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怒ると叱る

 怒ると叱るは似ている様だが、全く違う。
しかし、叱られたことを「怒られた」と言ったり、混乱している面もある。今週は怒る」と「叱る」の違いについて考えてみたい。

「怒る」とは、相手の行動がこちらの期待を下回った時に失望と共に発露する感情。
「叱る」とは、相手の行動がこちらの期待を下回った時に愛情と共に成長を促す行動。

と定義してみたが、いかがだろうか。

この定義に従って考えると「怒る」はたんなる感情の発露であり、生産的な効果は何もない。

「怒る」の特徴は以下の様になる。

  • 過去の行動が怒りの対象となる。
  • 本来、今の行動を指導しなければならないのに、怒りの感情を発露すると、「あの時」こうだった、ああだったと過去の失望が次々と出て来る。こちらの期待が合意されていないため怒りとなる場合が多い。
  • 人格的な否定になり易い。
  • 「積極性が足りない」「協調性が無い」と怒られても何をどう直せば良いか分からない。
  • 相手は反発感を持つだけ。
  • 怒られた相手は、怒りの感情を受け取っただけであり、どうすれば良いか分からないだけでなく、反発心を持つ。
  • 一方「叱る」は次の様な特徴がある。

  • 未来の成長が対象となる。
  • 叱る目的は、好ましくない行動を好ましい行動に変容するために指導する事なので、相手の成長が対象となる。こちらの期待が理解されていない場合は、期待の合意・共有の指導となる。
  • 行動や考え方の指導になる。
     人格が指導の対象ではなく、行動やそれの元になる考え方の指導となる。
  • 指導の成果は相手の成長と感謝。
     愛情を持って叱れば、反発ではなく感謝される。きついことを言っても、 言葉だけに反応しない様に、日頃の関係構築が重要。
  • 日本人は喜怒哀楽を表に出さない人が多い。たまには怒ったり喜んだりを少しオーバーに表現しても良いと思う。
    以前現場で指導する時に、先に怒ってから指導することがあった。中国語がヘタなので、叱っているのが伝わらない事があった(苦笑)そのためまず怒っておいて、これから指導が始まると認識させようとした。

    「怒る」と「叱る」の違いを意識して部下の指導をするだけで、効果が変わる。
    ぜひ意識してみていただきたい。


    このコラムは、2022年4月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第419号に掲載した記事です。

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    子供をやる気にさせる4つのスイッチ

     たまたま幼児教育で有名な横峯吉文氏のこんな文章を見つけた。

    子供をやる気にさせる4つのスイッチ

    • 子供達は競争することが好き
    • 子供は真似したがる
    • 子供はちょっとだけ難しいことをやりたがる
    • 子供は認められたがる

    この「子供」という文字を「従業員」に置き換えても通用しないだろうか。
    特に若手中国人従業員に良く当てはまる。

    今様の日本の若者と違って、中国の若者は自分の気持ちを真直ぐ見せることを
    「恥ずかしい」とも「ダサい」とも思っていない。
    中国の若者を子供っぽいと言っているわけではない。
    素直であり、自己成長意欲に対して正直なだけである。

    中国の若者をやる気にさせる4つのスイッチ

    • 中国の若者たちは競争することが好き
    • 中国の若者は真似をしたがる
    • 中国の若者はちょっとだけ難しいことをやりたがる
    • 中国の若者は認められたがる

    「あ~、あいつ等ときたら」と溜息をついていないで、良い面を凝視してそこを利用して成長を即せば良いのだ。
    信じてやる、期待をかけてやる、そうすれば必ず応えてくれるものだ。


    このコラムは、2010年2月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第139号に掲載した記事です。

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    天才と凡才

     人の能力は三段階に分かれるという。

    • 言語化されていなくてもできてしまう
    • 言語化され教えて貰えばできる
    • 言語化され教えてもらってもできない

    ※出展を忘れてしまったが「ラクをしないと成果は出ない」日垣隆著だと思う。

    1が天才、2が凡才(凡庸な人ではなく普通の人)3は愚才という分類で良かろう。

    天才は何でも楽々できてしまう人ではない(と凡人の私は想像する)。
    他人がうまくできていることを言葉を通さず理解できる。それを努力を通して自分のものにできる人を天才というのだろう。つまり暗黙知をそのまま理解し体現できる人。

