしまったはずだ。

更にその技術が異業種から注目され、脳外科手術用のハサミを生産することになった。当然手術用機材など作った事はない。福井大学と協業している。一社で為せぬ事も、志しを同じくする仲間があれば可能になる。そのためには、社外に目を向け交流を図る事だ。

鯖江は眼鏡の街だ。他にも平らに折り畳めるペーパーグラスを販売している西村金属がある。こちらの企業も元々眼鏡部品の加工を手がけていた。設計上のアイディアで、画期的な構造を持つ眼鏡を生産し、眼鏡の本場ミラノの展示会で評価を受けた。その後生産が追いつかずに3ヶ月待ち状態が続いていた。(生産体制が整った様で、最近は3日で出荷出来るそうだ)

以前にご紹介した、造船不況に悩んでいた中島プロペラが、その加工技術を活かして人工関節を生産するナカジマメディカルを興している。きっかけは、船舶スクリューの加工工場を見学に来た医学部教授の一言だったそうだ。

まずは小さな一歩として、社外との交流をされてはいかがだろう。


このコラムは、2015年1月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第407号に掲載した記事です。

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社外活動

 中国に住んでいると日本のTV放送は見ることができない。昨年の9月までは、中国の映画・TVドラマサイトで日本のTVドラマがアーカイブされていた。私としては珍しくNHKの大河ドラマを一気に見たりした(笑)しかし「島問題」以降、日本の映画・TVドラマは全て削除された。

最近偶然中国の動画サイト『優酷』に「カンブリア宮殿」がアーカイブされているのを発見した。当然著作権を無視した違法なモノだと思うが、情報難民(笑)の我々には、天の救いの様な存在だ。

多分中国国内からしかアクセス出来ないと思う。
カンブリア宮殿は、ただ娯楽としてみても楽しいが、アンテナが高い人には沢山の気付きを与えてくれる番組だ。製造業以外の事例も多いに参考になる。

前置きが長くなったが、カンブリア宮殿で取り上げた「ナカジマメディカル」が面白かった。私が着目した部分を紹介したい。

ナカジマメディカルと言うのは、人工関節を生産している会社だ。
元々船舶のプロペラを生産していた会社が、造船不況時の経営多角化戦略により生まれた会社だ。

プロペラの生産で重要な技術は金属の表面研磨だ。
現場の匠による研磨技術が、プロペラの性能を決める。こうした技術が人工関節生産の差別化要因となる。それを指摘したのは、プロペラの生産現場を見学した医療関係者だ。

人工関節の骨の部分に当たる金属の平滑度をあげれば、関節の軟骨として使用するプラスチックの摩耗を防ぐことができる。プラスチックが摩耗すると、交換のために再手術が必要となる。
そのため金属の鏡面仕上が、人工関節の寿命を延ばし、患者の再手術と言う苦痛から救うことになる。

しかしプラスチックの寿命向上には、耐摩耗性だけでは達成出来ない事が判る。体内に入ったプラスチックは、酸化することにより劣化してしまう。ナカジマメディカルには、プラスチックの酸化劣化に対応する技術はない。

そこで彼らは何をしたか。
異業種の研究者を集めて、研究会を始めたのだ。元々金属加工は本職だ。工学部、医学部の研究者を集めた研究会で、プラスチックの専門家から抗酸化のためにビタミンEを添加すると言うアイディアが生まれ、それを実用化した。

中堅・中小企業は全ての技術開発をする事は不可能だ。足りない技術は、外部から集める。こういう発想が重要だ。

私が会長を務める東莞和僑会では、異業種間での交流を目指し、工場見学会を企画している。そしてそれを一歩進めて「ソーシャルモノ造り分科会」も開催している。まさにナカジマメディカルの研究会と同じ目的だ。

実は「ソーシャルモノ造り分科会」はまだ具体的成果にはたどり着いていない。ナカジマメディカルの事例と比較して、成果が出せない理由を考えてみた。
分科会のテーマをまず絞り込む事が必要だと気が付いた。今の所メンバーの固有技術や、夢を語り合っているだけだ。早急にテーマを絞り込むフェーズに移行しなくてはなるまい。

この様に、社外にある技術やリソースとコラボして新しい価値を創造する。それにより、自社の新たな商品や事業に結びつける。こんな社外活動を組織化する、或は参加する事で中堅・中小企業が活性化することが出来たら最高だ。


このコラムは、2013年11月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第335号に掲載した記事です。

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一日暮らし

 一日暮らしというと、将来のことも考えずにその日その日の享楽を求める、もしくはその日その日の生活に追われ将来のことを考えることができない状況を思い浮かべるかもしれない。

しかしこれは、臨済宗の高僧・正寿老人(道鏡恵端禅師)の教えだそうだ。
明日という日があると思うから今日を精一杯生きられない。どんなに辛くても今日一日と思えば耐えられる。どんなに楽しくても今日一日と思えばそれに溺れることもない。「一大事とは今日只今の心なり」という教えだ。

