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続・統計の活用

 1月14日配信のメールマガジン「統計の活用」で厚労省「毎月勤労統計」の不適切調査問題を取り上げた。最終的には大臣の俸給返納、担当官僚の懲罰で幕引きとなったようだ。

問題を再度整理すると以下のようになる。

  • 厚労省が発表している毎月勤労統計は、従業員500名以上の事業所からの回答を回収し平均給与などを調査、発表している。
  • 規則では全事業所のデータを収集することになっていた。
  • 東京都に関しては対象事業所の1/3をサンプリング抽出し全国平均を算出。
  • 18年から、東京都のサンプリング合計を3倍して全国平均を算出

この問題の本質は、財務省に正確無比な全数データがあるのだからそれを使うべきだと申し上げた。

この意見は事情を知らぬ者の寝言だったようだ。
税務署が持っているデータは、その他の用途には使えないよう法律で決められているそうだ。役所の縦割り行政の弊害という指摘は正しかったが、法律から変えねばならないというのは、役人にはどうにもできないことだ。

統計を担当する職員が足りなかったのではないか、という予測は正しかったようだ。2004年には6000人いた職員が2000人に減っているそうだ。主に農水省の職員が減ったらしいが、厚労省も300人から200人に減っているという。

4000人もリストラしたのだろうか?
公務員は安定した職業だと思っていたが、それは過去の話なのかもしれない。
しかし統計担当の職員を各省庁が個別に抱えるというのも無駄の多い話だ。統計処理が担当ならばどの省庁の仕事でも同じようにできるはずだ。ここにも縦割り行政の弊害がある。


このコラムは、2019年1月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第778号に掲載した記事です。

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統計の活用

「誰がなぜ、こっそり補正? 厚労省の統計、広がる不信感」

 「毎月勤労統計」の不適切調査問題で、厚生労働省が11日に公表した検証結果では、なぜ不適切な調査が始まり、どうして昨年1月調査分から本来の調査手法に近づける補正がされていたのか疑問点が多く残った。ほかの政府統計への影響もまだ見通せず、野党は追及姿勢を強めている。

 「真実を統計で客観的に伝えることが使命。意図的な操作はまったくない」

 厚労省の中井雅之参事官は11日の検証結果の会見で、昨年1月調査分から補正したのは賃金の伸び率が高く出やすいやり方に変更する意図的な操作だったのではと質問されると、こう強く否定した。

(以下略)

全文

(朝日新聞デジタルより)

 1月12日付の電子版記事だ。
内容をかいつまんで説明すると以下の様になる。

・厚労省が発表している毎月勤労統計は、従業員500名以上の事業所からの回答
 を回収し平均給与などを調査、発表している。
・規則では全事業所のデータを収集することになっていた。
・東京都に関しては対象事業所の1/3をサンプリング抽出し全国平均を算出。
・18年から、東京都のサンプリング合計を3倍して全国平均を算出。

東京都分は1/3の事業所しか調査していないため、全国平均に与える影響が
小さくなる。それを補正するために東京都のサンプリング合計を3倍にして
平均給与を計算する様に変更した訳だ。東京都は給与が高めの企業が多いため、
計算方法変更後に平均給与が上昇した様に見えている。

新聞の論調は、アベノミクスに忖度し計算方法を変更したのではないか、との
論調だ(苦笑)

しかし問題はそこではないと思う。
なぜ東京だけサンプリング調査なのか?更に言えば、基礎データとして事業所
からの回答をそのまま使っているところだ。

ここを指摘すれば、東京都の事業所数が多くて職員を増やさねば対応できない、
などの理由が返ってくるのだろうか(苦笑)

しかし本当の問題は、縦割りの官僚組織にある。
平均給与を計算したいのであれば、税務署のデータを使えば勤労者一人一人の
正確なデータが手に入るはずだ。

厚労省から財務省に一言お願いすればよかったはずだ。
野党に転落しさらに分裂してしまった前政権の「事業仕分け」は何だったのか
と言いたいところだ。

誰だって正確な統計データはすでに有るとわかっていたはずだ。
それをわざわざ人手をかけて不正確な統計情報を公開していた訳だ。


このコラムは、2019年1月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第771号に掲載した記事です。

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誤操作

 中国メディアによると、香港発大連行き中国国際航空106便で10日、機体が約7千メートル急降下するトラブルがあった。中国の航空当局は13日、操縦室内で電子たばこを吸った副操縦士が、空調装置を誤操作したことが原因とする調査結果を発表した。