    人から教えられることは言語化され形式知となった事柄だ。形式知を与えれば努力を通して自分の能力とできる。このレベルが凡才となる。凡才は天才よりランクが一つ下がるように思えるが、必ずしもそうではない(と凡才の私は思慮する)。
    なぜならば、天才は暗黙知をそのまま自分の暗黙知としてしまうため、他人に教えることができない。一方凡才は暗黙知→言語化のプロセスで形式知化しているので他人教えることができる。例えば超一流のスポーツ選手が超一流のコーチにはならないのと同じだ。

    稀に天才で教え上手がいるかもしれないが、我々凡才が天才に勝るところは後進を育成するとことにある(と凡才の私は確信する)。

    凡才万歳である。

    こちら↓もどうぞ
    「天才と凡人の違い」


    このコラムは、2021年1月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1085号に掲載した記事です。

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    ハイハイ覚える赤ちゃん型ロボ 阪大が開発

     「ハイハイ」や「伝い歩き」の仕方を試行錯誤しながら自分で学ぶ赤ちゃん型ロボットを大阪大の浅田稔、石黒浩両教授らの研究チームが開発し、3日発表した。人が体の動かし方を身につけるメカニズムの解明に役立つほか、より人間に近いヒト型ロボットの開発につなげる。

     ロボットは高さ約50センチ、重さ3。5キロで、新生児とほぼ同じサイズ。人と同じように関節が動き、視覚や聴覚となるカメラやマイクのほか、触れた感覚がわかるように全身に約90個のセンサーなどを付けた。

     歩き方をあらかじめ教えるのではなく、学習機能だけをプログラムしてある。例えば、ロボットに「前に動きたい」という欲求を与えると、体をでたらめに動かす中から前に動ける方法を探しだし、ハイハイなどの動きができるようになる。ほかに、寝返りやつかまり立ち、伝い歩きなどの仕方を体得することができるという。

    (NIKKEI NETより)

     実に面白いことを考える人がいるものだと感心した。
    プログラミングした学習機能によって、ロボットは人より早く歩けるようになるだろう。
    この様な実験の過程で、人がどのように体を動かすことを学習するのかが分かれば、ロボットの開発だけではなく他にも応用が出来そうだ。

    人は学習機能も進化・成長するはずだ。
    このメカニズムが判明すれば、ロボットに成長要求だけをプログラミングしておけば、一週間位すれば自分で歩行したり話したりすることが出来るようになるのではないだろうか?

    歩行ロボットを作るのならば、初めから歩行方法をプログラミングした方が早い。学習機能により歩行させるアプローチを考え付く発想が面白い。

    これを部下の成長に当てはめて考えたらどうなるだろうか?
    部下にプログラミングを施すことによって、作業をすることは可能になる。
    しかしこれでは応用や自分から進化・成長することは無いだろう。作業は出来ても仕事は出来ない。

    仕事をする意義や喜びをプログラミングすることにより、自ら作業を習得するように仕向ける。多少効率が悪くても、この方が高いパフォーマンスを発揮するだろう。そして自ら進化・成長する意欲を持つことが出来る。


    このコラムは、2010年3月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第143号に掲載した記事です。

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    人財の育成

    先週の記事「工場見学会」にメルマガ読者Z様からこんなメールをいただいた。

    今週の雑感も、まったくその通りです。以前僕は中国で和服の縫製指導をしている女性から、「ものづくりを突き詰めていくと、結局は人づくりに辿り着く。だから私は、目指せ人事部長なのよ。」と聞かされたことがあります。また人材も設備と同じように広義のハードです。ソフトは買ってくることは出来ないのですね。それは美しい草木も、それにあった気候風土の中でなければ枯れてしまうのと同じですよね。
    これは林様の工場指導そのものですよね。つまり、工場の改善方法を指導するのではなく、改善方法を自ら生み出せる体質への転換を指導するということです。本当に素晴らしいことです。

    あまり褒めすぎなので、ちょっと居心地が悪い。おっしゃることはその通りだと思う。品質改善も生産性改善も最後は人だ。

    人は学ぶ能力、努力する能力を持っている。これをきちんと引き出してあげるのが指導者の役割だ。
    機械や設備は買ってきたその日から減価償却が始まり価値が下がる。しかし人は適切な指導をすれば雇ったその日から成長し価値が上がる。


