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ヒトの力

 ヒトの力を「工数」として測定するマンパワーの考え方をしていると,本当のヒトの力が分からないと考えている.

ヒトそれぞれの個性に着目してマンパフォーマンスという見方をしなければ本当のヒトの力は分からないだろう.

機械や設備のパフォーマンス(性能)はヒトより優れている面が多い.
ヒトより早く,ばらつきなく作業をする事が出来る.
きちんとしたメンテナンスと動力さえあれば疲労することはない.

しかし機械には忙しいから頑張って作業効率を上げようとは考えない.自ら成長することもない.

ヒトと機械の違いははここだと思う.
ヒトは頑張るというココロがある.仕事を通して成長する事が出来る.
しかし同時にサボるココロもあり,意欲がわかなければ成長もしない.

「頑張っても同じ給料だ」という考え方を持っていればマンパワーにしかならない.従ってマンパフォーマンスを引き出すためには正しい動機付けをする必要がある.

機械設備は購入したその日から減価償却が始まり価値が下がる.
ヒトは正しく教育をすれば雇用したその日から価値が上がる.


このコラムは、2009年3月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第91号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

マンパワーよりマンパフォーマンス

 中国の力はなんと言っても13億のマンパワーだと思う.

改革開放政策を取り安価な労働力を武器に海外の製造業をひきつけた.
ほんの数年前まで内陸部から出てくる女工さんは無限の資源のように思えた.残業にも過酷な労働条件にも耐える安価で優秀な作業者が毎年農村地帯から次々と出稼ぎに出てくる.

そういう作業者が工場の門のところに従業員募集の紙を貼り出すだけで,何百人も集まったこともある.設備を導入するよりは作業員を雇ったほうが安くつく,と考えていた企業も多いはずだ.

しかしここ数年で急速に様子が変わってきた.
毎年十数%ずつ最低賃金が上がっている.内陸部の発展も進んでおり,沿岸地区での作業員集めは楽ではなくなってきた.

しかし中国に対する魅力は依然13億のマンパワーだ.
北京オリンピックのセレモニーを覚えている方も多いだろう.圧倒的な人数のショーは象徴的だった.

安価な労働力というマンパワーから,豊かになりつつある市場というマンパワーが中国の魅力になりつつある.中国の富裕層がたった1%しかなかったとしても,日本の市場よりは大きいはずだ.

しかし我々製造業にとっては,マンパワーという考え方からマンパフォーマンスという考え方に切り替えて行かねばなるまい.

マンパフォーマンスを引き出すための教育訓練,機械化がより重要になってきていると考えている.


このコラムは、2009年3月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第90号に掲載した記事です。

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マルチカラーの時代

 山根一眞さんの「メタルカラーの時代」をもじって「マルチカラーの時代」というテーマを考えてみた.

中国にも「ホワイトカラー」「ブルーカラー」という言葉はある.
それぞれ《白领族》《蓝领族》という。

中国の工場では作業者《蓝领族》と文員・技術者《白领族》がしっかりと分かれているところが多い.作業者から文員への登用の道を用意している会社もあるが,文員になると作業現場には入らなくなってしまう.
又大卒の人間に作業現場研修をさせようとすると辞めてしまう.工場勤務なので作業服を支給すると着るのを嫌がる.ということもあるようだ.《白领族》としての間違った誇りがそうさせるのだろう.

中国では毎年最低賃金が上昇しており,特に沿岸地区では安価な労務費を期待したローコスト生産は難しくなってきている.実際には最低賃金で求人をかけても作業者は集まらない.

これからは作業者一人一人の能力を高め,高品質・高付加価値の生産活動に移行してゆかなければ中国では生き残れないだろう.

この様な考える力を持った従業員に「マルチカラー」という名前をつけてみた中国語に訳すならば《彩领族》とでも言えばよいだろうか.単純に多能工を意味する言葉ではない.
《白领族》が《蓝领族》を管理するという構図ではなく,作業者も作業改善を考える.技術者も作業者と一緒になって作業する中で作業改善,工程改善を考える.この様な人たちを《彩领族》と呼びたい.

