タグ別アーカイブ: 人財

信じる力

 私は心配症だ。
品質保証の仕事をしていると、心配し続けることになる。一種の職業病だろう。

例えば、
作業台の上で不良品が製品に混じったらどうしよう。
倉庫の中で、違う部品が混じったらどうしよう。
運搬中に製品が荷崩れしたらどうしよう。
こんなことをいつも心配しているから、不具合を未然に防げるのだと思う。

自分自身の事はあまり心配していない。きっとうまく行くといつも考えているからだ(笑)
今月の売り上げが少ないと心配することはあるが、たいてい次の日には忘れている。独立してここまでやって来れたのは、自分の事を心配しないからだろう。

部下も同様だ。
部下を信じていれば、きっと出来る。
信じる力が足りないと、仕事を任せることが出来ない。仕事を任せなければ部下の成長はない。部下のことを心配していると、うまく行かない。

部下は信じて用いる。心配しないで部下に仕事を任せる。
信じてもらえれば、それに応えようとする。その結果成長する。

部下を信用すれば、部下は信頼と感謝を返してくれる。
信用とは、信じて任せるが、責任は自分で取ると覚悟を決めること。
部下を信じるということは、自分自身を信じることだ。


このコラムは、2012年6月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第261号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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マンパワーとマンパフォーマンス

 先週は「マンパワー」に対して「マンパフォーマンス」と言う概念を書いてみた。今週はマンパワーとマンパフォーマンスの違いについて考えてみたい。

先週のコラム「中国のマンパワー」

ヒトの力を「工数」として測定するマンパワーの考え方をしていると、本当のヒトの力が分からないと考えている。

ヒトそれぞれの個性に着目してマンパフォーマンスという見方をしなければ本当のヒトの力は分からないだろう。

機械や設備のパフォーマンス(性能)はヒトより優れている面が多い。ヒトより早く、ばらつきなく作業をする事が出来る。きちんとしたメンテナンスと動力さえあれば疲労することはない。

しかし機械は忙しいから頑張って作業効率を上げようとは考えない。自ら成長することもない。

ヒトと機械の違いははここだと思う。
ヒトは頑張るというココロがある。仕事を通して成長する事が出来る。
しかし同時にサボるココロもあり、意欲がわかなければ成長もしない。

「頑張っても同じ給料だ」という考え方を持っていればマンパワーにしかならない。従ってマンパフォーマンスを引き出すためには正しい動機付けをする必要がある。

機械設備は購入したその日から減価償却が始まり価値が下がる。
ヒトは正しく教育をすれば雇用したその日から価値が上がる。


このコラムは、2009年3月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第91号に掲載したコラムを改題、加筆したものです。

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中国のマンパワー

 中国の力はなんと言っても13億のマンパワーだと思う。

改革開放政策を取り安価な労働力を武器に海外の製造業をひきつけた。
ほんの数年前まで内陸部から出てくる女工さんは無限の資源のように思えた。残業にも過酷な労働条件にも耐える安価で優秀な作業者が毎年農村地帯から次々と出稼ぎに出てくる。

そういう作業者が工場の門のところに従業員募集の紙を貼り出すだけで、何百人も集まったこともある。設備を導入するよりは作業員を雇ったほうが安くつく、と考えていた企業も多いはずだ。

しかしここ数年で急速に様子が変わってきた。
毎年十数%ずつ最低賃金が上がっている。内陸部の発展も進んでおり、沿岸地区での作業員集めは楽ではなくなってきた。

しかし中国に対する魅力は依然13億のマンパワーだ。
北京オリンピックのセレモニーを覚えている方も多いだろう。圧倒的な人数のショーは象徴的だった。

安価な労働力というマンパワーから、豊かになりつつある市場というマンパワーが中国の魅力になりつつある。中国の富裕層がたった1%しかなかったとしても、日本の市場よりは大きいはずだ。

しかし我々製造業にとっては、マンパワーという考え方からマンパフォーマンスという考え方に切り替えて行かねばなるまい。

次週「マンパワー」と「マンパフォーマンス」について考えてみたい。


このコラムは、2009年3月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第90号に掲載した記事に加筆したものです。

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部下の素質

 部下の好ましい素質とは何か?そんな事を考えてみたい。

学歴や経験を重視する方もある。知り合いの日本人経営者は、中国人幹部職員は大学卒の学歴が必要と言っておられた。彼は学生生活で学んだ知識より、思考能力を重視しておられる。
別の台湾人経営者は経験を重視していた。台湾人経営者にはこの傾向が強い様に感じる。しかもピンポイントの経験を重視するので、同業者からの引き抜きや転職が多い。

ある日系企業の中国人副総経理と面談した事がある。話し方、立ち居振る舞いから知的な印象を受け、素質の高い人だと言う印象を受けた。面談後に彼女は作業者から抜擢され副総経理にまで昇格した人だと教えられた。
学歴も経験も無いところから力を身につけて昇格して来たのだろう。

