月別アーカイブ: 2018年12月

相互学習支援

 私は、生産現場の改善を生業としている。前職時代から同様の仕事を永らくしている。独立後仕事のやり方が変わった。独立後暫くの間は、自分で改善案を考え、顧客のメンバーが現場に展開すると言う方法だった。

例えば、ベルトコンベアラインで作業している工員さんの座る向きを変えれば、ワークの取り置きは左手で出来る。従って右手に持った工具を取り置きする必要が無くなる。と言う具合に現場で顧客の改善リーダに教えていた。
このやり方でどんどん成果が出る。自分も充実感を感じていた。

しかし暫くして、このやり方ではダメだと気が付いた。このやり方で成長するリーダが限られている事に気がついたのだ。優秀なリーダは、教えられた事を水平展開する意欲を発揮し、自分で工夫し出す。私はリーダがこのレベルに到達する事を目指しているのだが、大半は次は何をしましょうか?と受け身のままだ。

そこで教え方を変えてみた。先ほどの事例で言えば、右手でコンベアのワークを取り置きするたびに、工具を一度置くのがムダだ。どうすれば改善出来る?と質問する事にした。

以前は、改善方法を教えて、その理由を説明していた。
それを、問題点を指摘して、改善方法を考える様に質問することにした。

このやり方で、自分なりに指導方法が改善出来たと考えていた。しかしまだまだだと、後に気がつく(笑)

きっかけは吉田新一郎氏の書籍を読んだ事だ。

「効果10倍の教える技術」

「『学び』で組織は成長する」

吉田氏は大人への教授法について、色々な手法を紹介してくれている。その後吉田氏の著作は翻訳も含めて何冊か読んでみた。

そして今キーワードになっているのが「相互学習支援」だ。「講師から学習者への1対1もしくは1対nの一方向の教授法」から「講師と学習者間の1対1もしくは1対nの双方向教授法」と自分なりに進化したが、更に「講師と学習者および学習者対学習者のn対n双方向学習支援」という考え方に至った。

例えば、研修中の演習成果発表を講師が評価するのではなく、学習者全員で評価する、こういうやり方が相互学習支援のひとつだ。

相互学習支援により、

  • 学習者間の信頼関係が深くなる。
  • 学んだ事をアウトプットする事により、より学習効果が高まる。

等の効果があると考えている。

私の様に期間限定で外部から改善指導をする様な場合、特にこの考え方が有効だと考えている。

例えばQCC活動の様に、指導者がいない場面でもサークルメンバーだけで活動を推進して行く場合に「相互学習支援」は普通に発生しているはずだ。


このコラムは、2017年7月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第543号に掲載した記事に加筆修正しました。

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続・コミットメント

「愛しています」、驚いた早実・清宮の選手宣誓

 暑い夏の季節になりつつある。高校野球球児にとっても熱い夏が始まった。
日経ビジネスOn Lineに夏の高校野球東京大会開会式での選手宣誓の記事が出て
いた。

(全文)

日経ビジネスオンライン

記事は、早稲田実業高校キャプテン・清宮選手の選手宣誓を取り上げている。

 宣誓。
私たちは野球を愛しています。
私たちは野球に出会い、
野球に魅せられ、
野球によってさまざまな経験を重ねて、
この場所に立っています。
(中略)
青春のすべてをかけて戦うことができる幸せと喜びを、
支えてくれるすべての皆様に感謝しながら、
野球の素晴らしさが伝わるよう、
野球の神様に愛されるように、
全力で戦うことをここに誓います。

この記事を読んで「コミットメント」と言う言葉を思い出した。
2014年6月9日配信のメールマガジン第365号で、以下のように書いた。
コミットメントは「覚悟」だ。つまり「あり方」とか「立場」を表明する宣言だ。

