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超巨大恐竜、なぜ急成長 秘密は骨に…

超巨大恐竜、なぜ急成長 秘密は骨に…

長い首と尾を持つ「竜脚類」と呼ぶ恐竜の仲間は地球に現れた最大の陸上動物といわれる。多くの種類が体長20メートル、体重10トンを超した。中には約40メートル、80トンに成長したと推定される化石も見つかっている。なぜ、ここまで巨大になったのか。成長が早い特殊な骨のでき方など、複数の特徴を併せ持ったからだとわかってきた。
 (以下略)

全文

(日本経済新聞電子版より)

 体長40m、体重80tもあったといわれる長い首と尾を持つ恐竜「竜脚類」の記事に興味を引かれた。
竜脚類の卵は最大で30cm程度。ダチョウの卵の3倍程度しかない。孵化直後は体長50cmだそうだ。その後急成長し死ぬまで成長し続けるらしい。

彼らが急速に成長出来る理由が解説してあった。記事によると、

  1. 骨の構造。先ず粗な組織が出来上がり、その隙間を埋める様に密になる。四季を通じて成長出来る。
  2. 高効率の呼吸器官。吐く時も吸う時も肺に空気が送り込まれ、ほ乳類の倍の効率で酸素吸収が出来る。
  3. 環境の適合:恐竜時代は火山活動により空気中の二酸化炭素濃度が高かった。そのため植物の成長が早く、餌が豊富にあった。草食なので捕食に必要なエネルギーが少なくて済む。
  4. 小さな頭:植物の餌を丸呑みしていたので、歯や口の回りの筋肉が発達する必要がなく頭が小さくて済むため、エネルギー消費が少なくても済む。

これらの特徴を、ビジネスの成長に応用出来るだろうか?

  1. 新規事業を素早く立ち上げ、現有経営資源を使って徐々に新規事業を強化。
  2. 材料を買う時、製品を売る時共に利益が発生する仕組みを作る。
  3. 経営環境への適合は、成長以前の企業存続の必須条件。
  4. 最小のエネルギーで最大の価値を創造する。

こういう事が出来れば、企業は急速に大きくなるだろう。しかし恐竜が絶滅したのは,急激な環境変化(氷河期)への対応が遅れたためだ。この時不利に働いたのは、巨大な体と小さな脳だろう。

失敗から学ぶとすれば、急激に成長しない。効率優先で思考停止する事を抑制しなければならない(笑)


このコラムは、2017年1月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第510号に掲載した記事です。

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自動ブレーキ「誤作動」

 

「自動ブレーキ『誤作動』米が調査 日産SUV」

 日産自動車の北米向けSUV(スポーツ用多目的車)「ローグ」(日本名・エクストレイル)について、自動ブレーキが誤作動する恐れがあるとして、米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が調査に入った。米メディアが12日、一斉に報じた。

 調査対象は2017年と18年のモデルで、計約55万台。障害物がないのに自動ブレーキが突然作動するなどの不具合が指摘されている。これまでに800人以上が苦情を訴え、14件の事故、5人の負傷者が報告されているという。

 日産にとってローグは北米での主力車種。日産はソフトウェアの無償改修を促す通知を顧客に出した。NHTSAの調査結果次第では、リコール(回収・無償修理)に発展する可能性もある。

 日産によると、ローグは米国、韓国、九州の3カ所で生産しているが、調査対象の車の詳しい生産地は分からないという。日産広報は「今のところ、日本のエクストレイルに同様の問題が出ているという話は聞いていない」としている。

(朝日新聞より)

 ゴーン会長、西川社長の報酬疑惑、19年度1Qの営業益98.5%減、などに続き日産自動車のネガティブな報道が続いている。

今回発生したブレーキの誤動作は、必要な時にブレーキが効かないわけではなく、不必要な時にブレーキが作動してしまう問題だ。必要な時にブレーキが効かなければ、かなり深刻な問題になる。しかし不必要な時にブレーキが作動しても、追突されるなどの人身事故につながりかねない。

新聞記事には「ローグは米国、韓国、九州の3カ所で生産しているが、調査対象の車の詳しい生産地は分からないという」とある。ソフトウェアの問題であれば、どこで生産しても同じ欠陥が内在しているはずだ。生産地ごとに採用している購入部品に含まれるソフトウェアの問題なのだろうか?

