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ボーイング737Max墜落事故

 3月10日エチオピア航空302便(737Max8)が離陸直後に墜落事故を起こした。乗客乗員157人全員が死亡。昨年10月29日にも、インドネシア・ライオン航空610便(737Max8)が墜落し、乗客乗員189人全員が死亡。両事故機は、離陸直後上昇中に何度も機首下げ動作を繰り返し墜落した。わずか5ヶ月弱の間に同様な事件が2件発生している。

公式事故原因はまだ発表されていないがAOAセンサー(仰角センサー)の出力に誤りがあり、失速回避のため機首下げ動作を繰り返したためと報道されている。巡航高度まで上昇中に機体が機首下げ動作をすれば、当然操縦士は機首上げ操作をする。コンピュータによる機首下げ動作と操縦士による機首上げ動作を繰り返した挙句に墜落した様だ。

巡航高度に達する前に上昇、下降を繰り返したわけだから乗客・乗員の恐怖は大変なものだっただろう。コックピットもこの様な状況で冷静に判断が出来たか疑問が残る。

この事故で思い出すのが、1994年4月26日に名古屋空港で発生した中華航空の着陸失敗事故だ。

「航空機事故から」

この事故は副操縦士の誤操作により、操作の矛盾が発生し自動操縦に切り替わった状態で着陸やり直しをしたため失速墜落している。

墜落機(エアバス)の設計思想は操作に矛盾があった場合、コンピュータ操作を優先する仕様になっていた。一方当時はボーイング社は操作に矛盾があると、人の操作を優先する設計思想だった。

失速の自動回避はコンピュータ優先にせざるを得ないのかもしれない。

事故原因はまだわからないが可能性を考えてみると、

  • AOAセンサーの故障
  • AOA警報システムのバグ
  • 操縦システムのバグ

が考えられるだろう。
ソフトウェア業界のには「バグはもう一つある」という格言(?)がある。検証・デバッグを繰り返してもまだバグは残っているという警句だ。

我々の製造現場でもIOTが進めば、システムの複雑度が上がりバグによる障害が発生する可能性が上がるだろう。

AOAセンサの点検整備が地上でできるのかどうか定かではないが、もし異常値を示す故障が発生した場合の検出方法を検討する必要がありそうだ。

世界中に737Maxは200機稼働しているという。各機が平均1日1往復フライトの稼働率だとすれば、半年で2回の事故は27ppmの事故発生率となる。家電製品に使われる電子部品の不良率であれば、許されるかもしれない。
運悪く不良品を購入してしまっても、新品と交換すれば済んでしまう事もある。
しかしたった2度の事故で300人以上の人命が失われている。27ppmの事故率でも許されない。


このコラムは、2019年3月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第799号に掲載した記事を修正・加筆したものです。

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JR運転士を書類送検へ 三重・名松線の無人走行事故

 津市白山町のJR名松線家城(いえき)駅で4月、車両の入れ替え準備中だった回送列車(1両編成)が無人で約8キロ自走した事故で、三重県警は、ブレーキをかけずに列車を離れた男性運転士(25)を業務上過失往来危険の疑いで、近く書類送検する方針を固めた。

 県警などによると、男性運転士は4月19日午後10時ごろ、JR名松線家城駅で車両の入れ替え準備中に列車のエンジンを始動させたまま、ブレーキをかけずに運転台を離れ、列車を同市一志町の井関―伊勢大井駅間の踏切付近まで8.5キロ自走させ、衝突などの危険を生じさせた疑いが持たれている。

 名松線では06年8月、今回と同様に家城駅に止めてあった無人の列車が車輪止めの付け忘れなどが原因で自然に走り出す事故があり、男性運転士が業務上過失往来危険の容疑で書類送検され、起訴猶予となった。

 捜査関係者は、今回も運転士のみを送検する理由について「JR側の再発防止策が不十分だったわけではなく、運転士の過失が大きいと判断した」としている。

(asahi.comより)

 記事にある06年8月の事故は,車輪止めのつけ忘れに加え,エンジンの停止時に空気圧が抜けてブレーキが緩む構造だったことが分かり,JR東海はエンジンを切った場合も制動の機能が落ちないようブレーキの機構を改良していた.

