月別アーカイブ: 2022年7月

ビュリダンのロバ

 例によって乱読で得た例え話だ。「ビュリダンのロバ」とは空腹のロバが、左右2方向の分岐点に立っており、双方の道の先には干草がある。左右共に完全に同じ距離、同じ量。どちらに行っても干草を食べられる。
しかしロバはどちらの道も進まずに餓死してしまう。

意思決定時の迷いを象徴している例え話だ。

私もよくある。空腹でコンビニに行きすぐ食べられるものを選択しようとするが選べずにアパートまで戻りストックのインスタントラーメンを食べる(苦笑)

中国で仕事を始めた頃、ノキアのガラケーを使っていた。iPhoneが出た時にはApple教徒の私としては、ただちに買い換えるべきだという心の声を無視していた。4Sが出た時にようやく買い換えた。4Sが「For Steve Jobs」と読めたからだ(笑)その後長らく「For Steve Jobs」を使っていた。Steve没後SEが発売され待ちに待った「Steve Edition」だと飛びついた。その後のモデルチェンジには心動かず、SE2に僅かに心が揺れたが、いまだにSEを使っている。

私もビュリダンのロバ同様に選択できずに餓死するのかもしれない。
二者択一でも悩むのだから、多くの選択肢から選ぶ場合はもっと困難かも知れない。
そういう場合は子供の頃を思い出して「どれにしようかな天の神様の言う通り」とでも唱える事にしようか(笑)


このコラムは、2022年1月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1245号号に掲載した記事です。

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ポカミス

 香港、華南地区で発行されている月刊ビジネス誌「華南マンスリー」に連載コラム「四文字熟語に学ぶ 儲かる工場の作り方」を書かせていただいている。
10月号には「ポカよけ」について書いた。

時々熱心な読者様からメールをいただく。今回はこんなメールをいただいた。

はじめまして
毎月華南マンスリーを読ませていただいてます。
私は7年前から中国での技術指導のため赴任生活をしているものです。
10月号記事で日ごろ中国人との会話のなかで気にしていた熟語について記述がありましたので今後の教育に活用できないかとさっそくメールさせていただきました。
ポカミスは日本語では「ポカンとしているときに間違った作業をしてしまうとか見逃してしまう」あるいは難しい表現では「緊張が途切れるときのミス」の総称と理解しています。
緊張が途切れる(ポカンとする)のは誰でもありうる。ということを注意させるためにあえて幼児もでもわかるポカンという言葉を使っていることに意味があると思います。
そういう意味で和訳にある「物事に対する関心がなければ、いつも見ているものが見えていないのと同じである」 は意味が通じても本来の目的が十分伝わらないような気がしますが、それまで含んだ表現は他にありませんでしょうか?
残念ながらこれからも”ポカミス”は頻繁に使用せねばならないのでぜひ良いご指導をお願いしたいと思います。

中国の工場で「ポカミス」を何とか減らそうとご苦労されているようだ。
我々日本人にとっては「ポカミス」とか「ポカよけ」など短くてもそのニュアンスまで伝える便利な言葉があるが、これを中国人従業員に説明するのは大変だ。

「ホウレンソウ」(報告、連絡、相談)を中国の会社にも根付かせようと『報・連・相』という標語を作っておられるところも多いだろう。
しかしこれでは日本語の「ホウレンソウ」のニュアンスもインパクトも伝えられないだろう。ホウレンソウは賛成土壌では育ちません。という駄洒落も通じない(笑)

「ポカよけ」は中国語で言うときは『防呆』と訳せば通じる。
しかし「ポカミス」は一言でうまくいえる言葉は思いつかない。『発呆錯誤』といえば意味はあっているだろうが、いまいちニュアンスが伝わらない。

同じようにムダ・ムラ・ムリを一言で言う「ダラリ」も中国語でうまく伝えられない。一つずつ説明しても「ムラ」を『斑点』と通訳に訳されてしまったりする。
そこで「ムダ・ムラ・ムリ」を説明するために『無益・無均・無理』という中国語を考えた。ちょっと無理やり感があるが、ムラを『斑点』と訳されるよりはましだ