当然、ブレーキの動作に影響のある重要安全部品に対する評価は徹底的に実施したはずだ。
しかしこの手のソフトウェアの信頼性評価は簡単ではない。
「ブレーキが効かなければならない時に、ブレーキが正しく動作する」ということを検証するのはさほど難しくはないはずだ。つまり、ブレーキが効くべき場合は「ブレーキペダルが踏まれた」「前方または後方に障害物がある」など条件を特的できる。

しかし「ブレーキが効く必要がない時に、ブレーキが作動しない」を検証する場合、「ブレーキが効く必要がない」という条件をもれなくあげることは困難だろう。従って完成車での検証(妥当性評価)には無限大の組み合わせが発生する。

このような場合ソフトウェア単体の検証で問題ないことを確認することになる。
通常この検証はソフトウェア設計部門で行う。これが仕入先の設計であれば、完成車メーカとしてどのように評価するのかが問題となるはずだ。


このコラムは、2019年9月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第877号に掲載した記事です。

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ゴーン被告の国外逃亡

 保釈中のカルロス・ゴーン被告が国外逃亡したというニュースが年末から年始にかけて、巷間を賑わした。

ニュースによると、コントラバス(もしくは音響設備)のケースにゴーン被告を隠し、プライベートジェットに乗って日本を出国したようだ。仰天した。まるで映画のようだ。

このような前代未聞の大失態を演じた原因を考えてみた。

  1. 本来の根本原因は、ゴーン被告が自由に不正を働くことができた日産の企業ガバナンスに問題があった。不正を正す者はなかったのだろうか?司法取引を持ちかけ内部告発をする以前に、内からの自浄作用が働く組織ではなかったようだ。
  2. 証拠隠滅、海外逃亡の可能性が指摘されていたにもかかわらず、保釈を許可した裁判所の判断も原因の一部だ。海外から日本の司法制度に批判が集まっていた。しかしそれに怯んだら、その司法制度に従順に従ってきた日本国民に申し訳ないとは思わなかったのか。他国が批判すべき事柄ではないはずだ。
  3. ゴーン被告にパスポートの携行を許した。フランスパスポートを鍵付きのケースに入れて携行を許したようだが、鍵を壊せばそのまま使えるとは考えることができなかったのだろうか。
  4. 出国審査の甘さはどう弁解してもアウトだろう。去年は保安検査でナイフを携行している乗客をそのまま通してしまう、という大失態*をしている。
    プライベートジェットならばテロを起こす心配はないと考えているのか?テロはなくても、輸出禁制品の持ち出し、検疫などが疎かになっていたと言わざるを得ないだろう。搭乗荷物を検査すれば、中に人間が入っており、有名な人物であることはすぐに分かっただろう。

*伊丹空港保安検査

当然事前に考えうる事柄ばかりだ。最悪を想定して備えなければならない。
空振りをしても痛くも痒くもないはずだ。今回のようにど真ん中のストライクを見逃せば、世界の笑いものになる。もっと恐ろしいのは、日本は犯罪天国だと舐められることだ。

プライベートジェットを使えば、麻薬や違法ドラッグを日本に持ち込み放題。日本の優秀な印刷技術で作った偽札を持ち出し放題。日本は犯罪天国と見られかねない。


このコラムは、2020年1月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第925号に掲載した記事です。

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N-WGNのリコール

電動パーキングブレーキのリコール

 ホンダは12月12日、電動パーキングブレーキの不具合で生産を停止している軽自動車『N-WGN』『N-WGNカスタム』のリコール(回収・無償修理)を国土交通省へ届け出た。
対象となるのは2019年7月4日~8月30日に製造された9437台。

不具合箇所は電動パーキングブレーキアクチュエータとスプリングパッケージの2つ。

電動パーキングブレーキアクチュエータについては、モータ配線接続部の圧着端子の加締めが不十分、またはモータのコンミテータおよびブラシの製造が不適切なため、走行振動でモータ内の接触抵抗が一時的に増加するとモータ回路断線検知信号が乱れてVSA(車両挙動安定化制御システム)が異常を検知し、故障と判定することがある。そのため、警告灯、警告表示が点灯して、駐車ブレーキが作動・解除できなくなるおそれがある。