    このコラムは、2009年1月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第78号に掲載した記事です。

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    工場見学会

     先週私の工場経営の師匠からこんなメールが届いた。

    昨日シンセン市内の現地系の某大手電子企業の幹部20名の訪問がありました。6時間の受入れ応対は全て弊社幹部で行った訳ですが、訪問直後の挨拶席上で弊社の人事部長が冒頭、

    『皆さんの訪問を歓迎します!。・・・しかし、その前に皆さんにお聞きしたい事があります。
    今日皆さん方がこの工場に来られた目的は見学ですか?、それとも遊覧ですか?』
    と突然切り出したのです。
    相手側の董事長が『当然見学です!』と答えるのに対して、
    『皆さんの中で、今、記述ノートか手帳を何人が持っていますか?。私が見る限り20名中3名です。見学に来るのに記述する手帳も持たず手ぶらで来るような姿勢が古い中国の管理者の姿勢です。
    又、皆さんの会社は製品を造る工場で、しかも今日は休日では無いと先程あの方に伺いました。
    ・・・なのに、今皆さんは私服でバラバラの服装身なりをされている。
    皆さんの身なりと記述本も持たないその姿勢が、今のあなた方の悩みや問題を生み出しているのではないのでしょうか!?』

    と話したのです。(もちろん、相手は董事長・総経理以下全員がこれを素直に受入れ、帰り際には『可能ならここの社員を出来るだけ多く受入れ、うちの会社の体質を大幅に変えたい』という中国的発言まで出てました(笑)。

    大変すばらしい話で感動した。
    ここに出てくる人事部長さんは若い中国人だ。
    中国大手の会社から来られたおそらく年長者の董事長、総経理に対してまるで講義を受けに来た学生を叱るように諭される。なかなかできることではない。

    このような中国人幹部を育てられた、正しく言えばこのような中国人幹部が育つ仕組みと仕掛けを作られた師匠の偉業に大変感心をした。

    ちなみに私は勤め人時代に、日系のお客様の納期対応クレームに謝罪に行く際生産委託先の工場長(台湾人)を連れて行った事がある。お客様のローカルスタッフは彼の名刺にある職位を見てやけに腰が低かった。こちらはお詫びに訪問しているにもかかわらず、対応がすごく丁寧だった。

    人を見ず職位を見ているのだ。それ以降もこういう人種が多いと感じてる。これは日本も同じかもしれない。

    しかも董事長、総経理ともにそれを素直に受け入れたという点がすごい。面子を重視する人達が、訪問先の若い部長さんにガツンとやられたら怒り出すはずだ。それをすんなり受け入れさせたというのは、その部長さんの人格力だ。

    「可能ならここの社員を出来るだけ多く受入れ、うちの会社の体質を大幅に変えたい」という当事長さんのコメントは笑うに笑えない。

    企業の最強の競争力源泉は、このような経営幹部が育つ仕組みと仕掛け、企業文化そのものだ。よそから優秀な人材を受け入れることではない。


    このコラムは、2009年1月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第77号に掲載した記事です。

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    ディズニー流人材育成

     人ごみが嫌いな自分は、東京ディズニーランドに行った事はない。
    しかし、随分昔から東京ディズニーランドには興味を持っている。
    そのきっかけは、週末の夕刻に放送していたFM番組でTDL設立のエピソードを聞いたことだった。

    米国ディズニーランド本社役員に、TDL開業のプレゼンテーションをした時の逸話が実に面白かった。

    • 本社役員たちは、リスク分散のため出張時には同じ飛行機に乗らない。
    • 浦安の建設予定地を案内する時に使ったトリック。
    • 役員たちの好みを事前調査し、徹底的にもてなした。
    • プレゼンテーションとはこう有るべきだと、当時大いに啓発を受けた。
      (このテーマに関しては、後日機会があれば…)

      その後、海外の生産委託先を指導するようになって、委託先工場とTDLの類似点に気が付き、TDLのマネジメントを調べてきた。

      その共通点は、

      • TDLでは、マニュアルによってアルバイト職員がゲストに感動を与えている。
      • 工場では、作業指導書によって出稼ぎ労働者が製品に付加価値をつけている。

      どちらも、長くて3年ほどしか働かない職員を、戦力として活用している。
      しかし一方は、アルバイト職員がゲストに感動を与え続け、リピート顧客が98%もある。他方は、作業員の管理がうまくゆかず四苦八苦している。