これらの言葉を中国中に広めるのならともかく、会社の中だけならば「ポカミス」「ダラリ」をそのまま教えてしまってはどうだろうか。

「KAIZEN」、「KEIRETSU」という言葉はすでにそのままでも世界中に通用する。
同じように「ポカミス」や「ダラリ」もそのままで通じるようにしてしまう。
初めはきちんと意味を伝えなければならないが、意味が理解できればあとはそのまま日本語で通す。

言葉はいってみれば「記号」なので、これでも問題はないだろう。


このコラムは、2009年9月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第118号に掲載した記事です。

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正論は暴力になりうる

 コロナ禍の閉塞感に感じたことはいくつもある。それらの共通点を見つけるとすると「正論は暴力になりうる」ということではなかろうか?
「自粛要請」という名を借りた飲食店の酒類提供自粛、夜間営業自粛これらの「要請」により売り上げ減少により経営破綻した人、収入をたたれた人、など多くの困窮者が出ただろう。また夜間働く人々は深夜食堂の営業自粛により、空腹難民となったことだろう。

「コロナの拡散防止」の正論のもとに科学的根拠の薄い要請は社会的暴力と言えるだろう。市民同士でも根拠のないデマが正論の元に拡散し暴力となる。

「〇〇すべき」もしくは「〇〇すべきでない」という文言には注意が必要だ。

これは社会問題だけではない。
我々の仕事の中にも、暴力とは言えないかも知れないが、根拠のない常識がまかり通っていることはないだろうか?

代々伝わっている「べからず集」の中には、陳腐化したまま厳守されているモノも有るだろう。これらを家訓の如く信じ込んでいると、時代の流れに取り残される。深刻な被害がなくともなますを吹いて食べる様な無駄に気がつかなくなる。

若者、よそ者、馬鹿者が世の中に変化を起こすというが、常識を超えた改革をもたらすのは、正論に立ち向かう勇者だろう。


このコラムは、2021年12月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1229号に掲載した記事です。

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温故知新

yuē:“wēnérzhīxīnwéishī。”

《论语》为政第二-11

素読文:

いわく、ふるきをたずねてあたらしきをれば、もっるべし。

解釈:

孔子曰く:“過去から学び新しい知見を得る、そのような姿勢を持てば師たりうる。”

新しい技術や学問に目が行きがちですが、それらは古い知見に支えられたものです。新しいものに飛びつくだけでなく、古い知見を基礎として持っていなければならない、と解釈しました。

事故は繰り返す・赤リン

パナがリコール、ドアホンが相次いで発煙 いまさら赤リンのなぜ

 問題なく使えていた自宅のインターホン。ところが、7~9年たったある日、突然、発煙する──。パナソニックが製造・販売するインターホン「テレビドアホン」の室内側モニター親機(以下、親機)の発煙トラブルが2019年9月
以降に相次いでいる。このうち、4件が火災認定事故となり、同社は21年12月1日にリコールの実施に踏み切った。

 対象は、「VL-MV18」「同20」「同25」の親機の3品番(セット品番では4品番)と、その修理用基板。合計で12万9792台をリコールする。製造期間は12年7月~12月。パナソニックは「製品内部の基板パターンの安全機構および基板
や筐体(きょうたい)に使用している難燃材料により、製品の温度上昇が収まる構造となっており、本体からの発火や拡大被害に至る危険性はないと判断」していると説明する。

日経クロステックより

赤リンによる発煙、火災事件は昔から繰り返している。
参考:トラブルは繰り返す

過去にTV受像機のフライバックトランスからの発煙・発火事故が多発。
フライバックトランスの絶縁樹脂の難燃材料を赤リンからブロム(臭素)に切り替えた。これでTV受像器の発煙・発火事故は激減。
しかし環境問題に対応するRoHS指令によりブロムが使えなくなる。材料メーカは赤リンの耐湿性あげることで、難燃材料・赤リンを復活させる。

しかしその後、ハードディスク装置からの発煙事故が多発。原因は赤リンだ。
フィライバックトランスの様に高電圧25kVがかかっているわけではないが、ハードディスクドライブ制御IC内部のパターン間隔はμmを切っている。電圧が低くともパターン間の電界は高いだろう。
耐湿性向上に限界があるのか、耐湿性に寿命があるのかわからないが事故は発生し続けている。

部品内にある臭素を回収する方法を開発するのが次善の策かもしれない。


このコラムは、2021年12月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1228号に掲載した記事です。

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