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続・リスクを見抜く

 先週のテーマで、シリアル番号シールを貼る作業でリスクを見抜き、そのリスクを未然に防止する工程を検討しよう、という提案をさせていただいた。

【別のお客様の製品は、梱包箱、取扱説明書にもシリアル番号をつけてあり、製品と同じ番号の取り説を梱包しなければならなかった。従って製品、取り説、梱包箱のシリアル番号が全部一致していないと不良品となってしまう。
さてあなたならどう工程で保証するだろうか。
梱包箱、取り説。製品に間違いなく同じシリアル番号シールを貼り付けるにはどう工程設計をすればよいか考えてみてください。】

ここで想定しなければならないリスクは
・不良によるラインアウトなどの異常時
・シリアル番号シールの貼りそこない
などによるシリアル番号シールと本体の泣き別れだ。

従って、梱包時に本体、取り説、梱包箱に同時にシリアル番号シールを貼ってしまうのがよさそうである。
それに対する制約条件は

  • せっかくシリアル番号があるので、検査データはシリアル番号ごとに保管したい。
  • シリアル番号をオンデマンドで印刷するのに若干時間がかかる。
  • タクトタイム以下で済ませたい

※私のアイディア

  1. 検査ステーションでシリアル番号シールを3枚印刷する。
  2. 検査合格後本体にシリアル番号シールを貼り、残り2枚は本体にテープで仮止めしておく。
  3. 梱包工程にて、取り説と梱包箱にシリアル番号を貼り付け梱包。

検査ステーションでシリアル番号を印刷することにしたのは、検査時間のため比較的タクトタイムが長い、これ以降にシリアル番号を貼り付けると検査データとシリアル番号の関連付けができないため。

これが正解というわけではないので念のため(笑)

以下ご投稿いただいたアイディアを紹介する。

※T様のアイディア

検査完了した製品を梱包する際に

  • 製品のSNをスキャンして工程履歴をチェック
  • 製品SNを元に取り説用と梱包箱用のシリアルラベルをその場で印刷
  • シリアル貼付け及び梱包

とすればよいのではないでしょうか?

前もってプリントしておくとどうしてもヒューマンエラーが発生します。

■製品に初めからシリアル番号を貼っておけば、工程内の履歴もわかりますね。
 貼る場所などを考えるとケース組み立て以降の工程になり、すべての工程内履歴はトレースできませんが、良い考え方だと思います。
 シリアル番号にバーコードが付いていれば、梱包時にスキャンしてすぐにラベル印刷をすれば間違いはなさそうです。
 ラベルプリンターが2台要りそうだということ、梱包作業時にラベル印刷時間が手待ちにならない様に作業を工夫する必要がある。という点に留意すればよいと思います。

※K様のアイディア

取り説がビニール袋に収納されていないことを期待して、かつ工数バランスが不明ですが、それもある程度無視して、3種類のシリアルを1つのシート(台紙)にきりす。  
それを梱包時に1枚ずつ貼らせます。 
貼り終わった台紙は空き箱に台紙面を上にして(皆に見えるように)入れます。
(貼り忘れのポカよけ)
というのはいかがでしょうか。

■ポカ除けまで付いていて感心してしまいました。
集合梱包をする人が、台紙にシールが残っていないのと、自分が梱包した製品台数のダブルチェックができますね。
 この方法だと、シリアル番号と検査データの関連付けができないのが唯一の弱点ですね。工程バランスを考慮する必要があると認識しておられる点など完璧だと思います。

 

※S様のアイディア

私だったたら、シールを貼付する工程を、梱包直前にもっていきます。
工程品質を見る必要があれば、仮NOで運用し、最後にラベルを貼るとかします。
また、部品のキット段階で全て揃えてしまうことでも、運用可能かと思いますが、不良が発生した場合は、キット単位で処理することになりますね。

■最後のほうでシリアル番号を貼り付けるというのは皆さん同じでしたね。キットで準備するというのは、製品トレーなどがあり工程投入時からずっとそのトレーに入れて工程内を流動する場合は使えますね。