      TDLに集まるアルバイトが皆優秀かと言うとそうではない。
      毎年9千人のアルバイトが入れ替わる。優秀な人材を選別している余裕はない。
      「素質は問わない」採用しか出来ない。
      工場と同様だ。

      秘訣はTDL内の人材育成システムにあるはずだ。

      TDLでは、アルバイトをトレーナー(アルバイト)が指導する。
      工場では、作業員を班長(元作業員)が指導する。

      顧客に価値を提供している職員(感動、製品の加工)を直接指導しているトレーナー、班長を育成することが重要となる。

      TDLのリーダー育成システムを、工場に応用できたら、すばらしい工場になるはずだ。そんな思いで、手当たりしだいにTDL関連の書籍を読み、セミナーに出席し、元TDLの職員(しかもディズニーインスティチュート職員)に会いに行き話を聞く。そんなことをしてきた。

      最近読んだ
      「9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方」
      はお勧めだ。

      初版が出て1年経つが、未だに売れ続け版を重ねているようだ。
      私は5月の連休に帰国した折、ショッピングセンター内の書店で見つけ、家内の買い物を待っている間に一気に読んでしまった(笑)


      このコラムは、2011年11月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第231号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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    班長マニュアル

     先週は「職位が人を育てる」というテーマで記事を書かせていただいた。
    しかし勘違いをしてはいけない。職位を与えておけば自動的に人が育つわけではない。モチベーションを与えて、教育訓練をしなければ人は育たない。

    作業者の中から少し優秀な者を班長に抜擢する。
    これはどこの工場でも良くやっている。しかしきちんと教育訓練ができているところは少ないように思う。
    このような状態で、元作業者の班長がめきめき力をつけて立派な現場リーダに育つというのは、ほとんど奇跡といってよいだろう。

    作業者のためのマニュアル(作業指導書)はほとんどの会社で作っている。しかし班長のためのマニュアルがある工場はあまり見たことがない。

    以前このメルマガで紹介したことがあるが、ある工場(台湾資本の中国工場)でこんな光景を見たことがある。

    作業現場の掲示板に、A4の紙に「私は注意して作業します」と何度も何度も書いてあるものが、作業者の署名入りで掲示してあった。
    事情を聞くと、班長が作業不良を多発する作業者に書かせたものだという。

    たぶん班長は、作業者に作業不良を発生させないようにどう指導してよいか分からずに、昔学校で教師から受けた「罰」を思い出して同じことをしてみたのだろう。

    苦笑するとともに、この班長が不憫に思えた。
    この班長は会社からも上司からも何も教えてもらっていないのだろう。

    班長に昇進したといっても、他の作業者と同じように農村で中学を出てすぐに出稼ぎに出てきた女工さんなのだ。その彼女たちに何も教えないで仕事をさせる方が間違っている。

    作業者に作業指導書があるのと同じように、班長が仕事の指針とできるマニュアルが必要だ。そしてそのマニュアルを使いきちんと教育をする。時々現場でフォローをしてやることによりOJTをする。

    実はある工場のためにそのようなマニュアルを作ってみた。
    「現場リーダのためのQAマニュアル」というタイトルだ。
    書くそばから項目を追加したくなりほぼ毎日改訂している(笑)


    このコラムは、2009年11月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第128号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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    サービス業の業務標準化

     中国では、稲盛和夫氏の経営哲学を学ぶ者が多い様だ。書店に行くと、稲盛氏の著書が平積みされている。中国の盛和塾活動も盛んであり、勉強会や、セミナーの案内が良く来る。

    去年成都で、稲盛氏をお呼びして大々的な盛和塾塾生の大会があった。
    この様子はテレビ東京の「未来世紀ジパング」で紹介されたので、ご存知の方も多かろう。会場に到着した稲盛氏はまるでアイドルスターのようだった(笑)

    その番組では、稲盛経営哲学を実践する中国人経営者として、不動産業経営者と深センで美容院経営者の二人が紹介されていた。

    以前東莞にある京セラ中国工場に勤める若い中国人から、社内文化につい話を聞いて感服したことがある。

    番組で紹介された2人の中国人経営者は直接稲盛氏とつながりがなく、しかも製造業ではない組織で、稲盛経営哲学がどのように企業文化に取り入れられているのかものすごく興味を持った。

