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逆境をチャンスに

 景気の後退による売り上げの減少など,経営をしていれば必ず苦しいときはある.
照明の節電,残業規制など経費の節約も重要である.しかし苦しいときほどこのような守りの対策ではなく,攻めの経営でピンチをチャンスに換えたいものである.

  • 徹底教育による少数精鋭化
     経費節減時に真っ先に対象になるのが教育費ではないだろうか.しかし苦しいときに徹底的に教育をし従業員の能力を向上する事が重要である.経費がなければ自分たちで徹底的にOJT(現場研修)をすれば良い.
    前職勤務時代にインドネシアに自社工場を立ち上げた事がある.
    事業拡大を目指し,生産量を確保するためであった.しかし操業開始時がちょうど市況のどん底で,新工場に出せる生産が確保できなくなってしまった.
    このとき我々は徹底的に第一期生の作業員を鍛え上げた.
    市況が戻った時に生産が一気に拡大,大量の作業員を雇用しこの一期生たちがリーダとして生産現場を引っ張った.
    通常生産能力の急激な拡大は往々にして品質問題などを引き起こすものだが,この工場には無縁であった.
    その後もこのリーダたちが核となり,自慢できる工場になった.
  • 技術の蓄積
     不況時に固定経費を削減するために従業員の解雇は常套手段かと思う.
    生産工場の場合,すぐには利益につながらない開発設計などが整理の対象になりがちだ.
    しかし苦しいときにこそ次のメシのタネを仕込む必要がある.
    あたらな商品カテゴリィ,高生産効率,高付加価値,高フレキシビリティなど戦略を定め資源を投入する.この技術の蓄積が,未来のメシのタネを作り出す.
    FOXCONNというと今では巨大なEMSグループであるが,コネクタメーカとして操業した当時は何度も景気の上下に大きな影響を受けていた.
    不況時に余剰エンジニアを使って当時紙図面が主だった金型図面を,全てCAD化した.
    このときの財産が,金型設計製作のリードタイムを圧倒的に短くし競合他社との差別化に貢献した.
  • 工程改善
     生産量が減っているので,工程改善などを徹底的に実施する良いチャンスだ.徹底的にムダ取りをし,工程改善・少人化を図る.

経費がないという理由で守りに入ってはいけない.工夫次第で金をかけずに工程改善することはいくらでもできる.
苦しいときに前向きに改善を継続してゆく.このときに達成した体質改善が景気が戻った時に一気に大きな利益をもたらす.


このコラムは、2008年6月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第38号に掲載した記事です。

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京急脱線事故

 9月5日横浜市神奈川区の踏切内で京急電鉄の電車とトラックが衝突、死者1名、重軽傷30名の大事故が発生した。

本日は踏切事故の未然防止について考えてみたい。

事故を起こした13tトラックは道に迷っていたようで、狭い道から踏切に入るために3分以上も切り返しをし、踏切に入った途端に遮断機が降りてしまったようだ。

列車運転士は直前の赤信号を視認。ブレーキをかけたが間に合わなかった。

踏切事故を防ぐ最善の対策は、踏切をなくすことだ。しかしコストも時間も必要だ。日経新聞の記事には、踏切を立体交差にするには約9年、40億円かかるとあった。現場の航空写真を見ると、踏切をなくし列車を高架上を通すのは現実的ではなさそうだ。

踏切の非常ボタンを押せばATS(自動列車停止装置)が働き列車は非常停止するはずだ。しかし昼近くの住宅街だ。踏切の付近に人がいるとは限らない。

列車が自動で停止する仕組みを考えなければならない。

監視カメラで踏切内に障害物を検出したらATSが起動する仕組みであれば、ほとんどコストをかけずに対策できるのではなかろうか?
人の命は金には換えられない。しかし1箇所で40億ものコストをかけたのでは会社そのものが存続できないかもしれない。現実的な対策を考えなければ意味はない。


このコラムは、2019年9月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第874号に掲載した記事です。

