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変化と変革

 「変化」と「変革」は似ているようだが明確な差がある。
辞書を調べてみると、
「変化」:ある状態や性質などが他の状態や性質に変わること。
「変革」:変えて新しいものにすること。変わって新しいものになること。
とある。

変化は、ポジティブな変化もあり、ネガティブな変化もある。改善も劣化も変化だ。しかし変革はポジティブに変わることだ。

変化も変革も「変わる」ことは同じだが、変化は受動的、変革は能動的と定義できそうだ。

そして変化は受動的であるため、変化に対応するリーダが必要となる。
一方変革は能動的であるため、変革を起こすリーダが必要になる。

【変化リーダの資質】短期・中期のリーダシップ
 迅速な判断力・決断力
 メンバーの統率力
 変化(事故、火災、景気後退)は迅速に対応しなければならない。軍隊式のリーダシップで一気に解決しなければならない。

【変革リーダの資質】中期・長期のリーダシップ
 理念・ビジョンの策定と浸透
 メンバーの育成力
 変革(組織変革、新規市場進出)には一気呵成よりは周到な進捗が必要だ。
理念・ビジョンがぶれないようにし、メンバーの意欲と能力を高めて戦略的に取り組む。

向き不向きはあるだろうが、局面に合わせて変化リーダ、変革リーダを担える人財を育成できれば鬼に金棒だ。


このコラムは、2020年11月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1053号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

人の心にビジョンを描く

 自分自身の心にビジョンがフルカラーで、かつ日付入りで描かれている人は、そのビジョンが実現する可能性が高いと言われている。「フルカラー」というのは私の比喩だが、ビジョンが明快・詳細になっているという意味だ。

私の個人的な見解では、ビジョンを他人の心に描く事が出来る人はビジョンの実現可能性は、更に上がる。

考えて見れば、当たり前だろう。自分のビジョンを投資家の心に描く事が出来れば、資金調達の心配は無くなる。自分のビジョンを従業員の心に描く事が出来れば、従業員はビジョン実現のために一生懸命働いてくれる。

実は私の心にビジョンを描いた中国人経営者がいる。
自動車部品の工場を経営している中国人だ。彼はやたら「PK」という言葉を使う。「PK」とはペナルティキックの略称で、一騎打ちという意味だろう。「ビル・ゲイツとPK」などとしばしば発言するので、ただの大ボラ吹きだと思っていた(笑)彼のビジョンは、自分の会社をフォーブス500企業にする事だ。

私が指導していた当時、彼の工場は従業員100名弱の町工場だった。彼はビジョンを実現するために、先ずは従業員の給与を倍増させた。保安係、清掃係も例外なく上げた。

このあたりから、この男はただのホラ吹きではないと思い始めた(笑)

彼が同業の経営者の心にビジョンを描けば、合併により企業規模が一気に2倍になる事もあり得る。成功者は必ずしも一人で成功する訳ではない。同じ志の者が協力する事で成功への道は近くなるはずだ。

彼は私の心にはビジョンを描いたが、従業員の心には描ききれなかった様だ。
私にはドミノが一つずつ倒れていく予感がある。しかし従業員にはホラ話にしか聞こえなかった様だ。

経営者には、従業員の心を動かす表現力も必要なのだろう。


このコラムは、2017年5月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第526号に掲載した記事です。

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目標達成

 日系企業は4月が年度始まりの所が多く、そろそろ来年度の事業計画や目標の設定をしておられる事だろう。
中国で仕事をされている方は、春節が区切りなので既に目標設定は大詰め段階だろう。

新年になって個人の目標設定をされた方もあろう。朝日新聞電子版にこんなコラムがあった。

「今年こそ目標達成! 脱・三日坊主のコツ」
 新年の目標は立てましたか? 毎年最初はやる気マンマン! でも、気がつけば三日坊主……。そんなあなた(とわたしたち)のために、目標達成のコツを取材しました。

目標を達成するためには、まず正しく目標を設定しなければならない。コラムにも書いてあるが、「痩せる」「英語を頑張る」は目標ではなく、願望だ。目標であるためには以下の条件が必要となる。