工程内を仮番号で管理しておき、最後にシリアル番号と仮番号を関連付ける事ができると良いですね。たいていの場合はケース組み立て以前はプリント基板にしかシリアル番号を貼り付けられない。ケースをつけてしまうと中のシリアル番号がスキャンできない。ということでなかなか実現が難しいです。


このコラムは、2008年10月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第58号に掲載した記事です。

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中国製品の市場回収

 2007年は中国製品の市場回収が多くニュースとなった.記憶にあるものを並べてみると,

  • 「圧力なべ」:取っ手が高温になってやけどの危険性
  • 「IH電磁調理器」:部品不良による発煙の可能性
  • 「たこ焼き器」:電源コード接続部のネジ止め不良による発煙・発火の可能性
  • 「練り歯磨き」:ジエチレングリコールが検出
  • 「土なべ」:鉛の溶出
  • 「おもちゃ」:塗料から鉛が検出
  • 「塩ビのおもちゃ:フタル酸ジエチルヘキシルが検出
  • 「ポータブルDVDプレーヤ」:高熱により変形や発煙・発火の危険性

市場回収が発生すると莫大な費用損失が発生する.そればかりではなく,生産委託したメーカ,輸入商社の信用も大きく損なわれる.回収事故一件で倒産してしまう会社もあるだろう.

市場回収となる安全性の欠陥については,商品企画,開発,試作,量産の各段階で事前にリスクをきちんと評価・対策しておかねばならない.予防的品質保証活動が重要である.

他社の事例から自社製品にも同じ問題が発生しないか検討し予防処置をとっておくことが必要だ.
上記の事故事例は過去の問題が形を変えて発生しているだけだ.
日本から製造現場が少なくなってくると,リスクを見抜く力が落ちてくる可能性がある.安易なリストラで設計の検証,協力工場の選定,協力工場の生産管理などの能力をなくしてはならない.

地雷を踏まないように祈りながら歩くのではなく,地雷を取り除いたところに道をつけて走るべきだ.


■今週の雑感

 職業柄市場回収の報道があると,原因を調べずにはいられなくなる.以前最大手の電源メーカがPC用アダプタ電源の回収事故を出したことがある.
その時は回収対象品を中古品市場やジャンクマーケットで探し回った.見つけてきた回収対象品を分解して,回収になるような事故の原因を探った.

そのものずばりの原因は見つけられなかったが,設計的なリスク,製造的なリスクがいくつも見つかった.そういうリスクに対する対策を自社製品に盛り込んでおくわけである.

こういう話を業界の人にすると,そっと本当の原因を教えてくれたりするものである(笑)


このコラムは、2007年12月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第11号に掲載した記事です。

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リスクを見抜く

 昔電源装置を中国の工場に生産委託していた。新工場立ち上げの時からお手伝いとさせていただいた。ここの工場の品質管理責任者には、昔から色々教えていただいた。彼は細部にまで非常にこだわる方であった。

梱包作業者に一台ずつシリアル番号順にきちんと並べて集合梱包するよう指示がしてあった。

この作業指示に対して、私は大先輩に異議を唱えた。
顧客からは何も要求がないので、作業者の負担になることは止めましょう、と提案した。しかし大先輩は、たいして余分な工数がかかるわけではないのでこのままやろうと私の提案は認めてもらえなかった。

大先輩のご意見ではあるが、私には不安があった。

電気検査が合格すると、主銘版、シリアル番号のシールを貼る。
外観検査。
梱包作業。
という順の工程を、じっと見ていた。

案の定外観検査で不良と判定した物の取り扱いがおかしい事を発見した。通常不良品は、修理後前工程に戻し、順に工程を通して再検査することになっているが、班長が不良品を修理工程に持って行きそのまま外観検査工程に戻した。

修理時に故障を造りこんでしまう危険があるため、工程復帰は決められた場所に再投入して、工程内の検査をすべて再度実施する仕組みが崩れてしまったのだ。

決まりどおりの工程を通すと、不良となったシリアル番号の製品は梱包工程に遅れて到着する。そのため梱包作業者はシリアル番号順に梱包できない。集合梱包が出来ないまま次々と完成品が来てしまい工程が混乱してしまう。そのため班長は一刻も早く修理済み品を梱包工程に戻そうと自ら持ち回りで処理をしてしまった。

