月別アーカイブ: 2021年5月

中国人青年経営者

 先週末は、第四回東莞和僑会で中国ローカル企業を訪問した。

訪問した会社は、9年前にプラスチック金型エンジニアの若者が、3人の仲間と一緒に起業した会社だ。たった9年の間に、金型設計・生産からプラスチック成型、光ファイバー、衛星通信機器、超小型プロジェクターの開発にまで手を広げている。更にこの年末には、故郷の四川省に工業団地が完成する。

もっと驚くのは、この創業者は今年まだ32歳だと言うことだ。

3人の創業者は皆エンジニアであり、営業は苦手だと言っていたが、顧客の紹介でどんどん仕事が増えた。また政府の研究機関や、大学との協業で新規分野の製品開発も進めている。

人と人とのつながりで、急激に事業を大きくしてゆくチャイナ・ドリームを目の当たりにした思いだ。

一般的に、中国私営企業のオーナー経営者は、事業は自分に富をもたらす道具、従業員は自分に富をもたらすために働く使用人、と考えている人が多いように思う。

しかし彼は、言葉の端々に「会社は自分個人のものではない」「会社の成長は仲間のおかげ」という。上述の中国的経営者と一線を画す、新世代経営者と言って良いだろう。

彼の人柄により、独立前に働いていた日系企業が独立後も仕事をくれた。創業時から、この会社を育てようとずっと付き合っている日系メーカもある。

彼の成功は、仲間を信じ、仲間と夢を共有することにより実現したものだと思う。
更に彼が、従業員全員に夢を与え、従業員の成長を願えば、全従業員が仲間になる。幹部だけではなく、従業員全員に彼の夢が浸透すれば、彼の会社は志を持った集団になるはずだ。

彼がその境地に至った時、彼の会社は利益を追求する道具ではなく、従業員の夢を実現する道具となるはずだ。
出来ることならば、彼のそばで彼の成長を見届けたいと思っている。


このコラムは、2011年11月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第230号に掲載した記事です。

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凧は逆風で高く上がる

 最低賃金の上昇により、また労務費が上がる。それより作業者を募集しても集まらない。

製造業にとって、最近の人材採用環境は逆風だ。

一昔前ならば、採用告知の掲示を工場の門前に出せば、翌朝には応募者が門前に列を成したものだ。
しかも受注が落ちて仕事量が減ると、作業員は自らより残業のある工場へ転職していく。忙しくなれば、すぐに作業員が採用できる。雇用調整など、何もしなくても良かった。

今はコストをかけて採用しても、作業員の定着は良くない。

この状況はどこかで見た様な気がする。しばし考えて思い当たった。
中国のスポーツジムと同じだ。会員制のスポーツジムは、開業後何年たっても大量の営業係が街行く人に声をかけて、入会の勧誘をしている。なぜこのようなコストのかかる努力をするのか理解できない。

まず既存会員の満足を得る。そうすれば会員は翌年も、年会費を払うだろう。そして友人を勝手に入会勧誘してくれる。

中国のスポーツジム経営者は、この逆をしている。
新規顧客に魅力的に見えるように、入会金を安くする。これを知れば、既存会員は気分は良くないだろう。新規会員獲得にはコストをかけるが、既存顧客の満足にはコストをかけない。つまり設備の故障など永らく放置したままだ。

作業員の採用にコストをかけても、従業員満足にコストをかけていない。
あなたの会社では、そんなことはないだろうか?
従業員満足と言っても、給与や福利厚生ばかりではない。仕事を通して自己成長が出来る。地方から出稼ぎに来ている労働者にとって大きな魅力のはずだ。

低学歴で出稼ぎに来る労働者達は、必ずしも勉強が嫌いだったり、頭が悪い訳ではない。農村の家庭環境、経済状況で進学を断念し、出稼ぎに出ている若者も多くいる。
そういう若者が満足できる社内研修制度や、自己成長がキャリアパスとなる人事制度があれば、定着率は良くなるはずだ。

何よりも、福利厚生や給与が充実しているから採用応募してくる若者と、自己成長の機会を求めて採用応募してくる若者のどちらを採用すべきかは、議論する必要もないだろう。

逆風は、皆に公平に吹いている。
逆風に身を縮めるか、逆風で更に凧を高く上げるかで、成果は正反対となる。

志の高い経営者は、逆境をチャンスと考えることが出来る。

※このコラムを書いてから10年経ちました。街でスポーツジムの勧誘員に声をかけられることは滅多になくなりました。しかし従業員の採用難はより深刻な状況のようです。


このコラムは、2011年1月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第190号に掲載した記事です。