つまり,車輪止め忘れと言う人為ミスが発生しても,ブレーキの欠陥を改善することにより問題が発生しないようにしている.言ってみればポカ除けをしてあったわけだ.

今回の事故では車輪止めをはずした後にブレーキをかけ忘れている.ポカ除けがしてあっても人為ミスを起こしたのだから,今回は書類送検となったようだ.

もちろん人の命を預かる業務をしている者が「ついウッカリ」でも良いというわけでは無い.
しかし人の命にかかわる作業であるからこそ,人の注意力に頼らない徹底的なポカ除けを考えるべきだろう.

工場の不具合発生にも同様の人為ミスはある.その不具合に対し「作業員に注意し,再教育した」「作業員を罰して,担当業務からはずした」などというレベルの低い対策を良く見かける.

今回のニュースをポカ除けの観点で見直してみよう.

06年の不具合は車輪止めを付け忘れている.そのためブレーキの性能を上げて(欠陥を改善して)対策とした.

今回の事故ではブレーキをかけ忘れている.人為ミスとしては同じレベルのミスだ.エンジンをかけた状態では車輪止めをつけないわけだから,ブレーキのかけ忘れが直接事故につながる場面は多いはずだ.

例えば駅に停車した際に運転席からプラットホームに降りるという状況はいくらでもあるだろう.
従って車輪止めの付け忘れと言う人為ミスよりもブレーキのかけ忘れと言うミスの方がリスクは高いだろう.

リスク=影響×発生確率と考えた時,上記のミスはどちらも同じ影響度であり,ブレーキのかけ忘れのほうが発生確率が高そうだ.

車輪止め忘れよりもブレーキかけ忘れに対するポカ除けをする方が優先度が高いはずだ.
列車の運転手は指差し点呼で人為ミス防止をしているが,これは自己チェックの機能しかなくポカ除けとはいえない.

例えばブレーキレバーを引かなければ運転席の扉が開かない構造にするなどは比較的簡単に出来るのではないだろうか.こういうのがポカ除けだ.

職人の技、機械に伝承 44年の「勘」をデジタル化

 レーザーが当たると、金属の粉末がいくつもの四角形を描いて積み重なり、凹凸のある部品ができあがる。新潟県刈羽村にある従業員約170人のバルブメーカー、日本ドレッサーの工場では、大型の3Dプリンターが昼夜を問わず動き続けている。

 「熱を加えると、どう変形しますか?」。図面を手にした設計担当の三橋栄治さん(39)が尋ねると、顧問の田代為常さん(67)は「この材料は縮むので、少し大きめにつくろう」と応じた。田代さんはバルブづくり一筋44年。この会社の競争力を支えてきた「職人」の一人だ。

 その田代さんの職人技を、三橋さんがつくる設計図を介して3Dプリンターに学ばせている。親会社の米ゼネラル・エレクトリック(GE)から1年前に導入されたものだ。国内の製造業の働き手は減る一方。高齢化する職人たちの技術をどう伝承していくかが課題のひとつだった。

(朝日新聞デジタルより)

 日本のモノ造りを支えて来た職人の技を伝承しなければならない。私も同じ危機感を持っている。しかし職人の勘を3Dプリンターに学ばせると言うのは、違和感を持つ。

「熱を加えると、どう変形しますか?」
「この材料は縮むので、少し大きめにつくろう」
この会話は、多分非専門家の記者の理解だろう。熱を加えて縮む材料をバルブに使用しているとは思えない。例えば、加工中に熱が発生するので穴径は加工後縮む、と言う意味だろう。
確かにこれも職人の勘には違いない。しかしこのような問題はコンピュータでシミュレーション可能だ。職人は経験により一瞬の判断で収縮後の穴径が図面通りとなる様にドリル径を選択できる。コンピュータは時間はかかるがより正確にそれを計算できる。従ってコンピュータシミュレーションの結果を使い完成図面を加工図面に置き換えれば良いはずだ。