通常はうまく行っていても、なんらかの異常時には「ダラリ」(ムダ・ムラ・ムリのこと)がある工程では、想定していない事が発生するものだ。工程の中に「ダラリ」がないか良く見て、リスクを見抜かなければならない。

別のお客様の製品は、梱包箱、取扱説明書にもシリアル番号をつけてあり、製品と同じ番号の取り説を梱包しなければならなかった。従って製品、取り説、梱包箱のシリアル番号が全部一致していないと不良品となってしまう。

この仕様の緩和をお願いしたが、お客様の内規でそうせざるを得ないということだった。

このような顧客仕様を満足するために「作業指示書に明記する」「作業員に注意する」だけでは不十分だ。不良が発生しないように工程を設計しなければならない。

さてあなたならどう工程で保証するだろうか。
梱包箱、取り説、製品に間違いなく同じシリアル番号シールを貼り付けるにはどう工程設計をすればよいか考えてみてください。


このコラムは、2008年10月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第57号に掲載した記事です。

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歩留まり率と直行率

 歩留まり率と言うのは、投入した部材に対して良品がいくつ取れたかを示す。100個分の部材を投入して良品が99個取れれば歩留まりは99%だ。
一方直行率は作ったものが一発で良品になる率を示す。すなわち100個投入して99個が検査を一発で合格すれば直行率は99%だ。

歩留まり率と直行率のどこが違うかというと、100個作ったときに直行率が99%でも、検査で不合格になった1個を修理して良品になれば歩留まり率は100%となる。

すなわち歩留まり率というのは不良がいくらあろうが、修理して良品になればOKという発想である。言ってみれば出荷台数確保を優先する考えかただ。

一方直行率の方は、不良は不良としてカウントされる。したがって直行率を良くしようということは不良を作らない決意となる。

歩留まり率だけを見ていると、工程の品質改善はできない。直行率を指標として品質改善を図るべきだ。

ある経営者がこんな話をしてくれた。工程内検査で必ず見つかるはずの不良品が顧客より返却されてくる。修理品の検査が十分ではなく不良品が出荷されると推定し、修理を禁止にしたらぴたりと不良返却がなくなったというのだ。
つまり余分に投入した部材やその加工賃を犠牲にして、品質の確保を優先されたわけだ。

この工場では、不良品はラインアウトしておき出荷台数が足りなくなると班長さんが修理し自分で検査して出荷品に追加していた。

電気検査などの機能検査は問題ないが、通常ライン内で行われる目視検査などが一切行われないことになる。班長さんと言えども出荷のプレッシャーの中で、目視検査で不良としなければならないものを見逃してしまうのだろう。

これも出荷台数確保の歩留まり率的発想といって良いだろう。

不良品はその場で工程に戻し全ての工程を再度通過させる事が必要だ。これをやらなければ、不良を作りこんだ作業員は知らずに不良を作り続ける可能性もある。

直行率を指標とし、不良が出るたびに原因解析と対策をする。これにより直行率を向上させなければならない。歩留まり率だけを指標としていると、こういう発想にならない。


このコラムは、2009年2月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第85号に掲載した記事です。

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100%成功したら面白みも何もないんです

100%成功したら面白みも何もないんです

NTN 会長 鈴木 泰信 氏

 7~8年前になりますが、若い人が動圧軸受という新しいアイデアを生み出してくれた。社内で反対があったのですが、開発を続けました。ありがたいことに、それが日本電産さんのHDD用のモータに用いられる軸受に育ったんです。
全文

(日経ものづくり Tech-On! より)

ハードディスクドライブのスペインドルモータの軸受けの開発を若手のエンジニアに任せて成功を収めた。今ではこの製品が月産1000万台だそうだ。

鈴木氏は経営者として迷いもあっただろうが、「チャレンジする機会を若者に与えてあげられるかどうかが経営者の責任」と開発を続けたそうだ。こういう経営者の元で働く若いエンジニアは意気に燃えるであろう。