 トラブルは10日午後7時半(日本時間午後8時半)ごろに発生。高度約1万メートルを飛行中の操縦室内で電子たばこを吸っていた副操縦士が、煙が客室に漏れるのを防ごうと空調装置を操作した際、誤って客室内の空調システムを停止させた。そのため客室内の酸素が不足し、高度約3千メートルまで緊急降下したという。

 客室では天井から酸素マスクが下りたが、その後空調が復旧し、機体は再び通常の高度に上昇。午後10時半(日本時間午後11時半)ごろ、大連空港に着陸した。乗員・乗客計162人にけがはなかった。(瀋陽=平賀拓哉)

(asahi.comより)

 基本的には、コックピットで操縦士が喫煙するなど論外だ。電子タバコでも方式によっては、一酸化炭素を吸入することになる。

血液中のヘモグロビンは肺で酸素と結合し体全体に酸素を配給している。
ヘモグロビンは一酸化炭素との親和性も高い。一酸化炭素との親和性は高度に依存し、上空にゆけば一酸化炭素と結合しやすくなる。従って操縦中の喫煙は、相対的低酸素症を引き起こし、事故などで急減圧の際に脳に十分な酸素が配給されず、判断力等の低下につながる可能性がある。米国FAAでは、乗務時はもとより乗務8時間前からの喫煙を禁じているそうだ。

当然この事故の原因は副操縦士の規則違反にある。
飲酒の様に、喫煙による血中ヘモグロビンの一酸化炭素親和性を測定出来れば類似の事故は再発防止できるかもしれない。しかしあまり現実的とは思えない。それよりは、今回の事故で見つかった「誤操作」のリスクを解消する対策の方が有効だと思うがいかがだろう。

この事例では、副操縦士の人為ミスは「情報の誤り」「認識の誤り」「判断の誤り」「行動の誤り」の内の「行動の誤り」に分類される。

「行動の誤り」を防止するためには、
・行動そのものを取りやめる。
・行動の誤りを誘発する要因を排除する。
という対策が考えられる。

  • 行動そのものは取りやめる対策
    記事から判断すると、客室の酸素濃度が低下すると自動的に高度を下げる機能が装備されているようだ。この機能を外してしまうと本当に空調設備の故障が発生した時に困る。
    上空では客室空調設備の停止ができないようにインターロックをかけておく。
    上空で意図的に客室空調を止める必要がなければ、この対策は有効だろう。
    操縦室も空調を止める必要があるのだろうか(もちろん喫煙以外に・笑)
  • 行動の誤りを誘発する要因を排除する対策
    「押し間違えた」という人為ミスを誘発する要因を考える。
    似ているので押し間違える。
    近くにあって一緒に押してしまう。

    客室設備の操作盤と操縦室内の操作盤を分ける。
    スイッチの色・形を客室系と操縦室系で別にする。
    などが考えられる。
    操作盤の配置変更は、難しくてもスイッチの色・形の変更は現場レベルでも可能だ。

航空機会社の新機種設計にこのアイディアを取り入れれば未然防止となる。

我々製造業でも、職場での喫煙が重大な事故原因となる可能性がある。
工場そのもの、設備、従業員に甚大な被害が発生するだけでなく地域社会にも被害は拡大するだろう。

このような重大リスク対策を従業員のモラルだけに頼っていても良いだろうか?


このコラムは、2018年7月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第694号に掲載した記事です。

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メンテナンス・修理工程

 先週配信のメールマガジン第745号でライオンエアのB737MAX機の墜落事故を取り上げた。墜落の原因として仰角センサー(AOA)の故障(メンテナンス修理問題を作り込んだ)という仮説で、修理・メンテナンス時に問題を作り込む可能性について検討した。

(ブラックボックスの解析により対気速度計の故障により、機体の速度、高度が異常値となっていたことが判明したようだ)

この記事に対して読者様からメッセージをいただいた。

※O様のメッセージ
 初めまして。いつも配信を楽しみにしています。
私も今まさしく、「修理過程で不具合の要因を作ってしまった」という場面に接しています。修理が発生すると、「以前もこうやって修理した」という、作業者の経験に依存して工程を完了してしまうように感じています。世界市場で有名な企業でも、日本の町の小さな工場でも、不具合の規模こそ違えど、発生する品質の問題は類似していると思いました。

