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5Sの見える化

 以前中国企業に5Sの指導をしていて、奇妙な要求を受けたことがある。
工場内をレイアウトに合わせ、床に色を塗りたいと言う。一般的に作業エリアは緑、通路はオレンジ色に塗る事が多い。テープの色などと合わせて教えるが、通路に足跡も表示したいと要求を受けた。歩行方向を指定したいのならば、矢印で十分だが、やはり足跡を表示したいという(笑)
事情を聞き出すと、中国ローカルのコンサル会社に5Sをやるならば、通路に足跡を表示して、従業員がそれに従って歩く様にするのが良いとすすめられたそうだ。

床の色を塗り分けると、レイアウト変更の度に床を塗り直さなければならない。
そのため床の色は一色にして区画表示のテープで通路と作業エリアを表示する。
この方がムダなコストがかからないはずだ。
作業エリアや、部品の一時置き場などに表示するカンバンも簡単に入れ替えが出来る様にする。

足跡を表示する事に反対はしないが、ムダなコストをかけずに、フレキシブルにやる方が良い、と説得するが、経営者はどうしても足跡を表示したい様だ。

くだんのローカル系コンサル会社は、床の色塗りから足跡の表示までセットで請け負ってくれるそうだ。こんな事をしただけで5Sが良くなるとは思えない。元々内装工事業者が、工場の塗装仕事を請け負いたくてコンサルをしているのではと、勘ぐりたくなる(笑)

5Sの整頓を一言で言えば「見える化」だが、このコンサル会社は、5Sをやっている事を見える化してくれる様だ。

お金をかけてでも5Sを一生懸命やろうという決意は買うが、見栄えだけを狙うのでは長続きはしない。

通路をきちんと表示することにより、安全性が高まる、ムダな動きが少なくなる、現場にムダなモノが置けなくなる、などの具体的効果を狙うべきだ。
わざわざ足跡をいくつも表示する事はないだろう。
どうしても足跡を表示したいのであれば、足跡の間隔を90cmにして、テキパキと歩く様にしてはどうか、と提案した(笑)


このコラムは、2013年1月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第294号に掲載した記事です。

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組織文化が習慣を変える

 良い習慣を根付かせようとすると良い組織文化を持たねばならない。
個人は集団の同調圧力によって行動を左右される、と言うのが心理学者の定説の様だ。ソロモン・アッシュの社会的同調の実験では、図に書いた線の長さを答えると言う単純な問題にさえ、被験者は他人(意図的に間違った答えを選択するサクラ)に影響され間違った答えを選択すると言う。

人間ばかりではない。木の実を割るのがうまいチンパンジーをヘタな群れに入れると上手に割れなくなる、と言う実験結果もあるそうだ。

組織文化と言っても、大上段に考えることはない。
以前ご紹介した「指差点呼」や5S、ホウレンソウも組織文化と言えるだろう。

5Sやホウレンソウなどの良き組織文化を持てば、後から来る人たちもそれに
習うはずだ。仕事の教え方、学び方、仲間に対する対応など大切な組織文化
だと思う。


このコラムは、2022年4月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1284号に掲載した記事です。

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バッテリー切れ対策

(フカボリ)AED、ここぞの時に動かず… バッテリー切れ多発

 救急車に搭載する自動体外式除細動器(AED)のバッテリー切れなどが
相次ぐ。総務省消防庁は全国の消防に点検の徹底を求めている。各地の施設にもあるAED。どう管理されているのだろうか。

 3月はじめ、愛知県犬山市で起きていたケースが発覚した。
 2年前、救急救命士らが心肺停止状態の80代男性宅で、救急車のAED電気ショックを4回した後に続けようとしたが、5回目はできなかった。
市消防本部によると、バッテリー残量が不足し、予備バッテリーも充電でき
いなかった。男性は死亡したが、同本部は「因果関係は認められない」とする。