(response.jpより)

 ホンダはこの市場不良で、新車の販売も延期している。
公表されている情報から問題を推測し問題を以下のように整理した。

  • 圧着(加締め)不良
  • モータ内部品(コンミンテータ、ブラシ)の製造不良により、制御システムが故障と判断し、駐車ブレーキの作動・解除ができなくなる。

圧着作業が正しくできたかどうか検査しようとすれば、圧着強度の測定(破壊検査)が必要となり全数検査はできない。正しい工具、作業員の技能(作業法及び目視検査)で品質を保証することになる。このような作業(作業者の技能に品質が依存する作業)工程を「特殊工程」という。

モータ内部品の製造問題は、精度を保証する工程能力(Cpk)が不足していたのだろう。これは製造設備の精度だけでなく、設計時の精度配分の考慮不足もありうる。

この問題を上流工程(設計時)で保証するためには、設計標準を持つべきだ。
もちろん具体的な公差を決定するような標準ではない。可動側、固定側の公差をどう分配するかを標準化する。設計が悪ければ、量産試作時に後戻りが発生。それを「経営判断」で量産開始をすると、工程内不良で悩むことになる。最悪顧客が使用開始した後の環境ファクターのばらつきで市場不良が発生する。

そして量産試作時に工程能力が足りていることを確認する。
手間がかかるようだが、この過程で手を抜くと大きな損失を招くことになる。

本件に戻って考察をすると「電動パーキングブレーキ」は本当に必要な機能なのだろうか?設計より前の商品企画時にどんな議論があったのか、そこから考え直さなければ、問題は形を変えて再発するだろう。


このコラムは、2020年1月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第934号に掲載した記事です。

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頭と胸挟まれ死亡 立体駐車場の点検中 名古屋

 23日午前10時50分ごろ、名古屋市中村区名駅3丁目の立体駐車場「エムテックサンパーキング」で、設備点検をしていた愛知県蟹江町蟹江本町のビルメンテナンス会社員佐藤洋一さん(49)が自動車運搬用のエレベーターに頭と胸を挟まれ死亡した。中村署は、駐車場の男性アルバイト従業員(51)が過ってエレベーターを作動させたとみて、業務上過失致死の疑いもあるとみて調べている。

(asahi.comより)

 痛ましい事故が発生してしまった.
以前メンテナンス作業によって引き起こされた事故について解説をした.

今回はメンテナンス作業中の事故である.
装置は安全を考慮して設計してあるはずだが,メンテナンス作業中の安全までは考慮してないであろう.そもそも安全装置そのものも点検をしなければならないので,メンテナンス作業に万全の安全性を考慮して設計するということは不可能であろう.

従って現場での作業安全確保のための仕掛けを造りこんでおく必要がある.例えば操作盤に「メンテナンス作業中」などの札を下げ,安易にスイッチ操作しないようなポカ除けを準備しておく.メンテナンス中は操作スイッチにカバーを付けはずさないと操作できないようにする.
などの工夫をしなければならない.

あなたの工場ではメンテナンス中の作業安全をどのように確保されているだろうか.再度点検されることをお勧めする.


このコラムは、2008年2月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第22号に掲載した記事です。

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エレベーター、扉開いたまま急上昇 東京・台東区

 エス・イー・シーエレベーター(東京都台東区)が保守管理する同区根岸5丁目のビルのエレベーターで、人が降りた直後に扉が開いたまま、突然、かご部分が天井近くまで上昇する事故が起きていたことがわかった。同社管理のエレベーターでは、06年6月に港区で同様の事故があり男子高校生が死亡、警視庁が業務上過失致死容疑で捜査を続けている。

 同社によると、事故は今月11日午後3時ごろ発生。7階建てビルの5階から乗った男性が3階で降りた直後、扉が開いたままの状態でかごの部分が急上昇し、7階を約1メートル過ぎて止まったが、けが人はなかった。制御盤内部の故障が原因とみられるという。エレベーターは30年以上使用している日立製。法定の定期検査を昨年8月に、月1度のメンテナンスを事故3日前の8日に行ったばかりだった。

(asahi.comより)

 メンテナンス直後の事故というのは意外と多いものだ.
特に気をつけたいのが,メンテナンス時に変更した設定の戻し忘れ.メンテナンス作業時に機能を殺しておいた安全装置を戻し忘れると労災事故が発生する可能性がある.

