品質保証」カテゴリーアーカイブ

マツダ アクセラ 7万4000台をリコール

 マツダは1日、エアバッグ作動時にけがをする恐れがあるとして、普通乗用車「アクセラ」7万4231台(2003年5月~06年9月製造)のリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出た。事故やけが人は報告されていない。

 国交省によると、運転席エアバッグのカバーに付いているロゴマークが劣化し、エアバッグ作動時に飛散する可能性がある。

(JIJI.COMより)

 ロゴマークが劣化してエアバック動作時に飛散するということは、ロゴの材料(おそらくプラスチック)が環境ストレスにより劣化したのだろう。ロゴマークの材質が何かはわからないが、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートは高温・高湿環境で加水分解による劣化が発生する。

エンブレム部品が車両メーカの支給品なのか、エアバックメーカ生産なのかはわからないが、エンブレムを単なる装飾部品とする油断があったのだろう。

装飾部品はデザイナーの不可触領域と考えてしまうと設計者が口を出しにくくなる。形状はデザイナーの領分であっても、安全に関わる材質は設計者の責任範囲だ。

加水分解以外にも紫外線で劣化する場合もありうるだろう。油脂劣化もある。
構造部品だけではなく装飾部品も劣化耐性を考慮すべきだろう。
本件は構造部品でなくとも安全に影響を与えうるという示唆と捉えたい。ハンドル中央にあるロゴマークも単なる装飾部品ではなくエアバックの噴出口と捉えれば、安全に関わる機能部品となるはずだ。

安全に関わりがなくとも、ロゴマークのように製品の顔と言える部分が劣化してはブランドイメージが下がる。


このコラムは、2021年7月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1159号に掲載した記事です。

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続・顧客満足

 8月16日配信のメールマガジン「顧客満足」でブルートゥース・イヤホンの不良について書いた。

割安のブルートゥースイヤホンを購入したが、わずか一週間で壊れてしまった。
その代替え品もブルートゥースペアリングができない、充電ができない状態であり、代替え品を受け取ることなくまた交換となった。2回目の交換品は、ブルートゥースペアリングができ、スマホから音楽も聴くことができた。しかし喜んだのも束の間、翌日にはブルートゥースペアリングも充電もできない状態となった。

ここではたと気がついた。
取扱説明書を再確認すると、「5V1A以下」の充電器を使用する様指示がある。1回目の故障は、販売店で充電せずに持ち帰り自分で充電した。販売店の店員に指示された様に5V1A以下の充電器を使用していた。
一週間後に壊れるが、それまではちゃんと使用できた。

2回目の交換は既に販売店が充電しており、ペアリングも充電もできない状態となっていた。

3回目の交換はちょうど充電が完了したところでペアリングがうまくできたが翌日(内蔵電池が放電し終わった時点)に充電がで出ない状態となっているのに気がついた。

問題点は「5V1A以下」の充電器で充電すること、というマニュアルの記述だ。
自分で初期充電をした時は一週間後に別の症状の故障が発生。
2回目、3回目は販売店の大容量充電器で充電。2回目は充電後時間が経っており、自然放電で電池残量がなかった。3回目は充電完了直後だったので既に充電回路は壊れていたが、電池残量でその日は使用できた。

という経緯の様だ。

充電用の電源に電流容量の上限(1A以下)が設定してあるが、大は小を兼ねるのではないかと思われる方もあるだろう。しかし電池が放電状態の時に電流容量の大きな充電器を接続すると突入電流で内部の保護回路(例えばヒューズ)を壊してしまうことがありうるのだ。電源容量の少ない充電器は大きな突入電力を発生できないので問題は起きない。

今4回目の交換品を待っているところだが、販売店の店員さん(最初の購入時に、電源は1A以下を使用してください、と注意してくれた人)に。次回交換品が届いたら必ず1A以下の電源を使う様お願いをした。

普通に「大は小を兼ねる」と考えてしまうと、こういう事故が発生する。

電池駆動の製品を設計される方は、こういう点に気をつけられたら良いと思う。
内部の保護回路が突入電流で壊れてしまうなどの事例は、性能評価試験では発見できないだろう。妥当性評価試験に定格外の充電器を使用した場合の評価を追加するなどしたほうがよかろう。