日本の製造業が力を持っていたのは,工場労働者が「マルチカラー」だったからだと考えている.

「痛くない注射針」を作れる町工場,砲丸投げの玉を世界中に輸出している町工場,こういう今でも力のある中小企業は経営者,従業員が全て「マルチカラー」なのだと思う.

中国の工場でも《彩领族》を次々と育て上げる仕組みと仕掛けを作り上げることが,競争優位に立つことになると考えている.


このコラムは、2008年2月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第19号に掲載した記事です。

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終身雇用

 トヨタ自動車・豊田社長は「今の日本(の労働環境)を見ていると雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と指摘し、「現状のままでは終身雇用の継続が難しい」と発言している。

この発言に対し河合薫さんはご自身のメルマガ「社会の窓」で、終身雇用は悪とするのは三流経営者だと酷評しておられる。

ところで終身雇用という制度は本当に存在したのだろうか?
昔は大店の番頭さんとか、武家の家臣などは終身雇用で働いていたように思う。しかし大部分の雇用は期間限定の「年季奉公」だったのではなかろうか?

現代にも本当に「終身雇用制度」はあるのだろうか?
少なくとも私が就職した折に、会社から雇用契約書を提示された記憶はない。ただ、「違法行為、または会社に著しい損失を与えた場合は解雇要件になる」という誓約書にはサインした。逆に考えれば、会社に迷惑をかけなければ定年まで働かせてもらえる、というお墨付きとも考えることは可能だ。しかし、終身雇用というのは「制度」ではなく「慣行」と言った方がよかろう。

もともと日本では「人は育てて使う」という考えの経営者が多かったと思う。
それが、バブル崩壊以降人材をリソース(資源)と考え、材料費と同じ変動費として考える経営が急増した。

本来の日本的経営は人財をキャピタル(資産)として扱ってきたはすだ。設備などの資産は減価償却によって価値はどんどん下がる。一方人財という資産は仕事の経験を通して価値はどんどん上がる。

このように発想すると、長期間雇用(終身雇用)が有利に働く。

しかしバブル崩壊後に企業の考え方が変わっただけでなく、労働者の考えも変わってしまった。就職氷河期と卒業年次が重なった若者は、非正規雇用に甘んじるしかなく、自らの資産価値は自ら磨かなければならなくなった。優秀な人財は1社でじっくり成長するより、手っ取り早く企業を渡り歩きキャリアを身につけようとするだろう。

このような労使両面の経緯で終身雇用慣行が少なくなっているように思う。

しかし中国の労働市場は、終身雇用とは無縁と考えた方が良い。優秀な人ほど自らの資産価値を上げるために転職していく。優秀な人財が流出し、そこそこの人材ばかりが滞留するようでは困るが、ある程度の流動性があった方が組織は活性化すると思うがいかがだろう?

豊田社長の発言は「トヨタはもう終身雇用慣行をやめる」と言っているのではなく「労働市場の変化により終身雇用慣行を維持できなくなっている」と言いたいのではないだろうか?
いずれにせよ、優秀な「トヨタマン」が日本の産業界に転職すれば、国益に資するはずだ。


このコラムは、2019年5月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第825号に掲載した記事に加筆修正しました。

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人財品質

 品質月間に合わせ「設計品質」「製造品質」について考えてみた。最後に「人財品質」について考えてみたい。「人の品質」という言葉は奇異な印象を与えるだろう。「人質」という言葉もしっくりしないかも知れない。
企業活動における人のバフォーマンス、とでも理解すれば良かろうか。この定義で人財品質を考えると次の様な式を思いつく。