    そこで番組で紹介された、経営者の名前と深センの美容院の名前を手がかりに、連絡先を突き止め、訪問のアポをいただき先週末に会って来た。

    2時間の予定で、社長室に経営幹部二人が同席していただき、色々話を伺った。
    時間が足りなくなり、そのまま社長室で昼食をしながら話を聞き、午後はテレビ東京が取材に来たと言う店舗に案内してもらい、現場も拝見した。

    美容院と言うと、我々日本人は「髪結い」を想像するが、いわゆるSPAと言うエステサロンの様なモノだ。(SPAもエステも行った事がないので正しいかどうかは分からないが)

    彼らのビジネスでもっとも重要な資源は、人でありその能力をどう高めるかが課題と理解している様だ。本社には、研修用の学校も併設してある。その他にも施術能力を高めるための制度を設けている。

    その施術の流れも、技術も標準化してあるが、そのレベルをもっと高めたい、と言うのが経営者・経営幹部が考えている課題だ。
    製造業は、工程フローや作業手順の標準化や教育訓練方式に関して長い経験と実績を持っている。
    しかし私が彼らに伝えたのは、標準化の方法ではなく、如何に標準を越えるかと言う話をした。

    標準化の目的は、下側のレベルを合わせる事だ。つまり誰がやっても、最低限のレベルを保証するに過ぎない。
    モノ造りの現場に居る作業者であれば、それで問題はない。一人ひとりが作業標準を守れば、QCDを保証出来る様にシステム化する事が可能だ。それにより、顧客満足を達成することができる。

    ここで言う顧客満足は、「顧客要求を理解しそれに過不足なく答える」と言う意味だ。しかしサービス業が目指すゴールは「顧客満足」ではない。
    サービス業が目指すべきゴールは「顧客感動」だ。
    顧客感動によってお客様は「信者」になり儲かるのだ。「儲」の字を良く見ていただければ理解出来るだろう(笑)信者になればリーピート顧客になる。

    従って彼らに必要なのは、標準化の上に作るべき「感動共有のしかけ」とでも呼ぶモノだ。つまり最低限のレベルは保証しなければならないが、その上で現場の従業員がお客様に感動を与える事を競い合う様な環境を作る事だ。

    サービス業は、人の質が直接サービスの質を決定する。
    私自身も製造業の質を上げるためにサービス業の仕組みを勉強した。
    特にディズニーランドの手法は、アルバイト職員が90%であり年間離職率が50%に達する条件で素晴らしい業績を上げている。出稼ぎ労働者を採用し工場経営している経営者に大変参考になるはずだ。

    「9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方」

    そして、稲盛経営哲学を実践しようとしている中国人の若手経営者に製造業のノウハウを伝えることは異業種間の大きな交流の流れになるだろう。


    このコラムは、2014年3月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第355号に掲載した記事に加筆しました。

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    自律型人財

    自律型人財とは

    • 自分でやることを決められる人財
    • 決めたことを実践できる人財
    • 仲間を巻き込みチームとして働くことができる人財

    という定義で考えてみた。

    自律型人財を社内に育成できれば、まずは業務効率が上がるはずだ。
    つまり指示をしなくても、組織の目的、方針、目標から自らの役割、仕事を決定する能力がある。
    そしてそれを実践する能力があり、定型業務を担う人材を巻き込んで成果を上げることができる。従って自律型人財のn倍の成果を上げるはずだ。

    その能力をさらにブレイクダウンすると、組織の方針・目標から解決課題を列挙し、優先順位を決定。現状を把握し課題解決の達成目標を設定。
    仲間を巻き込んで課題達成を阻害している原因を解明、原因を除去する対策、直接課題達成する方法を検討。この過程を巻き込んだメンバーと一緒に実施。目標を達成するまで、改善を繰り返す。

    この様な活動を通して、巻き込んだメンバーの能力を上げ、定型業務人材を自律型人財に変換していく。定型業務人材は、この過程で自己成長・問題解決の達成感を得て定型業務人材から自律型人財に成長する。

    この様な正帰還が働くと組織の力はあっという間に増強されるはずだ。

    私たちが実践しているQCC道場は自律型人間を増やし、組織力を上げるのを目的としている。


    このコラムは、2021年8月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1182号に掲載した記事です。

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