月別アーカイブ: 2020年3月

正解とは

 「正解」というものはこの世の中にあるのだろうか?現実社会に「正解」があるというのは幻想ではないかと考えている。

学生時代には「正解」はあった。テストの回答は「正解」「不正解」があり、それぞれ得点が与えられるか、与えられないかの差が発生する。「正解」でもなく「不正解」でもない答えとして半分加点される答えもあるだろうが、問題が間違っていない限り、「正解」は常に存在する。

では現実社会の「正解」とはなんだろうか?

失業率が下がると景気が良くなる。景気が良くなるとインフレ傾向となる。
したがって、雇用を拡大し失業率を下げればインフレ傾向となる。
しかし現実は失業率は大幅に低下したが、インフレ目標2%は達成してない。これが現実社会で起こっている現象だ。

「失業率を下げるとインフレ傾向になる」というのは「正解」ではなく「定説」なのだろう。もしくは「標準的見解」程度のものだ。

複雑系の社会では、単純に原因・結果となることは少ない。いくつかの要因が元になり結果が発生している。解析困難な幻の正解を求めるよりも「妥当解」を求める方が、有効だと思える。


このコラムは、2020年2月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第942号に掲載した記事です。

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失敗を恐れない勇気

軽装の女性客、行き先は冬山 決意したタクシー運転手

 奈良県宇陀市の近鉄榛原(はいばら)駅前で1月中旬、タクシー運転手の森田義彦さん(68)はひとりの中年の女性を乗せた。女性が告げた行き先は東吉野村の高見山の登山口。標高1248メートル、冬場は登山客に人気の山だ。

(以下略)

(朝日新聞デジタルより)

 女性乗客の様子がおかしい。タクシー運転手は気がつき女性に話しかけるが、女性は上の空。運転手・森田さんは意を決して車を止め「命を絶とうとしてるんと違う?」と問いかけ、榛原駅まで戻り交番に女性を預けた。

初めて会った人に「自殺しようとしてないか?」と問いかけるには相当の勇気が必要だっただろう。その勇気が一人の命を救った。

我々の生産現場でも同様なことはある。
改善のアイディアを思いついたが上手くいかなかったらどうしようと、躊躇する事があるだろう。ここで勇気を出して行動しなければ、進歩はない。

「駄目元改善」という言葉がある。
「ダメでもともと」上手くいかなくても、命まで取られるわけではない。
「ダメなら元に戻すだけ」今まで問題はあっても生産できていたので、改善できなくても、元に戻せばいいだけ。
「駄目元改善」はこの二つの意味を持っている。

駄目元改善の極意は「金をかけない」だ。
改善のために立派な生産設備を導入してしまうと、元に戻せなくなってしまう。極力LCA(ローコストオートメーション)を目指す。設備を作る前に効果を検証する。

以前リードタイム短縮のためにインライン乾燥炉を検討した。半田付け部分に絶縁材料を塗布し、まとめてラインアウトし自然乾燥後に次工程に投入していた。この工程だけで2時間停滞時間が必要だった。生産スペースの都合上インライン乾燥炉は1m以下にする必要がある。ここでいきなり乾燥炉を作ってしまうと乾燥が不完全となる可能性がある。
ここでエイやっと設備発注するのは「勇気」ではなく「蛮勇」だ。

小型のコンベアを段ボールで覆い布団乾燥機を使って温風を吹き込んで実験。コンベアのスピード、温風の温度設定を確認してからインライン乾燥炉を発注した。
この改善だけでリードタイムが2時間短縮できた。

失敗を恐れない勇気に必要なのは、とりあえずやってみる、駄目元の組織文化だと思う。試しにやって見てダメならば、別のアイディアを考えれば良いだけだ。


このコラムは、2020年2月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第940号に掲載した記事です。

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原因と言い訳

 発生してしまった失敗の原因を探求し、再発を防止する。類似の失敗が発生しないように水平展開をする。さらに失敗を抽象化しまだ発生しない問題を未然防止する。

ここで重要なことは、正しく不良原因を見極めることだ。

例えば、100台生産ロットの部材発注時に1台2個使いの部品を100個しか発注しなかった、という問題を考えよう。業務システムを使っていれば、この様な問題は発生しないだろう。例題と思ってお付き合い願いたい。
発注担当者はExcelの部品表を確かめながら、発注伝票を作成。その際にミスが発生した。発注伝票はリーダが確認するが、見逃してしまった。