鈴木氏のプロフィールを見ると、製造部門を長く担当しておられたようだ。設備は高さを低くし見通しを確保しなければならない。大きさは1/2。など製造現場で活躍しておられた方だから出てくる言葉だ。

私のパートナーも同じ考えだ。彼が設計する生産設備は「デスクトップ設備」というコンセプトでできている。

  • 大きさは作業台の大きさまで。
  • 完全自動は狙わない。
  • 人と調和を持って生産する自働機を目指す。

こちらのアイディアがすんなりと伝わるのは基本的なコンセプトが一致しているからだと思う。

まず私が徹底的に現存のラインのムダ取りをし、彼の設備を導入して更に改善するというスタイルでコンビを組んでいる。まずムダ取りを先にして置かないと、ムダも一緒に機械化してしまう可能性がある。そんなコンビでの仕事は、生産スペース1/2、生産性50%アップ、リードタイム1/6を実現化した。


このコラムは、2018年5月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第32号に掲載した記事です。

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続・歩留まり率と直行率

85号のコラム「歩留まり率と直行率」について読者様からご投稿をいただいた。

=== Zhen様の投稿 ===
歩留まり率と直行率については、林様の考え方は、まさに正論です。そして「ものづくり」は正論を目指さなくてはなりません。(あたりまえのことを愚鈍なまでに実行する)しかし現実は必ずしも正論一筋では立ち行かないこともあると思います。

中国のサプライヤーの中には技術レベルが低く、はじめから直行率の向上を目標にすると頓挫してしまうところが多々あります。具体的には以前メルマガでも紹介いたしましたように、アナ(メス)は公差の下限(小さいほう)を狙い、オスは公差の上限を狙うと言う公差を外しても手直しの効く作り方です。

なぜこのような発想になるかと言うと、材料費に比較して人件費が安いと言うことが根本にあります。そのことは、歩留まり率が悪いと損益が悪化し、経営的にその仕事を請ける価値がなくなってしまうこと。また林様のメルマガに記述されていますように、納期に発注数量の出荷を確保させる必要性というものがあります。

このようなケースの場合は、第一段階では歩留まり率向上(直行率を下げても)を目標にしなくてはなりません。そしてあるレベルに達したら、目標を直行率向上に切替えなくてはなりません。しかし、この切替えのタイミングと経営層の意識の切り替えが難しいです。つまり経営的に一定の利益をあげてしまっていると、更に上への向上心が欠如してしまっているうえ、過渡期は一時的に歩留まり率の低下もあります。この辺で苦労されている技術者は、意外に多いのではないでしょうか。僕も苦労した経験があります。
===
Zhen様ありがとうございます。
Zhen様のメールマガジン

私は電子部品・製品生産の経験が多いので、Zhen様のように機械加工部品を主に取り扱っておられる方と単純には比較はできない。例えば再生不可能な原料を投入して製品を生産するような場合は、歩留まり率で管理しても直行率で管理しても殆ど同じ結果になるだろう。

私たちには最初から歩留まり率という発想はなかった。
修理・手直しをするのだが歩留まり率で管理していると、不良の発生は無視されてしまう。

各検査ステーションでの不良率を掛け合わせたモノを総合不良率として考えていた。各ステーションで不良と判定された製品はすぐに修理してラインに再投入されるので、この総合不良率を直行率に変換しても正しい直行率にはならない。これを補正するために不良率の分母・総検査台数は、前工程で不良になった台数を差し引いて計算していた。

確かに人件費が安いので、修理にかかる工数はたいしたことはない。しかしここ数年毎年最低賃金が十数%上がり続けている。例えば15%毎年上がったとしても3年で1.5倍、5年で2倍の給与となる。そろそろ人海戦術に頼った生産は限界だと考えている。


このコラムは、2009年3月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第86号に掲載した記事です。