  • 救急車来たが
     1月には東京消防庁の救急隊がバッテリーを装着せず、70代男性宅へ出動。12分間、電気ショックをできないまま病院へ運んだ。
    2月にも千葉県成田市で心肺停止状態の70代女性に救命措置をする際、バッテリー切れだった。

     成田市などの件をうけ、総務省消防庁は、全国の消防にAEDの点検徹底を求める文書を出した。
     同消防庁によると、救急車のAEDは毎朝とその都度の使用後に点検。バッテリーの充電や予備バッテリーの搭載などを確認する。犬山市のケースで
    も隊員が当日、バッテリーを確認していたが、残量を見誤ったとみられている。

     AEDの設置は全国の職場や学校などに広がる。
     日本救急医療財団の「全国AEDマップ」によると、任意登録ではあるが、全国に約34万個設置されている。
     各施設のAEDは、救急車搭載のタイプと異なり充電式ではなく、バッテリーが切れるとメーカーから新しいバッテリーを取り寄せる仕組みだ。
     厚生労働省によると、バッテリーを含めAEDの管理方法は法令に定めが
    ない。消防法で6カ月に1回以上の点検が定められた消火器などと異なり、
    AEDの管理は設置者らに委ねられている。
     静岡県職員の池田正樹さん(52)は5年前、商業施設で男性が倒れている現場に遭遇した。店員が持ってきたAEDを使おうとしたが、バッテリー切れだった。近くの別施設のAEDを使った。その男性が助かったのか分からない。設置者に聞くと、「点検はしていなかった」と話したという。池田さんは「AEDの管理は利用者任せでいいのだろうか」と疑問を呈す。

  • 「毎日点検を」
     バッテリーの寿命はメーカーによって異なるが、医用電子機器メーカー日本光電製は約4年。電気ショックを十分できるバッテリー残量がない場合、表示器が緑から赤に変わる。
     バッテリー切れが近づくと本体と連動したシステムで同社も把握できる。
    購入時に登録した設置者らにメールで通知する。それでも同社は「『使用可』の緑色になっているか毎日点検を」と呼びかける。
  • (朝日新聞より)

長文の引用になってしまったが、記事中の『1月には東京消防庁の救急隊が
バッテリーを装着せず、70代男性宅へ出動。12分間、電気ショックをでき
ないまま病院へ運んだ』という事故は以前このメルマガでもご紹介した。

バッテリー積み忘れ

メルマガでは、付属品(予備バッテリィ)と充電状態の見える化と、日常点検を提案した。

AEDメーカの日本光電はバッテリィの充電状態を見える化した。使用可能状態を緑ランプの点灯。要確認状態を赤色とバッテンの表示にしている。
使用可能状態が緑ランプは問題ないだろう。しかし要確認の表示を赤色点灯にするとバッテリィが消耗してしまうと何も表示されなくなる。

バッテリィの電力が足りなくなるとメカ的に反転し、赤色面に反転するようなメカニズムを組み込んでおけば万全だろう。

以前使っていたオフィスの非常灯は、正常時内蔵バッテリィに充電、停電時内蔵バッテリィにより点灯、という仕組みになっていた。毎日退勤時に主電源を落とすことによりライトと電池が正常であることが確認できる。電池の劣化は翌朝朝出社時に非常灯の明るさで確認できる。

 難しい手順や複雑な仕組みでバッテリィの確認をしようとすると、ミスやモレが発生する。単純簡単な点検方法を考えると確実に遵守される。


このコラムは、2022年5月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1288号に掲載した記事です。

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社内研修

 私の本来の仕事は、現場の改善だ。現場の改善を通してお客様の生産性、品質を上させ、業績に貢献する。そしてその活動を通してお客様の改善リーダを育成する。
そういう仕事を中心としているが、研修室での社内研修もしばしばお手伝いすることがある。現場での経験はできないが、演習を疑似体験とすることにより、知識だけではなく、能力が付くように工夫している。