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救命胴衣着てエア遊具、危険

東京都練馬区の遊園地「としまえん」のプールで昨年8月、ライフジャケットを着た8歳の女児が水面に浮かべた遊具の下で溺れて死亡した事故を受けて、ライフジャケット着用時の遊具のリスクを調べていた消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)は19日、転落状況によっては体が真上に浮上せず、遊具の下に潜り込んで自力脱出できなくなる危険があるとする報告書をまとめた。

(全文)

(朝日新聞電子版)

昨年8月15日に発生した豊島園プールでの女児死亡事故の続報だ。

(注)エア遊具とはとは子供を対象とした、空気で膨らませた大型遊具の総称。本事例ではプールなどの水面に浮かべその上で遊ぶ大型遊具のこと。

この記事は消費者安全委員会が6月19日に発表したとしまえんプールで発生した8歳女児の溺死事故調査報告が元になっている。女児はライフジャケットを着用、プール水面に設置されたエア遊具から転落。エア遊具の下に潜り込んでしまい、ライフジャケットの浮力でエア遊具底面に押しけられ、脱出できず溺死している。

消費者安全調査委員会報告書

事故原因を特定し、再発防止を提案するための調査・再現実験を含む報告書だ。
事故発生から10ヶ月かかっている。公共性の高い報告書だ。何層もの上位者の査読・修正指示があったことは想像にかたくない。としまえんプールでの事故後、同業施設では自主的に再発防止が取られていたと思う。幸い事故後同類の事故はなかったようだが、もう少し早く報告書が公開されても良いのではないかと思う。

死亡事故といえば、我々製造業にとっては「重大不適合」である。再発防止対策を含む原因調査報告書は1週間以内に提出されねばならないだろう。少なくとも即日再検査などの暫定処置を取らねばならない。

ISO/IECガイド51「安全側面-規格への導入指針」では、リスクア セスメントによりリスクを明らかにし、以下の優先順位に基づきリスク低減を行うことを、リスク低減の 基本原則としている。

  1. 設計における本質的安全設計方策(危険源の除去等)
  2. 設計における安全防護及び付加保護方策(ガードの設置等)
  3. 設計における使用上の情報(警告の表示等)
  4. 使用における各種保護方策(監視、保護具の使用、訓練等)

この指針は製品安全の大元締めとなる規格だ。
製品ばかりではなく、オフィス・工場の安全に適用すれば以下のようになる。

  1. 作業方法・工程設計、製品設計時点で安全阻害要因を除去する。
  2. 作業方法・工程設計、製品設計時点で安全阻害要因を緩和する。
  3. 作業方法・工程設計、製品設計時点で安全阻害要因を可視化する。
  4. 作業従事者に注意喚起・教育訓練する。

より上位の対策が有効度は高くなる。


このコラムは、2020年6月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第997号に掲載した記事です。

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子供の遊具事故

 15日午後2時10分ごろ、東京都練馬区向山3丁目の遊園地「としまえん」にあるプールで、水面に浮かべられた遊具の下の水中に女児がいるのを監視員が見つけた。女児は病院に搬送されたが、午後4時ごろ死亡が確認された。
警視庁は女児がおぼれたとみて、詳しい経緯を調べている。

 全文

(朝日新聞ディジタルより)

 夏休みに家族でプールに来ていたのだろう。父親が娘がいないことに気づき監視員に通報している。その時には発見できず、1時間後の一斉点検時に心肺停止状態で発見されている。通報時に全員プールから上げて探していれば、と思ってしまう。幼い子供を亡くした家族のことを思うと心が痛む。

この様な事故を防ぐために、ライフジャケットなど安全用具はどうあるべきかなどの議論がされている。しかしプールに浮かべられた遊具の下に潜り込んでしまえばどんなライフジャケットを装着しても助からなかっただろう。

もっと根本から考えなければならない。

私が少年だった頃は、外遊びで怪我をした。しかし命に関わる様な危険な目にあったことはない。豊島園ではないが、都営プールで溺れかかったこともある。大人用の競泳プールだ。小学生だった私の身長より水深の方が深かった。足がつかなくてもがいている私を、隣にいた大人がひょいと持ち上げてくれた。

当時と比べれば今の方が確実に危険度が増している様に思う。
公園には鉄棒とブランコぐらいしかなかった。プールはただ「プール」だった。遊具はせいぜいが浮き輪だ。

当時の子供たちは、広場で夕日に向かってただ走るだけで楽しかった。ビー玉やメンコで駆け引きを学んだ(笑)当然子供の遊びは子供だけだ。親の監視など考えられなかった。

親や多くの大人の目があっても事故が起きてしまう。生活の水準は上がっても子供の安全は下がってしまったのではなかろうか?