  1. 具体的である事:Specific
    何をどうするのかが明確である。
    「痩せる」「英語を頑張る」では何をどうするかが明確ではない。
  2. 測定可能である事:Measurable
    結果を測定出来る。
    現状と目標が測定出来る必要がある。「痩せる」ならば体重や体脂肪率で測定可能だ。
  3. 達成可能である事:Achievable
    努力すれば達成可能である。
    簡単に達成出来てしまうモノを、わざわざ目標にする事はない。努力をすれば達成出来る事を目標とする。どう考えても達成不可能な非現実的目標を設定しても達成のためのモチベーションが上がらない。非現実的な目標を持つ事が、自分は駄目な人間である事を確認する行為になってしまっては逆効果だ。
  4. 重要である事:Relevant
    意義がある。
    無意味な事をやり続ける事は不可能だ。その目標を達成することによりどの様な意義があるのか、分からなければ目標達成のモチベーションは上がらない。
  5. 期限が具体的である事:Time-bound
    いつまでに達成するかが明確。
    期限が決まっている事も、モチベーションを上げる要因となる。何時でも良いと言う仕事は永遠に達成出来ない。期限が入っていなければ、ビジョンとか目標とは言えない。期限が入っていなくても良いのは目的だ。これは生涯をかけ達成する己のありようだからだ。

これらの条件の頭文字をとると「SMART」となる。
目標を設定したら、スマートかどうかまず確認しよう。

目標が正しく設定出来たら、達成する方法を考えなければならない。

  • 具体的な行動計画に変える
    「痩せる」では何をすれば良いのか不明確だ。痩せるために食事を制限する、運動をする、などの行動に変換しなければならない。

    工程内不良を年内に○○ppmにする、と言う目標だけでは何をしたら良いか分からない。これを仕様決定段階、設計段階、試作段階、量産段階などに分解し、それぞれの段階でどのような行動をすべきかにブレークダウンする(長期の改善)
    同時に現状の把握により、不良現象の改善活動を計画する(短期の改善)

  • 小さな目標を作る
    例えば、痩せるために「走る」と言う行動を繰り返す事にする。しかし1回走っても、目標は達成出来ない。長い期間継続する事が必要だ。○○kg痩せると言う目標の下に、一週間で○○km走ると言う目標を置く。
    小さな目標を置くことにより、達成感が得られる。達成感は継続の燃料だ。

    工程内不良の具体的な効果は、改善対策ごとに測定が可能であり、小さな目標が設定可能だ。

    工程内不良削減の長期的対策として設計品質の向上は必ず効果はある。しかしすぐに工程内不良率削減の効果は見えない。設計審査の指摘改善件数。量産試作時の指摘改善件数などを小さな目標として設定する。

  • 定期的にチェックフィードバックをするチェックをすることにより、走った結果が目標に対してどのような成果となったかを確認する。目標達成計画に対して差異があれば、行動計画の変更を検討する。
    目標達成に長期間かかる場合は、モチベーション維持のために定期的チェックは必須だ。

「禁煙する」と言う目標は、定期的に測定出来る効果がない。だから三日坊主になり易いと言えるのかもしれない。実は私は、禁煙の天才だ。もう何度も禁煙をしている(笑)

私が何度も禁煙できる秘訣は、

  • 記録する
    今日は煙草を吸わなかったと手帳に丸印を書く。丸印がたまる事が、成果の一種となり、継続モチベーションを維持出来る。スマホなどいつも身に付けている電子デバイスのライフログアプリを利用すれば手軽だ。
  • 自分を許す
    これが何度も禁煙を成功させている秘訣だ(笑)
    以前は一度禁煙を破ると、リバウンドして喫煙量が増えると言う結果となっていた。一本煙草を吸ってしまっても、手帳に×を書くだけで、翌日は何事もなかったかの様に禁煙を継続することにした。

上記コラムにも書いてあったが、三日坊主も100回繰り返せば300日やったことになる。三日しか出来なかったとネガティブに考えれば、そこで継続終了だ。三日間だけでも健康に良いことができたと考えれば、また継続を開始出来る。


このコラムは、2014年1月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第344号に掲載した記事です。

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現場改善プラス・アルファ

 私の主な仕事は、表向きは製造現場における品質改善、生産改善だ。
しかし本当の仕事はここではない。

最近は頻繁に行くことができなくなってしまったが、多い月は3件ほど「工場無料診断」で工場を訪問してをしていた。その現場で具体的に改善ポイントを教えてしまう。

半日ほどの訪問で教えられる事は少ないが、「目から鱗でした」と感謝される事が多い。

「ただでそこまで教えちゃうの?」と同行者があきれる事もあった(笑)

例えば、4人でベルトコンベアに並んで組み立て作業をしている現場では、無料診断で訪問した時に3人で生産出来る様にした。現場を案内していた経営者はいきなり25%生産効率が上がりビックリしていた(笑)

