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部下の心をつかむ

 組織のリーダとして欠かせない能力に「部下の心をつかむ力」が有る。
この力を悪用すれば,教祖のためならば命も惜しくない,と言う怪しげな新興宗教集団となる。勿論こういう事をお勧めしている訳ではない。
残業を頼んだ時に,快く引き受けてくれる,イヤイヤやる,断られる、部下の対応でリーダ力が評価出来る。

部下に対し同じことを行っても,部下の受け取り方は違う。
部下に同じ様に厳しい事を指示した場合。
Aさんに言われた事なら,何としてでも達成して喜んでもらいたい。
Bさんに言われたら,仕方が無いからやる。
Cさんに言われても,やる気がしない。
Dさんに言われたら,会社を辞める。
Eさんに言われたら,訴える。

同じ内容でも,ある人に言われれば、自分に対する激励だと感じ、奮闘する。
別の人に言われると,パワハラだと感じ、行動のモチベーションは上がらず,辞めたり,訴えられたりするはめになる。

この違いが,部下の心をつかむ力だ。

「お前バカか!」と罵声を浴びせられ,指導を受けたと感じる,又は人間として否定されたと感じる。この差は,信頼関係の深さだ。

若い部下が,最も多く叱られた経験は,父母からだろう。
父母からいくら叱られても,恨んだりせず慕い続けるのは,自分を愛してくれている,いざという時は自分を守ってくれる,と言う強い信頼感を持っているからだ。

あなたは,子供の頃、母親に泣きながら叱られた経験は有るだろうか?
私は有る。「自分が生んだ子供が,こんなでは世間に申し訳がない。一緒に死のう」と泣きながら叱られた。小学校に上がる前だったと思う。どんな悪さをしたのか全く覚えていないが,泣きながら叱られた事は、鮮明に覚えている。

命をかけて自分を産み落とし育ててくれた母親と,同じ信頼関係を部下との間に作るのは不可能だろう。
しかし部下の幸せを願い,成長を期待する。この様な心で部下と接していれば,必ず気持ちは伝わる。部下の心をつかむ,と言うよりはこちらの心を部下に見せる事だ。

組織リーダの一番大切な仕事は,部下を思い通りに動かし成果を上げる事ではない。その前に,部下との信頼関係を構築する事が一番大切な仕事だ。
その結果、部下が思い通りに動き成果を出してくれる。


このコラムは、2014年7月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第370号に掲載した記事です。

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まとめ生産と平準化生産

 以前「まとめ造りvs一個流し」と題したコラムをこのメルマガに書いた。
このコラムで、まとめ造りをするより、一個ずつ造った方が効率が良いと言う実験を紹介した。

「まとめ造りvs一個流し」

この例では、一個ずつ造れば、まとめ造りをするより30%近く作業時間を短縮出来る事を示した。

今回はまとめ生産と平準化生産について考えてみたい。

平準化生産は、まとめ生産より中間在庫が減り、出荷のフレキシビリティが上がる。

例えば、1工程、2工程で生産した部品を3工程で組み立てると言う製品Aが有ったとしよう。1工程、2工程は設備で加工、3工程は手作業で組み立て。
1工程、2工程の生産能力は、3工程の組み立て能力の3倍有る。
この場合、1工程、2工程は製品Aと同様の製品B、製品Cの部品も加工することになる。

1工程、2工程は1日で製品Aの3日分の部品、翌日製品Bの部品3日分、3日目に製品Cの部品3日分を生産する。これをまとめ造り生産と言う。

平準化生産は、一日に1工程、2工程は製品A、製品B、製品Cの部品を一日分ずつ生産する。

まとめ生産の場合は、中間在庫は製品ごとに1~3日分(全体で6日分)となる。全製品が出荷可能になるのは部品生産開始から4日目だ。
一方1、2工程で毎日1日分ずつ3種類の部品を生産すれば、中間在庫は各製品1日分(全体で3日分)となる。しかも部品の生産開始から2日目に全製品が出荷可能になる。

この様にメリットが有るが、まとめ生産を変えない工場が多い。
それは1工程、2工程の生産設備の段取り替えに時間がかかるため、なるべくまとめて生産した方が効率が良いと考えているからだ。

設備の「可動率」を上げる事は重要だが、全体で調和がとれていなければ意味はない。
まとめ造りはしないと決め、平準化生産を阻害する要因の改善(例えば段取り替え時間を短縮する)を考える方が健全だと考えるが、いかがだろうか?