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上海万博

 地元タブロイド紙『東莞時報』に日本人女性・山田外美代さんが紹介されていた。2005年の愛知万博の開催期間185日間毎日、延べ243回参観した人だ。

ご主人、息子さんを伴い上海に移住され、上海万博も皆勤賞を目指しているという。このために既に900万円以上の自費を投入している。息子さんは教職員の職を辞しての、移住である。狂気ともいえる熱狂振りだ。

何が彼女をこの様な熱狂に駆り立てたのであろうか?
『東莞時報』によると山田さんは2005年は体を壊され5度も手術をするという、人生最悪の一年だったそうだ。たぶん毎日ふさぎがちな心を抱えて過ごしておられたのだろう。経緯は分からないが、万博に毎日出かけると言う行動をとった。その行動が、自分の心を変え、更に周りの環境も変えてしまった。

明るく、行動的で「素敵なおばあちゃん」と言う周りの評価が、更に多くの出来事を彼女にもたらしたのだと思う。それが彼女の人生も変えた。

経営者として成功するには、偏執狂的な熱狂が必要だ。
中国・華南で、すばらしい企業文化を築き、超優良企業を育てた原田則夫氏は99%うまく行っている会社で、企業文化が崩れてしまう1%の可能性を心配し、毎日毎日従業員を教育し続けた。
彼の教育とは、教師が学生を教える教育ではない。親が子供を育てる教育だ。農村出身の作業者に、経営を教え彼女が退職後田舎に帰っても食堂の経営が出来るようにしておいてやる。

並みの経営者から見れば「狂気の沙汰」であろう。
こういう狂気が偉人と呼ばれる人を作っているのだ。

「結果と言うものにたどり着けるのは、偏執狂だけである」

(アインシュタイン)


このコラムは、2010年5月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第152号に掲載した記事です。

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人を責めるな、方法を攻めろ

 改善の定石に「人を責めるな、方法を攻めろ」という言葉がある。
ミスや不具合が発生した時に、その責任を人に求めても改善は出来ない。その発生原因を追究し、ミスや不具合が発生しない様に方法を改善しよう。という意味だ。

例えば、ネジ締め工程でネジの締め忘れが発生したとする。
作業員を責めると、その再発防止対策は「作業員に注意を喚起した」「作業員に再教育をした」という効果を実感できない方法となる。中には「作業員を替えた」という対策まで見たことがある。

作業員を取り替えたところで、不具合が発生しなくなるとは思えない。誰がやっても締め忘れのない方法を考え、対策としなければならない。

ネジを定量供給し、作業が終わった時にネジの過不足がないことを確認する。というように作業方法を変更すれば、不具合の発生は激減するだろう。これでもまだ「人の判断」が入ると不安ならば、締め付け用の電動ドライバーから締め付けトルクに達した信号を受け、ネジ締めの回数をカウントする。締め付け回数が所定の回数に達したら作業が完了する様にすれば、ほぼ完璧だ。

検査を追加するというのは、あまり良い方法ではない。付加価値を生まない工程をひとつ追加することになる。検査治具を作り、ナガラ化することは可能だ。AOI(画像認識検査装置)を導入するよりは圧倒的に、安価に治具を作ることが出来る。しかし機種ごとに専用治具を作らねばならない。

不具合が顧客に流失してしまった時には、検査追加を安易に考えがちだが、一度顧客と検査追加を約束してしまうと、簡単には追加検査を止められなくなる。不具合発生工程に対し原因対策を取れる方法を考えなければならない。

究極の改善は、設計を変更してネジ締めをなくすことだろう。


このコラムは、2011年7月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第215号に掲載した記事です。

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データセンター電源障害の原因は製造時の組み立てミス

 さくらインターネットは6日、同社の西新宿データセンターにおいて2008年12月に発生した電源障害の原因と再発防止策について発表した。

 この障害は12月19日12時35分ごろに発生。電源設備からの発煙により一部電源の供給が停止し、収容しているインターネットサービスに影響が出た。SNS「GREE」やブログサービス「SeeSaaブログ」なども利用できない状態になり、同日19時30分に復旧した。