一度あらゆる子供の遊具をリセットしてはどうだろう。過去に何度も子供の遊具事故が発生している。

「スピード出すぎる滑り台」
(こちらの遊具は大人が怪我をしている)

今の子供たちはゲームなどの仮想世界での刺激が強すぎて、メンコやビー玉で遊ぶ楽しさが理解できないのだろうか?そういう刺激を与え続けているのは大人自身だということを考えるべきだ。


このコラムは、2019年8月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第865号に掲載した記事です。

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ポカ避け

東北新幹線ドア、280キロ走行中開く ドアコック戻し忘れ

 21日午前10時17分ごろ、東北新幹線仙台発東京行き「はやぶさ46号」(10両編成)が仙台―白石蔵王駅間を時速約280キロで走行中、運転台に9号車のドアが開いたことを知らせる警告表示が出たため、緊急停止した。
車掌が確認したところ、ドアがほぼ全開となっていた。非常時に手動でドアを開けるための「ドアコック」のレバーが引いた状態になっていたという。けが人はいなかった。

 ドアコックはドアの上部に設置され、ふたを開いて内部のレバーを引くとドアを手動で開閉できる。非常時のほか、清掃の際にも利用されている。JR東日本がデッキにある防犯カメラの映像を確認したところ、仙台駅を出発する前の車内清掃で作業員がホームとは反対側のドアコックのレバーを引いたが、ドアを開けずにレバーも戻し忘れていた。出発前の最終チェックでも見落とされたという。

(朝日新聞ディジタルより)

 時速280キロで走行中の列車の扉が開けば相当の恐怖だろう。扉近辺に人が立っていれば、風圧で転落事故が発生したかもしれない。

清掃作業員がドアコックレバーを戻し忘れたという、典型的な人為ミスだ。

JRは「はやぶさ46号はE5系の10両編成。JR東の最新車両E7系はコックのふたが開けば通知するシステムがあるがE5系にはないことも、盲点になった。今後、改修する方針」と発表している。

しかしコックレバーのふたが開いているのが検知できていても、今回の事故が防げたのだろうか?「コックレバーを戻し忘れた」と記事にあるが、フタが開いていた、とは書いてない。

列車内のコックレバーふたにセンサーを付けて新たな配線工事をする。費用も時間もかかるだろう。もっと簡単に「ポカ避け」の方法を考えた方がよかろう。

コックレバーが引かれていてもフタが閉まっていれば、外から確認できない。コックレバーを改造してとフタと干渉するようにする。コックレバーが引かれている状態(手で扉が開けられる状態)の時はフタが閉まらないようにする。この改造により、コックレバーのふたが開いていれば一目でわかるはずだ。

清掃作業員は清掃終了後必ずコックレバーのふたを確認する、自分が作業した車両以外から下車する。こうすればコックレバー閉め忘れをダブルチェック出来るはずだ。

このようなポカ避けの仕組みは、コピー機に応用されている。紙詰まり修復作業後レバーをすべて元の位置に戻さないと扉が閉まらないようになっている。他社事例は改善案、再発防止案の宝庫だ。

■■ 編集後記 ■■

日本の新幹線の清掃作業員の質の高さ、礼儀正しさを中国の乗務員と比較して中国の列車に乗るたびにがっかりしています。
今回の事故は、短時間で完璧な清掃を目指している彼らだけの責任ではないと思っています。人の注意力や努力によらず、仕組みから変えるのが本当の改善です。


このコラムは、2019年8月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第868号に掲載した記事です。

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英ヴァージンの宇宙船墜落、1人死亡 米で試験飛行中

 英ヴァージングループの宇宙旅行会社ヴァージンギャラクティックの宇宙船が10月31日、試験飛行中に米カリフォルニア州のモハーベ砂漠に墜落した。テストパイロットの1人が死亡、1人が重体となった。事故の原因は不明。米国では宇宙関連の事故が1週間で2件起きた形で、安全性への懸念が高まっている。宇宙旅行ビジネスの先行きに暗雲が漂い始めた。