「大切なことから忘れなさい」松山大耕著

私たちの仕事はPDCAを回せと教えられる。計画や目標を持って仕事をする。つまりいつも明日を見て仕事をしているわけだ。これは禅の教えに反するのか?
例によって、どうでもいい事をグダグダと考えている(笑)

植物界は「桃栗三年柿八年、梅は酸いとて十三年、柚の大馬鹿十八年」と言う。柚は十八年かけてようやく実をつける。人も柚と同じく十八年かけてようやく成人と認めてもらえる。月日はゆっくりとしか流れない。

しかし明日は必ず来るとは限らない。今日と同じルールを適用出来る明日とは限らない。だから計画など持たずに「一日暮らし」で良いではないか、というのは違う気がする。

明日は来ないかもしれない。明日は今日と違うルールの世界かもしれない。

今日を精一杯生ききれば明日が来なくても後悔はない。
明日は今日と違う世界ならば、その世界で今日を生ききる。
それが「一日暮らし」という生き方なのだと思う。


このコラムは、2019年7月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第848号に掲載した記事です。

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冷暖自知

 臨済宗の禅僧が書かれた本を読んだ。

「大事なことから忘れなさい」松山大耕著

禅宗の修行は、理論を勉強したり理解しようとするモノではない。作務、座禅などの行動を通して悟りに近づくモノのようだ。曹洞宗では「只管打坐」といい、ただ座禅をしていれば悟りは開けるという。知識を学び記憶し、実践するという教育を受けてきた者にとっては心もとない修行法だ。

「柔らかい」という感覚は、猫の肉球、美少女の髪を触ってみる、人の優しい心に触れてみる、という体験を通して初めて理解出来るモノだ。「冷暖自知」という禅語はそういう真理を伝えている。
手短に言えば風呂の湯加減を見るのに温度計など使わず、手を突っ込んでみよ、ということだ(笑)

書籍はもっと良い例を紹介していた。
剃髪をしているお坊さんには悩みがあるそうだ。剃髪をすると肌が荒れる。冬場は乾燥し尚更肌が荒れるだろう。
そこで肌荒れ防止、保湿効果のあるシャンプーが作れないかと考えた。
その話に石鹸屋の社長が乗ってくれた。なんと社長は自ら剃髪をしてお坊さん専用石鹸の開発に取り組んだそうだ。

顧客の立場に立って製品やサービスを考える時に、頭だけで考えないで自らの頭を使った体験を通して考える。つまり頭を使って「考える」のではなく、頭を使って「感じる」ということだ。


このコラムは、2019年2月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第779号に掲載した記事です。

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ライバルとギャラリー

 以前スポーツで記録が出るのはライバルと競った時だ、という趣旨のコラムを書いた。

「競争より強調」

このコラムでは、自分の努力だけより、ライバルとの競争、仲間との協調で自己成長が加速する、という趣旨で書いた。

つまり、一人称(自分)だけで考えるより二人称(ライバル、仲間)の存在により成果が出やすくなる、ということになるだろうか。

最近文筆家・日垣隆氏が「スポーツで記録が出るのはギャラリーがいるから」と書いておられるのを読んだ。なるほどと感心する。

自分(一人称)、ライバル・仲間(二人称)に三人称(ギャラリー)が加わりメンツが揃った(笑)

先日引退を表明したイチロー選手は「孤高」の雰囲気があるが、それでも応援してくれる観客が励みになっていただろう。

お笑い芸人は、観客がいるから芸人でいられる。観客がいなければ、ただの変人に成り下がるのではなかろうか。

我々製造業も、二人称まででは話にならない。顧客(三人称)がいなければ何も始まらない。


このコラムは、2019年4月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第809号に掲載した記事です。

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小さな努力を継続する

 イチロー選手引退のニュースを新聞、ネットで見た。
3月11日配信のメルマガ「天才選手と指導者」は、イチロー選手現役復帰の期待を持って書いた。
期待は外れたが、いつかはこの日がやってくる。

WBCでファウルで粘りながら決勝打を放ったシーンは「神の降臨」すら感じた。当時イチローは潰瘍でボロボロになった胃袋を抱えて打席に立っていたという。

3月23日付の朝日新聞にイチロー選手の言葉が載っていた。
その中から次の言葉を紹介したい。

「今思うのは、小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道だと感じている」
2004年10月1日、シーズン259安打とし大リーグ年間最多安打を84年ぶりに更新した時にインタビューに答えた言葉だ。

天才は余人にないヒラメキによって生まれるのではない。毎日継続する泥臭い積み重ねで生まれる。

子供の頃から毎日素振りを欠かさない。生活や打席に入る時のルーティーンを見れば、イチロー選手が大切にして来たのは小さいことを積み重ねる努力だと理解できる。

私たちの仕事も同じではなかろうか。

一発逆転、一攫千金などを目指して仮想通貨や反社会的な仕事に手を染める輩が増えている様な気がしてならない。

製造業も同じだ。「TPS」が一瞬にしてあらゆる問題を解決し夢の様な生産を手にすることができる、それは幻想でしかない。毎日の小さな努力の積み重ねがなければ生産革新などあり得ない。