航空機の機体整備を製造業の観点で見直すと、設備点検・メンテナンスに相当するだろう。視野を広げれば、生産ラインでの修理作業も同類になる。

量産品の生産ラインでは、事前に故障モードを洗い出し、故障部位の特定方法、修理方法などをあらかじめ決めておく。ほとんどの場合は、類似の製品を過去より継続的に生産しており、過去の経験智を活用できるだろう。

それでも問題は発生する↓(苦笑)
顧客クレーム(誤出荷)

量産機種の良いところは、不良現象の蓄積が早いこと、修理要員の習熟が早いことだ。なにせたくさん作るので不良数も多い(苦笑)

一方、一品モノの生産となるとなかなか不良事例が集まらない。修理要員も不良箇所を突き止めるのに時間がかかる。修理手順も確立できていない場合が多い。設備点検・メンテナンス修理も同様だ。

これらの修理作業を経験・記憶に頼らず、経験・記録により累積できるようにするのがコツだと思う。

この記録をFMEAの潜在不良として蓄積する。
(工程FMEAに展開するよりは、機能ごとに潜在不良を蓄積し設計FMEAに近い形にする方がよかろう)これにより作業員や修理要員の経験智を累積することができ、共有が可能となる。

このような作業をするときは、現象から原因を推測する帰納法と、原因から現象を予測する演繹法を行ったり来たりしながら分析をする。このような訓練を積めば、生産開始前にあらかたの不具合は対策済みになるはずだ。


このコラムは、2018年11月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第747号に掲載した記事に加筆しました。

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鉄道輸出の誤算

“日本の技術の粋を集めた鉄道車両。国内需要は鈍り、車両メーカーは海外展開に力を入れる。だが最近は苦戦が目立つ。”

朝日新聞「経済+」の記事だ。
鉄道輸出の誤算:上 「あうんの呼吸」日本流通用せず
鉄道輸出の誤算:下 車両も保守も、総合力に課題

世界の列車メーカのシェアは以下のようになっている。
1位:中国中車(中国)
2位:シーメンス(ドイツ)
3位:ボンバルディア(カナダ)
4位:アルストム(フランス)
5位:ゼネラル・エレクトリック(アメリカ)
6位:日立製作所(日本)
7位:現代ロテム(韓国)
8位:シュタッドラー・レール(スイス)
9位:トランスマッシュ(ロシア)
10位:CAF(スペイン)
11位:川崎重工業(日本)

中国は中国国内のシェアが大きく、輸出は10%程度のようだ。

日本は国内市場が限られており、事業を維持・拡大するためには海外市場に出なければならないが、苦戦が続いているようだ。

川崎重工業は採算悪化に苦しんでおり、今後米国で取引の経験のある顧客向けに集中する。
日本車両製造は昨年、米国工場を閉鎖した。赤字の要因となっていた米国案件は独大手シーメンスが引き継いだ。
日立製作所は欧州での受注を広げてきた。今後は米国事業も強化する。

日本勢が振るわないのは、海外顧客との仕様の取り決めに遺漏がある。海外の仕入先、工事業者との意思疎通が不十分。などが大きな原因のようだ。

日本の製造業の強みは「すり合わせ」であると言われてきた。設計と製造、製造部門内あるいは顧客、仕入先、工事業者などとの協業が相互の溝を埋めるように出来ていた。ところが海外に出ると、言語的な障壁以上に「阿吽の呼吸」とも言える「すり合わせ」がうまくゆかず、手戻りによるコストロスや納期の遅延が発生し収益性が悪化しているようだ。

日本という国は「均一性」で調和するように出来ている。
「アレをいつもの様に」というだけで話がついてしまう。

しかし世界は「多様性」の中で調和しなければならない。
何ページもの詳細な仕様書で顧客の要求を確認しなければならない。
詳細な作業指示書がなければ、製造品質は保証できない。

残念ながら世界のやり方が標準であり、日本だけが特殊だ。
日本国内の市場は、どんどん小さくなっていく。その環境で成長するためには世界に出るしかない。日本の「特殊能力」を捨てることはないと思うが、世界標準で戦えるようにならなければならない。


このコラムは、2019年7月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第856号に掲載した記事です。

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続・那覇空港ヒヤリハット事故

 2015年6月3日那覇空港で発生した自衛隊ヘリコプター、ANA、JTAの旅客機の重大インシデントを2015年6月15日配信のメルマガ第428号で取り上げた。

那覇空狐ヒヤリハット事故

離陸のため滑走路をタクシング中だったANA機の前方を、自衛隊ヘリコプダーが横切り、ANA機が緊急停止。ANA機離陸後に着陸予定だったJTA旅客機が、ANA機の前方に着陸した重大インシデントだ。一歩間違えればJTA機、ANA機が激突という大惨事となるところだった。