 さくらインターネットによると、消防庁の現場検証やメーカーによる解体調査、成分分析調査、再現試験などの結果、製造時において発生した組み立てミスにより電源設備が局部的に過熱したことが原因との結論を得たとしている。

(INTERNET Watchより)

 この記事だけを見ると、何が不良だったか分からないがさくらインターネットのホームページによると、電源の中に使われている変圧器の巻き線が設計どおりに作られていなかったため内部で発熱し発煙に至った、とある。
変圧器の巻き線の位置がずれていたために変換効率が落ち、ロスしたエネルギーが熱となって変圧器の内部温度を上昇させたものと思われる。

サーバは24時間365日連続で稼動しなければならない。電源の故障は即機能停止につながる。従って電源の信頼性設計は非常に重要になる。そのため高信頼性のサーバは電源が冗長化してあったりする。すなわち電源を複数台用意しておいて1台が壊れても他の電源でバックアップする様になっている。

更に電源の故障は容易に発煙・発火につながる。安全性設計も重要だ。

電源にとって変圧器は安全性・性能に大きな影響を持つキーコンポーネントだ。変圧器内部の巻き線位置がずれれば、効率や電磁波ノイズに影響を与える。製品の製造工程では検査しにくい項目だ。

今回の事故は製造での組み立てミスということになっているが、設計的な配慮が足りていないといわざるを得ない。このような重要部品を作業者の注意力だけに頼って生産するというのはムリがある。巻き位置を固定するには位置出し様にダミーのテープを貼っておけば良いだけだ。

ダミーテープのコストをケチっても、このような不良が発生すれば節約したコストの100倍は損失が発生するだろう。またこの先回収修理などをすれば節約コストの1000倍の損失が発生する。


このコラムは、2009年3月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第88号に掲載した記事に加筆したものです。

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大飯原発配管にひび、深さ15.5ミリ以上 再開は未定

 定期検査のため運転を停止している関西電力の大飯原発3号機(福井県おおい町、118万キロワット)で、1次冷却系配管(肉厚74.6ミリ)の内部でひびが見つかり、15日までの関電の調査で深さ15.5ミリ以上あることが判明した。5月下旬の予定からずれ込んでいる運転再開時期の見通しは立っていない。

 国は、この配管の肉厚が53ミリ以上あれば安全に問題はないと判断している。ひびの深さが21.6ミリ以上になると、この肉厚を確保できなくなるため、配管取り換えなどの本格修理が必要になる可能性もある。

 関電によると、ひびは原子炉容器に近い大型口径配管の溶接部分で3月に見つかった。当初は深さ3ミリ程度と推定し、研磨して消す方針だったが、予想以上の深さだった。さらに配管を削ってひびの深さを特定する。

(asahi.comより)

この記事の論調に違和感を感じるのは私だけではないと思う。

配管溶接部分にひびが見つかり、深さ3mm程度と推定しひびを研磨しようとした。たとえ深さが3mmであってもその原因が不明なのに研磨してひびをなくしても、原因が取り除かれていなければ、ひびはまた発生する。

安全に影響のないひびの深さと比較して問題なしとする考え方は大変危険だ。点検メインテナンスは24時間リアルタイムに行われているわけではない。例えば月曜の朝問題がない深さだとしても、次の点検時に問題がないという保証はない。

安全に影響のないひびの深さという基準は、点検時点から過去にさかのぼって安全に影響はなかったと保証できるだけである。

配管を削ってひびの深さを調べるとしているが、本当に調べなければならないのはひびの深さではなく、ひびの発生原因である。この発生原因に対して発生予防対策ができて初めて、将来に対し安全に影響はないという保証ができる。

皆さんの工場では点検・メンテナンスにこういう考えを入れておられるであろうか?

例えば倉庫の温湿度管理のための点検記録表はどこの工場に行っても、大抵は備わっている。しかし温湿度が管理限界を超えたときにどのようなアクションを取るのか明確になっている工場は少ない。


このコラムは、2008年8月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第47号に掲載した記事に加筆したものです。

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