そういう仕事を通して、お客様の教育担当者と話し合うことがある。

あるお客様では、社外講師による研修テーマを、受講生のアンケートで決めているた。これには非常に驚いた。確かに、受講生に興味があることを教えれば、効果は高いだろう。
しかし経営者が、どういうことを勉強して欲しいと願っているかが、優先するはずだ。研修を通して、経営者が必要と考えている知識・能力を従業員が得る。その結果従業員の行動が変わり、業績に貢献できるようになる。

社内研修をすることが目的ではない。
社内研修は手段であり、目的は業績への貢献だ。

研修の効果を直接業績数字で評価することは、困難だ。
往々にして、研修の目標を、年間○回開催、研修参加率○○%以上などと置いてしまう。要は研修が○○人・回以上行われた、ということが目的となってしまっている。ここが間違いのスタートではないかと考える。

こういう目標を持つと、研修参加者をたくさん詰め込むことになる。
○○人・回という目標に対し、コストパフォーマンスを高めたいという意向だ。
演習を中心とした研修では、参加人数が多すぎると教育効果は落ちる。

業績に無関係の目標を置いているから、売り上げが落ちたら研修を取り止める。生産が忙しい時にも研修を取り止めることになる。売り上げが落ちて、定常業務が暇になっている時などは絶好の研修チャンスのはずだ。

直接業績数字に結びつかなくとも、研修の効果を測定する方法はあるはずだ。
例えば研修後に、どんな行動が取れるようになったか観察すればよい。
研修の結果期待すべき行動があるはずだ。その行動が開発もしくは強化されるように、研修を設計する。そして研修後行動が強化されていることを、フォロー観察する。

ものすごく大変な作業に思われるだろうが、それが本来の仕事のはずだ。
能力は一人ひとり違う。研修の効果も一人ひとり違う。それをきちんと計測しなければ、研修の効果は分からないはずだ。

研修テーマを受講生のアンケートで決めてしまうのではなく、必要な研修テーマを決め、研修内容を設計し、効果測定・フォローの方法を考える。こういうことを一緒にお手伝いさせていただくのが、我々の仕事だと考えている。


このコラムは、2011年10月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第227号に掲載した記事です。

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見えないものに対する感度

 先週のコマツの保守サービス事例「アフターサービスを競争原理に」に対し、読者様からメッセージをいただいた。

※T様のメッセージ
 Z様のおっしゃる、「物のコピーは簡単、サービスのコピーは簡単にできない」、全く同感です。見える物に対して、中国人は敏感ですが、見えない物に対しては、概して非常に鈍感であると思います。

コマツの、保守サービスの事例に対していただいたZ様のメッセージに更にメッセージをいただいた。

モノのコピーは大変得意な中国だが、サービスに関しては上手く真似ができない。保守サービスに関しては、ニュースからに書いたように、サービス以前の問題かもしれない。

レストランなどのサービス産業でも、これでよく客が我慢するなぁと感心する。料理や、店構え、内装には敏感でも、ウェイトレスのサービスには鈍感だ。

サービスだけの問題ではない。
海賊版のDVDやCDを販売している店では、最新映画のDVDが15元、古いCDアルバムが25元ということがざらにある。
なぜならCDは2枚組みだからだ。コンピュータソフトなどは、たいていはCD一枚なので、8元だ。

目に見えるハードで値段が決まる。
目に見えないソフトには価値が置かれていない。

中国という国は、経済成長に伴い、インフラなどのハードウェアは急速に充実してきた。しかし、国民のソフトウェアはまだ発展途上だ。

元々儲かることに敏感な、人たちだ。ひとたびソフトウェアが儲かると分かれば、急速にキャッチアップしてくると期待しているのだが。


このコラムは、2011年10月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第228号に掲載した記事です。