たまたま過去の記事を見ていて、本件に対し運輸省事故調査委員会はどの様に事故原因を特定したのか興味を持ち事故調査委員会の報告書を探して見た。2017年4月27日発行の「航空重大インシデント調査報告書」(AI2017-1)が見つかった。

重大インシデント発生の直接原因となったのは、

  • 自衛隊機はANA機への離陸許可を自機への許可と取り違えた。
  • 管制塔と航空機間のVHS無線通信のAGC(自動倍率制御)機能により自衛隊機の復唱が管制官に聞こえなかった。
  • 自衛隊機がタクシング中のANA機を発見するのが遅れた。
  • 管制官のJTA着陸機へのやり直し指示が遅れた。

その背景に、新人管制官の指導中だった管制官がギリギリの管制を新人に体験させたいと考えていたことを挙げている。またJTAでは着陸やり直しのシミュレーション訓練が行われていなかったことも機長が着陸復行ができなかった要因として挙げている。
根本的な原因として那覇空港が、民間航空会社と自衛隊の共用であるるため、離着陸の頻度が高いことが挙げられるだろう。

私たちがこの事例から学ぶことは

  • 安全が最優先されるべき。
  • 指示復唱の徹底。

復唱は「了解」「わかりました」の類では不十分だ。指示の内容を理解していること(重要度、緊急性、方法など)を確認しなければならない。したがって指示を出す側も、上記の点を明確に指示しなければならない。


このコラムは、2020年8月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1015号に掲載した記事です。

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続・京急脱線事故

 昨年9月5日、横浜市神奈川区の踏切内で京急電鉄の電車とトラックが衝突。電車は脱線横転。死者1名、重軽傷者30名の大事故が発生した。

京急脱線事故

本件に関して、運輸安全委員会は調査継続中であり2020年10月4日現在まだ事故原因報告書は公開されていない。

事故発生経緯は以下の通り。
道に迷った大型トラックが狭い道から右折して踏切に進入。曲がりきれずに、踏切から脱出するため切り返しを繰り返しているうちに列車と衝突した。列車は前方3両目まで脱線横転した。

この事例の根本原因は大型トラックが線路脇の細い道に迷い込んだ、という事だ。運輸安全委員会は調査で、トラック運転手から聞き取りをしているはずだ。非常に興味があり、いろいろ調べてみた。ネットを検索してわかったことは、横浜の人たちは道路名を次のように略称で呼ぶそうだ。
「イチコク」:国道15号線(第一京浜道路)
「ニコク」 :国道1号線
トラック運転手は、積み荷を受け取った(または降ろした)後次の目的地に行くために、倉庫の人に道を聞いたのではなかろうか?そこで「イチコク」に出て〇〇方面に……と教えらる。本来国道15号線に向かわなくてなならないところを国道1号線方面に行ってしまった。ということではなかろうか?

運輸安全委員会の報告書が出れば、仔細は判明するだろう。
しかしこのミスは我々にも無関係ではない。聞き間違いや部署内の符牒が原因となり思わぬミスが発生する可能性はある。

以前イチョウの実(銀杏に果肉がまだついている状態)を拾った人に「かぶれますよ」と注意したら、イチョウの実をかぶりついたことがある。関西弁では「かぶる」は「かじる」の意味だとその事件で知った。
落語にも、客と見習い古物商のやりとりで「その股引ちょっと見せてくれ」という客に対して「これはションベンできないよ」と答えるくだりがある。
ものづくりの現場でも色々な符牒、隠語がある。「ネジの頭なめちゃった」「ネジをかじった」などと言われて驚く人もいるだろう。

【注】
落語の「ションベン」は返品の意味です。
「最後はちょっとケツをまくっといてくれ」と女性に言ったら気分を害されるに違いありません。


このコラムは、2020年7月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1012号に掲載した記事です。

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バスケットシューズ

 スポーツ用品大手ナイキの「大失態」が米メディアをにぎわせている。米大学バスケットボール界のスーパースターが20日の試合で、履いていた同社製シューズが壊れたため膝を痛めて負傷退場。全米に衝撃を与えた影響で同社の株価が急落し、ロイター通信は21日の時価総額への影響を約14億6千万ドル(約1621億円)とまで算出した。

