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クオリティマインドのお勧め書籍

「お客様の幸せ」のためにディズニーはまず「おそうじ」を考えた

ディズニーはまずお掃除を考えた
書籍名:
「お客様の幸せ」のために
ディズニーはまず「おそうじ」を考えた
著者:安孫子薫
出版社:小学館

著者の安孫子薫氏は,東京ディズニーランド開業時から,カストーディアル(ディズニーランド内の清掃,安全,安心を維持する部門)の仕事をしておられた方だ.
開業前に本家のディズニーランドでカストーディアル修行をしている.ウォールト・ディズニーと共に本家ディズニーランドを築き上げた,元祖・カストーディアルのチャック・ボヤージャン氏の直弟子である.

5Sで清掃がうまく指導できないのは,いくつか理由があると考えている.
・何のために清掃するのか理解できていない
・清掃の基準が不明確
・掃除をやらされていると感じている

私は5S指導の時に,
・清掃は「予防保全」
・基準は言語データで
・より短時間で,より綺麗になるように工夫をする
と教えているが,本書から更に気付きを得ることが出来た.

・掃除とはお客様や仲間に対する思いやり
・汚れたから掃除をするのではない.汚れる前に掃除をする.
・クリンネスで商売繁盛

5Sが有効なのは製造業ばかりではない.
飲食,ホテル,小売などあらゆる産業で有効だ.

5Sは元々製造業からスタートしたが,本書からレジャーランドの清掃を工場の5Sにベンチマーキングしてみてはいかがだろうか.

こちらの本もどうぞ
「ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと」

ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと

掃除の神様が教えてくれたこと
書籍名:
ディズニー
そうじの神様が教えてくれたこと
著者:鎌田洋
出版社:ソフトバンククリエイティブ

著者の鎌田洋氏は,オリエンタルランドに5回挑戦して入社し,東京ディズニーランド開業時に初代のナイトカストーディアル(ディズニーランド内の夜間清掃部隊)として仕事をされていた.

華やかなディズニーランドの仕事に憧れ,会社を辞め転職したのに「夜間のそうじ係」となってしまったことに,落胆したそうだ.
しかし本家ディズニーランドから指導に来ていたカストーディアル教祖・チャック・ボヤージャン氏の指導を受け仕事に対して,誇りと自信を持つようになる.

たぶんそんな著者自身の体験から描かれた4つのエピソードで,本書は構成されている.

清掃を通して,人が如何に仕事に対して誇りと自信を持ってゆくのか,エピソードの中から多くの気付きを得た.これは単なるそうじの本ではなく,従業員のモチベーションを如何に上げるかと言う課題を,小説仕立てで教えてくれる本だ.

本書の取り扱い注意:目を赤くしているのを見られたくない人は,人前で読まないこと(笑)

こちらの本もどうぞ
「お客様の幸せ」のためにディズニーはまず「おそうじ」を考えた」

モチベーション

子供のココロのコーチング
書籍名:子どもの心のコーチング
著者:菅原 裕子 (著)
出版社:PHP研究所



 機械のパフォーマンスは変動することはない.もしも変動しているとしたら,その機械を含む工程の工程能力が不足している,メンテナンスが不十分ということだ.

しかし人間のパフォーマンスは,簡単に倍半分に変動する.身体的理由によるモノは,機械のメンテナンスと同じことだ.それよりも大きな要因は,心の問題.モチベーションだ.
モチベーションの高い低いで,人間のパフォーマンスは簡単に変動する.

子育てと部下の育成には多くの共通点がある.

福利厚生や賃金は,仕事に対するモチベーションとなるだろうか?

子供にお手伝いをしたら,お小遣いをあげる.宿題が終わったらゲームをしてもよい.
福利厚生や賃金は,こういうモチベーションの与え方と同じだ.
その効果は否定しないが,限定的だ.

こんな事例がある.
ある行動科学者が幼稚園児に次の実験を行った.

園児達は「絵を描くのがとっても好き」であり,毎日絵を描いても飽きることはない.

その園児を3つのグループに分ける.

1つ目のグループは「素晴らしい,素敵な絵を描いたらご褒美をあげるよ」と動機付けた.絵を描く前に,ご褒美が貰えることが分かっている.

2つ目のグループは「自由に絵を書いてね」と動機付けた.ご褒美の事は知らないし,ご褒美を貰えるわけではない.

