投稿者「master@QmHP」のアーカイブ

中国小売り流通業の実力

 中国の流通業は、組織化のレベル、流通効率、物流コスト、ロスプリベンション及び人員体制の方面で、先進国との間の差が明らかである。
 欧米先進国の商業流通業は既にチェーン経営の時代に入っており、チェーン経営販売額は全ての販売額の60%以上を占め、アメリカでは80%に達している。これに対し、中国の2010年チェーン小売企業売り上げは社会消費品小売総額の17.2%にすぎない。
 流通効率の面から見ると、違いが明らかである。中国の一定額以上の卸売小売企業の在庫商品総額は年間販売額の7.38%を占めるが、アメリカ、日本、フランス等の非製造業の同様の指数の最高はわずか1.29%である。
 中国の物流コストは、2010年は対GDP比17.8%、2011年は18%へ上昇した。
これに対し、アメリカ等の物流コストは多年にわたり対GDP比10%前後である。

西部商報2011年4月5日より

 私は小売り流通業には門外漢だが、中国流通業の効率の悪さを感じる。
中小の小売業者ではなく、ウォールマートやカルフールなどの大手の業者だ。ウォールマートは、衛星通信技術を駆使して全世界4,000余りの店舗管理をしていると聞く。
その先進的な管理は、中国には行き届いていないようだ。

在庫商品の割合を見ると、中国の大手小売業者は約28日分の在庫を持っている。一方米国、日本、フランスなどでは5日分余りしかない。

どういう仕入れ管理をしているのかわからないが、牛乳など鮮度が問題になる商品をまとめて仕入れており、運が悪いと数日前の商品ばかり売り場に並んでいる。期限切れ間近の商品を「買1送1」で投げ売りする。仕入れコストをケチって、より大きな損失を出している。

そして店員が大量にいる。
売り場ごとに専門の店員がいて、何を探しているか聞いてくる。そしてお勧め商品を紹介してくれる。考えようによっては、スーパーでもハイタッチ接客サービスを提供しているようにも思える。しかし中国人の友人に聞くと、店員が勧める商品は絶対買わないという。早く売り切りたいから客に勧めているのだそうだ。

2008年にメラミン入り牛乳が問題になった時に、「当店の牛乳は安全」というポップとともに、「メラミン検査済み」のシールを貼付けて販売していた。商品をみると、メラミン混入が報道される以前の生産品だ。在庫品に問題があろうがなかろうが、早く売り切りたいという意図にしか見えなかった。

また大量にいる店員が、通路を閉鎖し棚卸しや、品出しをしている。
顧客の少ない時間帯ではない。週末の夕刻などのピーク時間帯でも顧客を通路から閉め出して作業をしている。

棚の上に積まれた商品を、ヘルメット姿の店員が脚立に乗っておろしている。作業の安全を確保する意味では、ヘルメットの着用は良いことだろう。しかし棚からドサドサと落とされた商品がそのまま陳列棚に並ぶ。客は粉々になったインスタントラーメンを買うことになる。

「顧客目線」を持たないビジネスは、うまく行くはずがない。
しかし、ウォールマートもカルフールも、連日多くの客が来店しており、レジで10分待たされるのは当たり前だ。「当たり前のサービス」を提供できる業者が出てくれば、即淘汰されるだろう。

中国生活者としては、早くその日が来ることを願うばかりだ(苦笑)


このコラムは、2012年5月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第257号に掲載した記事です。

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中国、牛乳も汚染 粉ミルク混入は行政が隠ぺいか

 【北京=峯村健司】中国の国営中央テレビは18日、国家品質監督検査検疫総局が大手乳業メーカー「蒙牛」「伊利」「光明」の3社の製品サンプルの約1割から、化学物質メラミンが検出されたことを明らかにした。牛乳へのメラミン混入が判明したのは初めて。国民の不信感は乳製品全体に広がり始めた。

(asahi.comより)

 三鹿集団が粉ミルクにメラミンを混入して生産・販売、これにより多くの乳幼児が健康被害にあっている。この事件を受けて中国当局は109社の粉ミルク工場の製品を調査し22社の製品からメラミンを検出している。その中には『蒙牛』『伊利』『光明』など中国最大手のメーカも入っている。

