月別アーカイブ: 2019年12月

災害復旧

 ラジオ番組でジャーナリストが台風19号関連のニュースにふれて、防災だけではなくそのあとの復旧にももっと目を向けるべきだ、という趣旨の発言をしていた。確かに自然災害の防災には限度がある。ならば被災後の復旧のやり方にも目を向けるべきだろう。

ジャーナリストのコメントは、ボランティア活動のノウハウを継承する仕組みが必要だという趣旨だ。

東日本大地震後のボランティア活動のニュースを聞いて目頭が熱くなったのを思い出す。阪神大災害後のボランティア活動がニュースとして着目されるようになったように思っている。

しかし救援に出向いたボランティアを受け入れ側の行政が活用できていない。ならば過去に経験がある人たちを有効活用しよう、とコメンテータは提案していた。

具体的には、過去に被災した地方自治体のOBが、被災地に出向き指導をするようにしてはどうか、というアイディアだ。

確かに過去に経験のない災害に遭った地方行政の職員がテキパキと復興活動を進められるとは考えにくい。被災経験がある自治体で復興活動をした経験を持つ先輩が応援に来てくれたら、心強いと思うだろう。

こういうアイディアに心から賛同する。
ノウハウを人で伝える、という日本的な手法だ。確かにマニュアルにまとめたノウハウにない、文字以上の情報は人を介して伝わるのかもしれない。

禅に「不立文字(ふりゅうもんじ)」という言葉がある。禅の教義は経典など言葉では伝わらない、という意味だ。

「不立文字」

マニュアルでアルバイトの仕事を管理しようとする現代的な考え方とは一線を画す日本的な仕事の伝承方式だと思う。わざわざ「不立文字」などと禅語を持ち出すくらいだから、日本的伝承方式に反対ではない。しかし効率が悪い。

本当にマニュアルではいけないのか?
我々がマニュアルで伝えたいのは、仕事の手順であり、それに関わる考え方である。禅の教義を伝えたいわけではない。

ディズニーランドの学生アルバイトは年間離職率90%でも、マニュアルにより顧客満足の高いオペレーションができている。
良品計画もムジグラムというマニュアルでオペレーションを記述している。

上手くいっているマニュアルと、残念なマニュアルの違いはどこにあるか?
確信があるわけではないが、マニュアルの作成・改定にマニュアルを使う人の関与がどれだけ反映されているか、というところが境目のような気がしている。

つまりマニュアルの作成や改定にどれだけ実作業者たちを巻き込めるかということに関わっていると思う。神託のごとく与えられたマニュアルより、自分たちの体験を元に作り、日々改定しているマニュアルの方が、きちんと守られるのではなかろうか。

10年前に決められたマニュアルでは、自分たちが作ったマニュアルとは言えない。しかし10年前に作ったマニュアルでも、自分たちの意見が反映され、日々進化しているのならば、それは与えられた(押し付けられた)ものではなくなるはずだ。


このコラムは、2019年10月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第892号に掲載した記事に加筆しました。

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注意喚起と再発防止徹底

 名古屋市は24日、昨年5月に病死した同市中村区の男性(63)について、区役所職員が遺族への連絡を怠り、遺体が半年以上引き渡されずに放置されていたと発表した。職員が男性の遺品を無断で廃棄していたことも判明、市は職員の処分を検討している。

 発表によると、連絡を怠るなどしたのは、同区保健福祉センター民生子ども課の男性職員(40)。昨年5月25日、生活保護受給者の男性が病院で死亡した際、戸籍を調べて速やかに遺族に連絡すべきだったのに、放置。同12月10日になって大阪府に住む遺族に手紙で連絡し、遺族によって葬儀が行われた。市によると、親族と連絡が付かない場合、生活保護受給者の遺体は、生活保護法に基づき自治体が埋葬することになっており、遺体はこの間、葬儀業者が冷凍保管していた。

 また、職員は今年3月、病院から預かった男性のスマートフォンや車検証などを、市の規定に反し、遺族の了承を得ずに廃棄していた。8月に遺族からの問い合わせで判明した。

 職員は連絡の遅れについて「他の仕事で忙しかった」とし、遺品は「家族と話す機会がなく、処分に困って廃棄した」と話したという。同課は「重大なミスで心からおわびする。職員全員に注意喚起し、再発防止を徹底する」としている。

(読売新聞オンラインより)

 「ミス」などという言葉で済ませているが、信じられない仰天事件だ。
当然葬儀業者から遺体の保管料金を毎月請求されていたはずだ。担当者が忘れていても、経理担当者は気がつかなかったのだろうか?数ヶ月間も遺体保管費の支払いが続いたところで、おかしいと気がつくのが普通だろう。不明な請求が半年以上続いていても疑問を持たない。言い換えると税金で運用されている組織にありがちなコスト意識の欠落だ。