消費者、販売店もマニュアルに書いてあることは守るべきだ。
(マニュアルに書いておけばなんでも良いわけではないが、クレームを受けた時に、多少は有利になるだろう)

メーカはただ代替え品を送るだけでなく、故障原因をきちんと調べておけば販売店にきちんとアドバイスができたはずだ。少なくとも品質保証部門に報告を上げていれば、同じ販売店から同じ故障モードの不良返却が続いている事に気がついたはずだ。そして次期製品からはその様な故障が発生しない製品設計ができるだろう。


このコラムは、2021年9月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1183号に掲載した記事です。

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不良の波及範囲特定

 不良が発生した場合その波及範囲をいかにびしっと特定するかが大切である。
波及範囲があいまいであると、処置をする範囲が拡大してしまい、不良損失が増大する。
製造のトレーサビリティをきちんと取っておく事が、波及範囲の特定に役立つ。

トレーサビリティの精度は、万が一不良が発生したときの影響度にあわせれば良いだろう。例えばRoHS規制にかかわるような問題は、不良の影響度はかなり大きくなる。万が一の事があれば出荷済品の回収が必要である。
RoHS禁止物質が混入する可能性のある部材に関しては、メーカまでさかのぼってトレーサビリティを確保しておかなければならない。

以前指導していた工場でシリアル番号のバーコードラベルに重複が見つかった。
製造部は重複しているラベルはすべて発見・隔離したといっているが何も根拠がない。

そこでシリアル番号が重複した原因から調査をした。
ラベルプリンタでバーコードラベルを印刷する時に、ラベル用紙の位置出しをするために試し印字をする。試し印字をしたラベルが正規のラベルに混入したと判明。

ラベルプリンタのインクシートを全部巻き戻して印字の記録を調べ、重複番号をすべて洗い出した。(熱転写型のプリンタなので、インクシートを調べると印字内容が白黒反転して見える)
これで波及範囲はすべて特定でき、該当する番号のラベルを全部工程から回収する事が出来た。

これ以降はラベル印刷作業者は試し印字の記録をとることとなった。
しかしこの不良発生により試し印字のムダが発生している事が判明。
更に対策として、一発位置あわせが出来るようにプリンタに工夫することになった。不具合対策がコストダウンにもつながった例である。


このコラムは、2008年10月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第55号に掲載した記事です。

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失敗学

 今週の「ニュースから」では他社の失敗事例を自社の失敗未然防止に役立てようという趣旨で書いた。

たまたま先週は「失敗の予防学」という本を読んでいた。

著者の中尾政之氏は元々エンジニアだった人で、今は東大工学部の教授である。

失敗から予防保全につなげないと、毎回同じような失敗ばかりしていることになる。良く失敗は授業料だと思えば良いというが、授業料だけ払っていてはいけない。今回のように他人が支払った授業料で予防保全ができれば大変お得である。

同じ現象を見てもそこから改善のヒントや、そこにある失敗のリスクを見分ける事が出来る人と、できない人がある。この能力は天性の能力ではなく、訓練で身につく能力だと思っている。

書物からも勉強できるがこの手の能力は実践訓練が一番身につきやすい。


このコラムは、2008年8月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第48号に掲載した記事です。

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スカイマーク機、着陸時にカートが動いて客が足を骨折

 3日午後7時15分ごろ、スカイマークの神戸発羽田行きボーイング767―300型機が着陸時、飲み物用のカートが動いて乗客2人にぶつかった。

 調べでは、客室最後部にあった重さ44、5キロのカートが着陸時の衝撃で動き出し、約13メートル走行した。カートは、車輪のストッパーのほか、本体を機体につなぐ留め金もある構造という。

(asahi.comより抜粋)

 怪我人の内の一人は足を骨折しており、かなり重傷である、この記事だけでは何が原因か不明なので今回の事故に関しては言及しないことにする。

飛行機に乗ると、乗客の搭乗完了時搭乗口を閉める時に「乗務員はオートモードに切り替えた後相互に確認を行ってください」という機内放送を聴くはずである。この後クルーが扉の操作を行った後お互いに親指を立てあっているのをご覧になった事があると思う。