こういう人に出会うとうれしくなる。なぜならば、私は部下の素質は学歴とか経験ではなく、別のところにあると考えているからだ。どんな素質かと言うと、はたと困ってしまう(笑)言葉にするとなんだか陳腐に思えるが、とりあえず「情熱」と言っておきたい。

昔指導していた台資工場で品証部門のQE(品質エンジニア)グループのリーダをしていた男の例で説明したい。QEグループの主な仕事は顧客クレーム対応だ。

当時、日系中国工場に納入する製品の工程内直行率が長らく1.6%前後で推移しており、なかなか1%を割る事ができなかった。顧客企業は、工程内直行率が1%を割るまでは生産のたびに検査員を派遣して、最終工程で全数再検査をする事になっていた。しかも顧客日本本社の品質指導者まで何度も出張に来ていた。そんな状態が1年以上続いており、プロジェクトチームを作って改善する事になった。

プロジェクトチームには、製造、生産技術、品証の各部門からリーダクラスを参加させた。生産のある日は、チームのメンバーは現場に張り付き、毎日生産終了後に当日発生した不良の原因と対策を検討した。

この活動の中で、いろいろな作業が発生する。
その作業の担当者を決める時に、メンバー全員にこの仕事は誰がやる?と質問する様にしていた。メンバーの中で「それは僕の仕事です」と答えるのはQEリーダだけだった。率先して手を挙げる者がいない時は「これは製造の仕事じゃないの?」と誘導する必要があったが、彼だけは別だった。
どの部門に属する仕事か曖昧な場合は「僕にやらせてください」と言える男であった。

彼以外のメンバーは自分の仕事の範囲を制限し、それは自分の仕事ではないと考える。「これ君やってみない?」と振ってみると、労働契約の規定まで持ち出し、それをやるなら給料も改定してもらいたい、とまで言う者までいた。

こういう人たちは、自分の仕事の範囲を制限する事により、経験のチャンスを捨てているとしか考えられない。自分に与えられた役割を、パフォーマンスよくこなす事で評価を得ようと言うつもりなのだろう。しかしこれでは、いつまで経ってもリーダのままだ。一つ上の仕事にチャレンジするから、経験値が増え、能力が増す。その結果職位も給料も上がる。

部下の一番重要な素質は、これ誰がやる?と言う上司の問いに、0.5秒で手をあげる事だと考えている。その結果仕事の範囲が広がり、経験、能力が身に付く。これを「情熱」と言う言葉にまとめてしまうと通じないかもしれない。
しかしこういう期待をきちんと部下に伝える事が重要だと考えている。


このコラムは、2015年11月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第448号に掲載した記事に加筆したものです。

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人の心を計る

 人の心の状態はどう計ったら良いのだろうか?
私は、こういうテーマについて色々考える事が多い。

会社の業績は、従業員の仕事の成果によるモノだ。その成果は、従業員一人ひとりのモチベーションに大きく左右される。従って、どうすれば従業員のモチベーションを高められるかを、考えることになる。考えた結果を試してみる。それがうまくいっているのかどうかを計測し、更に改善する。

そのため、モチベーションの高い低いを計測する事が必要になる。普通の物理量であれば簡単に測定出来る。ノギス、ストップウォッチ、電圧計など測定器具が有る。しかしモチベーションの高低は、物理量とは言い難い。人の心の状態を測定するのはそうは簡単ではない。

最近の脳科学は核磁気共鳴MRIにより「観測・測定」が可能になり、格段に進歩したと聞く。しかし我々が、そんな高価な測定装置を使う事は出来ない。

ではどうすれば良いか。
私はこんなアプローチで考えている。
モチベーションを上げて得たい結果は何か?この結果で計測するのが一番だ。モチベーションを上げた結果、作業効率を上げたいのであれば、作業効率を計測すると言う事だ。

モチベーションとその結果(作業効率)に強い相関が有れば、こういう考え方で良かろう。しかし相関が弱い場合は、モチベーション向上施策と効果の関係が曖昧になる。

例えば、モチベーションと離職率の間に相関があるのは確かだろう。しかし相関の強弱は良く分からない。
福利に対する満足度が離職率との相関が強い場合もあり得る。この場合は、モチベーションを測定するよりは満足度を測定しなければならない。

実際には、離職する人の心理にはモチベーションも福利に対する満足度も影響を与えているはずだ。そうは単純に人の心を測定出来ない。

こういう場合は、離職を考えている人はどういう行動をとるか、を考える。例えば、離職を考えている人は職場内でコミュニケーションが少なくなる。と言う傾向が観察されるとすれば、コミュニケーションの量を測定すれば、離職者の予測が出来る様になる。

行動は、物理量で測定可能だ。上述の例で言えば、報告の頻度、同僚や関係者に対するE-mailの回数、分量などで計測可能となる。

つまり人の心の状態は、行動に置き換えれば測定が可能になる。

責任感が有る、リーダシップがある、積極性が有るなど従業員として好ましい状態だが、全て心の状態だ。公平な測定(評価)が難しい。これも全て行動に置き換えることにより、測定することができるはずだ。


このコラムは、2014年5月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第361号に掲載した記事に加筆したものです。

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