他部門の仕事には口を挟まない、仕事ではなく作業をこなしているだけ。
金曜日配信の連載小説「山本品管部長奮闘記」に出てくる経理部、人事部の中国人幹部と同じレベルではないか(笑)
(注)上記の中国人幹部は、その後の展開で大きく成長しています。

区役所は「職員全員に注意喚起し、再発防止を徹底する」と釈明しているが、「注意喚起」では再発防止の効果は期待できない。

根本的には部署間の敷居を下げ、相互にコミュニケーションしながら仕事を進める組織文化を作るべきだ。しかしこれには、働く人々の意識変革が必要であり、時間がかかる。まず即効性のある対策を考えねばならない。

まずは進行中の仕事をすべて可視化する。
すべての仕事の進捗を計画、実績が目に見えるようにすることだ。これを全員が見られるようにする。この予定・実績を全部署全員が閲覧できるようにする。こういう仕組みを作っておけば、止まっている仕事は一目瞭然となる。

部門リーダは、この予定・実績ボードで部門の進捗状況、他部門との協調が確認でき適切な指示、支援ができるはずだ。
各作業に担当者が割り振られており、毎朝自分の仕事を確認することができる。計画が遅れていれば担当者宛にアラートが出る仕組みも簡単だろう。


このコラムは、2019年10月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第895号に掲載した記事に加筆しました。

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認識力

 知識を学習するだけでは不足だ。知識を能力に変換し、能力により行動を起こすことで、初めて価値を生む。と何度かメールマガジンに書いた。

第382号「知識より経験」

第460号「知識より体験」

第683号「知識より行動」

最近中村天風師の言葉を写経のように書き写している。写経といっても墨と筆を使って書いているわけではない。キーボードを叩いてクラウドに文章を保存している。何らかの意義や価値を感じているわけではなく何となく始めた(笑)
本日は「知識より認識力を鍛えよ」という天風師の言葉を書き写した。

知識を持たなくて良い、というわけではない。しかし知識を増やすことに拘泥していては豊かな人生は送れない。物知りは一目置かれるかもしれない。しかし物知りと認めれれても、浅薄な虚栄心を満たすだけだ。

知識は知れば知るほどさらに奥深くキリがない。知識そのものは能力ではない。知識を極めたところで何も起きない。学者も研究で得られた知識を応用する事で初めて成果が得られる。

認識力が高まれば、経験・体験を知識として認識できるようになる。
状況を認識できれば、行動を起こせるだろう。


このコラムは、2019年11月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第900号に掲載した記事に加筆しました。

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状態の見える化

「ベビーベッドに挟まれ乳児死亡 消費者庁が注意喚起」

 消費者庁は15日、木製ベビーベッドの側面にある収納部分の扉が開き、そこから落ちた乳児が頭部を挟まれるなどして死亡する事故があったとして注意を呼びかけた。収納部分の扉のロックが完全にかかっていなかったことが原因とみられる。

 消費者庁によると、今年6月に生後8カ月の乳児が死亡する事故が発生。9月にも生後9カ月の乳児が重症を負ったという。

 消費者庁はベッド側面にある下部収納の扉が開き、そこから落ちたとみられる乳児の頭部が顔を寝具に押さえつけられるように挟まり、乳児は息ができなくなったと推定。扉のロックが完全にかかっておらず、乳児が寝返りなどで接触した拍子に開いたとみられる。

 いずれも保護者が目を離した際に起きていた。

 2件のメーカーは異なっているが、扉はピンを穴に差し込んでロックする形式だった。国民生活センターが再現テストを実施したところ、ピンが穴に入っていなくても扉が止まることがあり、ロックがかかっていないことに気づきにくい構造だった。

(日経新聞より)

 2008年に配信したメールマガジンでベビーベッドの事故をご紹介した。
「中国製ベビーベッドを米国で回収 乳幼児2人死亡」

こちらの事故はベビーベッドを固定しているピンが外れているのに気がつかず、柵が落ちて乳幼児が挟まれて亡くなっている。
今回とほぼ同じ事故原因だ。2008年の事故ではピンを目立つ色としロック状態・アンロック状態を可視化する、という対策だった。

今回の事故も同様に、ロック・アンロック状態を可視化する工夫で事故は防ぐことができたのではないだろうか?

