品質保証」カテゴリーアーカイブ

顧客満足vs顧客感動

 以前CMでカスタマーデライトというキャッチコピーが使われていた。
顧客満足より顧客感動(カスタマーデライト)という意味を表現しようと考えたのだろう。しかしそのキャッチコピーは煙草の宣伝に使われていた(苦笑)

一昔前は「品質が良い」というのは「不良がない」という意味で使われた。
中国の商店では、購入前に不良でない事を確認してから買うのが常識だった。ランプひとつ買うときも、必ず店先で点灯検査をしてから買う。
しかし「不良がない」というのは「当たり前品質」だ。

当たり前品質が満たされても「満足」は感じない。ただ「不満」を回避するだけだ。顧客が買いたいと思うのは「魅力的品質」だ。持っている事で、周囲から羨ましがられる、自己満足できる。そんな製品が魅力的品質を持つ。

高品質の製品を作っても売れるとは限らない。魅力的品質の製品ならば顧客は競うように買うだろう。すでに我々の周りは、高品質製品は当たり前品質となっている。魅力的品質を製品に作り込まねば売れない。

我々は当たり前品質の製品を作る製造業から、魅力的品質を作り出す創造業に転換しなければならない。


このコラムは、2021年3月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1106号に掲載した記事です。

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スイッチ接点不良

タイホンダおよびホンダは7月8日、『レブル250』など8車種について、ヘッドライトが点かなくなるおそれがあるとして、リコール(回収・無償修理)を国土交通省へ届け出た。

対象となるのは(中略)8車種で、2014年3月19日~2021年4月28日に製造された4万3387台。

対象車両はハイビーム/ロービーム切換えスイッチの接点構造が不適切なため、はんだフラックスが接点表面に残留するものがある。そのため、そのまま使用を続けると、切換えスイッチが接触不良となり、最悪の場合、ヘッドライトが点かなくなるおそれがある。

改善措置として、全車両、対策品の切換えスイッチを組付けたウィンカスイッチアッセンブリと交換する。

不具合は104件発生、事故は起きていない。市場からの情報によりリコールを届け出た。

Responseより)

 「ハイビーム/ロービームの接点構造が不適切」としか表記されていないので何が問題なのか判断できない。普通に考えるとスイッチの端子はスイッチ筐体の外側にあり、筐体内側のスイッチ接点にフラックスが侵入するような構造になっていないはずだ。

半田付けによりフラックスがスイッチ内部の接点まで侵入するのであれば、部品選定時の評価不足と言わざるを得ない。

前職時代に新規部品登録委員会の主査をしていた。機構部品は分解して内部観察、スイッチ、コネクタ類は硫化水素による腐食試験を実施していた。
ただ分解するだけでは何も判断できないかもしれないが、継続することによりどういう構造でフラックスの侵入を防いでいるのかわかるはずだ。

またこのような事故が、経験値を積み上げる。流石にどこのメーカのどの型番のスイッチかを公表はしないだろう。しかしその気になれば道はある(笑)

以前回収対象になっていたPC電源をジャンク屋を回って探した事がある。分解し、中を調べてみたが原因は分からなかった。しかしこの話を他社の品質担当者にしたら、それはこういう不良なのだよ、教えてくれた。熱意があれば道は開けるものだ(笑)


このコラムは、2021年7月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1165号に掲載した記事です。

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顧客満足

「顧客満足」という言葉が当たり前になっている。顧客とは次工程であり、その顧客の顧客も顧客だ。最終的には市場で製品を購入していただいた消費者も顧客である。次々と顧客満足を鎖の輪のように繋いでいくことで顧客満足のリンクが完成する。その顧客満足チェーンの一つのリンクが壊れても顧客満足は達成できなくなる。

今更当たり前のことを書いたが、実は信じられない最悪の事例を体験した。

顧客満足の反対は顧客不満足である。顧客満足は顧客満足チェーンの一つ一つの努力の上に成り立っている。しかし顧客不満足はそのチェーンの一つでも機能しなければ、すべてのチェーンの努力は水泡に帰す。

日本で購入したブルートゥース・イヤホンが故障したため近所の電気店でブルートゥース・イヤホンを購入した。有名ブランドの製品だが割引で格安になっていた。通勤時にオーディオブックやPodcast、ランニング中に音楽を聴くために使っている。音質に対する要求は高くない。要求はただ耐久性のみ。