全文はこちら

(日本経済新聞電子版より)

 米露冷戦時代に国家の威信をかけて宇宙開発を行って来た。そのため十分な予算が配分されていた。しかし宇宙ビジネスが民間ベンチャー主体となり、コストと安全の両立が困難になって来た、そんな論調の記事が目につく。

直前に、米オービタル・サイエンシズ社のロケットが爆発事故を起こしている。オービタル社は国際宇宙ステーションに物資を輸送するビジネスを請け負っており、約2千億円で8回の輸送を行う受注をしていた。
従って1回の打ち上げを、総経費250億円以下でまかなわねば、経営は赤字となる。当然コストダウンをすることになるが、安全とコストがトレードオフになる様なコストダウンは有ってはならない。

ギャラクティック社の場合は、まだ「開発要素」が相当残っているはずだ。事故機は、新燃料の試験をしていたと言う。当然検証・実験実証の上での実地実正だったと思うが、コスト優先で、十分な検証・実証をせずに打ち上げ確認などしてはならない。
例えば、運用コストを減らすために完璧に引力圏から離脱するのではなく、弾道落下の放物線を描きながら、無重力を短時間味わってもらう。これで宇宙旅行客の満足が得られるのであれば、このコストダウンは問題ない。むしろ、安全の余裕度が増えるかもしれない。2泊3日の宇宙旅行ならば20億円、日帰りならば2,000万円と言うのはあり得る。

日経の記事によると、民間航空機での重大事故は平均で数百万回に1回だが、有人宇宙飛行では数十回に1回のレベルで宇宙飛行士が死亡しているそうだ。

事故の回数だけでなく、損失/回数と言うリスク関数を考えると、旅客機の事故は1回の事故で100人単位の死者が出る。1/数万回のリスクだ。一方有人宇宙飛行の場合は、一回の事故で1、2人の死者なので、1/数十回となり、桁違いに大きなリスクを持っていることになる。宇宙旅行ならば、乗務員を合わせて10人程度となり、リスクは更に一桁上がる。

民間旅客機並みのリスクを実現するためには、事故回数は数十万回に1回程度でなくてはならない。現状を数万倍改善しなければならない。まだ宇宙旅行を産業にするためには時間が必要だ。

ギャラクティック社のCEOは、記者会見で「宇宙は厳しい。だが前に進むしかない」と語っている。新しい時代を迎えるためには、誰かが相当の覚悟を決める必要がある。

宇宙航空産業などと言う壮大な未来は、私には無縁だが、自分なりに覚悟を決めて日々仕事をして行きたい。


このコラムは、2014年11月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第396号に掲載した記事です。

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挨拶がきちんとできない

日本でも新入社員で挨拶がきちんとできていない人が多いのではないだろうか.

挨拶がきちんとできないとまず職場が暗くなる.
毎朝「おはよう!」と声を掛け合うことにより,気持ちの良い仕事のスタートが切れる.またお互いの健康状態もチェックする事が出来る.

そもそも声を掛け合うと言うことは,お互いに「私はあなたを認知しています」という事を確認しあう作業である.これなくして職場の連帯感はない.

「ホウレンソウ」(報告・連絡.相談)の基本も挨拶である.
挨拶ができない人に,「ホウレンソウ」を要求しても無理だろう.まずは挨拶から教えなければならない.

私がお手伝いしている工場はそこそこ挨拶ができている.
しかし経営者はまだ不満だ.挨拶の仕方がなっていないと言う.
日本式基準から言えば,確かにいい加減な挨拶だ.

そこで彼は従業員を全員集めて挨拶の仕方を教えた.
「君達に世界でも一番礼儀正しいと言われている日本人の挨拶の仕方を教える.今年は北京でオリンピックも開催される.中国もこれからは国際社会のリーダ的な役割を担うことになるだろう.世界に恥じない挨拶ができるようになって文明度を上げてほしい」と前説をしてから,挨拶をするときの足の位置,腰の曲げ角度,頭を下げている時の視線,頭を下げている時の時間など実演で教えられた.