清宮選手の宣誓は、野球に対する「覚悟」でありコミットメントだ。

日経ビジネスのコラム執筆者は以下の言葉でコラムを結んでいる。

 高校野球は残酷だ。優勝する1校を除いてすべてのチームが負けを経験する。
しかし、その高校野球を「愛している」という思いで終えられる選手は幸せだ。それは試合に勝った負けたの話ではなく、最後に「愛している」と思えたことで、3年間の高校野球に見事に「勝った」と言えるのだろう。

私たちも自身の仕事に対してどのようなコミットメントを持っているのか、考えてみたい。

こちら↓もご参考に
「経営者のコミットメント」


このコラムは、2017年7月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第538号に掲載した記事に加筆修正しました。

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コミットメント

 「コミットメント」と言う言葉を国語辞典で調べてみると、

責任を持って関与する事、責任を持って関与すると言う約束

(新明解)

かかわり合い、肩入れ。委託、委任。公約、責任

(スーパー大辞林)

とある。「コミットメント」は、日本語にぴったりとした言葉が無い様だ。
ISO9001の「経営者のコミットメント」と言う章も、「Commitment」をそのままカタカナ表記している。

ISO9001
5.1 経営者のコミットメント

トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの構築および実施、並びにその有効性を継続的に改善することに対するコミットメントの証拠を、次の事項によって示す。

  • 法令・規制要求事項を満たすことは当然のこととして、顧客要求事項を満たすことの重要性を、組織内に周知する。
  • 品質方針を設定する。
  • 品質目標が設定されることを確実にする。
  • マネジメントレビューを実施する。
  • 資源が使用できることを確実にする。

新明解の“責任を持って関与する事、責任を持って関与すると言う約束”と言う解釈が一番近い様に思うが、今イチピンと来ない。

以前、大橋禅太郎さんはコミットメントを「シャツ一枚の覚悟」と説明してくれた。

「すごい会議」大橋禅太郎著

好きな彼女に告白する時に、銀座の歩行者天国でシャツ一枚になって、大声で「好きだー!」と叫ぶ事がコミットメントだとおっしゃった。
分けの分からない定義だが、当時私の心に響いた。コミットメントは「シャツ一枚の覚悟」と説明していた時期がある。

この説明ではなかなか伝わり難いので、最近は「命をかけて成し遂げる約束」又は「命をかけて約束を成し遂げる覚悟」と言っている。

ただの「約束」とは重みが違う。「方向」も違っている様に思う。

例えば「ノルマ」は、必ず達成すると言う「約束」と考えてもよかろう。
ノルマが達成出来なければ、何らかの罰が与えられることになる。この罰が命に関わる事もあり得るだろう。その場合はノルマは「命がかかった約束」となる。しかし「コミットメント」とは言えない。「方向」が違っている。

ノルマは達成しなければならない「義務」である。
一方コミットメントは「覚悟」だ。つまり「あり方」とか「立場」を表明する宣言だ。

ノルマが未達の場合は「罰」が与えられる。
コミットメント未達の場合は「気付き」とか「成長」が得られる。

ノルマで業績を管理する。人不在のマネジメントだ。
コミットメントで成長をマネジメントし、その結果業績が管理状態となる。
どちらのマネジメントスタイルが優れているか、議論する必要もないだろう。


このコラムは、2014年6月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第365号に掲載した記事に加筆修正しました。

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異部品混入

自動車要部品は左右対称になった異部品が多数存在する。自動車のデザインが左右対称になっているのでそうならざるを得ないだろう。例えばドアミラー、ドアハンドル、ヘッドライト、方向指示灯など同じ形だが左右対象形になっている部品が多い。

この様な部品を生産する工場は、左右同数を同時期に生産し、同時に出荷する必要がある。形状が似ているため、左右製品の誤出荷や混入出荷の不適合が発生しやすいと思われる。

左右類似製品の誤出荷、混入原因をどのように防止しするかを検討してみたい。
検査で見つけるのは、上策ではない。製造方法で混入防止を保証する方がより良い。
全く別のラインで生産する、と言うアイディアもあるだろう。樹脂部品の場合一つの金型で左右を同時に成型してしまった方が効率が良さそうだ。その後の組み立て、検査工程も同時に進めてしまえば、無用の中間在庫を持たなくて済む。

つまり、左右の製品を同時にラインに流しても左右製品の混入や取り違いが無い様にするにはどうしたら良いか?と言う課題だ。

ちょっと頭の体操をしていただきたい。
私が考えたアイディアは編集後記でご紹介する。


【編集後記】



左右対称製品の、取り違い、混入防止対策を考えていただけたでしょうか?