企業業績=a×全従業員の人財品質の総和×b×その他の経営因子
人財品質=能力×意欲×cosθ

企業業績は全従業員の人財品質の総和と、経営因子(商品力、不景気・好景気などの経営経営で制御できる因、制御できない因子)の掛け算で求められるのではなかろうか。

人財品質は能力と意欲はかけ算と考えるのが妥当だろう。つまり能力が高くても意欲が0ならば、業績に貢献する事はない。逆も然り、意欲ばかりあっても能力がなければ業績貢献は低い。
θは角度を表す数値で、企業が目指す方向と個人の方向の差異をさす。
つまり企業が目指す方向と個人の仕事に対する方向性が一致すれば、θは0°、cosθは1(最大値)となる。この様な人が「人財」と呼ばれる。

企業の方向性と個人の方向性に差異があれば、cosθの値は小さくなり、90°でcosθは0となる。つまり業績に何ら貢献をしない。こういう人を「人在」という。いるだけという意味だ。

θが180°、すなわち企業の目指す方向と個人の方向性が逆向きの場合、cosθは-1となり、業績に負の貢献を与える事になる。こういう人を「人罪」という。業績に害を与える存在となる。

マネジメントの仕事は人を活用し業績を出す事、と考えれば、管理職は部下の能力と意欲を高め,組織に方針を徹底する事が仕事だ。

つまり業績が悪いのは部下のせいではなく、管理職のマネジメントの問題だ。

元々人財品質が高い、もしくは人財品質を高めやすい人はいる。こういう人を「素質」がある人、というのだろう。素質がある人を採用し、人財となる様に育成する事が管理職の仕事だ。

素質の高い人とはどういう人か。私は「3K人材」だと思っている。「3K職場」の「3K」ではない。
好奇心。
向上心。
貢献心。
の3K心を持っている人を素質が高い人だと考えている。

好奇心、向上心が高ければ、能力や意欲を高めやすい。貢献心があれば,方針に対するぶれ(θ)を小さく出来る。

人財品質の根源はこの「3K」だと思うのだがいかがだろう。

こちらもご参考に
設計品質
製造品質


このコラムは、2016年11月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第504号に掲載した記事に加筆しました。

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信じる力

 私は心配症だ。
品質保証の仕事をしていると、心配し続けることになる。一種の職業病だろう。

例えば、
作業台の上で不良品が製品に混じったらどうしよう。
倉庫の中で、違う部品が混じったらどうしよう。
運搬中に製品が荷崩れしたらどうしよう。
こんなことをいつも心配しているから、不具合を未然に防げるのだと思う。

自分自身の事はあまり心配していない。きっとうまく行くといつも考えているからだ(笑)
今月の売り上げが少ないと心配することはあるが、たいてい次の日には忘れている。独立してここまでやって来れたのは、自分の事を心配しないからだろう。

部下も同様だ。
部下を信じていれば、きっと出来る。
信じる力が足りないと、仕事を任せることが出来ない。仕事を任せなければ部下の成長はない。部下のことを心配していると、うまく行かない。

部下は信じて用いる。心配しないで部下に仕事を任せる。
信じてもらえれば、それに応えようとする。その結果成長する。

部下を信用すれば、部下は信頼と感謝を返してくれる。
信用とは、信じて任せるが、責任は自分で取ると覚悟を決めること。
部下を信じるということは、自分自身を信じることだ。


このコラムは、2012年6月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第261号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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マンパワーとマンパフォーマンス

 先週は「マンパワー」に対して「マンパフォーマンス」と言う概念を書いてみた。今週はマンパワーとマンパフォーマンスの違いについて考えてみたい。

先週のコラム「中国のマンパワー」

ヒトの力を「工数」として測定するマンパワーの考え方をしていると、本当のヒトの力が分からないと考えている。

ヒトそれぞれの個性に着目してマンパフォーマンスという見方をしなければ本当のヒトの力は分からないだろう。

機械や設備のパフォーマンス(性能)はヒトより優れている面が多い。ヒトより早く、ばらつきなく作業をする事が出来る。きちんとしたメンテナンスと動力さえあれば疲労することはない。

しかし機械は忙しいから頑張って作業効率を上げようとは考えない。自ら成長することもない。

ヒトと機械の違いははここだと思う。
ヒトは頑張るというココロがある。仕事を通して成長する事が出来る。
しかし同時にサボるココロもあり、意欲がわかなければ成長もしない。