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往を告げて来を知る

gòngyuē:“pínérchǎn(1)érjiāo?”
yuē:“wèiruòpínérérhàozhě。”
gòngyuē:“shīyúnqiēcuōzhuó(2)zhīwèi?”
yuē:“shǐyánshīgàozhūwǎng(3)érzhīlái(4)zhě。”

《论语》学而第一–15

(1)谄:媚び諂うこと
(2)如切如磋,如琢如磨:詩経の一説。切る、磨く、削る、彫る、それぞれにそれぞれの方法がある。
(3)往:過去
(4)来:未来

素読文:
こういわく、まずしくしてへつらうことく、みておごることきは、何如いかん
いわく、なり。いままずしくしてたのしみ、とみれいこのものかざるなり。
こういわく、う、「せっするがごとく、するがごとく、たくするがごとく、するがごとし」と。これうか。
いわく、や、はじめてともうべきのみ。これおうげて、らいものなり。

解釈:
子貢が孔子に尋ねる「貧しくても人に諂わない、富んでも驕らない、こういう人物はいかがでしょう。」
孔子曰く「良い心がけだ。しかし貧しくとも楽しみ、富んでも礼節を知る者には及ばない。」
子貢曰く「詩経にある『せっするがごとく、するがごとく、たくするがごとく、するがごとし』とはこのことですね。」
孔子曰く「賜(子貢)よ、お前は共に詩を読むに値する者だ。一つを知れば、次を理解する力がある。

孔子は子貢をべた褒めですが、下村湖人は「論語物語」で子貢を名誉欲の強い人物として描いています。

MECE

 問題を定義したり、原因を分析したりする場合に「MECE」になっているか?ということにしばしば気を配っている。これがうまくできていないと、論理が崩れてしまったり、まともな答えが見つからないことになる。

「MECE」とは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、ミーシーと発音するようである。早い話が、ダブりもモレもない状態のことを言う。

例えば仕事の優先順位を考える時に、「緊急度」と「重要度」の組合せで考える。「緊急・非緊急」×「重要・非重要」の4つの組合せがMECEになっているので、このフレームワークで話をするとすっきりと理解が出来るわけだ。

例えば、日本人という集団を層別する時に、「犬好き」と「猫好き」に分けたのではMECEにならない。
・犬が好き
・猫が好き
以外に
・犬も猫も好き(ダブり)
・犬も猫も嫌い(モレ)
があるからだ。

「男性」「女性」の二つに分解すればほとんどの場合はMECEになっている。
ほとんどの場合と限定をつけたのは、分解をする目的によっては「同性愛者」を入れる場合もありうるだろう。

マーケティングへの応用で、消費者の嗜好を研究する場合など、商品によっては
・男性
・女性
・同性愛者
と分類しなければ、見えてこないマーケットもあるだろう。

そして層別がMECEであると共に重要なのは、層別の感度である。
例えば消費行動を、女性・男性だけの層別で調査しても層別による誤差が大きすぎて、意味のある結論を引き出すことは出来ない。
・収入による層別
・地域による層別
・既婚、未婚による層別
・年齢による層別
など消費行動により感度の高い層別法を考えなければならない。

顧客で不良品が見つかった場合にも、MECEの考え方が役に立つ。
不良が発生した場所をすべて挙げる(MECEになっていること)
1。原材料
2。前加工
3。組み立て
4。検査
5。梱包
6。出荷・輸送
7。顧客開梱
などのように列挙すればもれなく上げることができるだろう。

例えば人為ミスがあった場合
・知らないのでミスをした
・知っていてミスをした
更に知っていてミスをした、を
・故意にミスをした
・ミスをしたと認識できなかった

という具合にMECEになっているように分解してゆく。
このように分析してゆけば、人為ミスに対して作業員に注意を喚起した、という効果が実感できない対策でお茶を濁すことはないであろう。


このコラムは、2011年8月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第216号に掲載した記事です。

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Oリングの劣化

 石油給湯機を使用中に異音がし、確認すると、当該製品から発煙・発火していた。

(NITE事故情報より)

 NITE(製品評価技術基盤機構)の事故情報によると、2008年から12件の同様な事故が発生している。

事故調査によると、灯油を燃焼室に供給制御する電磁弁のゴム製Oリングが、経年変化により劣化し灯油が燃焼室近辺に漏れたことによる引火が原因だ。

ゴムは経年変化により、硬化したりひび割れたりする。そのためOリングとしての機能を果たさなくなる。設計者はゴムが劣化することを知っていたはずだ。
更に真因を探れば、Oリング寿命の見積もりを誤った、または材料不良により設計どおりの寿命がなかった、と言うことだろう。