部品の自動実装機,プレスマシンなど作業者の手が機械の中に入ると機械が安全停止するようになっている.このままではメンテナンスができないので,一時的に安全装置を解除してメンテナンスをする.作業完了後に安全装置を戻すのを忘れても,機械は正常に動いているように見えるので気がつかない.

以前こんな例を聞いたことが有る.
装置内でX線を使用しているため,装置内部に手を入れる扉を開けたときはX線が止まるように安全装置がついていた.メンテナンス時にX線が正しく出ているかどうか調べるために,扉の開閉を検出するマイクロスイッチをテープで止めて扉が閉まっている状態にしておいた.点検完了時にマイクロスイッチのテープをはがすのを忘れ運転を開始.このため運転中に扉を開けるたびに作業者がX線に被爆していた.幸いX線の量が微弱であったため人体への影響は心配なかったが,目に見えないだけに深刻な事故だといえよう.

今回のエレベータ事故はメンテナンスから3日後に発生しているので別の原因だと思われるが,メンテナンス作業後の点検項目,方法をチェックリストにしておくとポカよけに役に立つだろう.
今回の事例から,配線コネクタの不完全挿入,ねじの締め忘れなどの想定される原因に対してチェック項目を追加したら良いと考える.

それにしてもこのメンテナンス会社は前回の事故が教訓として活かされていなかった様である.


このコラムは、2008年1月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第18号に掲載した記事です。

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急速充電器リコール

 行政法人・製品評価技術基盤機構(nite)によると、アンカー・ジャパン社のUSB急速充電器が市場にて電解コンデンサーの液漏れ発煙事故が発生し、対象製品の回収をしている。

メーカのホームページに回収告知が掲載されている。

2019年4月23日より販売を開始したUSB急速充電器「Anker PowerPort Atom PD4」(以下 本製品)につきまして、製造工程において発生した不良品(初期ロット内40個) が正常品と混在した状態で出荷されていたことが判明致しました。
事故等の発生防止を第一に考え、この度、本製品の回収を実施させていただきますのでご案内申し上げます。(以下略)

メーカは事故原因を以下の様に説明している。
2019年6月7日:顧客から電解コンデンサーの液漏れと発煙が生じたと報告。
2019年6月30日:本不具合の原因を特定。回収を決定。

多分海外の生産委託先との間で、原因特定の作業が進められたのだろう。
何人かは本件で生産委託先に出張しただろう。発煙という最もシビアな故障モードであり、3週間は長いと感じるが、全力で調査をしたのだと思う。

原因を以下の様に発表している。
製造時のリフロー(はんだの接合)工程において、通常よりも長い時間加熱された製品が40個発生。当該製品は出荷不可として廃棄処理がなされる予定でしたが、委託先の製造工場の管理体制に不備があり、正常品と混在した状態で出荷がなされました。

「40個だけリフロー炉で長時間加熱された」というところを突き止めるには、生産委託先の報告を聞いているだけでは見つけられないだろう。

リフロー炉の故障でコンベアが止まり、製品PCBがリフロー炉内で停滞。
停電でPCBがリフロー炉内に取り残された。
などの原因により電解コンデンサが過剰に加熱され「半殺し状態」となり出荷後2ヶ月ほどで寿命モードの故障となったのだろう。こういう事実は現場の記録・記憶をたぐらねば出てこない。生産委託先に原因調査を任せてしまえば、見つからない真実だ。責任の所在が自身にあると判明すれば、リコール費用などを請求される。真実は隠される。

リフロー炉でもディップ槽でも同じことは発生する。現場の班長さんレベルで判断し、不良品処理ができる様にしなければならない。

昔会社員だった頃生産委託先工場に出張している折に停電があった。

「現場力」

リコールとは関係ない話だが、現場力を鍛えられるのは現場だと思う。


このコラムは、2019年7月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第853号に掲載した記事です。