しかし私の本当の仕事は、ここではない。現場のリーダが継続的に改善出来る様にする事が、私の本当の仕事だ。顧客の現場で、私自身が改善の成果を出す事は簡単だ。しかしこれでは、契約が終わった後は改善が継続しない。むしろ私が行った改善の成果すら薄れて行くことになる。

人を育て、人のノウハウが組織に残る様にする。これが私の役割だ。

従って、無料工場診断でホンキで改善してしまっても、私の役割を果たす水準までは到達出来ない。それなりの時間が必要となる。

例えば上記の4人作業を3人に改善した現場では、訪問後コンサル契約をいただいた。その後の指導で現場リーダ自身が3人作業を更に2人に減らした。当初と比較すれば2倍の生産性になった。

半年ほど指導した別の工場は、契約期間が終わった後に、生産効率が3.5倍になりました、と報告をよこした。

人を育てるだけではまだ不十分だ。人のノウハウが蓄積される仕組み,人が育つ仕組みを構築する事が必要となる。これが人を育て、組織を育てる事だと考えている。


このコラムは、2013年8月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第322号に掲載した記事です。

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経営の軸

 中華系の工場に行くと、経営者から「系統(システム)」を教えて欲しいとよく言われる。企業管理のシステムも、手法もそれだけで手っ取り早くうまくゆくと考えるのは幻想だろう。
システムや手法を理解しても、それを運用するのは人だ。
まずは、人の心を目指すべき方向にあわせなければ、システムも手法も役には立たない。

ではその企業が目指すべき方向、軸となるものは何か。
それは経営理念、企業の目的など、企業文化の軸になるものだ。
まずはその軸をしっかり持つことが必要だ。

先週訪問した台湾企業には、以下のような【使命】【経営理念】【ビジョン】と書かれた3つのポスターが掲示されていた。

【使命】
 不同的想法 交換与溝通

 我們分享不同的想法(多色的彩虹)
 共同創造溝通的心腹体験(単色的紅心)

【経営理念】
 個人態度
  愛:歓喜的付出 熱情:
  真誠、細心的照顧
  誠信:誠実、珍惜服務的縁分

 団隊精神
  信任:我相信你、你就会信任我
  自律:全因在我、栄辱与共
  創新:真心想要、美夢成真

【願景(Vision)】
 創造一箇有愛、富足、永続的世界

 有愛:愛、熱情与誠信(個人態度)
 富足:創造4者感動-顧客、社会、員工、経営(感動結果)
 永続:以信任。自律。創新形成自我進化(団隊精神)

中文のままだが、その内容は理解できるだろう。

経営理念を従業員全員で共有することが、第一歩だと考えている。私の個人的な感覚からすると、ビジョンとして書かれた部分は、企業の目的に相当する。ビジョンとしては、3年後、5年後に達成する目標を持ちたい。目標であるから、具体的な達成目標が入っていた方が良いと思う。

私の個人的な感想は別として、大変すばらしい経営理念だと思う。
しかもオーナー経営者が、しばしば中国工場に来て従業員に理念を理解させる指導をしたそうだ。

仕組みだけではうまくゆかない。このような理念を中心とした経営を、従業員が理解すれば、仕組みがうまく働き始めるはずだ。


このコラムは、2011年12月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第236号に掲載した記事です。

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北京オリンピック開幕

 8月8日ついに北京オリンピックが開幕された。
開幕式のショーをご覧になった方も多いと思う。
開幕式は中国の映画監督・張芸謀がプロデュースするということで楽しみにしていた。

中国の文化を表現するすばらしい仕上がりになっていたのではないだろうか。
技術的にもお約束のワイヤーワーク、プロジェクターを使った技法など工夫が凝らされていたと思う。

今回の開幕式のテーマは「人」だったと思っている。
最初の太鼓の演技から始まり、各場面で大量の演員が投入されていた。
ひょっとして会場にいる観客より多くの演員が動員されたのではなかろうかと思うほどだった。

中国映画でも同様に大量の兵士が投入されるシーンを良く見る。
人口13億の中国らしい演出とはいえないだろうか。

1980年代に改革開放路線をとり、安価な労働力を武器に外国資本を受け入れ、世界の工場・中国を作り上げた。当時農村から出てくる労働者は無限の資源のような迫力があった。

