月別アーカイブ: 2021年10月

メルセデスベンツリコール

 メルセデス・ベンツ日本は7月8日、『Aクラス』など18車種について、ステアリングシャフトに不具合があるとして、国土交通省にリコール(回収・無償修理)を届け出た。

(中略)

対象車両は、ステアリングシャフトにおいて製造機器の使用が不適切なため、ユニバーサルジョイントのベアリングを圧入する穴径が大きいものがある。そのため、使用過程で操舵時に遊びが発生して異音が発生し、最悪の場合、ユニバーサルジョイントが脱落することで操舵不能になるおそれがある。

改善措置として、全車両、ステアリングシャフトのシリアル番号を点検し、交換が必要なものは良品に交換する。
不具合および事故は起きていない。ドイツ本社からの情報によりリコールを届け出た。

(全文)

(Responseより)

 記事には「ステアリングシャフトにおいて製造機器の使用が不適切なため」とあるが、単純にステアリングシャフトに穴を開ける際に間違ったドリルの刃を使用したのではなかろうか?単純なヒューマンエラーのように思える。

ドイツという国の印象から考えると、ありえない不良のように思える(笑)

多分そんな単純なヒューマンエラーではないのだろう。
例えば、作業開始時に初物検査で穴径を測定した。ドリルの刃が破損したので交換。このとき径の違うドリルの刃を選んでしまった。またはドリルのキレが悪くなったので、刃を研いだ。その時にそばにあった径の大きなドリルの刃と取り違えた。

「初物検査」は始業時にやる検査ではない。変化点における検査だ。
当然上記のような状況も変化点だ。この変化点でも「初物検査」を行うべきだ。


このコラムは、2021年7月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1162号に掲載した記事です。

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原因に対策

 「フランクル回想録・20世紀を生きて」という書籍に、田舎に引っ越した男が早朝の鶏の鳴き声で睡眠不足となる。男は鶏の餌に睡眠薬を混ぜて問題解決した。というエピソードが出ているらしい。

鶏の鳴き声がうるさくて睡眠不足(早朝に起きてしまう)問題の原因である鶏の鳴き声を除去する(時間をずらす)という意味では、秀逸な問題解決方法と言えるかもしれない。しかしこの対策の実施が許されるかどうかは微妙だ。

問題の原因をもっと広角でとらえる必要がある。原因には「田舎に引っ越した」も入るはずだ。これは自責なので対策は可能だろう。

また睡眠不足の原因は起床時刻だけではないはずだ。就寝時刻を早くすれば早朝に起床しても睡眠不足にはならない。鶏の鳴き声の時間をずらすのは問題かもしれないが、自分の睡眠時間帯をずらすのは何ら問題はない。

鶏の鳴き声が大きいのが睡眠不足の原因と定義すれば、防音が対策となる。防音装置が高額ならば耳栓でも良かろう(笑)

今回ご紹介した書籍「フランクル回想録・20世紀を生きて」は2011年11月の出版ですが、もう絶版になっているようです。著者は精神療法の創始者だそうです。しかし9年足らずで絶版になってしまうとは…


このコラムは、2020年10月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1045号に掲載した記事です。

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顧客感動

先週は「顧客満足、顧客不満の解消」について考えてみた。今回はそれらを超越した「顧客感動」について考えたい。

ずいぶん前のことだがTVコマーシャルで「デライト」という言葉を知った。
たばこ会社のコマーシャルで、タバコを吸おうとした紳士がそばに子供がいるのに気がつきそっとタバコをしまう。という映像に「デライト」という言葉がかぶさってくる、というコマーシャルだったと記憶している。

顧客満足(Customer satisfy)と顧客感動(Customer delight)の違いとは
「顧客満足」は顧客の要求を100%満たしている状態。
「顧客感動」は顧客の要求を超えた品質(機能、性能、質感など)
と定義すればわかりやすいだろうか。