ここでその発生原因(間違った伝票を作成した原因)と流失原因(間違った伝票を見逃した原因)を分析し対策をすることになる。

発注担当者は「風邪気味でぼんやりしていた」
リーダは「仕事が忙しく焦っておりチェックが不十分だった」
発生原因、流出原因に、体調や心理状況などの人為的要素を入れてしまうと、「体調が悪くならない様に健康管理を徹底する」「体調が悪い時は休む」「忙しくても焦らない様に精神強化する」「リーダを増員する」などという、実現不可能または困難な対策しか考えつかない。

「ぼんやりしていた」「忙しかった」というのは原因ではなく「言い訳」だ。
言い訳に対して対策を考えても現実的な効果のある対策は出てこない。
ぼんやりしていると間違ってしまう、ということは「難しい」「複雑」「煩雑」などの原因があるはずだ。したがって、ぼんやりしていても問題が発生しない様にするのが本当の対策だ。
忙しいとチェックの時間がなくなる、という言い訳は作業改善で時間確保する方向に改善しなければならない。

例題は、業務システムの活用や、Excelのマクロなどで自動チェックができる様になるはずだ。
より複雑な問題でも、原因分析の結果が「言い訳」になっていないかどうか見極める。言い訳は、「ぼんやりしていた」「忙しくて焦っていた」の様に個人的な体調、心理的状況に依存している場合が多い。


このコラムは、2020年2月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第937号に掲載した記事です。

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先行後言

gòngwènjūnyuē:“xiānxíngyánérhòucóngzhī 。”

《论语》为政第二-13

素読文:
こう君子を問う。子曰わく:“げんおこない、しかのちこれしたがう。”

解釈:
子貢が君子とは何かを問う。子曰く:“君子とは先に行動、言葉は後だ”

日本では「不言実行」と言います。孔子は、行動が先、言は後と言っています。「有言実行」は君子とは言えないようです。

君子は学を好む

yuē:“jūnshíqiúbǎoqiúānmǐn(1)shì(2)érshènyánjiù(3)yǒudào(4)érzhèng(5)yānwèihàoxué。”

《论语》学而第一-14

(1)敏:素早く行う
(2)事:なすべき事
(3)就:ついて
(4)有道:学識、道徳のある人
(5)正:正してもらう

素読文:
子曰わく:“君子はしょくくことをもとむる無く、きょやすきを求むる無し。ことびんにしてげんつつしみ、有道ゆうどういてただす。がくこのむとうべきのみ。”

解釈:
君子たるもの飽食を求めず、安住を求めない。行動は俊敏だが、巧言を慎む。
有徳者の指導を得て、自らの言動を正す。こういう者が学を好むといえる。

過ちては改むるに憚ること勿れ

yuējūnzhòng(1)wēi(2)xué(3)zhǔzhōngxìnyǒuzhě(4)guòdàn(5)gǎi

《论语》学而第一-8

(1)重:重々しい
(2)威:威厳
(3)固:頑固、かたくな
(4)不如己者:自分より劣る者
(5)惮:はばかる

素読文:
子曰く:“君子おもからざればすなわちあらず。まなべばすなわならず。忠信ちゅうしんしゅとし、おのれかざる者を友とすること無かれ。あやまちてはすなわあらたむるにはばかることなかれ。”

解釈:
子曰わく:“君子たるもの軽々しくては威厳が保てない。学べば物事に捕らわれることはない。忠義を第一とし、自分より劣る者を友とすべきではない。過ちを自ら正すことに躊躇してはならない。”

小人はこれと反対。軽々しい振る舞いからは威厳は感じられない。学ばないから世間の流言飛語、噂話に捕らわれ右往左往する。小人同士群れ集い、自らの過ちは隠蔽する。

君子は器にあらず

yuē:“jūn 。”

《论语》为政第二-12

素読文:
わく:“くんならず。”

解釈:
器はそれぞれ入れるものによって用途が決まってしまう。花瓶には食べ物を入れられないし、飯茶碗には花を飾れない。君子たるもの単機能人材であってはならない。

子貢は孔子が後輩の子賤を褒めるのを聞いて、自分の評価を訪ねた。
孔子から「お前はれんの器だ」と言われる。琥璉の器は宗廟を祭る時に、供物を盛る器だ。玉などをちりばめた豪華なもので、あらゆる器の中で、最も貴重なものとされている。しかし器は器。孔子の子貢に対する厳しい評価だった。

小人過ちをかざ

xiàyuē:“iǎorénzhīguòwén(1) 。”

《论语》子张第十九-8

(1)文:かざる。うわべを繕う。

素読文:
子夏しかわく:「しょうじんあやまちやかならかざる。」

解釈:
小人は過ちを犯すと、それをごまかし取り繕う。

政官財各界にかざる小人の多いこと。嘆かわしいことです。

動画の力

 テキストデータを読んだり,聞いたりするよりは,写真を見た方が素早く理解出来る.写真を見るよりは,動画を見た方がより深く理解出来る.

