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五つ星ドライバー

 先週の記事「優良運転手が客待ち 東京・新宿駅にタクシー乗り場」に対して読者様からこんなメッセージをいただいた。

☆Y様のメッセージ
上海ではタクシーに5つ星制度がありますよ、何年も上海に居ますが2回だけ5つ星タクシーに乗り合わせました、良かったですよ 顧客対応・安全運転・道に詳しい等々やはり違います。星無しから~最高が星5つです、試験も有る様に聞きました。

さすが上海!万博に向けて、世界標準のサービスレベルに持ち上げようという運動だろうか。

以前(2007年ころ)上海虹橋空港からタクシーに乗ったことがある。
そのときの運転手は最悪だった。

上海賓館というホテルまで行ってもらおうと思ったのだが、場所が分からないという。降りてタクシーの誘導係に場所を聞いてきてくれといわれた。当時タクシーに乗って悲惨な目にあった人の話ばかりを聞いていたので私も素直には言うことが聞けない。
降りて聞きに行くとトランクに入れた荷物ごとタクシーが去ってしまう、という最悪のストーリィが頭をよぎった。ここで降りてしまおうかと思ったが、また30分も列に並びたくはない。

そこでトランクを開けさせ荷物を持って誘導係に聞きに行った。
誘導係は「知らないはずないだろ」といいながらめんどくさそうに運転手にホテルのある道を教えていた。

以後まったく無言のままホテルまで送ってもらった。私が疑い深すぎたのかもしれないが、このくらい注意していないとひどい目にあう可能性がある。

同じころ北京空港から市内に向かうタクシー乗り場では、乗客にアンケート用紙を配っていた。このときは北京オリンピックに向けてタクシーのサービス向上キャンペーン中だったようだ。

いずれにせよ、もうしばらくすれば中国でも気持ちよくタクシーに乗れるようになるだろう。


このコラムは、2009年8月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第112号に掲載した記事です。

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優良運転手が客待ち 東京・新宿駅にタクシー乗り場

優良運転手が客待ち 東京・新宿駅にタクシー乗り場

 無事故無違反で、接客態度もいいタクシードライバーだけが客待ちしている「優良タクシー乗り場」が5日、東京駅丸の内北口前と、新宿駅西口地下に現れた。

 東京・新橋駅で昨年3月に設置したところ、好評だったため、東京23区と武蔵野市、三鷹市で活動する財団法人「東京タクシーセンター」が増やした。「走っているタクシーの中からいいタクシーを選ぶのは難しい」と思いついたという。「安全・丁寧」でも料金は変わらない。

 優良タクシー乗り場で客待ちできるのは、「10年間クレームなし、3年間無事故無違反」などの条件を満たしてセンターから表彰された運転手と、事故や乗車拒否など法令違反の少ない「優良タクシー会社」から推薦された運転手がハンドルを握るタクシー。センター加盟の約9万4千人の3分の1程度に限られるという。

(asahi.comより)

 この記事によると日本には優良タクシー運転手は全体の1/3程いるということになる。では中国で優良といってよい運転手はどのくらいいるだろうか。当然そんな統計は無いが、全体の3%くらいというのが私の印象だ。

タクシーに乗ると騙されないように身構えてしまう。
タクシーに乗って前金でお金を払ったら、暫く走ったところで携帯に電話がかかってくる、そして急用ができたからここで降りてくれ、ついてはお金は返すという。車から降ろされ返してもらったお金は偽札だった。なんて話しは良くある。

深センから東莞までタクシーに乗ったら、高速で降りたところで道が分からないから地元のタクシーに乗ってくれという。運転手の言い値で乗っている、降りてまたタクシー代を払うわけにはゆかない。目的地の会社に電話して道順を説明してもらっても、分からないから降りろの一点張り。

いつもタクシーを利用している区間で15±1元で着く距離なのに、メータが20元を表示している。

目的地が分かるといっておいてしっかり道に迷い、かなりの距離引き返しているのにメータの料金をそのまま請求する。

なんてタクシーの不満を書いたらいくらでも出て来る。

そんな中でも親切な運転手は3%くらいはいる。
運転手にしてみれば、次に同じ客を拾う可能性など殆どゼロだ。それなのに良いサービスをしても意味が無いと考えているのだろう。ニッコリしてありがとうございました、というくらい何のコストもかからないはずだ。客だけでなくありがとうございますと言った本人も気持ちが良くなるものだ。