しかしここ数年で様子が変わってきた。毎年最低賃金が上がり続け、もはや他のアジアの国と比較して労務費コストの優位性はないだろう。

大量のしかも低コストの出稼ぎ労働者という「人」が、中国の経済力を今の状態に押し上げた。
そして今度はマーケットとしての魅力がこの国の経済力を引き上げ続けるであろう。今度も消費者という「人」が中国の経済力を引き上げることになる。

張芸謀プロデュースの北京オリンピック開幕式典を見てこんな感想を持った。


このコラムは、2008年8月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第46号に掲載した記事です。

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カイゼン活動

5月22日のasani.comニュースによるとトヨタ自動車が、カイゼン活動に残業代を払うことになった。以下はニュースの抜粋。

トヨタ、「カイゼン」に残業代 業務と認定、来月から

 トヨタ自動車は21日、生産現場の従業員が勤務時間外にグループで取り組む「カイゼン」活動について、残業代を全額支払うことを決めた。月2時間までとする残業代の上限を撤廃する。「自主的な活動」としてきたカイゼン活動を「業務」と認定する。
労働組合も了承しており、6月1日から実施する。

 長時間労働による健康被害や過労死が深刻化する一方、「名ばかり管理職」への批判を受け、日本マクドナルドが直営店の店長に対する残業代の支払いを決めたばかり。
サービス残業と指摘されたカイゼン活動を残業と認めるトヨタの方針転換で、製造業でも「働き方」と「報い方」のバランスを見直す動きが広がりそうだ。

 カイゼン活動は業務であるからその報酬が支払われるのは当然だ。
しかしトヨタの中で、何かが変わり始めているのを感じる。

従業員が自らの成長のために「業務以外の仕事」を会社に残ってやる。
それが会社にとって生産性のカイゼン活動になっている。
という黄金の労使関係がトヨタには存在していたのではないだろうか?
もちろん部外者の私には知る由もないのだが、私にはそのように見えていた。

従業員が、自らの成長のために喜んで仕事をする。
仕事を通して成長する、その成長によって豊かな暮らしを実現する、という単純な図式は、豊かになってしまった日本ではもう通用しないのかもしれない。

仕事以外に自己実現、自己表現の手段がいくらでもある日本の環境では、若者のワークスタイルも変わってしまったのだろう。

しかし中国の若者には「自己成長」「豊かさの実現」に対する強い渇望がまだある。これらを求心力として会社経営をすれば、成長し続ける組織を作る事が出来ると考えている。

私がお手伝いしている工場では、カイゼン活動に参加した「選ばれたメンバー」には活動期間僅かな奨励金が出ている。しかしそれ以上にカイゼン活動に参加すること自体が、自己成長に大きく寄与し、「プライスレスの価値」がある事を理解してもらいようにしている。
これがカイゼン活動に対するモチベーションを上げ、その後の彼らの仕事への意欲にも影響を与えていると考えている。


このコラムは、2008年6月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第39号に掲載した記事です。

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幸せとは

 「幸せとは何か?」人生の残り時間が少なくなった人間が、そんな事を真剣に考えるのもどうかと思う(笑)しかし自分の部下や従業員が幸せになれば、自分も幸福感を持てるだろう。
幸せなメンバーが多くいる組織は成果を出している。成果を出している組織のメンバーが幸せになる訳ではない。因果関係が逆転しているように見えるがが、そんな研究結果を発見した人がいるそうだ。

物販のコールセンターを比較調査してみると、成果とメンバーの能力には相関がなかったそうだ。幸福だと感じているメンバーの人数と成果に相関関係が有ったと言う。
人は成功しているから幸福と感じるのではなく、幸福だと感じている人が成功していると言うのが真実のようだ。

従って、従業員の幸福量総和を上げれば、企業の業績も上がる。

では給料をたくさん出せば、企業の業績は上がるか?
経営者としては、リスキーな賭けだろう(笑)
少なくとも業績が上がらなければ、給料をたくさん出す事は出来ない。

しかし人が幸せになるのは、金銭的に満たされた時とは限らない。
世の中には、いくらお金が有っても足りないと感じている人もあれば、少ない収入でも幸せを感じる人もいる。
そんな訳で、年甲斐もなく「幸せとは何か?」といつも考えている。

自分なりの仮説は「人の役に立っていると実感すること」が人に幸せを感じさせている。社会の役に立っていると言う大きな存在意義でなくても、家族の役に立っている、同僚の役に立っている、お客様の役に立っている。
仕事を通してそのような実感を持ち、その事に幸福感を持てれば、仕事に夢中になるはずだ。