職人の真価は他にあると思っている。

同じくバルブを生産している佃製作所(池井戸潤「下町ロケット」・笑)は、手で加工する技術が高く、高性能なバルブを作る事が出来る。こういう技術は長年の積み重ねが必要だ。
長年の鍛錬によって磨かれた「巧みの技」がなければ、ディジタル化した「勘」も実際に加工が出来ない。こういう「巧みの技」を残せるのは日本しかないと思っている。

巧みの技を持っている中小零細企業が後継者難により、廃業せざるを得ないと言う事例があると聞く。日本の産業の財産が失われていく様な焦燥感を感じる。


このコラムは、2016年1月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第457号に掲載した記事を修正・加筆したものです。

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対処療法

 先週指導先の生産現場で作業員がペンチの柄で製品をたたいているのを発見した.理由を聞いてみると金属製のケース上下を組み合わせると隙間ができてしまうので修正しているという.

まずはペンチの柄でたたくのを止めさせ,小さなプラスチックハンマーを持ってこさせた.
今回初めて量産試作する製品だ.ナゼ隙間ができるのか聞いても要領を得ない.

現物を見ると,金属ケースの加工が図面どおりでなく隙間ができているようだ.図面を持ってきて調べてみろといってもなかなか図面は出てこない.

そのうち品証の責任者が来て,このくらいの隙間ならばOKと判断して帰ってしまった.この工場では品証の役割は良品・不良品の判定だけのようだ.本来であれば,品証は図面と現物を見て現物がきちんと加工できているのか,設計は正しいのか判定しなければならない.その上で次回の生産からどう対応するか決定する.それが品証の役割のはずだ.

現在加工している製品をどうするか,どのレベルで良品と判断するかはたんなる「対処療法」でしかない.対処療法だけでは次回からの本格量産でも作業員は製品を叩き続けなければならない.これでは生産性を阻害するばかりではなく,新たな不良を作りこむことになる.

特に今回は量産試作なのだから,生産開始から設計,生産技,品証が合同で品質,加工性,作業性などについてきちんと現場でレビューをすべきだ.そうでなければ量産が開始された後も品質・生産性が改善されることなく生産を継続しなければならない.

この工場には,品質保証のあり方,商品化フェーズに合わせて何をすべきかなど初歩から叩き込まなければ,進歩はなさそうだ.


このコラムは、2009年7月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第107号に掲載した記事を修正・加筆したものです。

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ユニクロ、女児向けジーンズ6万5000本を回収

ファーストリテが子供用ジーンズ6万5000本を自主回収、内側の金具の一部が突起

 [東京 13日 ロイター] ファーストリテイリング傘下で国内ユニクロ事業を担うユニクロ(山口県山口市)は13日、全国のユニクロやインターネット通販で販売した女児向けジーンズの一部商品約6万5000本を自主回収すると発表した。内側の金具の一部が突起した商品があり、着用時に皮膚を傷付ける可能性があるという。

 回収するのは「KIDS(GIRLS)ストレッチスリムストレートジーンズ」。販売済みの商品から2件、在庫から9件の不具合が見付かっている。 

ロイター東京外為市場ニュース(2008年11月13日)

2008年9月末にもユニクロは回収事故を発生させている.このときは起毛ブラシの折れた金属破片が製品に混入している事が分かり,市場回収をした.
販売済みの16,184点から1件クレームが発生した時点で,倉庫在庫63,189点を総点検し16件の不良を見つけている.

品質保証の実務をした事がある人間にとっては,ユニクロは良く努力をしていると分かる.
しかし市場回収は最善の策ではない.

消費者はそのような努力に対して無関心である.新聞告知や回収作業にいくら金がかかっていようが関係ない.また回収だ,という事実のみである.