 負傷したのは男子の全米大学体育協会(NCAA)1部デューク大のエースで、プロのNBAで抜群の人気を誇るレブロン・ジェームズ選手の再来との呼び声も高いザイオン・ウィリアムソン選手。有名校との黄金カードで、靴底がはがれたために足を滑らせて転倒した。

(共同通信)

 バスケットの試合中にシューズの靴底が剥がれ、転倒。選手が怪我をした、というニュースだ。記事ではナイキの株価が急落したとあるが、2月27日には終値で86.17USDを付け2月の高値を更新している。

事故の翌日の終値は83.95USD前日の終値84.84USDから1.1%下落したが、27日の終値で2.6%上げている。市場は報道より冷静の様だ。

ナイキは過去にタイ工場で若年労働者を雇用し不祥事を起こしている。
おかげで当時顧客から中国工場の安全衛生管理監査を受ける事となった(苦笑)
その監査で工場玄関に掲げた「女工募集」の横断幕が、男女雇用均等の精神に反していると指摘を受けた(苦笑)

すでに10年ほど前になるが、スポーツシューズはナイキだろうがNBだろうが1足60元程度だった。もちろん中国製の偽物だ(笑)
エアークッションがついたナイキもどきのランニングシューズを使っていた。エアークッションに穴があきエアーが抜けた。そして程なく靴底がパックリと剥がれた。ランニングマシンで躓いた程度で怪我などしなかったが、相当恥ずかしかった(笑)

スポーツシューズメーカの大方は、すでに中国での生産を撤退しているだろう。ニュースの当該シューズはベトナム生産ということだ。

ネットの情報を見ると、怪我をした選手よりナイキに同情的な論調だ。

  • トップ選手なのに1万5千円程度のシューズを履いていた。
  • 身長、体重ともに大きな選手なので靴に負荷がかかりすぎた。
  • 三週間も同じ靴を履くなんて非常識。

どうも私の常識とは別世界の様だ。バスケットシューズを履く選手の体格が大きいことは想定範囲だろう。もしプロユースに使って欲しくないのならば、それなりに機能・性能を加減して設計し、その様に宣伝すべきではなかろうか。もちろん「アマチュア仕様」などとうたって宣伝することはない。逆に高機能モデルに「プロ仕様」と宣伝すれば良いだけだ。
こうしておけば、プロ選手がヤワな靴を選ばなくなるし、マニアがプロ仕様を喜んで買うのではなかろうか?


このコラムは、2019年3月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第793号に掲載した記事です。

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地下鉄脱線事故

 6月1日夜に発生した横浜市シーサイドライン自動運転列車逆走事故を先週配信のメールマガジン835号「列車逆走事故」で取り上げた。

「列車逆走事故」

6月6日早朝に横浜市地下鉄ブルーラインで脱線事故が発生した。
新聞記事に事故原因が公表されている

「点検作業、手順書なし ブルーライン脱線事故」
  横浜市営地下鉄ブルーラインの脱線事故で、横浜市交通局は近く事故調査委員会を局内に立ち上げる。保守作業員が「横取り装置」と呼ばれる器具を点検した後、線路上に置き忘れた初歩的ミスが原因とみられるが、現場ではこの器具の点検に関する手順書がなく、作業時の役割分担があいまいなことも判明。組織や職員の意識の問題点を洗い出し、再発防止につなげる。
 (以下略)
全文

朝日新聞ディジタルより

記事によると、夜間保線作業に使った「横取り装置」を本線上に置き忘れた。そのため、始発列車が横取り装置に乗り上げ脱線した。という経緯の様だ。

横取り装置とは、工事用車両が側線から本線に乗り入れるための分岐装置だ。レール脇に設置されており、使用時には固定ピンを外し本線側に接続する。固定ピンを外すと回転灯とブザーが警報を発生する仕組みになっている。

本来横取り装置が本線につながっている間は、固定ピンを外したままにする様設計されていたのであろう。しかしこの作業時には固定ピンを戻し警報を止め、作業終了後も横取り装置の撤去を忘れてしまった。

固定ピンは、横取り装置の外し忘れ防止の「ポカ避け」として設計したのだと思われる。しかしその設計意図が現場に伝わっていなかった。もしくは警報音がうるさいので故意に固定ピンを戻した。といういわゆる「人為ミス」だ。

新聞記事には保守管理所は3ヶ所あり、事故を起こした保守管理所だけが作業手順書を作っていなかった、と書いてある。しかし「作業手順書」がないのが原因ではなく「標準作業」を決めてないのが原因と考えるべきだろう。