しかし、一週間もしないうちに大音量の雑音を発して壊れた。
当然このような顧客不満足を解消するために初期不良品の無償交換を保証している。しかしこれは「顧客満足」ではなく「顧客不満の解消」でしかない。
もしアフターサービスを顧客満足に繋げようとするならば、顧客の使用状況を尋ね、故障原因を特定し、製品設計・製造方法の改善をしなければならない。

しかし不良品を工場に返却し代替え品を受け取っても、故障原因の報告はない。
まぁ、通常の消費者がそのようなことに興味を持っているとは思えないので、そこは許容範囲としなけらばならないだろう。しかし送られてきた交換品は充電もできないし、最初のペアリングもできない不良品だった。

返却の際に取扱説明書を同梱するのを忘れたら、代替え品には、丁寧にも、取扱説明書は添付されていなかった。わざわざ取説を取り除き代替え品を発送したとしか思えない。

今回の事例で「顧客不満の解消」どころか「顧客不満の増長」となり、結果として「ブランド不信」という最悪の結果となった。

正しいクレーム対応で「顧客不満の解消」だけでなく「顧客支持」が得られた事例もある。

相次ぐ異物混入、マック謝罪 経営不振に追い打ち

消えたペヤング 虫1匹に払う数十億円の代償

少なくとも今回の事例で、私は今回購入したブルートゥース・イヤホンメーカの製品は二度と買うことはないだろう。


このコラムは、2021年8月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1176号に掲載した記事です。

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ソニー製パソコンに異常発熱の恐れ 44万台無償修理

 ソニーは4日、ノートパソコン「バイオ TZ」シリーズの一部機種で異常発熱の恐れがあるとして、発売済みの44万台のうち顧客から申し出があった分を無償で点検、修理すると発表した。不具合が確認されたのは全世界で209件(うち国内が83件)。全体で軽度のやけどが7件報告されているという。

 ソニーは2007年8月には顧客から指摘を受けて、問題を把握していた。ただ、経済産業省への報告は今年8月だった。公表まで1年かかった理由について、同社は「不具合の調査に時間がかかったため」としている。

(NIKKEI。NETより)

 ネット上の情報から推測すると、ノートPCの液晶ディスプレイへの配線(フレキシブルPWB)がヒンジの開閉により徐々に絶縁層が磨耗し線間がショート、発熱するという故障のようだ。

当然稼動部分なので、そのような故障モードは当初から予測できるはずであり設計配慮はしてあったはずである。又耐久試験なども実施して問題がない事を確認してあるはずである。
それでも事故が発生した。なんらかの問題があったと考えるべきだ。

  • 製造的な問題
    設計的な弱点と製造的なばらつきが重なって事故が発生。
    事故品が設計仕様どおり作られていたのかどうかはわからないが、設計余裕がないところに製造上のばらつきが加算され、事故が発生。または製造の工程能力を超えた設計仕様が指定されていた可能性もある。

    当然設計的に製造余裕度を確保することは重要だが、高機能かつ小型という時代の要請は十分な設計マージンを確保できない場合もある。

    特に今回のように工程内検査で見つからない故障モードに関しては、きちんと工程FMEAを実施して事前に対策を打っておかなければならない。
    稼動部分の磨耗が与える故障モードの影響をきちんと評価をすれば、何らかの対策を打たなければならないという結論がでたはずである。

  • 設計妥当性評価の問題
    当然設計妥当性評価の項目には、寿命評価も入っていたはずである。
    その評価基準が妥当であったかどうか検証をしなくてはならない。これは外部からは知る由もないが、自社製品に水平展開をするために考察をしておく必要がある。

    寿命試験の基準を、製品の使われ方できちんと決定しなければならない。
    ノートPCの寿命を100年と想定して評価基準を作成するのは妥当ではない。
    長持ちをする製品を出荷するのも企業の責任であるが、消費者が受け入れられる価格で製品を販売するのも企業の責任である。

    例えばノートPCの使い方を、職場とオフィスで同一のノートPCで仕事をすると考える。
    そうすると始業時に一度PCを開き、昼休みの前後に開閉、就業時に閉じる。自宅に戻ってもう一度開閉。という使い方を想定、3年間のPCが毎日使われるとすると、3×365×3回=約3000回の開閉が行われるわけである。それに安全係数をかけて評価基準が決定される。