中国でも同じようなシステムを導入して、五つ星運転手なんて称号を与えるようにしたらきっとサービスは改善されるだろう。

 ところで先週末久し振りに日本のタクシーに乗った。最終電車で最寄り駅に着き自宅までタクシーに乗った。

いつもであればタクシー乗り場には乗客が行列をしている。ところが先週はタクシーの方が行列をしていた。タクシーの運転手の話では今年に入ってから最悪だそうだ。週末でも飲んで最終電車で帰ってくる人は殆どいなくなってしまったようだ。

ちょっと景気が悪いという話が出ると、一斉に庶民の財布の紐が固くなる。そしてそれでますます景気が悪くなる。
ガンバレ日本!不況に負けるな。


このコラムは、2009年8月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第111号に掲載した記事です。

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製品の質を高める

 工業製品と言うのは、全ての製品が同じ品質になる様にモノ造りをする。
一方、工芸製品は職人のクラフトマンシップに依存し、世界無二の製品を造る。
一般的に、工芸製品は嗜好生が高く、工業製品より高価な価格となる。

例えばセイコーは、1964年にクオーツ時計を小型化し、東京オリンピックの競技用に使える様にした。小型化と言っても、壁掛け時計ほどの大きさだ。しかし当時としては、画期的な小型化だ。その後も製品改良を進め、正確無比な時を刻む腕時計が、庶民でも買える様になった。こういう物が工業製品だ。

一方スイスの時計メーカは、機械部品の組み合わせで正確な時を刻む機械式時計を造り続けた。こういう製品を工芸製品と呼ぶことにする。職人が一つずつ手造りをする。量産は出来ない。従って希少価値が有り、高級品として販売され、少数のマニアマーケットにおいて高額で売れる。

工業製品は、機能と品質がどんどん上がり、価格は下がる。
工芸製品は、高い「質」が一部のマニアに支持され、価格は下がらない。
工業製品と工芸製品は、こういう関係に有る。

この違いは「品質」と「質」に有ると考えている。
「品質」も「質」も英語に直せばQualityだ。
その違いは「品」にある。品質とはQualityの和訳であるが、「品」が付く事により、物の質という印象を与える。不良が少ない、寿命が長いなど物そのものの質を表すことになる。

一方「質」の方は「品」が付いておらず、物から離れた質を表す。
つまり物よりは、顧客(使用者)の価値感にフォーカスした言葉と定義している。これは私の勝手な定義であり、一般的ではないかもしれないが、このコラムではそう考えて読んでいただきたい。

メーカーズマークと言うバーボンウィスキーは、ボトルキャップを1本ずつ手作業で封蝋している。当然手作業なので、コストがかかる、1本ずつ形が違う。工業製品としては、品質が統一されてないことになる。しかし封蝋の形で、封蝋作業者の名前を当てるマニアがいると言う。つまりこのマニア達にとっては「封蝋の形が違う」と言う事が価値につながる。本来ウィスキーは工業製品だが、工芸製品的要素を付加することにより、独自の「質」を持たせることになる。こういう部分は、コスト削減してはいけない。むしろコストをかけるべきなのだ。

玩具も同様だ。プラスチック成型で造り、印刷で色付けされた人形は工業製品。同じプラスチック成型で造っても、職人がぼかし塗装をする、筆で一体ごとに色入れをすると、マニア向けのフィギュアとなり、上市価格が倍となる。

この様に嗜好性の高い商品の場合は、顧客の価値感にコストをかける事により価格が上がる。

こういう議論は、部品を生産している工場には無関係だろうか?
ここで「嗜好性」を「利便性」に置き換えてみたらどうだろう。
製品の品質が高い事は当たり前。それに「利便性」と言う質を追加する。
部品を生産し、顧客に供給する業者ではなく、部品を生産供給することにより、顧客の生産を支える業者と言う立ち位置をとる。

この様なポジションを取ることができれば、あなたの工場は、顧客にとって代替え不可能なパートナーと位置づけられるはずだ。顧客の生産支援パートナーとて、どんな質を提供出来るのか考えてみる価値があると思うが、いかがだろうか?