通常生産現場では、設備治具の設計者が標準作業を決めているだろう。従ってポカ避けの設計思想がきちんと現場に反映される。さらに標準作業が遵守され、それを確認する作業を織り込んで作業手順書を作成する。作業手順書は実際に作業をする側で作成するのが通常だろう。

今回の事例では横取り装置の標準作業は装置の設計部門で作成。その手順書は保守作業部門で作成する。とするのが合理的の様に思う。標準作業には固定ピンの役割(ポカよけ)が明示してあり、固定ピン脱着のタイミングが明確に規定してある。
手順書には、標準作業に従った作業の手順と確認方法が規定してある。

生産現場でも、生産技術が開発した設備・治具に関する標準作業は生産技術が作成。その作業手順書は製造部門が作成。標準作業と作業手順書に矛盾がない事を品質保証部門が確認。

煩雑な役割分担の様に見えるが、設計思想をきちんと現場に伝え、現場は自分たちがやりやすい作業手順を決めることができる。


このコラムは、2019年6月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第838号に掲載した記事です。

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旅客機滑走路逸脱事故

 4月23日に山形空港で名古屋行きフジドリームエアラインズ(FDA)386便が離陸時に滑走路を逸脱した事故があった。

運輸安全委員会の事故調査は、2020年9月時点で調査中のままだ。

「滑走路逸脱のFDA機、車輪操作装置に不具合 山形空港」

 山形空港で4月、フジドリームエアラインズ(FDA)の旅客機が離陸走行中に滑走路を逸脱した重大インシデントで、国の運輸安全委員会は28日、旅客機の車輪を操作するステアリング装置の一部に不具合が見つかったと明らかにした。

 FDAの聞き取りでも、機長は「機体が左にそれたので戻そうとしたが、(車輪を操作する)フットペダルを踏んでも戻らなかった」などと話していた。原因を特定するため、運輸安全委は飛行データや機体を詳細に調べるという。

 インシデントがあったのは4月23日夕。名古屋行きのエンブラエル175型機(乗客・乗員計64人)が離陸走行中、全長2千メートルの滑走路の途中で左にそれて草地で止まった。けが人はいなかった。運輸安全委によると、直後の初期調査でステアリングの不具合が見つかったという。

朝日新聞 DIGITALより)

事故機はエンブラエル社製ERJ175。エンブラエル社(ブラジル)はあまり耳にしないが、エアバス、ボーイングに次ぐ世界第3位の航空機メーカだ。カナダのボンバルディアより売り上げ規模が大きいらしい。

実はERJ175より一回り小さいERJ145を、広西省出張時にしばしば利用した。左1列、右2列という変則的な座席レイアウト。搭乗ドアがタラップになっており、ボーディングブリッジには接続できず沖スポからの搭乗。ひょいと離陸する軽やかさなど印象のある機体だ。

事故機は2016年6月製造、2019年1月に「重整備」が行われている。おそらく何も問題はなかったのだろう。

記事にある「旅客機の車輪を操作するステアリング装置」とは航行中方向舵を操作するフットペダルだ。地上でタキシングする際には前輪の向きを変える役割を持つ。

ここまでの情報で大胆にも「素人考え」で事故原因を推測してみた(笑)

事故機は駐機位置から誘導をを通って滑走路までタクシング出来た。従って離陸開始までは前輪操舵機能には問題がなかったはずだ。離陸後はフットペダルは方向舵の制御に使う。離陸後のタイミングで、手動または自動で前輪/方向舵の制御が切り替わるはずだ。

離陸開始後から離陸前にこの切り替わりが発生すれば、前輪の方向を制御しようとフットペダルを操作しても、虚しく方向舵の角度が変化するだけとなる。

従って今回の事故は、前輪/方向舵の切り替えに何らかの人為ミスまたは故障があったと推定してみた。

多分新聞記事になった時点(5月28日)で、事故調査官はすでに答えを知っているだろう。本当の事故原因はわからないし、今後公表されないかも知れない。それでも、原因を考えてみるのは「頭の体操」だけではない。以下の様な効果がある。
今回の事例では「モード切り替え」「タイミング」をキーワードと考えることが出来る。

  • モード切り替えができない。
  • 予期せぬタイミングでモード切り替えが発生する。

という潜在要因の引き出しが増えるはずだ。
これは自社の製品設計、工程設計の時の潜在不具合要因となる。
同様に問題原因解析時に挙げることができる問題要因が豊富になる。


このコラムは、2019年6月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第832号に掲載した記事に追記しました。

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