以前指導していた電動バスの製造企業は售后服務(アフターサービス)という部門があり、顧客クレーム対応をしていた。バスのモータが故障したということで、即顧客訪問。迅速な対応は良いが、車内に持ち帰った情報は、不良と言われたモータの外観写真のみ。

これでは技術も品証も何も動けない。

售后服務としては、不良現品を持ち帰る手筈を整え早急に不良解析を行い、不良原因を突き止め、顧客に対して他のバスへの波及の可能性を含めて報告しなければならない。これができてプラスマイナスゼロの成果だ。

ここで「顧客感動」レベルの対応はなんだろうか?
顧客の立場に立って考えれば、答えは明確だ。
顧客がバスの故障で困るのは「運行ダイヤの維持をどうやって実現するか」ということだろう。これを素早く解決すればプラスマイナスゼロからプラス側に振れるだろう。

実は全く故障しないバスを提供しても、顧客はその凄さに気がつかない可能性がある。稀に故障するがその対応が素晴らしい。というのが理想状態なのかもしれない(笑)


このコラムは、2021年8月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1179号に掲載した記事です。

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スイッチ接点不良

 タイホンダおよびホンダは7月8日、『レブル250』など8車種について、ヘッドライトが点かなくなるおそれがあるとして、リコール(回収・無償修理)を国土交通省へ届け出た。
対象となるのは(中略)8車種で、2014年3月19日~2021年4月28日に製造された4万3387台。
対象車両はハイビーム/ロービーム切換えスイッチの接点構造が不適切なため、はんだフラックスが接点表面に残留するものがある。そのため、そのまま使用を続けると、切換えスイッチが接触不良となり、最悪の場合、ヘッドライトが点かなくなるおそれがある。

改善措置として、全車両、対策品の切換えスイッチを組付けたウィンカスイッチアッセンブリと交換する。

不具合は104件発生、事故は起きていない。市場からの情報によりリコールを届け出た。

Responseより)

 「ハイビーム/ロービームの接点構造が不適切」としか表記されていないので何が問題なのか判断できない。普通に考えるとスイッチの端子はスイッチ筐体の外側にあり、筐体内側のスイッチ接点にフラックスが侵入するような構造になっていないはずだ。

半田付けによりフラックスがスイッチ内部の接点まで侵入するのであれば、部品選定時の評価不足と言わざるを得ない。

前職時代に新規部品登録委員会の主査をしていた。機構部品は分解して内部観察、スイッチ、コネクタ類は硫化水素による腐食試験を実施していた。ただ分解するだけでは何も判断できないかもしれないが、継続することによりどういう構造でフラックスの侵入を防いでいるのかわかるはずだ。

またこのような事故が、経験値を積み上げる。流石にどこのメーカのどの型番のスイッチかを公表はしないだろう。しかしその気になれば道はある(笑)

以前回収対象になっていたPC電源をジャンク屋を回って探した事がある。
手に入れたPC電源を分解し、中を調べてみたが原因は分からなかった。しかしこの話を他社の品質担当者にしたら、それはこういう不良なのだよ、とそっと教えてくれた。熱意があれば道は開けるものだ(笑)


このコラムは、2021年7月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1165号に掲載した記事です。

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古聖の道を好む

yuē:“fēishēngérzhī(1)zhīzhěhào(2)mǐn(3)qiúzhīzhě。”

《论语》述而第七-20

(1)生而知:生まれながらにして知る。
(2)好古:古代の文化を好む。
(3)敏:汲々として

素読文:
いわく:“われまれながらにしてこれものあらず。いにしえこのみ、びんにしてもっこれもとめしものなり。”

解釈:
孔子曰く:“私は生まれながらにして何もかも知っている者ではない。古代からの教えを好み、その探求を汲々と続けているだけだ。”

孔子は「老彭に比す」でも自分は古代の教えを伝えているだけだと言っています。