この事件は事故でメラミンが混入してしまったのではなく、水で薄めた原料の蛋白質量を補うためにメラニンを故意に添加したというところに戦慄を感じる。

昨年中国産のペットフードにメラミンを混入させ世界中からたたかれたばかりである。今回は自社の利益のために自国の幼い命を危険にさらした。

四川大地震以来、私は中国人の他人を思いやる心や貢献心を見直していたが、今回の事件は大変失望した。

日本人は一人では何も出来ないが、チームを作ると大きな力を発揮する、といわれている。
中国人は一人ひとりは良い人でも、集団になるととんでもない悪い事をする、ということなのだろうか。

いずれにせよ、近所のスーパーには『蒙牛』『伊利』『光明』の牛乳しか売っていない。今回の事件は私の食生活にも直接影響を与えており、憤りと困惑を禁じえない。


このコラムは、2008年9月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第53号に掲載した記事です。

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中国的交通事情

 中国に住んでいて未だに慣れないのが交通事情だ。車は絶対に止まらない。青信号でも道路横断は要注意。日本にいたときの感覚でいると危ない目に会う。

信号無視は当たり前。反対車線を走ってくる車もある。
確かに事故は多いようだ。しかしこれだけ無秩序な交通ルールだともっとひどい事故がそこいらじゅうで発生しているはずだが、そうでもない。

日本では皆が交通ルールに従って運転していると言う前提があるので、信号無視などすればたちまち交通事故が発生する。

中国では相手が何をするか分からないと言う前提で運転をしているのであろう。思ったほどは事故が多くはない。
信号やセンターラインはたんなる「参考」程度、という認識で運転していればそれほど交通事故が発生しないのであろう。

国外から出張に来る友人は車に乗っている間中緊張している。中には車の外を見ない様にしているという友人もいる。

中国的交通事情も早く世界水準に達してほしいものだ。
オリンピックが終わったばかりの北京では中国的交通事情は少しは改善されたのだろうか?


このコラムは、2008年9月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第49号に掲載した記事です。

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生産委託先の指導について

 中国の工場に生産委託をしているが、なかなかうまくゆかない。資本関係もなく言う事を聞いてもらえず苦労をしている。こういう方が多いのではないだろうか?

私も前職勤務時代中国の生産委託先の指導で苦労した事がある。

当時は出張ベースで生産委託先を指導していた。
まずは現場に張り付かなくても良いように作戦を立てた。

  • 毎日生産の結果を報告してもらう。
  • 報告には生産量、各検査ステーションでの不良数、不良原因を入れてもらう。
  • 想定される工程内不良率の上限を決めておき、毎日のレポートでアラームが出たらすぐ出張指導に行く。

こんなスタイルで生産を開始した。当初はかなりすったもんだがあった。同じ内容の不良が続き、緊急出張した。当初は1週間で帰るつもりが1ヶ月になった事もあった。

それでもすぐにすばらしい成果を出してくれるようになった。
自社の海外工場で作っていたプリンター用電源装置を生産移管した時は、いきなり工程内不良率100ppm台を初月から達成した。自社工場ではここまで持ってくるのに半年かかった。

この時に自分たちで、どうしてうまく行ったのか分析をしてみた。
結論は、経営者の信頼をうまく取り付けたことだ。経営者に我々の言う事を聞いていれば、自分の工場の品質がよくなると信じさせる事が大切だ。

実はこの経営者をお客様の前で叱った事がある。

お客様が非常に高い品質要求を言ってきた時に、経営者は「品質をよくするためにはコストがかかる」と反論した。
即座にそれを否定して「品質とコストがトレードオフ関係になるような状況を作るべき ではない」と諭した。当然お客さんは私の味方になる。

経営者の面子をつぶしてしまい、まずいことをしたと当初思ったが、これが逆に経営者が我々を信頼するきっかけになったようだ。

資本関係のない委託先でうまくやるのは経営者にこちらを信頼させるのが第一だと考えている。これができていると現場の指導もすごくやりやすくなる。


このコラムは、2008年6月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第37号に掲載した記事です。

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以を視、由を観、安を察する

yuē:“shìsuǒguānsuǒyóuchásuǒānrényānsōuzāirényānsōuzāi!”