ゴムの寿命は、添加剤により大きくばらつく。しかも事前に評価確認することが困難だ。原料ゴムをロットごとに、寿命評価をしてから製品組み立てに使用することは可能だが、経済的に困難だろう。

安全性と経済性をトレードオフすることは出来ない。ロットごとに寿命評価をするという対策を取れば、安全性と経済性はトレードオフ関係になる。

Oリングが劣化しても火災にならないフェールセイフ設計が必要だ。
制御電磁弁を燃焼室から離し、灯油が漏れても発火しないようにする。または漏れた灯油は密閉容器に溜まるようにしておき、漏れを検出したら燃焼をシャットダウンするように設計しておけば、事故は発生しないだろう。

製品の安全性だけではない。あなたの工場では設備からの油漏れをきちんと管理できているだろうか?
床に油だまりが出来ている。設備の下にウェスがたくさん突っ込んである。
こんな状況はイエローサインだ。もちろん機械油は、灯油より引火温度が高い。
簡単に火災が発生することはないかもしれない。しかし火災に準じる深刻な不具合が発生する可能性はあるはずだ。


このコラムは、2011年3月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第196号に掲載した記事です。

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逆境はチャンス

 定例で開催しているセミナーにご参加いただく方が、1月、2月と徐々に少なくなってきている。3月は今まで2年間の最少人数になりそうだ。

1月、2月のときはちょうど春節休暇の前後となり、皆さん休暇の前後だったり休暇中で参加できなかったのだろうと考えていた。3月はそういう理由はないはずだ。
やはり不景気の影響が出ているのだろうか?そんな思いがよぎった。

しかし「逆境はチャンス」景気という自らコントロールできない要因に原因を求めるのではなく、コントロール可能な要因に注力しよう、といつも言っていた自分がここで弱気になってはいけないと、気がついた。

休暇スケジュール、景気などの外的要因に原因を求めても始まらない。

お客様に新たな気付きと、「よし、やってみよう」という行動に移す勇気を提供するという使命に徹しようと思う。


このコラムは、2009年3月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第87号に掲載した記事です。

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トヨタ「カイゼン」1銭単位 車1兆円改革の現場

トヨタ「カイゼン」1銭単位 車1兆円改革の現場

 国内自動車メーカーの業績が回復している。理由は円高修正だけではない。
貢献度が大きいのは“お家芸”でもある原価低減だ。自動車7社の2013年3月期の原価低減額は総額で約9500億円、営業増益額の65%を占めた。円高や石油危機など逆風に直面するたびにコスト競争力を磨き、復活を遂げてきた日本車メーカー。「カイゼン」の現場を追った。

 トヨタ自動車が昨年末、宮城県で稼働させたエンジン工場は一風変わっている。目を引くのはラインの「小ささ」だ。通常の生産ラインに比べ設置面積はわずか半分。業界ではエンジン生産の採算の目安は月1万8千基とされるが、同工場は1台の設備が複数作業をこなすことで約9千基でも成り立つ。トヨタは業界の常識を覆した。

 トヨタが前期に実施した原価低減は約4500億円。自動車7社の総額のほぼ半分を占める。「カイゼンはトヨタの魂」と言い切る豊田章男社長は、小規模・効率志向を世界各地の工場に広げる考えだ。

■ライン長さ可変

 昨年夏以降、稼働を始めたブラジルやインドネシアの車両工場では「アコーディオン・ライン」が活躍する。楽器のアコーディオンのように需要に応じてラインの長さを変えられるため、常に高い稼働率を維持できる。

 姿勢転換の契機は08年秋のリーマン・ショックだ。それ以前はまず大きな工場を構え徐々に稼働率を上げるやり方だった。だが需要が縮小に転じると固定費が重くのしかかる。09年3月期に4600億円もの営業赤字を出した原因となった。緊急事態を受けて生産担当の新美篤志副社長が全社に発した指令が「小さく生んで賢く育てよ」。その結果生まれたのが宮城県やブラジルなど
一連の新工場となる。

 デンソーやアイシン精機など数万社に及ぶ取引先も1円あるいは1銭単位で一斉にコストを削った。ときにはトヨタの担当者が入り込んで徹底指導した取り組みは「部品メーカーのコスト構造を変える一種の産業革命」(トヨタ幹部)だったという。

 グループ総出の努力で積み上げたコスト削減は今期見通しを含め5年間で約1兆5千億円。トヨタの国内生産はピーク時の07年(422万台)の8割程度だが、前期には5期ぶりに単独営業損益が黒字となった。