このコラムは、2015年8月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第438号に掲載した記事です。

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理念の浸透

 従業員が同じ目的を共有し、共通の理念のもとに働く。経営者が目指すのは、この様な従業員が集まった組織だと思う。

そのために経営者は日々目的や理念を、全従業員に浸透させる努力をしなければならない。

例えば「○○を生産することにより、豊かな社会を実現する」と言う理念の工場で働く作業員や清掃係はどのような心構えで仕事をすべきか?
これが理解出来なければ、お題目の様に理念を毎日唱えても浸透しないだろう。

なぜなら、作業員や清掃係の仕事と理念が結びついていないからだ。
理念を何度唱えても、今自分がやっている組み立てや、トイレ掃除の作業と「豊かな社会の実現」が結びつかないからだ。

自分の作業や仲間の作業が集まり一つの仕事になり、その結果豊かな社会が実現出来ると言う事が腑に落ちなければ、理念はただのお題目となる。

ではどうすれば良いのか?
以前このメルマガで書いた様に「ストーリィの力」を使う。

「物語型内発的動機付け」

理念を箇条書きにしても、心にはささらない。
物語として伝えれば、腑に落ちる。

人類が太古の昔から、生き残る為の知恵として語り継がれ、DNAに落とし込むための手法が「物語」なのではないかと考えている。
私たちは子供の頃から「物語」として昔の人々の知恵を引き継いでいる。物語が、潜在意識に過去の記憶を刻み込み、DNAレベルの行動をひき出す事が出来るのだと推測している。

この様な方法で理念を伝えれば、一人ひとりの心の奥深いところまで理念が浸透するだろう。理念の浸透は広さと深さが必要だ。

映像制作を上海でやっている友人がいる。
彼は企業の新人教育や作業マニュアルを映像化する仕事をしている。
彼のサイトを見ていて、理念の浸透にはストーリィの力が有効だと確信した。

ファイヤーフライクリエーション上海
店長の成長記


このコラムは、2015年8月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第439号に掲載した記事です。

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少量生産

 日本の製造業の蹉跌は、量産技術を磨き続けたことに有るのではなかろうかと思う。同一規格製品を少品種大量生産し、消費者に安価に届ける。社会的に意義のある活動だった。しかし同じ物を大量に生産したため、貧乏も量産してしまった。貧乏とは社会的な貧困ではなく、造れば造るほどどんどんコストは下がるが、同業者の参入により価格も下がる。更にコスト削減努力により価格を下げようとする。この様な貧乏の螺旋階段を下って行くことになる。

以前にもご紹介したが、日本は1964年に初めてクオーツ時計を実用化し、東京オリンピックの競技用の時計に使った。そこから数十年で、最先端のクオーツ時計は、腕に巻ける大きさとなり、子供の小遣いで買える値段となった。
技術革新や量産技術の進歩によって社会に貢献出来た訳だが、その革新を起こした企業に、その社会的貢献に見合った対価が得られたかと言うとはなはだ疑問だ。量産技術により世界のシェアを拡大している間、スイスの機械時計を生産している人たちは、少量の高級時計だけを生産し続け、強固なブランドを維持している。

日本に帰国しているおりにTV番組で、燕三条の刃物メーカの爪切りの紹介を見た。
彼らの製品は、手加工で刃先を数μm磨き上げる。そのシャープな刃先で爪を切ると、バリが全くでない。その結果爪を切った後にヤスリをかける必要が無くなる。当然手加工なので、生産効率も悪いし、量産も出来ない。しかしその爪切りの価値を理解する人は、高価な値段であっても購入する。彼らは「製品を愛して使ってもらいたい。一生使ってもらいたい」と願っている。
クオーツ時計や個人用のコンピュータが起こした社会的貢献よりは小さいかも知れない。しかし先進国には既に物はあふれる様にある。もっと個人一人一人にフォーカスすることにより、ブランディングが出来るのではないだろうか?

今の日本には、まだこういう匠の技が残っていると思う。この匠の技を正しいマーケティングで活かせば、日本独自の産業を発展させることが出来るのではないだろうか?


このコラムは、2016年2月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第465号に掲載した記事です。

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ローパー

 ローパーと言う言葉を聞き、意味が分からないのでネットで検索してみた。出るわ出るわ(笑)26万余件ヒットした。

ネットの情報によると、ローパフォーマンス社員を省略してローパーと言う。
ローパー社員を辞めさせるアドバイスをする人材会社が有る。
故意にローパーを装って、会社から解雇させ裁判沙汰にし和解金をせしめる「悪質ローパー」それを見習う「模倣ローパー」などもいる。
フリーランスで働いている人から見れば、パフォーマンスを発揮出来なければ淘汰されるのが当たり前。会社員だからパフォーマンスを発揮しなくても給料が保証されるのはおかしい。と言う事になるだろう。

しかしあえてローパーと言う言葉や扱いに疑義を呈してみたい。

パフォーマンスを発揮出来ない社員に対する雇用側の責任はないのだろうか?
社員の意欲を高め、教育訓練をするのを企業の「責任」とは言わないが、企業活動として当然の事だろう。この点に関して何も語らず、ローパー社員を非難するのは天につばをする様なものだと思える。

悪質ローパーを採用してしまった責任はないのだろうか?前職でも同じ手口で和解金をせしめていたと、後から分かったのならば、採用時に確認する手だても有ったはずだ。

本来良質な人材を提供する事が業務であるはずの人材会社は「悪質ローパーの見分け方」や「人材のパフォーマンスアップ」をコンサルするのが,本来の仕事だろう。勝手な基準でローパ社員の線引きをし、解雇の指南をするのは本末転倒だ。