農村から出てきたばかりの子達に挨拶の仕方(How to)ばかり教えても,なかなか身にはつかない.何故そうするのか(Why)が分かれば身につく速度も上がる.

そして重要なことは率先垂範.挨拶をしない子を叱るのではなく,こちらから挨拶をする.


このコラムは、2008年7月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第42号に掲載した記事です。

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日本一短い会話は「け」「く」「め」

 全国でも高い自殺率やがん死亡率など、悪い指標が目立つ秋田県。「もっと県民が誇りをもてるように」と県調査統計課が「秋田の全国一」をまとめた。観光パンフレットや会話のタネに使ってほしいという。

 人口あたりの理・美容所数や刑法犯罪の検挙率、重要無形民俗文化財の登録件数など34項目。昨年トップだった全国学力調査の成績も。

 番外編には、日本一短い会話を入れた。秋田弁の「け」「く」「め」。「食べてください」「いただきます」「おいしい」の意味だ。

(asahi.netより)

「誇り」を持つということは重要だ.
秋田県同様に金沢市にも「金沢検定」という郷土の歴史,伝統,文化に関する知識を検定し初級,中級,上級の資格を認定する制度がある.受験対策本,過去問題集なども出ており話題を集めている.
上級ともなれば金沢在住の市民でも考え込んでしまう問題が出題されるらしい.

誇りを持つことの重要性は中国の工場でも同様だ.
自分たちの会社が他の会社と比べて何が自慢できるのか.
地域,業界でナンバーワンと誇れるものは何か.
ナンバーワンでなくともオンリーワンになれるものは何か.
ローカル幹部たちと真剣に討論してみると良い.

以前指導していた台湾資本の中国工場でもやってみた事がある.
台湾人,中国人の幹部を集めて皆で考えた.当初「そんなのないよ~」とネガティブな発言ばかりだった.
複数の同業者を指導した経験から,ヒントを提供するとぼちぼちと出始める.
「工程内不良100ppm以下の機種がある」
「治具の工夫がうまい」
「従業員のトイレがキレイ」
など考えるとそこそこ出てくるものである.

自分たちが少しでも誇れる事を見つけ,そこを更に磨きをかける.
これで自分たちの誇りを持てるようになる.

ニュースにある「け」「く」「め」は皆さんお分かりになったであろうか.
私は「け ば」(召し上がれ),「ん め」(おいしい)は分かったが「く」は分からなかった.

方言は「均一性」を前提としたローカルな文化だ.従ってこのような短い言葉で意思疎通ができる.
しかし中国の工場ではこうは行かない.「多様性」を前提とし分かるまでコミュニケーションをする必要がある.


このコラムは、2008年7月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第42号に掲載した記事に加筆しました。

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生産委託先の指導について

 中国の工場に生産委託をしているが,なかなかうまくゆかない.資本関係もなく言う事を聞いてもらえず苦労をしている.
こういう方が多いのではないだろうか?

私も前職勤務時代中国の生産委託先の指導で苦労した事がある.

当時は出張ベースで生産委託先を指導していた.
まずは現場に張り付かなくても良いように作戦を立てた.

  • 毎日生産の結果を報告してもらう.
  • 報告には生産量,各検査ステーションでの不良数,不良原因を入れてもらう.
  • 想定される工程内不良率の上限を決めておき,毎日のレポートでアラームが出たらすぐ出張指導に行く.

こんなスタイルで生産を開始した.当初はかなりすったもんだがあった.
同じ内容の不良が続き,緊急出張した.当初は1週間で帰るつもりが1ヶ月になった事もあった.

それでもすぐにすばらしい成果を出してくれるようになった.
自社工場で作っていたプリンター用電源装置を生産移管した時は,いきなり工程内不良率100ppm台を初月から達成した.自社工場ではここまで持ってくるのに半年かかった.

この時に自分たちで,どうしてうまく行ったのか分析をしてみた.
結論は,経営者の信頼をうまく取り付けたことだ.経営者に我々の言う事を聞いていれば,自分の工場の品質がよくなると信じさせる事が大切だ.