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力士諸君、自粛生活を…相撲協会が「心得17カ条」

 「門限を厳守すること」「外出は師匠の了解を得ること」――。日本相撲協会は9日、春場所の中止に関連して、50ある相撲部屋に、こんな内容の「自粛・奨励17カ条の心得」を通達した。日常生活の指針のほか、ボランティア活動の奨励なども盛り込んでいる。

 心得では、八百長問題の反省から様々な面で、力士に「自粛」を半ば命じている。「各部屋で門限を定め、門限を厳守するように徹底する」「町なかで声をかけられたときは、気さくに応え、あいさつする」など。稽古は「各部屋にて行う」として事実上、旅行や遠出を禁じ、部屋や病院、協会以外への外出は師匠の了解を得るとしている。

 一方で、「老人ホームや施設の慰問は、部屋単位の少人数で積極的に行う」として、ボランティア活動であれば遠出を認めている。

(asashi.comより)

 度重なる不祥事や疑惑のため、相撲協会が力士に対し自粛を求め、自粛の心得を通達したというニュースを見て、「なんだかなぁ」というのが正直な感想だ。

今回の心得17か条は、不祥事に対する自粛のための心得だ。では力士としての心得というのはあるのだろうか?

失望とか怒りというのは、合意されていない期待が満足されなかった時に発生する感情だ。
日本の国技である相撲の力士は、強いばかりでなく日本的道徳を重んじる人格者である。というのが国民大方の期待だろう。この期待が力士側にも合意されているのだろうか?

典型的な例を挙げるとすれば、外国人力士にも「日本的礼儀作法」を期待するのが日本国民であろう。是非はあるだろうが、日本の国技である以上、その期待を持つのは当然であり、その期待に応えてこそ相撲力士といえるだろう。

ファンの期待に応える基準が、「心得」だ。
挨拶をする、門限を守る、と言うあまりにも初歩的な要求も、それが双方で合意されていないのだとすれば、明文化する必要があるだろう。相撲業界も国際化が進んでおり、異文化で成長した力士もいる。日本人の中でも、年代によって多様化が進んでいる。そういう意味で、「自粛心得」ではなく本来の「力士心得」が必要なのかもしれない。

私達のように中国でモノ造りをするということは、中国と言う多様性社会の中に日本的経営と言う異文化を持ち込むことだ。そのためには「心得」を明確にし合意をしておかねばならない。

元来日本では、言われなくても心得ているのが「心得」だったはずだ。そのように、家庭・学校で躾を受けてきた。しかし日本の中でも「心得」と言う基準を明確にする努力が必要となってきているような気がする。

◇自粛・奨励17カ条の心得◇

  1. 自粛の意味を込めて、当分の間(協会が了承するまで)、稽古は東京の各部屋で行う(出稽古は問題ありません)
  2. 当面の間(協会が承認するまで)、巡業は自粛する
  3. 老人ホームや施設への慰問は、部屋単位の少人数で積極的に行う(その際、広報部に届け出を提出する)
  4. 社会貢献活動、ボランティア活動は積極的に行う
  5. 講演依頼については、自粛中であることを自覚して選択する。ボランティアの性格(幼稚園、小・中学校などの教育機関や施設など)があるものは積極的に行う
  6. 「協会員のあり方(日本相撲協会発行)」を再読する
  7. 冠婚葬祭は各自判断で出席する
  8. 各部屋主催のパーティー、激励会、講演会等は自粛する
  9. 特別調査委員会の調査には、積極的に協力する
  10. 「摂生」(健康に注意しながら規則正しい生活をすること)と「節制」(度を超さないよう欲を抑えて控えめにすること)を心掛ける
  11. 「我々(われわれ)は今こそ襟をただして、自分たちのあるべき姿をしっかりと見定め、新しい時代に向かって新しい道を進んでいかなければいけない」ということを自覚する
  12. 各部屋で門限を定め、門限を厳守するように徹底する
  13. 各部屋、自宅、病院・治療院、日本相撲協会以外へ外出する際は、すべて部屋の師匠に了解を得る
  14. 「常に人に見られている。注目されている」という認識を忘れず、責任を持った行動を心掛ける
  15. 相撲を志した初心に帰って、日々努力しよう
  16. 近所に限らず、町なかで声を掛けられたときは、気さくに応え、挨拶(あいさつ)する
  17. 誠実な心を持って、規律ある行動を取ること