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シンドラー事故、検察側が控訴 元課長の無罪判決

 東京都港区の公共住宅で2006年、高校2年の市川大輔さん(当時16)が死亡したエレベーター事故で、業務上過失致死の罪に問われた「シンドラーエレベータ」の元保守第2課長の原田隆一被告(46)を無罪とした東京地裁判決について、東京地検は9日、控訴したと発表した。

 9月29日にあった地裁判決は、原田元課長を無罪(求刑・禁錮1年6カ月)とする一方、保守会社「エス・イー・シーエレベーター」の幹部ら3人を、禁錮1年6カ月~1年2カ月執行猶予3年の有罪とした。エス社の幹部側は即日控訴していた。

(朝日新聞電子版より)

 エレベータの扉が閉まらない状態で上昇を始め、エレベーターの床と天井の間に挟まれ死亡する、という考えられない事故だ。裁判ではブレーキ部品の異常摩耗が、メンテナンス時に発見できたかどうかが争点になったようだ。

しかしブレーキ部品の摩耗という1故障だけで、致命事故につながる様では十分な安全設計ができているとは思えない。故障状態でも正常に動作することを要求する訳ではない。最悪、ブレーキ部品が摩耗した場合事故に至らない様にブレーキ機能のバックアップを用意する、またはアラームをだして動作を停止する。

メンテナンスだけで事故を防ぐのは限界がある。
少なくとも摩耗を可視化しなければ、見逃しはあり得る。例えばタイヤは摩耗すると、交換の警告サインが出る様に路面との接地部分がデザインされている。

以前、近所のホテルでエレベータが最上階から地下2階まで落下する事故があった。この時は、定員13人(1000kg)に対して21人乗客が乗っていた。事故の直接原因は、牽引ワイヤの断裂とかブレーキ故障かもしれないが、13人を超えて乗ってもアラームが発生しなかったところにも原因があるはずだ。

この事故事例から、エレベータのメンテナンス時に積載オーバー検出機能はどのように検査しているのか疑問に思っている。中国だけではなく日本でもエレベータの点検作業に出会うことはしばしばある。しかし重量オーバの検査用錘りは見たことがない。重量センサーの出力を擬似的に操作する方法では、重量センサーそのものの故障を検査発見できない。

また検査記録も単純に、レ点を入れるだけでは本当に検査したかどうか不明だ。検査を行ったことが証明できるような記録を残さなければならない。

例えば、半田ごてのコテ先温度の検査では、合格のレ点を記録するだけでは不十分だ。コテ先の測定温度を記録しなければならない。

今回の事故も摩耗が事故前に発生していたかどうかが、争点になった。メンテナンス記録に摩耗が点検検査されており、交換修理の要不要を正しく判断したという記録が残っていれば、裁判が長期化することはなかっただろう。というより、事故そのものが発生しなかっただろう。

工場の中には、点検検査の記録(チェックシート)がたくさんあるはずだ。何かあった時に、証拠として機能するかどうか見直しされてはいかがだろうか。


このコラムは、2015年10月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第445号に掲載した記事です。

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ホームの客の手、ドアに挟んだまま90メートル 愛媛

 6日午前10時ごろ、愛媛県西条市小松町のJR予讃線伊予小松駅で、松山発観音寺行きの普通列車(1両編成)が同市に住む乗客の女性(75)の手をドアに挟んだまま出発。女性は約90メートル引きずられてホームから転落し頭や足などに軽いけがをした。列車の乗客10人にけがはなかった。

 JR四国によると、伊予小松駅は無人駅で運転士がホームの鏡を確認するなどして出発する規則だが、運転士の男性(28)は「異常がないと思い出発した」と説明しているという。ホームにいた人が気付き110番通報した。列車は気付かずそのまま走り続けたという。半井真司・鉄道事業本部長は「けがをさせてしまい大変申し訳ありませんでした。再発防止を徹底します」と謝罪した。

(asahi.comより)

 車両の扉には,完全に閉まったことが確認されるスイッチがついているはずだ.女性の手が挟まっていてもそのスイッチが作動しなかったのだろうか?もしくは扉が閉まっていないことはランプなどで表示するだけで,運転手の見落としがあったのだろうか?