    しかし事故モデルのような小型ノートPCの場合、客先に持ち込んでプレゼン、移動中での使用等があるはずであり、一日3回の開閉ではすまないはずである。

    又寿命評価は材料の耐久性仕様から机上検討すべきではない。今回のようなアプリケーションでは本体との干渉が影響を与えるはずであるから実機で開閉寿命テストをしなければ、妥当性の評価をしたことにはならない。
    フレキシブルPWBの屈曲モードが、ヒンジ部分の磨耗により単純な屈曲ではなくなる可能性もある。

いずれにせよ、安全事故に関連する故障モードに関しては事前に評価をし対策を打っておくべきである。


このコラムは、2008年9月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第50号に掲載した記事です。

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ホームラン打者

 伝説の営業マンと言われるフランク・ベドガーの本を読んだ。
「頑張れ社長!」のyoutubeチャンネルで紹介されているのを見て、即近所の古本屋に探しに行った。

「私はどうして販売外交に成功したか」フランク・ベドガー著

大リーグの選手だったベドガーは緩慢なプレーで解雇される。その後移籍先のマイナーリーグで、重要なのは野球の技術ではなく情熱だと気がつき大変身。しかし試合中に骨折で引退。保険外交員となるが鳴かず飛ばず。そんな不幸のどん底から伝説の営業マンになる。2日で読了した。

書籍中に「ベーブルースの偉大な記録714本のホームランは1,330回の三振に支えられている。」という記述があった。
では我らが王貞治は?という思いで調べて見た(笑)

【王貞治】
通算打数:9,250
本塁打数:868
三振数:1,319
四球:2,390

【ベーブルース】
通算打数:10,617
本塁打数:714
三振数:1,330
四球:2,062

王貞治の868本のホームランは1,319回の三振に支えられている。ベーブルースも王貞治も三振の悔しさをバネにホームランを打ちまくったのだろう。更に王貞治は2,390本の四球、ベーブルースは2,062本の四球を選んでいる。多分強打者に打たれるより四球を与える方が試合を組み立てる上で有利だ、という相手チームの判断だろう。一塁が空いていれば王貞治は敬遠され歩かさせる。四球はバットを振らせてもらえない。悔しいに違いない。

更に王貞治には「王シフト」という試練もあった。守備は全て右寄りに守る。外野に4人配置するチームもあった。
サード側に転がせば必ずヒットになる。
しかし王貞治はそれをやらなかった。どんな守備をされてもフェンスを超える打球を打ち返すことだけを考えていた。

私たちも今、悔しい、辛い状況にある。膝を屈することなく前を見よう。
明けない夜はなく、やまない雨もない。

■■ 編集後記 ■■

最後まで読んでいただきありがとうございます。

本日ご紹介した書籍「私はどうして販売外交に成功したか」は1964年初版です。
この年には東京オリンピックが開催され、王貞治は本塁打55本の記録達成。
2020年東京オリンピックは延期になったが、この書籍のメッセージを56年の時間を経て今受け取ったことに何らかの因縁を感じます。

久しぶりにYoutubeに動画を投稿しました。
よろしければご笑覧ください。


このコラムは、コロナ禍で日本待機中の2020年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第990号に掲載した記事です。

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防錆塗装不良

 本日の失敗事例は「失敗百選」から選んだ。

「失敗百選」中尾政之著

ショックアブソーバに使うコイルスブリングの防錆塗装の前洗浄工程にて排水ポンプが故障。そのため新しい洗浄水が供給されず、コイルスプリングから脱落した不純物が洗浄槽に堆積。コイルスプリングに不純物が付着したまま防錆塗装。不純物付着箇所より錆が発生。腐食箇所が破断。約1000台をリコール。という事例だ。

防錆塗装完了後の目視検査を行なっていたが、コイルスプリングの上部しか検査しておらず発見できなかった。洗浄水に浮いている異物であれば、洗浄槽から引き上げるときに異物が付着するはずだ。その様な想定で上部のみ検査をしていたのだろう。しかし付着異物はコイルスプリング成型時に発生する金属粉であり、洗浄層に沈殿しておりコイルスプリングの下部に付着したようだ。

この事例から学ぶべきことを考えてみよう。

排水ポンプの故障に2ヶ月間気がつかなかったそうだ。設備点検の方法に問題があったと思われる。

外観検査基準は適切だったとは思えない。洗浄層に溜まるのはその前工程で発生する物と容易に推定できる。加工時に発生する金属粉は底に沈むはずだ。多分洗浄・乾燥後ワークをハンガーから取り外す作業と同時に目視検査をしたのだろう。ワークを置く方向を変えれば、簡単に上部と下部の検査ができる。