  18. このコラムは、2011年2月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第192号に掲載した記事です。

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曲則全

『曲則全,枉則直,窪則盈,敝則新,少則得,多則惑』

老子の《道徳経》に出て来る一節だ。

読み下し文に直すと「きょくなればすなわまったし、がればすなわなおし、くぼめばすなわち、やぶるればすなわち新たなり。少なければすなわち得られ、多なればすなわち惑う」となる。

曲がった木は役に立たず切られることなく命を全うする。
身をかがめていれば真っ直ぐに伸びることができる。
窪地のように凹んだ所には水が満ちる。
ボロボロになれば新しくできる。
持っているモノが少なければ得るものがある。
持ってるモノが多ければ惑う。

逆説的な言い方だが、これが世の中の真理ではないだろうか?

謙虚にしていれば上から重用される。
何も知らなければ素直に学ぶことができる。
捨てることで新たなモノが手に入る。
手が空いていればチャンスを掴める。
たくさん仕事があっても力が分散し成果が上がらない。

仕事がない時にボヤいていないで、次の仕込みをする。暇な時こそ飛躍のチャンスだ。
私の友人は金融危機の時に徹底的に改善活動をした。例えば現場のレイアウトを変えて二機あったエレベータを一機で賄えるようにすることで、エレベータの保守点検費用を半減する。このような改善活動の積み重ねで年間300万元の間接費用が節約ができ、筋肉質の経営体質になった。


このコラムは、2018年4月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第653号に掲載した記事です。

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中国自動車メーカー、ボルボ買収か 

 【ロンドン=尾形聡彦】英紙タイムズ(電子版)は10日、米自動車大手フォード・モーター傘下のスウェーデンの高級車ブランド「ボルボ」が、中国の大手自動車メーカーの長安汽車(本社・重慶市)に売却される可能性があると報じた。実現すれば、中国メーカーが、高級車市場に大きな足がかりを得ることになりそうだ。

 報道によると、フォードと長安の幹部の間で先月、売却交渉が行われたという。両社は中国で合弁事業を行うなどもともと関係が深いという。経営難に陥っている米フォードは、米政府に資金支援を要請する一方、傘下のボルボ売却を検討していることを明らかにしていた。

(asahi.comより)

衝撃のニュースだ。
以前聯想(レノボ)がIBMのPC部門を買収した時より驚きだ。この時は中国は既にPC生産の世界拠点として機能しており、周辺産業を含めて成熟していた。中国企業がIBMのブランドを買ったということで衝撃はあったが、モノ造りの面では既に中国企業も十分PCの世界的メーカになる力を持っていた。

しかし今回は自動車メーカである。
自動車メーカを支える部品メーカを含めて、中国自動車メーカの実力はまだ2歩、3歩遅れていると感じている。人の命を乗せて走る自動車に不良があってはならない。品質面でまだ中国の自動車メーカが世界に製品を輸出するのは早いだろうと思っていた。

クライスラーとの提携解消で奇瑞汽車は政府から1350億円の資金援助を取り付けたという報道もある。この資金で奇瑞汽車は米国市場への進出を独自に狙うことになるのだろう。

米国自動車産業の落ち込みが中国自動車メーカの成長を助けた形になっている。自動車産業の世界勢力に中国企業が割って入ってくるのはそうは遠い先ではなさそうだ。


このコラムは、2007年12月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第70号に掲載した記事です。

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日本総研、生産改善技術で17社と交流組織

 日本総合研究所はグンゼや自動車部品製造の住野工業(広島市)、ブラザー精密工業(愛知県知立市)など17社と生産改善の技術交流組織「TOCユーザー会」を立ち上げた。相互に工場見学や改善事例を紹介し、生産性向上につなげる。