旅客機は乗降口を開けると自動的に非常脱出用の滑り台が出て来る様になっている。しかし空港で乗客が乗り降りする時にも滑り台が出てきてしまっては不都合なので、マニュアルモードにして扉だけ開けるわけである。

このマニュアル・オートモードの切り替えを万が一忘れてしまうと大変なことになる。そのため「ポカよけ」と「ダブルチェック」を操作に仕込んである。

ポカよけと言うのは、モード切替の操作が完了しないと扉開閉のハンドルが操作できないようにしてある仕掛けのことである、扉が開いている時にマジックテープのたすきがかかっているのをご覧になった事があるであろう。

飲食物用カートの固定がどのような「ポカよけ」「ダブルチェック」の仕掛けをしてあるのかは良く知らないが、乗降口のモード切替のように厳重ではなさそうである。

製造現場でも同様に「ポカよけ」「ダブルチェック」を組み込まないといけない工程がある。

自己確認も「指差し確認」「声だし確認」など古くから工夫されている、皆さんの工場ではどんな工夫をされているだろうか?


このコラムは、2007年11月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第6号に掲載した記事です。

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検査不正、データ改ざん

 自動車部品大手の曙ブレーキ工業は16日、自動車メーカーに提出する製品の検査報告で、データを改ざんしたり、未実施の検査データを記載したりするなどの不正があったと発表した。少なくとも2001年から行われていた不正は約11万件にのぼる。ただ安全性は確保されているとしており、自動車大手による大規模なリコール(回収・無償修理)には発展しない見込みだ。
 検査不正があったのは、主力製品のディスクブレーキやブレーキパッドなど4製品。国内の6工場中、4工場で不正が見つかった。01年1月から20年5月まで自動車メーカーに提出した検査報告19万2213件を再調査したところ、約6割に当たる11万4271件で不正があった。うち4931件はメーカーが求める誤差を超えていたが、国の保安基準に定められた性能は確保されており、いずれも安全性に問題はないという。
 宮地康弘社長は16日のオンライン会見で「安全に大きくかかわる製造業であってはならないこと。全力で信頼回復をはかる」と陳謝。自動車メーカーによる「リコールにはならないと聞いている」と話した。

(朝日新聞より)

 2月17日付のニュースだ。
以前完成車メーカのブレーキ検査不正についてメルマガに書いた。
「検査不正・罰則強化へ」

罰則規定がなければ、決められた事を決められた通りにできないのかと、日本の完成車メーカの品質管理について苦言を呈した。

大元のブレーキメーカでは、完成車メーカの不正検査が報道され、罰則強化により再発防止がされたのを知りつつ、自社では検査データの改竄、検査データの捏造などがまかり通っていた。

「他山の石」どころではない、同じ業界、顧客の不正に対してなんら顧みる事事なく自ら不正を継続していたわけだ。現場で行われていた不正に、部門長も経営陣も気付いていなかったのだろうか?
少なくとも完成車メーカのブレーキ検査不正が明らかになった時点で、自社内の再点検があってしかるべきだと思う。

他人の失敗から学べば、自ら傷を負うことはない。
自分が傷つかなければ学べないようでは、命がいくつあっても足りないだろう。

「日本の品質」を誇りにすることはもうできないのかも知れない。
残念なことだ。


このコラムは、2021年3月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1105号に掲載した記事です。

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旅客機滑走路逸脱事故

 4月23日に山形空港で名古屋行きフジドリームエアラインズ(FDA)386便が離陸時に滑走路を逸脱した事故があった。
運輸安全委員会の調査結果が報道されている。

「滑走路逸脱のFDA機、車輪操作装置に不具合 山形空港」

 山形空港で4月、フジドリームエアラインズ(FDA)の旅客機が離陸走行中に滑走路を逸脱した重大インシデントで、国の運輸安全委員会は28日、旅客機の車輪を操作するステアリング装置の一部に不具合が見つかったと明らかにした。

 FDAの聞き取りでも、機長は「機体が左にそれたので戻そうとしたが、(車輪を操作する)フットペダルを踏んでも戻らなかった」などと話していた。原因を特定するため、運輸安全委は飛行データや機体を詳細に調べるという。

