防空圏、日米で対応にズレ 民間機の扱い巡り
【ワシントン=吉野直也】米政府は中国が東シナ海上空に設定した防空識別圏を巡り、軍と民間で対応を使い分けている。米軍機は従来通り事前通報なしに飛行を続ける一方、航空会社には事前に中国に飛行計画を提出するよう事実
上促した。不測の事態を回避するため現実的な判断に傾いたものとみられ、日本政府は困惑している。
米国務省は29日の声明で「米政府は国際運航する米航空会社は一般的に外国政府の航空情報に従うべきだと期待している」と指摘。一方で「今回の措置は米政府が中国の要求を受け入れたことを意味するものではない」とも強調し、米軍機は従来通り事前通告なしに飛行させる方針だ。
米メディアは連日、中国の防空識別圏設定を報道し、批判が広がっている。民間機の安全を不安視する声もあり、懸念を無視できなくなった。
日本政府は米側の動きについて「全く聞いていなかった」(政府関係者)と戸惑っている。日本航空や全日本空輸は中国による防空識別圏の設定後にいったん飛行計画の提出を始めたものの、政府の求めで26日夜に取りやめた。政府は方針を堅持し「米側は航空会社に指示したわけではない」としている。
日航と全日空は30日、今後も中国に飛行計画を提出しない方針を明らかにした。「日本政府によって安全は担保されている」(日航)というのが理由だ。政府が注目するのは25日の程永華・駐日中国大使の発言だ。外務省の斎木昭隆次官が「従来通りの運用ルールで対応する」と伝え、程氏は「民間航空機を含め飛行の自由を妨げるものではない」と語った。
(日本経済新聞・電子版より)
このニュースは私たち中国で仕事をしている者に取って非常に関心の高いニュースだ。中国は防空識別圏の設定を、習近平が外遊している最中に発表している。この様な外交上の大事を国家主席不在で決定するとは、思えない。
人民解放軍に対するシビリアンコントロールが正常に機能しているのか心配だ。
人民解放軍は元々、陸軍主体の軍隊だ。昨今海軍が増強され東シナ海、南シナ海で国際的緊張を煽る様な行動に出ている。空軍も最近、無人ステルス戦闘機のテスト飛行に成功したと発表しているが、まだ軍内でのプレゼンスが低いのではなかろうか。
そういう状況下で、空軍がクリーンヒット狙いの独走をしているとしたら、相当ヤバい状況だ。
こういう状況で、シビリアンコントロールがきちんと働いていないと、軍のチョットした勇み足が、後戻り出来ない状況に突入し、坂を転げ落ちる様に最悪事態に向かうことになる。
朝日新聞によると、オバマ大統領の指示で米国民間機が事前に飛行計画を中国に出すことになったと、中国国内では報道されていると言う。それに対し、中国人民はネットで盛り上がっているらしい。世論も軍を後押しする様なことになると、第二次世界大戦開戦前夜の日本と酷似しているのではなかろうか。
ところで、オバマの民間機に対する飛行計画提出要請も、米軍機、自衛隊機に対するスクランブル発進も、実は中国政府の「三味線」ではないのか、という論調を朝日新聞も伝えていた。この様な「大本営発表」が世論を間違った方向に導く事を、我々日本人はよく知っている。
この件に関する議論は、本メルマガにはふさわしくないだろう。専門の評論家・論客の諸氏にお任せしたい。
このメルマガでは、中国の三味線外交について考えてみたい。
相手を惑わす事をよく三味線を弾くとか、口三味線などと言う。
麻雀で、テンパっていないのにテンパっている振りをする、またはその逆。実際の手と違う手でテンパっている振りをする、こういうのを口三味線という。これにより相手を不必要に警戒させたり、油断させたりする訳だ。
私が議論したいのは「悪事」に使う三味線ではなく、組織強化に使う三味線だ。
「瓢箪から駒」と言う言葉がある。何も根拠が無いのに言った事が、現実になる、という意味だ。
中国語に『烏鴉嘴』と言う言葉がある。これは不吉なことを言うと、本当になってしまう、という意味だ。
良い悪い、どちらにせよ、口に出した事が現実化すると言う事だ。
昔は「不言実行」と言う四文字熟語があったが、最近はほとんど使われない。元々の不言実行をもじった「有言実行」が使われる事の方が多い。黙っていては実現出来ない、と言う事に多くの人が気が付いたせいだと思う。
だだをこねる子供に「お兄ちゃんなんだから、お利口だよね」と言うと、子供は言う事を聞く様になる。「だだをこねては駄目」と叱るより効果がある。「お利口だ」と言われたことにより、自分の役割に気が付く。そしてお利口に振る舞おうとする。
警察官になる人は正義感が強いから警察官になる訳ではない。勿論正義感が強く、警察官になりたいと思う人はいるはずだ。しかし警察官と言う職業を得た瞬間に警察官と言う自覚で正義感が強くなるのだ。そして見知らぬ人から「おまわりさん」と呼ばれるたびに正義感が強まってゆく。
時々現役制服警察官が、覗き、盗撮、痴漢行為などの破廉恥行為で逮捕されたと言うニュースを見る。こういう人は、制服を脱いだ時の自己モチベーション管理が不十分だったのだろう。制服着用時は、正義感の高い警察官だったのだろうと思う。
まず言葉がありそれが現実化する。
下手をすると中国の三味線もそのまま既成事実となってしまう訳だ。
三味線は善良な方向で利用すると、経営にも役に立つはずだ。
有名なリッツカールトンホテルのクレド(信条)には「紳士淑女をサーブする私たちも紳士淑女です」と書いてある。これを毎朝朝礼で唱えるから本当にベルボーイも、客室掃除婦も紳士淑女になるのだろう。
これは自分自身にも使える。ワイキューブの元社長・安田佳生氏は、起業して新卒採用を始めてから、新入社員に「自分は従業員を愛している」と言い続けたそうだ。本人の告白によると、従業員を愛してなんかいなかった(笑)しかし言い続けることにより、本当に従業員に対する愛が芽生えたそうだ。
崇高な経営目的・経営理念を決めて毎日口に出して言えば、自分自身も崇高な経営者になる。
誇り高く規律正しい従業員の行動規範を決めて、毎朝朝礼で唱和する。これで従業員は誇りを持ち規律に沿った行動をする様になる。
そんな簡単に行くはずがない、と懐疑的な方はぜひ試してみていただきたい。効果が無くても失うモノは何もないはずだ。
口に出して言うことにより、潜在意識を活性化する。その結果口に出した事が現実となる。良い結果を生む口三味線をぜひ実行していただきたい。
安田佳生の新刊「疑問論」
このコラムは、2013年12月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第338号に掲載した記事を改題しました。
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