時が経つと忘れてしまうのだろうか?約十年に同様の原因で死亡事故が起きている。今回事故を起こしたベビーベッドの設計者が、私のメールマガジンを読んでいてくれたら、このように事故は発生しなかっただろうと残念に思う。

製造作業での工程飛ばしも「可視化」で対策できるはずだ。
コンベア作業で、休憩後の作業再開時に未作業のワークを次の工程から作業を開始してしまうという事故は容易に想像がつく。作業員毎に作業完了・未完了を「可視化」することで対策が可能となる。

FMEAは自動車関連企業の専売特許ではない。他業種の事故や不良も潜在故障の事例として、自社製品、工程で同様の故障・問題が起きないか、その未然対策を検討する。こういう取り組みはどの業種にも役に立つはずだ。


このコラムは、2019年11月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第904号に掲載した記事に加筆しました。

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リチウム電池の評価

 先週のメルマガでリチウムイオン電池の研究でノーベル賞を受賞された吉野教授の言葉「失敗しないとダメ」をご紹介した。

「失敗しないとダメ」

実は40年近く前にリチウム電池の評価をしたことがある。リチウムイオン電池ではなく、充電ができない一次電池・リチウム電池だ。当時私が所属していた設計チームは新規に開発する電子計装装置のバックアップ電源としてリチウム電池を使うことを検討していた。

当時の電子回路は消費電力が大きく、小さなボタン電池では短時間しかバックアップできない。工場のオートメーションに使う製品なので、長期休暇や保守点検期間などを考えると、最低でも一週間はバップアップする必要がある。

そこでリチウム電池を採用することを設計チームのリーダが検討していた。単三サイズのリチウム電池ならば、バックアップ時間は問題ない。しかしまだリチウム電池は日本での市場実績がない。イスラエルのタディラン社くらいしか扱っていなかった。

重厚長大・信頼性第一主義のプロセスオートメーション業界にはなじまない部品だった。当時20代だった私にリチウム電池を評価をするよう指示された。電池の評価などしたことがなかった。会社の図書室や近隣の公共図書館でリチウム電池に関する論文を探し回るところからスタートした。

いくつも文献を見つけた。その全てが英文で読解に時間を要した(苦笑)
その中に、そのものズバリ、リチウム電池の評価に関する論文を発見。英和辞典片手に読解した。「ショットガンテスト」という項目があった。初めは意味がわからなかったが、評価手順を読んで驚いた。

ショットガンにリチウム電池を装填し、厚さ○インチの樫の板に向かって射つという試験だった。当然電池は壊れてしまうが、試験によって爆発・炎上などの危険な状態にならないことが評価条件だ。

耐衝撃性を勘案するならば、70cm(机からの落下)かせいぜい2m位からの自然落下を考えれば良かろう。爆薬の力で樫の板に打ち付けるという評価が何を想定しているのか理解できなかった。しかしそのくらいの厳しい条件で評価をしなければならない部品だということと理解した。

さすがにショットガンテストは自分ではやらなかった(笑)
評価試験は全項目合格し、私たちの製品に採用することになった。幸いな事に40年近く経った今でも、このリチウム電池に起因する事故は聞いたことがない。

しかしリチウムイオン電池の事故は度々市場を騒がせている。

このメルマガでも幾度となく取り上げた。
リチウムイオン電池の事故

リチウムイオン電池では、「ショットガンテスト」のような気迫の評価は実施されなかったのだろうか。

■□ 閑話休題 □■
上述のリチウム電池評価報告書は発行後、規定に従って回覧ののち戻って来た。表紙に赤ボールペンで「よく書けてる」と開発担当専務のコメントがあった。
当時ものすごく嬉しかったのを今でも鮮明に覚えている。


このコラムは、2019年11月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第901号に掲載した記事に加筆しました。

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君子に仕えるか、小人に仕えるか

yuē:“jūnshì(1)érnányuè(2)yuèzhīdàoyuè使shǐrénzhī(3)xiǎorénnánshìéryuèyuèzhīsuīdàoyuè使shǐrénqiúbèiyān。”

《论语》子路第十三-25

(1)易事:仕事を共にする。
(2)说:yuèと同じ意味。よろこばせる。
(3)器:才能

素読文:
子曰わく:“君子はつかやすくしてよろこばせがたきなり。これよろこばすにみちもってせざれば、よろこばざるなり。そのひと使つかうにおよびてや、これにす。しょうじんつかがたくしてよろこばせやすきなり。これよろこばすにみちもってせずといえども、よろこぶなり。ひと使つかうにおよびてや、そなわるをもとむ。”

解釈:
子曰く:“君子は仕えやすいが、機嫌はとりにくい。機嫌をとろうとしても、こちらが道にかなっていないと悦ばない。しかし人を使う時には、それぞれの器量に応じて使う。小人は、仕えにくいが機嫌はとりやすい。こちらが道にかなわなくても、機嫌をとろうと思えばわけなくできる。しかし人を使う時には、すべてに完全を求めて無理な要求をする。”

君子たるもの部下の力量を見極め、適切な者に仕事を任せなければなりません。
部下の力量を見誤り、無理な仕事を任せる。そして失敗すれば部下の責任として切り捨てる。こういう人が小人です。