 インシデントがあったのは4月23日夕。名古屋行きのエンブラエル175型機(乗客・乗員計64人)が離陸走行中、全長2千メートルの滑走路の途中で左にそれて草地で止まった。けが人はいなかった。運輸安全委によると、直後の初期調査でステアリングの不具合が見つかったという。

朝日新聞 DIGITALより

事故機はエンブラエル社製ERJ175。エンブラエル社(ブラジル)はあまり耳にしないが、エアバス、ボーイングに次ぐ世界第3位の航空機メーカだ。カナダのボンバルディアより売り上げ規模が大きいらしい。

実はERJ175より一回り小さいERJ145を、広西省出張時にしばしば利用した。
左1列、右2列という変則的な座席レイアウト。搭乗ドアがタラップになっており、ボーディングブリッジには接続できず沖スポからの搭乗。ひょいと離陸する軽やかさなど印象のある機体だった。

事故機は2016年6月製造、2019年1月に「重整備」が行われている。おそらく何も問題はなかったのだろう。

記事にある「旅客機の車輪を操作するステアリング装置」とは航行中方向舵を操作するフットペダルだ。地上でタキシングする際には前輪の向きを変える役割を持つ。

ここまでの情報で大胆にも「素人考え」で事故原因を推測してみた(笑)

事故機は駐機位置から誘導路を通って滑走路までタクシング出来た。従って離陸開始までは前輪操舵機能には問題がなかったはずだ。
離陸後はフットペダルは方向舵の制御に使う。離陸後のタイミングで、手動または自動で前輪/方向舵の制御が切り替わるはずだ。

離陸開始後から離陸前にこの切り替わりが発生すれば、前輪の方向を制御しようとフットペダルを操作しても、虚しく方向舵の角度が変化するだけとなる。

従って今回の事故は、前輪/方向舵の切り替えに何らかの人為ミスまたは故障があったと推定する。

多分新聞記事になった時点(5月28日)で、事故調査官はすでに答えを知っているだろう。本当の事故原因はわからないし、今後公表されないかも知れない。それでも、原因を考えてみるのは「頭の体操」だけではない。

今回の事例では「モード切り替え」「タイミング」がキーワードとなる。

  • モード切り替えができない。
  • 予期せぬタイミングでモード切り替えが発生する。

という潜在要因の引き出しが増えるはずだ。
これは自社の製品設計、工程設計の時の潜在不具合要因となる。
同様に問題原因解析時に挙げることができる問題要因が豊富になる。


このコラムは、2019年6月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第832号に掲載した記事です。

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検証力

 このメールマガジンの読者様の大部分は、製造業に関わる方だと思う。工程内や市場で発生する不具合の解析をされたご経験も多いだろうと思う。

現在進行中のQCC道場でも何チームかが工程内不良、客先不良の低減をテーマに取り組んでいる。工程ごとの検査がない製品や、客先・市場で発生した不良はどの工程に問題があるのかを特定するのが難しくなる。

工程ごとに検査をして次工程に送る製品であれば、どの工程でどんな不良が発生するかがわかり、原因の特定も容易になる。しかし工程ごとの検査がないまたは抜き取り検査で次工程への移行を判定するような製品だと、手がかりとなるデータがない。

客先発生の不良も同様の手がかりが得られるが、市場不良の場合はさらに最終顧客の環境ファクター(取り扱い方法も含む)も加わるため、より手がかりが少なくなる。わずかな痕跡から真因を推定することになる。

いずれの場合にせよ、推定した原因が正しいことを検証しなければ正しい原因推定とならず、対策しても再発することになる。

例えば金属加工製品で、顧客工場でバリがある製品が見つかる。従来抜き取り検査で済んでいたものが全数検査、しかも検査部門の検査を要求される。
こうなると、不良品のロスだけではなく、検査費用もロスとなる。しかも発生頻度が少ない不良であれば、検査見逃しのリスクもある。全数検査の上で流出したら、一気に顧客の信頼を失うことになる。