《论语》为政第二-10

素読文:
いわく:“もちうるところところやすんずるところさっすれば、ひといずくんぞかくさんや、ひといずくんぞかくさんや。”

解釈:
人の値打ちを見るときには、何をするか、なぜそれをするのか、そしてどの程度で満足するのかを見れば、その人の人となりは隠せるものではない。

稲盛和夫氏はKDDIを創業するときに「動機善なりや」「私心なかりしか」と自らに問うたと言われています。つまりKDDI創業の由る所、安んずる所を明確にしようとしたのでしょう。

行列のできるカリン糖屋

先週香港まで畠中一郎さんというコンサルタントのセミナーを聞きに出かけた。
経営者が知らず知らずのうちに、周りが見えなくなり経営が危なくなる状態のことを「不知の病」と形容されていた。

そのときこんなエピソードを紹介された。

駅舎内にカリン糖を売っている商店がある。ここは大変人気店であり、四六時中行列ができている。

畠中氏は、こういう状態を消費者がどう感じているかをスタッフや知人を動員してその店の前を往来する人100名に聞いてみた。実はこういう行列が出来ているお店では、買い物をしたくないと答えた人が半分を超えたそうだ。

たくさん行列ができている商店の店主は、順調に商売が繁盛していると慢心していると、実は半数以上の顧客を逃していることに気がついていないのかもしれない。
これが「不知の病」の第一歩となり、あっという間に足元をすくわれてしまうということにもなりかねない。

順調の時は繁盛に目を細めるのではなく、ビジネス上の仮説と検証を繰り返し、常に目を見開いていなくてはならない。


このコラムは、2008年6月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第39号に掲載した記事です。

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タイヤ直撃事故 ボルトすべて破断、一部は以前から?

 東名高速の吉田インターチェンジ付近で11日午前に起きたタイヤ脱落事故。トラックにタイヤを固定するボルト8本はすべて破断し、うち2本の破断面にはさびが付いていた。専門家は、2本は事故以前から折れていて、残ったボルトに過大な力がかかった可能性があるとみている。

(asahi.comより)

脱落したタイヤが対向車線に飛び出してバスの運転台に激突し運転手さんが亡くなっている。大変気の毒な事件である。

トラックの運転手は始業点検をきちんとしていたのだろうか?
そして運送会社はどのように始業点検を指導していたのだろうか?

タイヤを固定するボルト2本は破断面に錆が発生していたというのであれば、始業時、休憩時の点検で見つかったはずである。ナットの頭をハンマーでたたいてみれば異変に気が付いていたはずだ。

運転手は、顧客と会社の財産を安全に運行する義務、自分自身と社会に対して身体人命の安全を図る義務がある。
また会社も同様に、顧客の財産を守る義務、従業員とその家族の生活を守る義務、社会に対する安全義務がある。
日常点検という作業がこれらの義務から発生しており、重要な予防保全活動であることをきちんと認知をする必要がある。

あなたの工場でも日常点検作業が確実に行われなかったときのリスクをきちんと評価して、従業員に再度徹底してみてはいかがだろうか。

ところで金属破断はそのメカニズムによって破断面が大きく異なる。
最初に折れていた2本のボルトは、長期間にわたって「疲労破壊」をしたものと推定できる。この場合破断表面は滑らかな表面になる。
一方最後に折れたボルトは、本来8本に分散していた荷重が1本に集中したため、過大な荷重に耐えられず破断したはずである。この場合のは断面は荒れたものになる。


このコラムは、2008年4月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第29号に掲載した記事です。

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会員制ビジネス

 中国で通っているジムを紹介しよう。
私が住んでいるアパートの2階にジムがある。狭いのと料金が高いのか難点だが、同じ棟の中にあり便利である。設備もまぁまぁである。

しかしここのジムの経営者は、「会員制ビジネス」のメリットをあまり認識していないようだ。
いまだに大量の営業員を街中に送り出して、新規顧客の勧誘に精を出している。
「会員制ビジネス」の大きなメリットは、会員の紹介で会員が集まる、と言う営業いらずの部分にあると思う。