 日本総研が生産工程の最適化などの改善技術を指導しているメーカーが参加する。グンゼの宮津工場(京都府宮津市)や住野工業の本社工場など参加企業の36工場では、生産納期の短縮や仕掛かり在庫削
工場との価格競争で毎年コスト削減を求められるなか、生産性向上が続かなかったり、改善活動が停滞するといった課題も抱えていた。

(NIKKEI.NETより)

「TOC」というのはゴールドラットが「ザ・ゴール」で書いた制約理論の事だ。Theory of Constraintsを略してTOCといっている。

企業活動の全工程の中でボトルネックとなっている工程を制約条件として定義する。この制約条件が企業の利益を増やす鍵となる。TOCでは制約条件のスループットを上げる事により生産性を改善しようという考え方である。

非制約工程を制約工程に従属させる、すなわち制約工程の能力以上には生産投入しない。制約工程に着目してバッファを持つと言う考え方である。在庫ゼロ、リードタイム半減を狙う。

更に異業種間の交流が改善を加速するだろう。昔からある「NPS研究会」とは手法が違うが、同じ発想である。

TOCの詳細に関しては「在庫ゼロリードタイム半減TOCプロジェクト」という書籍にTOCを導入した3社の事例が紹介されている。こちらを参照されると良いだろう。

TOCやNPSに限らず異業種間で改善の切磋琢磨をすると言うのは大きな効果が期待できる。中国でもこういう活動を広めてゆきたいと考えている。


このコラムは、2008年12月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第66号に掲載した記事です。

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ハイハイ覚える赤ちゃん型ロボ 阪大が開発

 「ハイハイ」や「伝い歩き」の仕方を試行錯誤しながら自分で学ぶ赤ちゃん型ロボットを大阪大の浅田稔、石黒浩両教授らの研究チームが開発し、3日発表した。人が体の動かし方を身につけるメカニズムの解明に役立つほか、より人間に近いヒト型ロボットの開発につなげる。

 ロボットは高さ約50センチ、重さ3。5キロで、新生児とほぼ同じサイズ。人と同じように関節が動き、視覚や聴覚となるカメラやマイクのほか、触れた感覚がわかるように全身に約90個のセンサーなどを付けた。

 歩き方をあらかじめ教えるのではなく、学習機能だけをプログラムしてある。例えば、ロボットに「前に動きたい」という欲求を与えると、体をでたらめに動かす中から前に動ける方法を探しだし、ハイハイなどの動きができるようになる。ほかに、寝返りやつかまり立ち、伝い歩きなどの仕方を体得することができるという。

(NIKKEI NETより)

 実に面白いことを考える人がいるものだと感心した。
プログラミングした学習機能によって、ロボットは人より早く歩けるようになるだろう。
この様な実験の過程で、人がどのように体を動かすことを学習するのかが分かれば、ロボットの開発だけではなく他にも応用が出来そうだ。

人は学習機能も進化・成長するはずだ。
このメカニズムが判明すれば、ロボットに成長要求だけをプログラミングしておけば、一週間位すれば自分で歩行したり話したりすることが出来るようになるのではないだろうか?

歩行ロボットを作るのならば、初めから歩行方法をプログラミングした方が早い。学習機能により歩行させるアプローチを考え付く発想が面白い。

これを部下の成長に当てはめて考えたらどうなるだろうか?
部下にプログラミングを施すことによって、作業をすることは可能になる。
しかしこれでは応用や自分から進化・成長することは無いだろう。作業は出来ても仕事は出来ない。

仕事をする意義や喜びをプログラミングすることにより、自ら作業を習得するように仕向ける。多少効率が悪くても、この方が高いパフォーマンスを発揮するだろう。そして自ら進化・成長する意欲を持つことが出来る。


このコラムは、2010年3月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第143号に掲載した記事です。

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