3つ目のグループは「自由に絵を描いてね」と言って,書いたあとにご褒美を上げた.ご褒美の事は知らないが,絵を描けば貰える.

この実験をして,2週間も経たないうちに1つ目のグループは絵を描かなくなってしまった.

それは,楽しいお絵描きが,ご褒美をもらうために絵を描くという,仕事になってしまったからだ.

絵を描くのが楽しいはずが,楽しくなくなった.
楽しい絵を描く事に,ご褒美という動機付けは,モチベーションになんら良い影響を及ぼさなかったのだ.

逆に,ヤル気を失わせてしまった.現在多くの経営者が信じている「アメ(報酬)とムチ(罰則)」では,全く想像もつかない真逆の結果となったのだ.

では子供のモチベーションを高めるにはどうしたらよいのだろうか?
それは褒められること.ただ褒めるだけではない.
人の役に立ったと実感出来る褒め方がモチベーションをあげる.
褒めるのと同時に感謝を伝えることが重要だ.

金銭によるモチベーションは,徐々に要求金額が上がってゆく.同じ金額ではモチベーションがあがらなくなる.
「人の役に立つ」をモチベーションとしても,同様に要求はあがる.
「人の役に立ちたい」から「もっと人の役に立ちたい」になる.
つまり動機付けが自己再生産されることになる.

これは部下育成に応用できるはずだ.
「子供の心のコーチング」の著者・菅原裕子氏は,子供へのコーチング「ハートフルコミュニケーション」を主に活動しておられる.
ちなみに菅原氏は部下のコーチングに関する著書も書いておられる.

「決定版 部下を育てるコーチング」

「コーチングの技術-上司と部下の人間学」

「子どもの心のコーチング」

思いを伝える力

上杉鷹山
書籍名:小説 上杉鷹山〈上〉
著者:童門 冬二
出版社:学陽書房


NHK大河ドラマ「龍馬伝」を,一気に見た.元々NHK大河ドラマにはあまり興味が無く,記憶にあるのは「赤穂浪士」「太閤記」くらいだ.
龍馬伝により,改めて坂本龍馬という人物像を知ることが出来た.

坂本龍馬は,日本の大きな変化点で偉業を成し遂げた.
それは犬猿の仲であった薩摩と長州の同盟を実現させた.
徳川家に大恩を感じている土佐藩主に,大政奉還の建白書を書かせた.

この偉業を成し遂げた力は,龍馬の「思いを伝える力」だった.

脱藩浪士で構成された組織・亀山社中,海援隊を統率したリーダーシップも「思いを伝える力」が源になっていたのだろう.

経営者も組織のリーダーとして,従業員に思いを伝えなければならない.
それが,経営理念であり,経営ビジョンである.経営理念が組織のコアとなり,従業員の求心力を得る.経営ビジョンが中期経営計画,年度経営計画へとブレークダウンされる.

組織のメンバーが皆経営理念の下に,経営ビジョンの実現に向けて努力する.そのための経営ツールが方針管理であり,目標管理である.

経営理念は,創業者が考えるモノ,社長が考えるモノ,などという遠慮は要らない.あなたも自分の組織のリーダとして,メンバーに思いを伝えよう.

ところで,今まで歴史小説にはあまり興味は無かったが,龍馬伝を見てから興味が沸いてきた.
友人に薦められた「小説・上杉鷹山」を,読んだ.
歴史小説ではあるが,ビジネス書として読んでも多くの啓発を得られる書だ.
特に経営トップ,組織のリーダに読んでいただきたい.

小説 上杉鷹山

未然防止

失敗学
書籍名:失敗の予防学―人は、なぜ“同じ間違い”を繰り返すのか
著者:中尾 政之
出版社: 三笠書房



著者の中尾政之氏は元々エンジニアだった人で,今は東大工学部の教授である.
「失敗学」で有名.多くの著書を執筆されている.

失敗から予防保全につなげないと,毎回同じような失敗ばかりしていることになる.良く失敗は授業料だと思えば良いというが,授業料だけ払っていてはいけない.
他人が支払った授業料で予防保全ができれば大変お得である.

これを未然防止と言っている.つまり他所の失敗事例に基づいて予防保全をすれば,自分たちにとっては未だ経験したことがない失敗を,未然に防止できるからだ.

同じ現象を見てもそこから改善のヒントや,そこにある失敗のリスクを見分ける事が出来る人と,できない人がある.
この能力は天性の能力ではなく,訓練で身につく能力だと思っている.