「頑張っても同じ給料だ」という考え方を持っていればマンパワーにしかならない。従ってマンパフォーマンスを引き出すためには正しい動機付けをする必要がある。

機械設備は購入したその日から減価償却が始まり価値が下がる。
ヒトは正しく教育をすれば雇用したその日から価値が上がる。


このコラムは、2009年3月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第91号に掲載したコラムを改題、加筆したものです。

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中国のマンパワー

 中国の力はなんと言っても13億のマンパワーだと思う。

改革開放政策を取り安価な労働力を武器に海外の製造業をひきつけた。
ほんの数年前まで内陸部から出てくる女工さんは無限の資源のように思えた。残業にも過酷な労働条件にも耐える安価で優秀な作業者が毎年農村地帯から次々と出稼ぎに出てくる。

そういう作業者が工場の門のところに従業員募集の紙を貼り出すだけで、何百人も集まったこともある。設備を導入するよりは作業員を雇ったほうが安くつく、と考えていた企業も多いはずだ。

しかしここ数年で急速に様子が変わってきた。
毎年十数%ずつ最低賃金が上がっている。内陸部の発展も進んでおり、沿岸地区での作業員集めは楽ではなくなってきた。

しかし中国に対する魅力は依然13億のマンパワーだ。
北京オリンピックのセレモニーを覚えている方も多いだろう。圧倒的な人数のショーは象徴的だった。

安価な労働力というマンパワーから、豊かになりつつある市場というマンパワーが中国の魅力になりつつある。中国の富裕層がたった1%しかなかったとしても、日本の市場よりは大きいはずだ。

しかし我々製造業にとっては、マンパワーという考え方からマンパフォーマンスという考え方に切り替えて行かねばなるまい。

次週「マンパワー」と「マンパフォーマンス」について考えてみたい。


このコラムは、2009年3月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第90号に掲載した記事に加筆したものです。

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部下の素質

 部下の好ましい素質とは何か?そんな事を考えてみたい。

学歴や経験を重視する方もある。知り合いの日本人経営者は、中国人幹部職員は大学卒の学歴が必要と言っておられた。彼は学生生活で学んだ知識より、思考能力を重視しておられる。
別の台湾人経営者は経験を重視していた。台湾人経営者にはこの傾向が強い様に感じる。しかもピンポイントの経験を重視するので、同業者からの引き抜きや転職が多い。

ある日系企業の中国人副総経理と面談した事がある。話し方、立ち居振る舞いから知的な印象を受け、素質の高い人だと言う印象を受けた。面談後に彼女は作業者から抜擢され副総経理にまで昇格した人だと教えられた。
学歴も経験も無いところから力を身につけて昇格して来たのだろう。

こういう人に出会うとうれしくなる。なぜならば、私は部下の素質は学歴とか経験ではなく、別のところにあると考えているからだ。どんな素質かと言うと、はたと困ってしまう(笑)言葉にするとなんだか陳腐に思えるが、とりあえず「情熱」と言っておきたい。

昔指導していた台資工場で品証部門のQE(品質エンジニア)グループのリーダをしていた男の例で説明したい。QEグループの主な仕事は顧客クレーム対応だ。

当時、日系中国工場に納入する製品の工程内直行率が長らく1.6%前後で推移しており、なかなか1%を割る事ができなかった。顧客企業は、工程内直行率が1%を割るまでは生産のたびに検査員を派遣して、最終工程で全数再検査をする事になっていた。しかも顧客日本本社の品質指導者まで何度も出張に来ていた。そんな状態が1年以上続いており、プロジェクトチームを作って改善する事になった。

プロジェクトチームには、製造、生産技術、品証の各部門からリーダクラスを参加させた。生産のある日は、チームのメンバーは現場に張り付き、毎日生産終了後に当日発生した不良の原因と対策を検討した。