私も以前終電の車内で,上着を挟まれそのまま電車が発車したことがある.このようなヒヤリ・ハット事故は無数にあるはずだ.ヒヤリ・ハットを放置せずに改善する姿勢があれば,列車の扉開閉センサーは違う形になっているはずだ.光センサーを使った方式にすれば,完全に防げる事故だろう.

また開閉センサーは,ブレーキとインターロックをかけておき,扉が閉まっていなければブレーキが解除されない方式にしなければならない.

「伊予小松駅は無人駅で運転士がホームの鏡を確認するなどして出発する規則」と言う規則も理解ができない.運転手はホームに降りて,扉が閉まったことを確認の上発車すべきだ.

電車の扉開閉センサーをすべて交換するには,それなりのコストが必要だ.
安全とコストをトレードオフにすべきではないが,上記の運転手による確認動作の変更には,コストや運行効率にはなんら影響が無いだろう.

「再発防止を徹底します」と言うのは当たり前だ.
私たちが製品開発や,工程設計時に使っているFMEA(潜在故障モード効果解析)を使って,潜在事故に対し未然防止対策を検討すべきだ.

工場でも,従業員の安全,顧客の安全は最優先しなければならない.
あなたの工場でもFMEAを活用されているだろうか?


このコラムは、2010年12月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第183号に掲載した記事です。

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大型タイヤ脱落

大型トラック、バスからタイヤが脱落する事故に関して興味深い記事が出ていた。
「大型タイヤ脱落、4~6年目注意 部品交換直前、ハブ・ボルト劣化 事故、7年間で7倍」

(朝日新聞)

記事を要約すると、2002年に発生したトレーラーのタイヤが外れ、母娘三人が死傷する事故が発生以来、国土交通省は8トン以上のトラックや定員30人以上のバスで起きたタイヤの脱落事故を集計している。
その統計によると、2004年度87件から2011年度11件まで減少したが、近年増加傾向にあるという。2018年度は前年比14件増の81件発生している。

この事故の発生時期を分析すると、11~2月が54件(全体の67%)、タイヤを取り付けてから3カ月以内に起きた事故が70件(全体の86%)、積雪の多い地域での発生46件(全体の57%)、であることが判明。

以上の分析から、夏タイヤから冬タイヤに交換した際にタイヤホイールを固定するナットの締め付けに問題があると推定。
国土交通省は以下の対策を呼びかけた。

  • タイヤを交換する際に適切な力でナットを締める。
  • タイヤを交換して50~100kmを走った後にナットを締め直す。
  • 運行前にハンマーを使って点検。
  • タイヤを交換する冬場に特に注意する。

しかし対策を実施しても事故は増加傾向にあった。

さらに事故発生車両について過去4年間に事故を起こした車両を調査した結果車両の登録後の使用期間で以下のことがわかった。

  • 登録後4~6年目の車両の事故が95件(全体の約4割)
  • 登録後7年以降の車両は事故が大幅に減少。

単純にタイヤ交換時のナットの締め付けの問題とは言えなくなった。
車両メーカによるとタイヤのハブやボルトは7~8年で交換することが多い。

以上の結果、タイヤ交換が頻繁にある雪国で使用する車両で且つハブやボルトが交換してない車両を重点的に点検すれば良いことがわかった。

事故車の破断したボルトの破断面を調査しても、疲労破断とナットの締め付け不良による破断の区別がつかなかったのだろう。
この事例では、原因不明の事故の統計データを発生時期(季節・使用期間)に着目して見直したことで原因が特定できた。

同様なことは製造業でもある。
不良率の変動を月ごとに見直すことで乾燥(静電気)が原因とわかった。
不良が発生する時間を調べるたら近隣を列車が通過する時刻と一致した。

原因がなかなか特定できない事故や不良を調査する時に「統計データの切り口を変えてみる」というのは、業界が違っても役に立ちそうだ。


このコラムは、2019年12月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第910号に掲載した記事です。

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