このコラムは、2014年9月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第381号に掲載した記事に加筆しました。

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会員制ビジネス

 中国で通っているジムを紹介しよう。
私が住んでいるアパートの2階にジムがある。狭いのと料金が高いのか難点だが、同じ棟の中にあり便利である。設備もまぁまぁである。

しかしここのジムの経営者は、「会員制ビジネス」のメリットをあまり認識していないようだ。
いまだに大量の営業員を街中に送り出して、新規顧客の勧誘に精を出している。
「会員制ビジネス」の大きなメリットは、会員の紹介で会員が集まる、と言う営業いらずの部分にあると思う。

従ってビジネス拡大に一番重要なことは「既存顧客の満足」であるはずだ。残念ながらこのジムはこの点に関して二流以下である。

まず第一に経営者が顧客に何も挨拶をしない。私がジムに行く時間帯にはよく経営者が顔を出している。しかし経営者は私と目が合っても会釈すらしたことが一度もない。

シャワールームの工事中、工事のための資材がロッカールームに山積みされてロッカールームに入ることできなかった。シャワーが使えないだけでも不満なのに、ロッカールームにすら入れない。

スタッフに工事に今不要な資材を撤去してロッカールームに入れるようにしてほしいと何度も提言したが、話を聞くだけである。顧客の利便性よりは工事業者の利便性を優先している。

経営者に私から話をする、と言っても一向に取り次がない。
顧客の声を殺してしまい、成長のチャンスを見逃しているとしかいえない。

不届きな会員が共有のロッカーに自分の鍵をかけて占拠しているのも「没方法」と言いまったく改善しない。

これでは友人にこのジムを勧める気にもなれない。
従っていまだに新規顧客獲得のために大量の営業員を雇用し続けている状態である。

日本にいたときのジムも、東莞の田舎町のジムでも営業員などほとんどいなかった。たまにキャンペーンをやるときにトレーナなどの職員を動員する程度である。

営業員を雇うお金を顧客満足に回せばもっと経営は楽になるはずだ。
少なくとも費用のかからない顧客満足作戦はいくらでもある。


このコラムは、2008年6月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第39号に掲載した記事です。

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顧客感動

先週は「顧客満足、顧客不満の解消」について考えてみた。今回はそれらを超越した「顧客感動」について考えたい。

ずいぶん前のことだがTVコマーシャルで「デライト」という言葉を知った。
たばこ会社のコマーシャルで、タバコを吸おうとした紳士がそばに子供がいるのに気がつきそっとタバコをしまう。という映像に「デライト」という言葉がかぶさってくる、というコマーシャルだったと記憶している。

顧客満足(Customer satisfy)と顧客感動(Customer delight)の違いとは
「顧客満足」は顧客の要求を100%満たしている状態。
「顧客感動」は顧客の要求を超えた品質(機能、性能、質感など)
と定義すればわかりやすいだろうか。

以前指導していた電動バスの製造企業は售后服務(アフターサービス)という部門があり、顧客クレーム対応をしていた。バスのモータが故障したということで、即顧客訪問。迅速な対応は良いが、車内に持ち帰った情報は、不良と言われたモータの外観写真のみ。

これでは技術も品証も何も動けない。

售后服務としては、不良現品を持ち帰る手筈を整え早急に不良解析を行い、不良原因を突き止め、顧客に対して他のバスへの波及の可能性を含めて報告しなければならない。これができてプラスマイナスゼロの成果だ。

ここで「顧客感動」レベルの対応はなんだろうか?
顧客の立場に立って考えれば、答えは明確だ。
顧客がバスの故障で困るのは「運行ダイヤの維持をどうやって実現するか」ということだろう。これを素早く解決すればプラスマイナスゼロからプラス側に振れるだろう。

実は全く故障しないバスを提供しても、顧客はその凄さに気がつかない可能性がある。稀に故障するがその対応が素晴らしい。というのが理想状態なのかもしれない(笑)


このコラムは、2021年8月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1179号に掲載した記事です。

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顧客満足vs顧客感動

 以前CMでカスタマーデライトというキャッチコピーが使われていた。
顧客満足より顧客感動(カスタマーデライト)という意味を表現しようと考えたのだろう。しかしそのキャッチコピーは煙草の宣伝に使われていた(苦笑)

一昔前は「品質が良い」というのは「不良がない」という意味で使われた。
中国の商店では、購入前に不良でない事を確認してから買うのが常識だった。ランプひとつ買うときも、必ず店先で点灯検査をしてから買う。
しかし「不良がない」というのは「当たり前品質」だ。

当たり前品質が満たされても「満足」は感じない。ただ「不満」を回避するだけだ。顧客が買いたいと思うのは「魅力的品質」だ。持っている事で、周囲から羨ましがられる、自己満足できる。そんな製品が魅力的品質を持つ。