この活動の中で、いろいろな作業が発生する。
その作業の担当者を決める時に、メンバー全員にこの仕事は誰がやる?と質問する様にしていた。メンバーの中で「それは僕の仕事です」と答えるのはQEリーダだけだった。率先して手を挙げる者がいない時は「これは製造の仕事じゃないの?」と誘導する必要があったが、彼だけは別だった。
どの部門に属する仕事か曖昧な場合は「僕にやらせてください」と言える男であった。

彼以外のメンバーは自分の仕事の範囲を制限し、それは自分の仕事ではないと考える。「これ君やってみない?」と振ってみると、労働契約の規定まで持ち出し、それをやるなら給料も改定してもらいたい、とまで言う者までいた。

こういう人たちは、自分の仕事の範囲を制限する事により、経験のチャンスを捨てているとしか考えられない。自分に与えられた役割を、パフォーマンスよくこなす事で評価を得ようと言うつもりなのだろう。しかしこれでは、いつまで経ってもリーダのままだ。一つ上の仕事にチャレンジするから、経験値が増え、能力が増す。その結果職位も給料も上がる。

部下の一番重要な素質は、これ誰がやる?と言う上司の問いに、0.5秒で手をあげる事だと考えている。その結果仕事の範囲が広がり、経験、能力が身に付く。これを「情熱」と言う言葉にまとめてしまうと通じないかもしれない。
しかしこういう期待をきちんと部下に伝える事が重要だと考えている。


このコラムは、2015年11月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第448号に掲載した記事に加筆したものです。

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人の心を計る

 人の心の状態はどう計ったら良いのだろうか?
私は、こういうテーマについて色々考える事が多い。

会社の業績は、従業員の仕事の成果によるモノだ。その成果は、従業員一人ひとりのモチベーションに大きく左右される。従って、どうすれば従業員のモチベーションを高められるかを、考えることになる。考えた結果を試してみる。それがうまくいっているのかどうかを計測し、更に改善する。

そのため、モチベーションの高い低いを計測する事が必要になる。普通の物理量であれば簡単に測定出来る。ノギス、ストップウォッチ、電圧計など測定器具が有る。しかしモチベーションの高低は、物理量とは言い難い。人の心の状態を測定するのはそうは簡単ではない。

最近の脳科学は核磁気共鳴MRIにより「観測・測定」が可能になり、格段に進歩したと聞く。しかし我々が、そんな高価な測定装置を使う事は出来ない。

ではどうすれば良いか。
私はこんなアプローチで考えている。
モチベーションを上げて得たい結果は何か?この結果で計測するのが一番だ。モチベーションを上げた結果、作業効率を上げたいのであれば、作業効率を計測すると言う事だ。

モチベーションとその結果(作業効率)に強い相関が有れば、こういう考え方で良かろう。しかし相関が弱い場合は、モチベーション向上施策と効果の関係が曖昧になる。

例えば、モチベーションと離職率の間に相関があるのは確かだろう。しかし相関の強弱は良く分からない。
福利に対する満足度が離職率との相関が強い場合もあり得る。この場合は、モチベーションを測定するよりは満足度を測定しなければならない。

実際には、離職する人の心理にはモチベーションも福利に対する満足度も影響を与えているはずだ。そうは単純に人の心を測定出来ない。

こういう場合は、離職を考えている人はどういう行動をとるか、を考える。例えば、離職を考えている人は職場内でコミュニケーションが少なくなる。と言う傾向が観察されるとすれば、コミュニケーションの量を測定すれば、離職者の予測が出来る様になる。

行動は、物理量で測定可能だ。上述の例で言えば、報告の頻度、同僚や関係者に対するE-mailの回数、分量などで計測可能となる。

つまり人の心の状態は、行動に置き換えれば測定が可能になる。

責任感が有る、リーダシップがある、積極性が有るなど従業員として好ましい状態だが、全て心の状態だ。公平な測定(評価)が難しい。これも全て行動に置き換えることにより、測定することができるはずだ。


このコラムは、2014年5月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第361号に掲載した記事に加筆したものです。

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