書物からも勉強できるがこの手の能力は実践訓練が一番身につきやすい.
そんな訳で,私はメールマガジンに毎回新聞報道から失敗事例と,失敗の未然防止について書き続けている.一種のケーススタディだ.

そのメールマガジンは,毎週月曜日朝に配信している.「中国生産現場から品質改善・経営革新」という.ご興味がある方は是非配信を受け取っていただきたい.

失敗の予防学―人は、なぜ“同じ間違い”を繰り返すのか

究極のモノづくり

モノ造りの時代
書籍名:ものづくりの時代―町工場の挑戦
著者:小関 智弘
出版社:日本放送出版協会


伊勢神宮の建て替えに使われた和釘は,木材の中に節があってもそれをよけて中に進むそうである.その秘訣は,のの字型をした釘の頭,鉄の鍛え方にある.
こういう和釘が1300年も前から使われている.

こういう和釘は「究極のモノ」と言っても差し支えはないだろう.

私の考えている「究極のモノ造り」は,こういう技術を代々1300年も伝えるということだ.

実はこの和釘を作ってきた伊勢の船大工は,伊勢湾での漁業の衰退と共に,途絶えてしまっている.
現代にこの和釘を蘇らせたのは,新潟・三条の鍛冶屋さんだ.
彼らは「三条鍛冶道場」を作ってこのモノ造りの技術を次の1000年後に伝えようとしている.

この和釘のように古い日本のモノ造りの技術を代々伝えて行くのも「究極のモノ造り」と言えるだろう.
伊勢神宮は20年に一度遷宮により建て替えられている.
世界の遺跡が,建物そのモノを残しているのに対し,日本の遺跡はその建造物のココロや技術を継承しているといえるだろう.

たかが釘,設計技術的にはローテクかもしれないが,モノ造り技術的にはハイテクだ.
こういう技術こそ,日本国内で守ってゆかなければならない技術だと思う.

ものづくりの時代 町工場の挑戦

アマゾンで見ると,この本は既に絶版になっているようです.
このような素晴らしい本がすぐに絶版になってしまうのは大変悲しいものです.

しかし古本が1円から出品されているので,まだ救いはありますね.

町工場・スーパーなものづくり

同じ著者・小関氏による,中小企業モノ造りの書籍

鉄、千年のいのち 

著者の白鷹氏は法隆寺の建て直しの時に和釘を造られました.

説得力

ほめ方のルール
書籍名:あたりまえだけどなかなかできない ほめ方のルール
著者:谷口 祥子
出版社:明日香出版社



部下に仕事をしてもらう時に仕事の指示を与えなくてはならない.
指示に従って部下に仕事をさせるためには,指導者・リーダの説得力が必要だ.
命令を与え,それに従わなければ罰則を与える.いわゆる「命令・服従型」の組織を作り上げれば,説得力は特に必要ではないかも知れない.

しかしこの様な「命令・服従型」の組織では,個人がやる気を出して働く,働く喜びを知る,ということは難しいだろう.

個人がやる気を出す,働く喜びを知るためには「説得・納得型」の組織でなくてはならない.そのためには指導者・リーダが説得力を持ち,部下を納得させる力を持っている必要がある.

もちろん時には「命令・服従型」を使わなければならない局面もある.
例えば火災が発生している現場で,消火活動の意義を納得させたり,人命や財産の尊さを説いていたのでは間に合わない.「火を消せ!」と命令し従ってもらわなければならない.

しかしここで賢明な読者はすでにお気づきと思うが,火災という非常事態で危険に直面しながら,「火を消せ!」という命令に従うことが出来るのは,普段から説得と納得が出来ているからだろう.

ではどのようにして説得力を磨くか?
まずはコミュニケーションを通して信頼関係を築き上げる.
そのために普段から「褒める」「叱る」をきちっとしておく必要がある.
「褒める」「叱る」というのは「怒る」のとはまったく違う.「怒り」は合意されない期待から発生する不満の感情発露である.

部下が,こちらが期待する仕事の質に応えられない時に,不満が怒りとして発露する.この感情を部下にぶつけてみても,部下からは反発若しくは萎縮の反応しか帰ってこない.これでは反省・成長に結びつかない.

それに対して「褒める」「叱る」は相手の成長を願ってやることである.
「褒める」「叱る」はルールがあり,コツがある.
手元にある谷口祥子氏の「ほめ方のルール」という本から紹介してみよう.