高品質の製品を作っても売れるとは限らない。魅力的品質の製品ならば顧客は競うように買うだろう。すでに我々の周りは、高品質製品は当たり前品質となっている。魅力的品質を製品に作り込まねば売れない。

我々は当たり前品質の製品を作る製造業から、魅力的品質を作り出す創造業に転換しなければならない。


このコラムは、2021年3月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1106号に掲載した記事です。

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ビール、2割値上げの店も 安売り規制、戸惑いの声

 お酒の過度な安売りを規制する改正酒税法などが1日施行され、ビールや発泡酒の値上げが相次いでいる。ねらいは街の小規模な酒屋さんを守ることだが、一気に2割の値上げに踏み切る店もある一方、違法な安売りの基準があいまいで、戸惑いの声も広がる。

(以下略)

全文

(朝日新聞電子版より)

 このニュースのどこが失敗なのか?と言う疑問をもたれる方もあるだろう。確かに失敗とは言い切れない。しかし過去から弱者保護の名目で行って来た政策は、うまくいっていない。むしろ弱者をより弱者にしてしまっていると言った方が適切ではなかろうか?

例えば農業。日本程美味い米を普通に生産出来る国は他にはないだろう。農協により農家の経営努力を奪い、日本の農家が世界市場に目を向けるのを妨げていたのではなかろうか。近年、志の高い農業経営者が様々な方法で結果を出している。

町の小さな酒屋さんの経営が難しいのは、想像にかたくはない。資本力,販売力が有る安売り酒販店、スーパーマーケットなど競争相手がどんどん増える。更に異業種のネット通販が参入して来る。この様な経営環境の変化に対応して行くのが「経営」でありそれを放棄してしまっては、成長はあり得ない。

人が物を買う時の判断基準は「価格」だけだろうか?
「あなたから買いたい」と言われる酒屋を目指したらどうだろう。新聞記事には、80代の女性が6缶パックのビールを毎週3回買うと有った。ひとパック2kg以上あるはずだ。他の食材も合わせれば、老齢の婦人には相当の負担になるだろう。毎晩冷えた缶ビールを3缶ずつ届けたらどうだろう。ひょっとすると、本当は瓶ビールを飲みたいのに、重いので缶ビールで我慢しているのかも知れない。酒屋ならこの欲求を満たす事が出来る。

「ご用聞き」と言う昔からの習慣は、顧客の要求をより深く理解するためのシステムだ。コンビニのPOSから集めたビッグデータよりも、対面で聞き取る顧客要求の方がより即効性があるはずだ。その上ビッグデータでは不可能だが、顧客との関係性を深める事が出来る。

最近問題になっている宅配便の再配達問題も、町の酒屋さんが配達を受託する事で、緩和出来る可能性がある。発送品の受付代行は以前からやっている。中元,歳暮の季節に進物として酒類を送る人が多いからだろう。受付代行だけではなく、配達も代行する。酒屋さんが配達のついでに、宅配便も配る。宅配便配達時にご用聞きのチャンスがあるはずだ。

今回の規制で、消費者物価指数を僅かに上げる効果はあると思うが、本当に町の酒屋さんの経営が楽になるだろうか?重要な事は町の酒屋さん自身が経営改善のために工夫を凝らす事だろう。


このコラムは、2017年6月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第531号に掲載した記事です。

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無駄を見直す

 製造業にとって「無駄」とは価値を生まない時間、作業、モノであり、根絶対象だ。サイクルタイムの不均衡により生じる待ち時間、作業中の不要な動作、製品の機能に貢献していない部品などは削減するに限る。この時の判断基準は顧客基準でなければならない。待ち時間や不要な作業動作を考える時に、顧客基準で考える必要性はあまり思い浮かばないかもしれない。しかし自分たちにとっての無駄が、顧客にとって価値となる場合がありうる。

先日カンブリア宮殿で「クリーニング店・東田ドライ」を紹介していた。
三代目が事業を引き継いだら赤字と判明。ファストファッションの浸透や、家庭用洗濯機の高機能化等で、クリーニングを利用する客は年々減り続ける。閉店に追い込まれる店も少なくない。業界全体が斜陽産業化している。その中で東田ドライは、宅配クリーニングで急成長を遂げた。クリーニング+宅配という新しい業態だけで成長したわけではないと私は思う。