50歳を超えて役職もないダメ社員などと言っているが、50歳を超えても安い給与で働いてくれる社員だと考えるべきだろう。パフォーマンス以上の給与を支払っているとすれば、会社側の給与規定がおかしいだけだ。

私には、自らの責任を放棄して、相手方を一方的にローパーなどと決めつけて、自己正当化をしているだけの様に見える。


このコラムは、2016年3月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第469号に掲載した記事です。

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知識より体験

 言う事は立派だが何もしない。評論家的な発言ばかりで行動が伴わない。
そんな部下に対する不満を聞く事がよく有る。こういう人たちを冗談で「NATO」と呼んでいる。NATOとは北大西洋公约组织(略称:北约)のことではない。“No Action Talk Only”の略だ(笑)

こういう人材は時として人罪になりうる。「人罪」は言い過ぎかもしれないが、間違ってNATOな人を上位職につけてしまうと、組織全体が行動をしなくなる。
実業の世界では、いくら知識が有っても行動をしなければ成果は出ない。
学術研究の世界であっても、知識が成果になる事はない。従来の知識を駆使し、新しい知識を再生産すると言う行動をしているはずだ。少なくとも論文を書く、研究発表をすると言う行動をとらねば、新しい知識は世の中に認知されず、価値は発生しない。

子供の成長を考えてみよう。
親から歩き方(知識)を教えられ歩ける様になった子供はいない。
何度も転ぶ(体験)事により歩ける様になる。転ぶ前に親が手を貸していれば歩ける様になるまでに時間がかかるだろう。
では放置しておけば良いかと言うと、これも時間がかかる。
転んだ時に起こしてやるのではなく、起き上がるモチベーションを与える。
うまく起てた時、うまく歩けた時に賞賛を与える。
この繰り返しが、倒れても起き上がる不屈の精神を鍛え、歩く力を鍛錬する。
「知識」にはこの鍛錬のプロセスがない。

部下の指導も同じだ。
失敗体験から学ぶ事は多い。コントロールされた失敗を与える事が出来れば、計画的に失敗を与え成長を促す事が出来るだろう。コントロールされた失敗とは本人にとっても組織にとっても致命傷とならない様な失敗だ。
失敗をコントロールしておかねば、部下が成長する前に倒産してしまう(笑)

失敗した時に、二度と失敗しない様に、痛みを与える(叱り飛ばす、罰金を与える)方法をとる人が有る。自分の失敗と理解していない場合は叱り飛ばしそれを理解させなければならない。しかし本人が失敗だと理解している場合は、叱るより、信頼関係構築又は強化のチャンスとした方が良いと考えている。

成功体験も同じく学びになる。
プロジェクトの成功を祝って飲みに行く。こういうテンションの上げ方も賛成だ。しかしそれだけではもったいない。成功の要因を分析し、成功の方程式を作る。これが出来れば、今回偶然成功したとしても、次回以降成功の再現性を上げる事が出来る。


このコラムは、2016年1月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第460号に掲載した記事です。

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かつてない困難

 「かつてない困難からは、かつてない改革が生まれる。
  かつてない改革からは、かつてない飛躍が生まれる。」

松下幸之助の言葉だそうだ。

リチウム電池の発火事故で大規模回収に直面しているサムソンは、間違いなく「かつてない困難」に直面している。

私も前職時代に「かつてない困難」に何度も直面した。

サムソンのリチウム電池は自社のグループ企業の問題だが、私が担当していたコンピュータの周辺装置は協力メーカからの購入品であり、自社にとっては未知の技術領域だった。それでも協力メーカの設計技術者や品質技術者らと議論を重ね問題解決が出来たのは、原理・原則に基づいた正しい問題解決の道を外さない様に心がけたからだと思っている。

その過程で得た信頼性技術、解析技術の知見を自社に蓄積し、未然に問題発生を予防するノウハウを得る事が出来た。

高耐圧部品の絶縁不良問題、高電圧半導体の電解腐食問題、プラスチック部品の環境応力割れ、ゴム樹脂のブルーミング、ハンダ付けの応力割れ、メッキ部品の水素脆性破壊などは、短期間の評価では見つからない信頼性問題だ。また電解コンデンサの四級塩電解液による回路ショートなど、業界全体で未知の不良現象もあった。

こういう問題を一つずつ解決し、設計基準や評価手法を確立していく。
その結果製品の信頼性設計技術が向上する。

信頼性問題に直面している最中は、既に出荷してしまった製品への対応、まだ問題が顕在化していない出荷済み製品の寿命予測、など本筋ではないが緊急に対応する必要がある問題が山ほどでてくる。しかし現在の対応に消耗してしまってはダメだ。かつてない困難をかつてない飛躍に結びつけるために、せねばならぬことを忘れない様にしなければならない。

かつてない飛躍とは、信頼性問題を起こさぬ様、事前に対策を打てることだ。


このコラムは、2016年9月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第492号に掲載した記事です。

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