バリ発生のメカニズムを特定できれば、改善は容易だ。バリが発生する要因を列挙し、各々の要因で再現試験をしてみる。

例えば金型をプレス機に組み込む精度でバリが発生すると仮定する。
X,Y,Z軸方向、垂直方向の角度、水平方向の角度などわざと振ってみる。もちろん生産できない(金型が破損する)レベルまで振る必要はない。

どのパラメータの変動が不良率の増減に影響があるかを突き止めれば、厳しく管理しなければならないパラメータが分かるはずだ。


このコラムは、2021年5月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1134号に掲載した記事です。

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作業手順の設計

 中国のコロナ感染もひと段落したと感じていたが、広州で感染者が発見され、ついで佛山、深センでも感染者が出た。広東省では一気に厳戒態勢に戻り、全住民の一斉PCR検査を開始した。

私が住んでいる小区(日本で言えば町内会?)でもPCR検査を受けるよう指示がでた。小区指定のPCR検査会場に行ってみると、大勢の人が検査会場の外まで行列しており、恐れをなして引き返した(笑)

代わりに事務所の近所にある会場に行くと受診者は大勢いるが、検査員が多いため行列は粛々とはけている。

PCR検査の手順は以下のとおり。

  1. 個人情報をスマホに入力する。(事前に広報されている方法に従って個人情報などを入力、スマホ画面に二次元バーコードが出るように準備する)
  2. 列に並ぶ
  3. 列ごとに係員が10名単位に分ける
  4. スマホの個人情報を係員がスキャン
  5. 喉の奥に綿棒を突っ込み検体を採取
  6. 検体の入った試験管と個人情報を紐づける
  7. 検査センターで検体を検査要請・陰性を判定
  8. 結果をデータ入力すると各個人のスマホ画面に結果が表示される

7.8.はさらに詳細手順が決められていると思われるが、我々には窺い知るすべはない。

手順を決めておかないと、大規模検査で混乱が発生するだろう。(日本ではワクチン摂取の予約段階で混乱が発生したと聞いている)

1000万人ほどの人を対象として3日間で検査をする。きちんと手順を決めておかねば大混乱するはずだ。ほぼ完璧な手順のように見えたが、現場を見ると大きなリスクが残っていた。私が並んだ列の係員は検体採取作業者の側で個人情報の確認をしないで、次の十人を並ばせた時点で個人情報のスキャンを完了してしまった。

そのため列の順番が入れ替わる、傍から人が入ってくる、などの事態が発生すると、検体と個人情報の紐付けが狂ってしまう。現に私の横の列にでは、柵外から入ってきた人が列に割り込んでいた(苦笑)

別の大規模会場の動画を見るとほぼ同じ手順で行われていた。しかし別の会場では個人情報のスキャンは検体採取の直前に行われており、検体と個人情報の整合性は保たれているように見える。

多分大筋の手順設計者は横入りや、順番の入れ替わりが起きることを想定していなかったのだろう。この場合現場の作業管理者、実作業者が気がつかねばならないのかもしれない。作業指示だけでは気がつかないだろう。その作業の意味を現場に伝えなければならない。

このような観点で、工場での作業手順書を見直してみる価値があるだろう。


このコラムは、2021年6月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1150号に掲載した記事です。

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悪い情報

 悪い情報は良い情報より伝わりやすい。
「□□不良が発生した」という情報は「□□不良の対策を実施した」という情報より伝わりやすい。

恣意的に悪い情報を隠蔽しても漏れ伝わる。
同じ職場、同じチーム内ならば良い情報は盛り上がり、共有されやすい。しかし他所の情報は良い情報より悪い情報の方が伝わりやすい。

重要なのは「伝わりやすい」ということより「共有されやすい」ということだ。不都合な情報が共有できれば、その対策を多くの視点で考えることができる。

そしてゆっくりした変化より、早い変化の方が伝わりやすい。

例えば「毎日1%ずつ悪化している」という情報より「70日で2倍に悪化した」という情報の方が伝わりやすい。どちらも毎日1%の悪化は同じだが、70日で2倍に悪化の方が急激な変化に見える。

急激に悪い変化が発生しているという情報を共有できれば、問題意識も高まるだろう。


このコラムは、2022年2月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1257号に掲載した記事です。

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