実はこの経営者をお客様の前で叱った事がある.

お客様が非常に高い品質要求を言ってきた時に,経営者は「品質をよくするためにはコストがかかる」と反論した.
即座にそれを否定して「品質とコストがトレードオフ関係になるような状況を作るべき ではない」と諭した.当然お客様は私の味方になる.

経営者の面子をつぶしてしまい,まずいことをしたと当初思ったが,これが逆に経営者が我々を信頼するきっかけになったようだ.

資本関係のない委託先でうまくやるのは経営者にこちらを信頼させるのが第一だと考えている.これができていると現場の指導もすごくやりやすくなる.


このコラムは、2008年6月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第37号に掲載した記事に加筆しました。

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自働化

 「自働化」の定義を調べてみると

「自働化」とは、不良が発生した際に機械が自動的に停止し、後の工程へ良品のみを送るようにすること、公式ページでは通常の加工が完了したら機械を安全に停止させることも指すとしている。 豊田佐吉が発明した自動織機に、稼動中に糸が切れた際に自動で停止する装置が組み込まれていたことに由来している。

(Wikipediaより)

となっている.しかし今時の自動機で不良が発生してもそのまま生産し続けるようなものはなかろう.同じくWikipediaに以下の記述も見られる.

  • 合理化を進めるあまりに従業員の人間性やインセンティブ(労働意欲)を無視してはならない。
  • 人が関わらない自動化をしてしまうと、機械へカイゼンの知恵を織り込めなくなることから、カイゼンを持続的に行うためにも人が関わる自働化が重要となってくる。

こちらの定義の方が,現在の実情を表しているだろう.

すなわち人が機械に使われるのではなく,人が機械を使いこなして品質や生産性を向上する.例えば自動機が生産しているのを人が監視している.というのも人が機械の番人に成り下がってしまっている.更に見張っている間は「手待ちの無駄」であり,人の能力が発揮されていない.これでは労働意欲もわかないであろう.

また完全自動設備の導入には大きな設備投資が必要であり,細かな改善にはその都度設備の改造が必要となり,コストパフォーマンスの検討が必要となる.このような状況では,現場の改善意欲がそがれてしまう.

例えば完全自動の立派な設備を導入してしまうと,工程変更による改善を試そうにも大変な労力を必要とする.工程を分割して…などということは不可能だ.

人と設備が調和を持って生産を行う.現場の工夫を常に反映できる設備とする.
こういう考え方を「自働化」と呼びたい.

昨今の労務費の高騰,作業者の雇用難から自働化による省人化をしなければ生き残れない.また人のばらつきを抑え高品質化にも自働化が効果的である.

私はお客様の工場で次のような手順で自働化を提案している.

  1. 現在の生産ラインの流れを可視化し,徹底的にムダを排除する.
    これを省略してしまうとムダも一緒に機械化してしまう可能性がある.
  2. 自働化を意識した小型かつ安価な設備を導入する.
    小型というイメージは作業台に乗る大きさというレベルである.
    価格も省人化効果対費用を考える.中国であれば作業員1名省人化に対し設備投資は30万円以下である.
  3. 設備を導入した後,更に改善を続ける.
    設備が小型であるのでレイアウト変更は簡単.設備の小改造も簡単に出来る.

一方高価な設備を導入してしまうと,設備を止めるのが悪だという観念にとらわれ目一杯に生産をしてしまう(作りすぎの無駄).または機械を止めないために余分な準備作業を入れ込むという無駄が発生する.

以前改善した事例を紹介しよう.
設備の能力(800個/時間)を最大限に引き出すために,前準備に2人の作業者を置いていた.それでも後工程の能力(1000個/時間)には追いつかない.
それを前準備と設備作業を一人作業化した.設備の能力一杯には生産できないが500個/時間は余裕を持って生産できる.もう一台同じ設備を導入すれば後工程の能力(1000個/時間)を十分まかなえる.
これで3人を2人に省人化し更に時間当たりの生産能力を200個改善したことになる.

こういう事が出来るのが自働化である.
あなたの工場ではどんな自働化の工夫をしておられるだろうか?


このコラムは、2008年4月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第30号に掲載した記事に加筆しました。

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