日経新聞電子版より

 まとめて沢山造れば、効率が良くなってコストダウン出来る。
こう言う発想の改善が通用したのは、消費が右肩上がりである事が保証された時代だけだ。同一規格製品を量産すれば、次々と売れた時代はもう終わった。今同一規格製品を量産すれば、同時に貧乏も量産することになる。

必要なモノを、必要なだけ、必要な時に造れる。
生産効率よりは経営効率、稼働率よりは可動率が求められている。

以前指導していた工場では、450本単位で電源ケーブルを生産していた。
この工場に、1本ずつ加工する生産方法を指導した。その結果、より利益率が高い産業機器用のケーブルを受注することができる様になり、新しい利益の柱を作る事が出来た。

電子部品工場では、ベルトコンベアで生産していたラインを分解再構築し、1/2のスペースで作れる様になった。その結果多くの品種を同時に生産できる事となり、今まで断っていた少量の受注も生産出来る様になった。

機構部品の工場では、工程ごとに作業エリアを分けていた。この工場では、生産の流れが見える様に一気通貫の生産ラインとした。その結果15日かかっていた生産リードタイムが、変更した初日から1.5日となった。

こう言う改善が、生産効率よりは経営効率、稼働率よりは可動率の改善だ。
今の時代、製造業に求められているのは、同じ物を大量に造る事ではなく、必要な物を、必要なだけ、必要な時に、フレキシブルに作る事だ。


このコラムは、2013年6月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第314号に掲載した記事です。

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変化と変革

 「変化」と「変革」は似ているようだが明確な差がある。
辞書を調べてみると、

  • 「変化」:ある状態や性質などが他の状態や性質に変わること。
  • 「変革」:変えて新しいものにすること。変わって新しいものになること。

とある。

変化は、ポジティブな変化もあり、ネガティブな変化もある。改善も劣化も変化だ。しかし変革はポジティブに変わることだ。

変化も変革も「変わる」ことは同じだが、変化は受動的、変革は能動的と定義できそうだ。

そして変化は受動的であるため、変化に対応するリーダが必要となる。
一方変革は能動的であるため、変革を起こすリーダが必要になる。

【変化リーダの資質】短期・中期のリーダシップ
 迅速な判断力・決断力
 メンバーの統率力

 変化(事故、火災、景気後退)は迅速に対応しなければならない。軍隊式のリーダシップで一気に解決しなければならない。

【変革リーダの資質】中期・長期のリーダシップ
 理念・ビジョンの策定と浸透
 メンバーの育成力

 変革(組織変革、新規市場進出)には一気呵成よりは周到な進捗が必要だ。
理念・ビジョンがぶれないようにし、メンバーの意欲と能力を高めて戦略的に取り組む。

向き不向きはあるだろうが、局面に合わせて変化リーダ、変革リーダを担える人財を育成できれば鬼に金棒だ。


このコラムは、2020年11月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1053号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

好きは上手、楽しむは最強

yuē:“zhīzhīzhěhàozhīzhěhàozhīzhězhīzhě。”

《论语》雍也第六-20

素読文:
いわく:“これものこれこのものかず。これこのものこれたのしむものかず。”

解釈:
之れを知る者は之れを好む者に及ばず、之れを好む者は之れを楽しむ者に及ばない。

「之れ」とは何か「学問」とか「音曲」などが思い浮かびますが、「真理」とか「原理」と解釈すると、孔子の言葉に深みが増します。

品質基準

 ずいぶん昔のことだが、納入品に不良が1台あったので、仕入れ先に返却し不良原因の解析を求めたことがある。仕入れ先の営業担当者から「納入仕様書にはAQL0.1%で検査すると明記してある。今回発生した不良は0.1%未満なので不良解析・報告の義務はない」と言われて驚いたことがある。説明するのが面倒だったので「そちらの品質部長さんにAQLの意味を教えてもらえ」と言っておいた(笑)

AQLとは抜き取り検査の基準であり、言葉どおりの「許容品質基準」ではない。
製品の品質基準にはいろいろな段階がある。

品質目標:設計部門の目標品質
品質標準:製造部門の目標品質
検査基準:検査部門の判定基準
保証品質:顧客に保障する品質

顧客に保証する品質基準は検査基準より緩い。使用中の劣化も見込むためだ。
検査部門の検査基準は製造部門の検査基準と同じか若干緩い。
AQL検査の場合は、製造部門が全数検査であることに対し抜き取り検査であり、が緩い。
製造部門の品質基準は、部品ばらつき作業ばらつきを考慮するので、設計部門の目標品質より緩い。
設計部門の品質目標は、製品の要求に基づき最も厳しい。部品のばらつき、製造上のばらつきがあるので設計時の品質目標は最も厳しい。


このコラムは、2020年11月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1064号に掲載した記事です。

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