この2ヶ月間に不良の増加など全くなかったのだろうか?
外観検査不良は簡単に処理されてしまう傾向があるように思える。例えば簡単に手直しできる不良は、検査員が手直しをして合格品として扱う事もありうる。

今回の事例を汎用化すると

  • 設備故障を確実に捕捉できる点検方法になっているか。
  • 製品検査はその工程で発生しうる不良を全て捕捉できるか。

またリコールによって得た該当品の異物付着率や、腐食具合などをきちっとデータ化しておけば得がたいノウハウとなるはずだ。

頭の体操

 中国に帰還後、現在広州のホテルで2週間+1日のコロナ隔離生活中である。三食打包弁当が配給される。ありがたいことだ(チャント料金は取られているが・笑)打包弁当には、箸のセットがついてくる。割り箸、小さなプラスチックレンゲ、爪楊枝、紙ナプキンが入っている。

今の隔離ホテルに移動してからわずか3日間9回の給食で2度箸セットの不良を発見した。
1回目:すでに割れた割り箸(片側だけ)が入っていた。
2回目:爪楊枝の一部が箸セットの袋の封止部分に入っていた。

作業現場を見ていないが、相当改善のやりがいがある現場のようだ。
退屈しのぎに、どんな事故が起きてどう改善すべきか頭の体操をしてみた。現場も見ずに何を考えても無駄かもしれないが原因探求、対策検討の道筋の参考になればと思う。

1回目の不良品:
片側だけの割り箸の元々つながっている部分の破断面を観察すると、引きちぎられた痕跡がある。ということは、割り箸の加工時に発生した問題ではなく、何らかの問題により割ってしまった箸が袋詰め工程に混入した。と考えるのが妥当だろう。
自然に割れるものではない。故意に割ったと推測した。割り箸の受入検査(自社加工ならば初物検査)で割れる事を確認した箸が最終工程に回ってしまった、と推測した。
流出原因は、袋詰め作業員、最終検査員が気が付かなかった。または気が付いたが、もう一本割れた箸の片われがあるかもしれない、という想像力が足りなかったのかもしれない。
この推理に従うと、工程内で行う破壊試験サンプルの扱い(確実な廃棄と確認)のルールを明確にし、徹底するべきだ。

2回目の不良品:
現物を見ると、爪楊枝(透明袋入り)の一部が箸セットの封止部分に融着されており、先端部分のみが袋に残っている。観察により推測される原因は、融着作業が水平の場合、爪楊枝が袋下部まで落ちていない状態で融着してしまった。
融着作業が垂直の場合、爪楊枝は下まで落ちるかもしれないが、袋(爪楊枝と外装袋)が帯電していれば袋の途中で静電気吸着するかもしれない。
融着作業者の自主検査で気がついて欲しいが、原因除去の対策を打つべきと思う。
対策は、融着作業を垂直にしアイオナイザーで除電する。さらに確実にするため、袋詰め手順を決める。爪楊枝を先に入れ紙ナプキン、割り箸、レンゲで爪楊枝を下に押しやるように挿入すれば良さそうだ。

このコラムはあくまで頭の体操です。本来の原因追求、対策立案は5ゲン主義でやるべきです。


このコラムは、2021年1月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1087号に掲載した記事です。

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MECE

 問題を定義したり、原因を分析したりする場合に「MECE」になっているか?ということにしばしば気を配っている。これがうまくできていないと、論理が崩れてしまったり、まともな答えが見つからないことになる。

「MECE」とは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、ミーシーと発音するようである。早い話が、ダブりもモレもない状態のことを言う。

例えば仕事の優先順位を考える時に、「緊急度」と「重要度」の組合せで考える。「緊急・非緊急」×「重要・非重要」の4つの組合せがMECEになっているので、このフレームワークで話をするとすっきりと理解が出来るわけだ。

例えば、日本人という集団を層別する時に、「犬好き」と「猫好き」に分けたのではMECEにならない。
・犬が好き
・猫が好き
以外に
・犬も猫も好き(ダブり)
・犬も猫も嫌い(モレ)
があるからだ。

「男性」「女性」の二つに分解すればほとんどの場合はMECEになっている。
ほとんどの場合と限定をつけたのは、分解をする目的によっては「同性愛者」を入れる場合もありうるだろう。