  • 「叱る」と「怒る」の違いを知ろう
    谷口さんは昔和菓子店でアルバイトをしていたことがある.このとき包装が 上手に出来ず,お客さんから「ごめんね.これは大切な人に贈る物だから, もう一度包み直してくれる?」といわれたそうだ.
    この様に叱られたのならば,アルバイト店員の心にストンと落ちる.
    これが「包みかただへただ!」と怒られたらば,反発心が発生するだけで,反省心は発生しない.
  • 「Iメッセージ」で叱ろう
    「Iメッセージ」というのは自分の感想,思いを伝えるということだ.一方「Youメッセージ」はお前は××だ,と決め付けること.
    叱る時は「お前の態度はなっていない」と言うのではなく「私はお前の態度を不愉快に感じた」と叱ろう,と言うルールだ.

「褒める」「叱る」を通して部下との信頼関係を築く.
そうすれば説得力も上がるはずだ.

あたりまえだけどなかなかできない ほめ方のルール

「コト」造りによる組織活性化

コト造りの力

書籍名:コトづくりのちから
著者:常盤 文克
出版社: 日経BP社



2009年にホンダはF1から撤退した.F1で培った車体設計や駆動制御などの技術を中・大型クラスのハイブリッド車や1000ccクラスの小型ガソリン車、小型ディーゼルエンジンなどの開発に生かすのが目的という.
ホンダファンとしては少し残念な決定だが,これでまた何かやってくれそうな予感がしている.
ホンダは68年にF1を「休戦」,経営リソースをマスキー法対応に絞り込んだ.
その結果米国のビッグ3に先駆けて低公害エンジンCVCCを開発した.

経営リソースを次世代環境対応車に集中することにより,今回もまた新しい地平を切り開いてくれることになるだろう.

「経営戦略とは捨てることである」とドラッガーは言った.
今要らないモノは捨てて明日のために経営リソースを集中する.
5Sの整理の考えかただ.

更にホンダは「祭」によりメンバーのモチベーションアップをするという組織文化がある.
つまり日々の業務「日常」の中に「祭」を持ち込むことによりメンバーの結束力ややる気を高める.
このような企業文化がホンダの中には「楽しい事をやろう」という合言葉で組織に浸透している.

ホンダに勤めている私の後輩は以前ソーラーカー開発プロジェクトに参加し,オーストラリアのレースにも参戦してきた.このようなプロジェクトが起きると,俺もやりたいと手を上げ職場を離れてプロジェクトに参加できる.

このプロジェクトで得られた技術も次世代環境対応車に活かされるのではないだろうか.
基礎研究を「コツコツ」やるのではなく,「祭」に仕立て上げて楽しくやる. 
技術の蓄積だけではなく,こういう企業文化の側面からの効果も大きい.

元花王会長の常盤文克氏は「コトづくりのちから」という著作の中で,「祭」を「コトづくり」と定義している.コトづくりによるモノ造り経営を説いておられる.

  • 刃先の幅が0.005mmで,溝入れが0.03mm間隔で可能という世界一幅の細い超精密切削工具(アライドマテリアル)
  • 一辺が0.3mmの世界最小の真鍮製サイコロ(入曽精密)
  • 厚さ0.05mmのアルミ板に,直径0.008mmの穴を連続45箇所開ける技術(田中製作所)
  • 電子回路を金型とインクジェットシステムで作る技術(クラスターテクノロジー)

これらの会社に共通しているのは,精密加工の切削成型,研磨,溶接などそれぞれの分野で世界一小さい,軽い,細い,薄い,……に挑戦する“コト”をモノ造りの中心におき,職人や技術者を勇気付け,鼓舞していることである

常盤氏の三部作は,経営者,経営幹部必読書だ.

「モノづくりのこころ」

「ヒトづくりのおもみ」

「コトづくりのちから」

ユーザ・エクスペリエンス

おもてなしの経営学

書籍名:おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)
著者:中島 聡 (著)
出版社: アスキー

著者の中島聡氏は,初期の月間アスキーに高校生アルバイトとしてプログラムを書いたりしていた伝説の人である.またマイクロソフトでウインドウズのユーザインタフェイスを設計した人としても有名だ.