まずはコツコツと5Sを愚直にやり続けることだ。


このコラムは、2019年3月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第801号に掲載した記事です。

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天才選手と指導者

 新聞のスポーツ欄に、マリナーズ・イチロー選手の動向が掲載されていた。
今季からまた選手復帰し、オープン戦に六番レフトで先発。2打席で無安打1四球の成績だったそうだ。

イチロー選手は記者の質問に答え、現在の調整状況をこう語った。
「直球待ちで変化球対応の段階ではなく。変化球待ちで直球対応に入っていく段階だ」

私自身軟式草野球の経験があるが、イチローの言葉の真意は理解できない。

オフが開けてまずは速球(直球)に目と体を慣らしていく。
この段階が完了した上で
「直球待ちで変化球対応」:直球のタイミングで待っている時に来た変化球に手を出せる(最悪ファウル)様にする。
「変化球待ちで直球対応」:変化球のタイミングで待っている時に来た直球をゴロで内安打を打てる(最悪ファウル)様にする。
と続いてゆくのだろうか?

天才の天才たる所以は、言葉を超えたところにあるのだろう。
しかし指導者は、言葉で伝えなければならない。
天才の所作を見て天才が育つわけではないだろう。
天才ホームランバッター・王貞治は監督としても力を発揮したが、天才ホームランバッターは育てていない。

鉄人・衣笠祥雄は新人の頃は外車を乗り回しろくに練習をしなかったという。
恩人のスカウト木庭教に「就職先を探してやろう」と言われ目が醒めたそうだ。もちろんスカウトは、衣笠の素質を見抜いており野球を続けさせるためにそう叱ったのだろう。そして打撃コーチ関根潤三の指導で一流選手となる。いくら体が頑丈でも選手としての能力がなければ、連続出場の記録は達成出来ないはずだ。バッティング能力を鍛えたのは関根コーチだが、その気にさせたのは木庭スカウトの言葉だったはずだ。

ところで、経営者にとって「直球待ちで変化球対応」「変化球待ちで直球対応」とはなんだろうか?
「速球に目と体を慣らす」というのは企業としての基礎体力をつけると解釈できる。

直球=既存顧客、変化球=新規顧客
直球=既存製品、変化球=新規開発製品
直球=既存事業、変化球=新規事業

この様に考えると、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの「花形」「問題児」、「負け犬」、「カネのなる木」に行き着いてしまう。

読者様は、イチローの言葉をどの様に解釈されるだろうか?
天才の言葉を理解できれば、天才の領域に近づけるかもしれない。


このコラムは、2019年3月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第795号に掲載した記事です。

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無駄を見直す

 製造業にとって「無駄」とは価値を生まない時間、作業、モノであり、根絶対象だ。サイクルタイムの不均衡により生じる待ち時間、作業中の不要な動作、製品の機能に貢献していない部品などは削減するに限る。この時の判断基準は顧客基準でなければならない。待ち時間や不要な作業動作を考える時に、顧客基準で考える必要性はあまり思い浮かばないかもしれない。しかし自分たちにとっての無駄が、顧客にとって価値となる場合がありうる。

先日カンブリア宮殿で「クリーニング店・東田ドライ」を紹介していた。
三代目が事業を引き継いだら赤字と判明。ファストファッションの浸透や、家庭用洗濯機の高機能化等で、クリーニングを利用する客は年々減り続ける。閉店に追い込まれる店も少なくない。業界全体が斜陽産業化している。その中で東田ドライは、宅配クリーニングで急成長を遂げた。クリーニング+宅配という新しい業態だけで成長したわけではないと私は思う。

クリーニング+宅配という新しいビジネスモデルだけでは、同じ業態の競合が参入すればすぐにシェアの奪い合いになる。東田ドライにあった参入障壁は「おせっかい」だ。

預かった洗濯物のシミを落とす。ボタンを付け直す。ほつれを繕う。その様な作業をしても料金は上がらない。経営的に見れば、無駄な作業だ。しかしこの判断基準は自己基準であり、顧客基準ではない。顧客基準で見れば、他社にない付加価値を生む作業となる。

二代目経営者はこれらの技術を実直に磨き、三代目経営者がその価値に気が付きセールスポイントとした。クリーニング+宅配というビジネスモデルと「おせっかい」で黒字化し、さらに事業拡大を続けているのだ。

我々製造業にとって、気が付いていない付加価値を顧客基準で見つけるのは難しいかもしれない。しかし
部品の生産、材料の加工をしている工場は「顧客の生産を支えるサービス業」市場ユーザに製品を生産している工場は「顧客の生活を支えるサービス業」という視点に立てば、顧客基準で無駄と付加価値を見分ける事ができるだろう。


このコラムは、2018年6月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第681号に掲載した記事です。

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