クリーニング+宅配という新しいビジネスモデルだけでは、同じ業態の競合が参入すればすぐにシェアの奪い合いになる。東田ドライにあった参入障壁は「おせっかい」だ。

預かった洗濯物のシミを落とす。ボタンを付け直す。ほつれを繕う。その様な作業をしても料金は上がらない。経営的に見れば、無駄な作業だ。しかしこの判断基準は自己基準であり、顧客基準ではない。顧客基準で見れば、他社にない付加価値を生む作業となる。

二代目経営者はこれらの技術を実直に磨き、三代目経営者がその価値に気が付きセールスポイントとした。クリーニング+宅配というビジネスモデルと「おせっかい」で黒字化し、さらに事業拡大を続けているのだ。

我々製造業にとって、気が付いていない付加価値を顧客基準で見つけるのは難しいかもしれない。しかし
部品の生産、材料の加工をしている工場は「顧客の生産を支えるサービス業」市場ユーザに製品を生産している工場は「顧客の生活を支えるサービス業」という視点に立てば、顧客基準で無駄と付加価値を見分ける事ができるだろう。


このコラムは、2018年6月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第681号に掲載した記事です。

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売上減少対策

 先週は、化学製品の卸売業を営む中国人オーナー経営者の経営相談を受けた。

50代のオーナー経営者は、東莞で1社卸売業を立ち上げ、その後順調に支社を東莞市内に立ち上げて行った。準備中の会社を含めて現在8社を経営している。危険物を取り扱うので鎮ごとの許認可が必要であり、分社化して経営している。

全体の売り上げは上がっているのだが、最初に立ち上げた会社の売り上げが、1億元/年から半減してしまった。従業員がさぼらずに仕事をするように、賞罰制度を導入してみたが上手く行かない。どうすれば、従業員がさぼらずに、業績に貢献する様に仕事をしてくれるのか?と言うのが相談内容だ。

彼らのビジネスは、元売りのメーカから製品を仕入れ、エリアごとの代理店に卸売りをする。営業マンは、担当代理店を回り注文を取って来る。注文が目標未達の場合は罰金、超過達成の場合は報奨金が出る。

帯同した人事制度系の中国人コンサルは、人事制度の改善を説明していたが、答えはそこにはない。

このメルマガの読者様は、この悩める中国人経営者にどのようなアドバイスをするだろうか?ちょっと考えてみていただきたい。

(考えました?)
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魂のこもった仕事

 NHKテレビ「仕事学のすすめ」の録画を,まとめ見した.

その中に建設機械のコマツ社長・坂根正弘氏が紹介されていた.
坂根氏が社長に就任した時に,社内はこんな状況だったそうだ.
販売した建設機械に対する顧客満足度を,毎月社長に報告していた.そのデータは,サービス部門が顧客に電話を掛け聞き取り調査をしてまとめる.

例えば,自社が販売した建設機械が48時間以上故障で稼動できなかった,など稼働状況も把握していた.しかしこのデータは,経営会議に上げられるだけで,担当営業所,設計部門,製造部門には上がらない.

経営会議で必要だから,データを集め,綺麗なグラフにする.これは「仕事」ではなく「作業」だ.魂を込めて仕事をするということは,その仕事の意味を理解するところから始めなければならない.

データを集める目的は,顧客満足状況を把握し,顧客満足を高めることのはずだ.経営会議にデータを提供することは,手段であって目的ではない.このデータを顧客満足を高めるために,製品設計の改善,生産品質の改善などに役立てなければならない.

日々のルーチンワークに陥り,仕事を作業としてしまうと,仕事には魂がこもらない.
コマツといえば,TQM先進企業だ.そのコマツでさえこういう事態に陥っていたのだ.

毎日の生産記録を班長日報で報告させているが,その記録は誰も見ていない.
品質管理部が毎月工程内不良率をまとめて,QA会議で報告するが,製造部門はそれを把握していない.
顧客クレーム内容は,製造部門にはフィードバックしているが,設計部門にフードバックしていない.

経営会議,QA会議などでのデータを見ると,きちんと運営できているように見えるが,内実は上記のような事態に陥っているのを見ることがある.

一度ご自信の会社で点検してはいかがだろう.

参考書籍
建設機械のコマツ会長・坂根正弘氏のダントツ経営(NHKテレビテキスト)
『ダントツ経営―コマツが目指す「日本国籍グローバル企業」』小松正弘著


このコラムは、2011年10月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第225号に掲載した記事に修正・加筆しました。

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