マーケティングへの応用で、消費者の嗜好を研究する場合など、商品によっては
・男性
・女性
・同性愛者
と分類しなければ、見えてこないマーケットもあるだろう。

そして層別がMECEであると共に重要なのは、層別の感度である。
例えば消費行動を、女性・男性だけの層別で調査しても層別による誤差が大きすぎて、意味のある結論を引き出すことは出来ない。
・収入による層別
・地域による層別
・既婚、未婚による層別
・年齢による層別
など消費行動により感度の高い層別法を考えなければならない。

顧客で不良品が見つかった場合にも、MECEの考え方が役に立つ。
不良が発生した場所をすべて挙げる(MECEになっていること)
1。原材料
2。前加工
3。組み立て
4。検査
5。梱包
6。出荷・輸送
7。顧客開梱
などのように列挙すればもれなく上げることができるだろう。

例えば人為ミスがあった場合
・知らないのでミスをした
・知っていてミスをした
更に知っていてミスをした、を
・故意にミスをした
・ミスをしたと認識できなかった

という具合にMECEになっているように分解してゆく。
このように分析してゆけば、人為ミスに対して作業員に注意を喚起した、という効果が実感できない対策でお茶を濁すことはないであろう。


このコラムは、2011年8月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第216号に掲載した記事です。

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Oリングの劣化

 石油給湯機を使用中に異音がし、確認すると、当該製品から発煙・発火していた。

(NITE事故情報より)

 NITE(製品評価技術基盤機構)の事故情報によると、2008年から12件の同様な事故が発生している。

事故調査によると、灯油を燃焼室に供給制御する電磁弁のゴム製Oリングが、経年変化により劣化し灯油が燃焼室近辺に漏れたことによる引火が原因だ。

ゴムは経年変化により、硬化したりひび割れたりする。そのためOリングとしての機能を果たさなくなる。設計者はゴムが劣化することを知っていたはずだ。
更に真因を探れば、Oリング寿命の見積もりを誤った、または材料不良により設計どおりの寿命がなかった、と言うことだろう。

ゴムの寿命は、添加剤により大きくばらつく。しかも事前に評価確認することが困難だ。原料ゴムをロットごとに、寿命評価をしてから製品組み立てに使用することは可能だが、経済的に困難だろう。

安全性と経済性をトレードオフすることは出来ない。ロットごとに寿命評価をするという対策を取れば、安全性と経済性はトレードオフ関係になる。

Oリングが劣化しても火災にならないフェールセイフ設計が必要だ。
制御電磁弁を燃焼室から離し、灯油が漏れても発火しないようにする。または漏れた灯油は密閉容器に溜まるようにしておき、漏れを検出したら燃焼をシャットダウンするように設計しておけば、事故は発生しないだろう。

製品の安全性だけではない。あなたの工場では設備からの油漏れをきちんと管理できているだろうか?
床に油だまりが出来ている。設備の下にウェスがたくさん突っ込んである。
こんな状況はイエローサインだ。もちろん機械油は、灯油より引火温度が高い。
簡単に火災が発生することはないかもしれない。しかし火災に準じる深刻な不具合が発生する可能性はあるはずだ。


このコラムは、2011年3月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第196号に掲載した記事です。

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品質基準

 ずいぶん昔のことだが、納入品に不良が1台あったので、仕入れ先に返却し不良原因の解析を求めたことがある。仕入れ先の営業担当者から「納入仕様書にはAQL0.1%で検査すると明記してある。今回発生した不良は0.1%未満なので不良解析・報告の義務はない」と言われて驚いたことがある。説明するのが面倒だったので「そちらの品質部長さんにAQLの意味を教えてもらえ」と言っておいた(笑)

AQLとは抜き取り検査の基準であり、言葉どおりの「許容品質基準」ではない。
製品の品質基準にはいろいろな段階がある。

品質目標:設計部門の目標品質
品質標準:製造部門の目標品質
検査基準:検査部門の判定基準
保証品質:顧客に保障する品質

顧客に保証する品質基準は検査基準より緩い。使用中の劣化も見込むためだ。
検査部門の検査基準は製造部門の検査基準と同じか若干緩い。
AQL検査の場合は、製造部門が全数検査であることに対し抜き取り検査であり、が緩い。
製造部門の品質基準は、部品ばらつき作業ばらつきを考慮するので、設計部門の目標品質より緩い。
設計部門の品質目標は、製品の要求に基づき最も厳しい。部品のばらつき、製造上のばらつきがあるので設計時の品質目標は最も厳しい。


このコラムは、2020年11月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1064号に掲載した記事です。

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