私が考えたアイディアをご紹介します。
工程内の組み立て治具、検査治具を左右それぞれ専用にする。左側製品は左側治具にしかセット出来ない様にする。出荷トレーを左右それぞれ専用にする。これで左側製品に右側用の部品を組み付けたり、左右取り違えて出荷する事を防げるはずです。

ちょっと簡単すぎましたか?


このコラムは、2017年8月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第544号に掲載した記事に加筆修正しました。

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ブレインストーミング

 先週末は品質道場で「新QC七つ道具」を勉強した。
少人数で実習を取り入れながらやっている。知識だけではなく、即応用の能力を磨いていただいている。

ところで新QC七つ道具は一般的には、以下の7つをいう。

  • 親和図法
  • 連関図法
  • 系統図法
  • マトリックス図法
  • アローダイアグラム
  • PDPC法
  • マトリックスデータ解析法
  • 問題の原因分析や対策立案などに威力を発揮する手法が取り揃っている。
    品質道場では、マトリックスデータ解析法の代わりにブレインストーミングを入れている。

    マトリックスデータ解析法とは多変量解析の一つであり、顧客アンケート結果から顧客要求の傾向を掴む、などの応用に使える。しかし工場の改善活動などに関わる人たちに活用する機会は少ない。より汎用性が高く、活用できる場面が多いブレインストーミングを覚えた方が良いと考えている。

    ブレインストーミングは、学校教育にも活用されている。ホームルームの時間にブレインストーミングを活用している高校があるそうだ。また企業内での企画会議で、ブレインストーミングをすると良いアイディアが出るだけでなく、チームの結束が高まる、仕事が楽しくなるなどの効果がある。

    面白法人「カヤック」という変わった企業の創業者・柳澤大輔氏は社内でブレインストーミングを活用していると言っておられた。

    参考:「カヤックが社員に約束できること」」

    初めてQCC活動をするメンバーを集め、自工程や他の工程の改善課題をブレインストーミングであげると、あっという間に5、60個の改善課題が出てくる。「言えない問題」「言ってはいけない問題」が一気に噴出してくる(笑)
    工程の組長さんたちの関係が悪化するのではなかろうかと心配したが、無用の心配だった。逆に組長さんたちがお互いの苦労を理解し合い、助け合う機運が生まれた。
    ブレインストーミングにはルールがある。正しく運用すればこうなるはずだ。
    正しく運用しないと「話し合い」は「言い合い」になってしまう。


    このコラムは、2017年8月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第548号に掲載した記事に加筆修正しました。

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民をあまねく仁と化す

yuē:“yǒuwángzhěshì*érhòurén。”

《论语》 子路第十三-12

(注)世:一世代、30年ほどをさす。

素読文:
子曰わく、王者おうじゃ有るも、かならにしてのちに仁ならん。

解釈:
たとえ聖人君主と言い得る真の統治者が現われても、少なくとも一世代を経なければ、民をあまねく仁者と化すことはできない。

人々が良き習慣を身につけるためには、親が良い習慣を身につけその子に良い習慣を躾けなければなりません。良い習慣が定着するためには二世代必要なのではないでしょうか?

東日本大震災の折に暴動・略奪もなく人々が整然と助け合う姿を見て、某国の指導者は「我が国の国民は50年経っても日本人のようには振る舞えない」と嘆いたそうです。指導者としてこれではいけません。「50年かかってっでも国民をあまねく仁者と化す」と決意すべきでしょう。

一方で、良い習慣が乱れるのは3年もあれば十分のように思われます。