これは情報量が,テキスト<画像<動画となっており,情報量が多い方がより理解が深まる,と言うのが一般的な理解だろう.

しかし私はちょっと違う解釈をしている.
人は物事を理解したり,記憶するのは,経験を通して達成される,と考えている.この仮説が正しければ,情報量ではなく実体験に近い方が,理解が深くなるはずだ.
たまたま情報量の多さと実体験との近さが同じ順番になっているだけだ.

私の仮説が合っているかどうかは別として,工場で指導する時に,ポンチ絵,写真,動画を使う事が多い.

ある工場では,熟練を要する作業があり,その工程がいつもボトルネックとなっていた.班長も組長も,その作業が熟練の過程でどう変わっているのか分からないので,新人作業者に説明が出来ない.

こう言う場合は,その作業をビデオで撮影し,熟練者と新人の違いを分析する.その違いを言葉で説明しながら,ビデオを見せるとその瞬間から新人でも,ベテランと同じ様に作業出来る様になった.

違いを分析する,それを言葉にする,と言う作業は多少能力が必要だが,動画の威力は高い.

今週の雑感でも紹介したが,Youtubeの動画もたびたび活用している.
バスを造っている工場に,トラックや乗用車の生産ラインの動画を見せた.ここの経営幹部に「バスはトラックや乗用車とは同じではない」というのが「口癖」の人がいる.こう言う発言は,思考停止に他ならない.他の業界でうまくいっている方法を,そのまま真似出来ないにしても,自分たちの工場に適用するにはどうしたらいいか?こう言う発想が革新を生み出す.

「理想解」から色々な制約条件の元に「現実解」を見出すことができれば,それが自分たち(制約条件下)の「理想解」にほかならないだろう.

現場改善も同様だ.現在の作業をビデオに撮る.そのビデオを見ながら,ムダを見つけ,改善のアイディアを出す.
私のような現場改善のコンサルは,現場を改善することが仕事だ.
しかし自分で改善を進めてしまうと,仕事が終わった時点で改善は停まり,むしろ退歩が始まる.現場のリーダたちに改善の方法を教え,行動を起こさせる所までやらなければならない.自分で改善してしまった方が楽でも,ビデオを見せながら一緒に考える.

ビデオカメラ一台で,リーダの改善能力が相当上がるはずだ.
ビデオカメラと三脚,高級品でなければ2~3000元もあれば買える.
効果に対して相当安い投資だと思えるが,あなたの工場ではビデオカメラを改善に使っているだろうか?


このコラムは、2013年7月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第316号に掲載した記事です。

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21世紀型経営

 12月12日は,原田師の追悼研討会に参加した.

会場は,鄭泰汽車輪股分有限公司.
鄭泰の社長鄭東海氏は,原田式経営哲学に触れ,1週間SOLID社の従業員寮に寝泊りし原田式経営を現場で体得した方だ.鄭氏はMBAホルダーであるが,MBA的手法ではなく,原田式経営を目指し,社内改革を推進している.

その改革の推進役として,昨年8月に原田師の元部下・羅国兵が鄭泰に招聘されている.羅国兵が先鋒として改革を推進し,その後次々と原田師の元部下たちが鄭泰の企業改革に招聘された.

今,原田師の元秘書だった閻苗苗を含めた7人の侍が,鄭泰の改革を推進している.このようにして原田師の経営哲学を受け継ぐ者達が,理想工場の実現を目指し活躍しているのを見ると,自分の胸の中にも炎が燃え上がる気がする.

この研討会に参加した明治大学経営学部・はお教授は,「21世紀型経営」という概念を話された.つまり,企業経営とは利益を追求すること,という過去からの定義に対し,企業経営とは従業員を幸せにすること,という新しい定義が「21世紀型経営」
だ.
従業員を効率よく働かせ,利益を極大化する経営が過去の企業経営である.従業員の幸せを目指し,従業員を育成することにより,組織の能力を上げる.利益はその結果であり,目的ではない.これこそが,原田式経営の核心だろう.

そんなことに思いをめぐらしていたら,中国常州で工場を経営する友人が,「さらば、さもしい経営者」という書籍を教えてくれた.この本の著者・松丸公則氏は,中国江蘇省太倉市にて台湾企業との合弁会社を立ち上げている.
松丸氏は
「従業員が幸せになればおのずと経営者も幸せになる。経営者が幸せになれば『幸せな会社』が生まれる。『幸せな会社』が集まれば社会がしあわせになる」という信念で経営をしているそうだ.

世の中は「21世紀型経営」に流れ始めていると実感した.


このコラムは、2010年12月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第184号に掲載した記事です。

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