「ユーザ・エクスペリエンス」という言葉はソフトウェア・ユーザビリティを越えた「使いごごち」のような概念の言葉である.
中島氏はこの言葉に「おもてなし」という日本語を当てている.

ギーク(エンジニア)オタクっぽい本であるが,製品やサービスをどう設計しなければならないか,という観点で読むとモノ造りへのこだわりが見えてくる.

造る側(サービスを提供する側)のこだわりは「床屋の美学」(自己満足の美学)である.ユーザのためのこだわりを持たなければならない.

ビルゲイツのこだわりは市場を取ること,相手に勝つこと.
一方アップルのスティーブジョブスのこだわりはユーザに感動を与えること.
このこだわりがあるからアップルはコンピュータメーカから脱皮できた.

これが「おもてなしの経営学」である.

「おもてなしの経営学 アップルがソニーを越えた理由」

国際競争力の再生

国際競争力の再生
書籍名:国際競争力の再生―Joy of Workから始まるTQMのすすめ
著者名:吉田耕作
出版社名:日科技連出版社



デミング博士の名前は,品質関係の仕事に従事する日本人で知らないものはいないであろう.
デミング博士は,戦後日本の製造業に統計的品質管理を教え,日本のモノ造りの基礎を築いた恩人である.彼の名前を冠したデミング賞は,TQM(トータルクオリティマネジメント)の進歩に功績のあった民間の団体および個人に授与される,日本最高峰の栄誉である.

日本人にとっては恩人とも言える,そのデミング博士は,本国のアメリカでは無名の統計数学を教える大学教授であった.

しかし,1980年にNBCが「If Japan can… Why can’t we?」というドキュメンタリー番組を放送し,モノ造りの日本を育てたのがデミング博士であることに光が当てられた.
その後フォードでの指導を始めとし,1993年に亡くなる直前までの10年余りを全米で講演・指導をして回った.

このコラムでご紹介する「国際競争力の再生」の著者吉田耕作教授は,そのデミング博士と一緒に全米を講演して回っていた方だ.
吉田教授は,日本に帰国後「西東京ラウンドテーブル」というTQMの指導をしておられた.ラウンドテーブルでは,いろいろな企業から参加したQCサークルの活動を指導する.私も自部署のサークルを派遣していたので,PTAとして何度か参加した.

参加しているサークルは製造業ばかりではなく,花屋さんなどもあり,相互に大いに刺激しあう活動であった.

「国際競争力の再生」には吉田教授が,米国におられた頃の指導事例も載っている.日本でのQCC活動は,製造業が中心というイメージが強い.それがTQC(トータルクオリティコントロール)になって製造業の間接部門の活動に広がり,TQMとなり製造業ばかりではなく,サービス業にも広がりを見せた.
しかし本書に出ている米国での活動事例は,政府機関の事例だ.
ヒスパニックの移民の犯罪率の高さに手を焼いた政府が取り組んだ活動である.
日本でもそうした事例はあるが,非常に少数派だろう.

高度成長の元となったデミング博士が日本に根付かせたQCC活動を,あらゆる組織に展開した米国は,あっという間に復活し,日本はその後のバブル崩壊から失われた20年の時代へと向かう.

非常に皮肉な話であるが,私にはQualityを「品質」と訳した時から,定められた運命のように思える.

つまりモノの質という連想をさせる「品質」という言葉により,クオリティマネジメントは製造業の仕事と勘違いしたのが間違いの元だった.

一方Qualityという言葉に「モノ」という概念は含まれておらず,米国では製造業ばかりではなく,行政,金融までもがクオリティマネジメントに取り組み,再び強いアメリカを実現させたのだ.

国際競争力の再生―Joy of Workから始まるTQMのすすめ
 

吉田教授が提唱するJoy of Workが,日本の未来の鍵ではないかと考えている.
仕事を楽しめない大人たちの姿を見て育った子供たちが,サラリーマンにはなりたくないと考える.その結果日本には,フリーターやパラサイトと呼ばれる若者があふれている.
彼らに仕事に対する夢や希望がなければ,日本の未来もない.
若者や子供たちの夢や希望が,未来そのものだ.

従業員が苦役として仕事をさせられるのではなく,仕事を工夫し効率を上げ楽に仕事をする.そして仕事を通じて達成感を味わう.そうした従業員の人間性を尊重した活動がTQMである.
Joy of Workを合言葉に,イキイキと会社に出かける大人であることが,子供たちに夢と希望を持たせることになるはずである.