あなたの部下の仕事がどのように同僚の役に立ち、顧客の役に立ち、社会の役に立っているのか、語りかけてみてはいかがだろう。
益は有っても損はないはずだ。


このコラムは、2016年1月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第459号に掲載した記事です。

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TODOリスト

 多くの方がTODOリストを活用されていると思う。
やらねばならないタスクをリストアップし、一つずつ消し込んでいくリストをTODOリストと呼んでいる。手帳に書く、ポストイットに書く、電子デバイスを利用する、など自分の好みに合わせ様々なスタイルがあると思う。

私も、紙やデジタルでTODOリストを使っているが、消し込みを忘れることがよくある。翌日この件処理したかな?となった時は、メールソフトの送信済みフォルダで確認できることが多い。多くの仕事が人とのコミュニケーションで成り立っているためだろう。

先週PCの電池が寿命となり、電池を交換した。
その後遺症で、メールソフトの送信済みの記録がいくつか消えてしまった。2件ほどTODO項目が未処理のように見えて、ずいぶん焦った。
TODOリストの消し込みは重要だと再認識した。

実はTODOリストの消し込みには別の効果もある。
TODOリストの消し込み動作が、小さな達成感となり仕事へのモチベーションとなる。有名人の手帳にあるTODOリストが赤いマーカで塗りつぶすように消し込んであるのを見たことがある。小さくレ点を入れるのではない。目立つ様にわざわざ赤で塗りつぶしてある。多分自分のモチベーションを湧き立たせる
為にそうしておられるのだろう。

もう一つ、TODOリストには「動詞」ではなく「動作」を書くというヒントをいただいたことがある。

「メールマガジンを書く」という作業は、私にとって既に習慣の一部になっているのでTODOリストに書くことはない。しかし例として「メルマガを書く」とTODOリストに書いたとしよう。

多分このTODOリストの着手がなかなか始められず、後回しになるだろう。

まず「メルマガを書く」という塊を動作に分解する。
動作0:メルマガのネタになる思いつきや話をネタ帳に書き留める。
動作1:ネタ帳を見て、今週のコラムのテーマを決める。
動作2:エディタを起動し、メルマガのテンプレートを開く。
動作3:メルマガ原稿をタイプする。
動作4:メルマガ原稿を推敲する。
動作5:配信予約をする。

このくらいに分けておけば、一つのタスク(動作)をクリアする閾値は低くなる。タスクをクリアするたびに、ランナーズハイと同じ様にモチベーションが湧き上がってくるだろう。

「メルマガを書き上げる」という大きな塊の動詞のままでは、こうは行かない。

部下に仕事を与える時も同じだ。
もちろん優秀な部下に、動作に分解して仕事を与えてはいけない。
新人には、仕事を動作に分解してみせて仕事を教える。
中堅には、仕事を動作に分けさせ、仕事が達成する様に動作をチェックする。
中堅以上になれば、仕事を任せ結果でチェックすればよいだろう。

TODOリストの運用も同じだと思う。
既に習慣となっている仕事は結果だけをチェックすればよく、初めての仕事や慣れない仕事は、小さく分解し、小さい単位でチェックをすればよいだろう。


このコラムは、2015年9月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第443号に掲載した記事です。

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改善の火を灯す

 独立して間もない頃、金属表面処理のメーカから声をかけていただいたことがある。工場を訪問し経営者から話を聞くが、どんな改善活動をしたいという具体的なご希望はなかった。この工場は顧客から預かった製品に金属表面処理を施す仕事をしている。真空蒸着釜の稼働効率を上げれば、生産量が上がり、コストも下がるはずだ。しかし設備の段取り替えに緊張感がなくのんびり作業をしている印象を受けた。

経営者に段取り替えにどのくらい時間がかかっているか聞いてみた。毎回違うが平均すれば1時間半ほどかかっているという。「段取り替え時間を30分に短縮できたらどうでしょうか?」と質問すると、いきなり経営者は身を乗り出した。
すんなり仕事の契約をいただいたが、実は改善には時間がかかった。

現場の幹部や作業員が、何をしたらいいのか腑に落ちていないようだった。
やり方を教えてもダメだと気がつき、なぜ段取り替え時間を短縮するのか説明する。それでも彼らの心には火がつかなかった。
段取り替えを短縮すする意義(形式知)は理解できているが、まだ暗黙知に落ちていない。そこで段取り替え短縮のアナロジーとしてF1のピットイン作業の話をした。
これで彼らの心に火がついたようだ。翌週に訪問した時には目標の30分を達成していた。


このコラムは、2020年8月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1024号に掲載したコラムです。

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