従ってビジネス拡大に一番重要なことは「既存顧客の満足」であるはずだ。残念ながらこのジムはこの点に関して二流以下である。

まず第一に経営者が顧客に何も挨拶をしない。私がジムに行く時間帯にはよく経営者が顔を出している。しかし経営者は私と目が合っても会釈すらしたことが一度もない。

シャワールームの工事中、工事のための資材がロッカールームに山積みされてロッカールームに入ることできなかった。シャワーが使えないだけでも不満なのに、ロッカールームにすら入れない。

スタッフに工事に今不要な資材を撤去してロッカールームに入れるようにしてほしいと何度も提言したが、話を聞くだけである。顧客の利便性よりは工事業者の利便性を優先している。

経営者に私から話をする、と言っても一向に取り次がない。
顧客の声を殺してしまい、成長のチャンスを見逃しているとしかいえない。

不届きな会員が共有のロッカーに自分の鍵をかけて占拠しているのも「没方法」と言いまったく改善しない。

これでは友人にこのジムを勧める気にもなれない。
従っていまだに新規顧客獲得のために大量の営業員を雇用し続けている状態である。

日本にいたときのジムも、東莞の田舎町のジムでも営業員などほとんどいなかった。たまにキャンペーンをやるときにトレーナなどの職員を動員する程度である。

営業員を雇うお金を顧客満足に回せばもっと経営は楽になるはずだ。
少なくとも費用のかからない顧客満足作戦はいくらでもある。


このコラムは、2008年6月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第39号に掲載した記事です。

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教育

 「モノ造りは人造り」とよく言うが、品質改善・生産性改善を極めてゆくと必ず人事制度、人材育成問題に突き当たる。

人の能力にはIQ、EQ、SQがある。
IQ、EQはご存知の通り、Intterigent Quotient。Emotional Quotientの略である。
SQは私の勝手な造語でSkill Quotientの意味。

すなわちIQは頭、SQは体、EQは心を鍛えるという図式である。

まずは知識を教え込みそれを現場教育(OJT)を通して技能として体に叩き込む。
更にこれらの成長が加速継続するように行動開発を通してモチベーションを上げる、というわけだ。この行動開発がEQを高める教育に当たる。

知識や技能は教育訓練するのは比較的易しい。またその効果を確認する方法も比較的簡単である。

一方道徳研修、リーダシップ育成などの行動教育はその教育効果を計測するのが困難である。教育後のテストでは知識面の評価しかできない。EQを高める教育の効果は、やはり現場での行動発揮で評価するしかなかろう。

あなたの工場ではどんな教育・訓練を実施しておられるだろうか?


このコラムは、2008年4月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第30号に掲載した記事です。

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介護用電動ベッドから出火?

介護用電動ベッドから出火? 83歳女性重傷

 29日午前5時ごろ、横浜市磯子区滝頭2丁目、無職神鳥ハナイさん(83)方の介護用電動ベッド付近から出火。ベッドに寝ていた神鳥さんが下半身に大やけどを負った。

(asahi.comより)

写真を見るとベッドの下半分が焼失している。
記事には出火原因は書いていなかったが、出火原因を推定してみる。

・モータのレアショートによる過電流。過熱→出火
・AC電源取り入れ部分の接触不良によりスパーク発生。付近の可燃物から出火
・タバコ火による失火

現場検証によりベッド下のモータ付近からの出火と推定しているので、「たばこ火」は否定されるが考えうる原因を全て挙げる。
モータのレアショートに関しても駆動回路に過電流保護があるからと簡単に消去しない。
過電流保護回路も何らかの理由により失効する可能性はあるからだ。

こうして列挙した故障モードを自社製品に当てはめてみる。
これらの潜在故障モードの影響を検討し、対策ができているかどうか検証する。

このようによそで発生した不具合事例から自社製品の「不具合未然防止対策」を検討する。
不具合が発生した時に「再発防止対策」を検討するのは当たり前だが、このようにまだ発生していない不具合に対する予防処置ができれば要らない「授業料」を支払わずに済む。


このコラムは、2007年12月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第14号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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