回収対象品を購入しなかった顧客までが,やはり中国製は…とネガティブな印象を持つ深刻な問題だ.

最善の策は,工程の中で不良を作りこまないことだ.

問題となった「内側金具の突起」の原因工程リベット打ち作業の治工具,作業方法を工夫して不良を発生させない.治工具の日常点検・メンテナンスを徹底する.

また針やブラシなどが折れたときは,作業が継続できないような仕組みを作りこむ.
折れた針は徹底的に回収する.

針などは金属検知装置で検査可能だが,ジッパー,ホックなど商品に初めから金属が付いていることの方が多いだろう.探知機には感度を調整する機能があるが厳しすぎると全てNG,ゆるすぎると折れ針が混入していてもOKとなってしまう.

何度やってもNGとなると検査員は,装置の技術員を呼んで調整しなおしてもらう.
ありがちだが,技術員はひょいと感度を調整して終わり.これでは何のために検査をしているのか分からない.OKサンプルと故意に折れ針を混入させたNGサンプルを使ってきちんと感度調整をすべきである.
こういうやり方は電子部品・製品の検査では当たり前のようにやる.

しかし衣類の場合は,これでも検査は不完全になるだろう.
例えば金属ジッパーの横に小さな折れ針があったとしたら検出は不可能だ.

従って基本どおり,工程内で折れ針が混入しないことを保証するしかない.


このコラムは、2008年11月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第63号に掲載した記事を修正・加筆したものです。

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戦う品証

 会社員時代の最後の職位は、品質保証部長だった。実は子供の頃から設計の仕事がしたくて電子工学を勉強し、就職をした。品質管理、品質保証の仕事をするぐらいならば、会社を辞して転職しようと考えていた。

しかしある日突然、担当役員の前で事業部長が「明日から林に品質保証部を担当させます」と宣言。何も聞かされていなかったので我が耳を疑った(笑)社内ベンチャーのような小事業部で、ちょっと変わった製品の開発をしていた。その製品が工程内で不良となり、役員に報告が遅れた為大目玉を食らっている最中の事業部長発言だった。

志通り会社を辞めようかとも思ったが、住宅ローンを抱え、守らねばならない家族もあったので、唯々諾々と事業部長の突然の辞令に従うことになった。しかしやってみると、品質保証の仕事が面白い。自分の天職とすら思える。転職せずに天職を得た(笑)

品質保証部門を任され部門のスローガンを「戦う品証」とした。
部外の同僚は「品質クレームを言ってくる顧客と戦う」と考えていたようだ。しかしそうではない。「守り」に対する「攻め」なのだ。

問題が起きてから火消しをするのが「守り」であるとすれば、問題が起きる前に手を打つのが「攻め」だ。守りの戦いではなく、攻めの戦いをしようという発想で「戦う品証」と言う看板を掲げた。

設計や製造の失敗事例から未然防止を考える、と言う発想を事業部内に定着させた。

設計技術者だった頃から、周辺装置を担当しOEMメーカの工場に出入りをし、不具合の再発防止対策をすることが多かった。その経験で信頼性技術が磨かれた。もし自分が一流の回路設計者であれば、周辺装置の仕事は回ってこなかった。

二流の回路設計能力、突然の辞令という不幸、不運があるから天職を得て今の仕事につながっている。
「失敗から学ぶ」と言うより「不運をチャンスに転じる」と言うことだろうか。


このコラムは、2018年5月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第667号に掲載した記事に修正・追記しました。

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品質不良のアフターフォロー

 以前一緒に仕事をした台湾人から久し振りにSkypeでチャットの呼び出しがあった.

生産委託工場の品証部経理をしていた人で,お互い職場が変わっても時々連絡をくれる.
中国語でのチャットは正直疲れるのだが(笑)昔一緒に仕事をしていた人から連絡がもらえるのは楽しいものだ.

今彼は蘇州方面にある,医療器具メーカの品証経理をしている.今回の報告は客先からの不良クレームの件であった.

OEMユーザに出荷した新製品第一ロットの製品の主銘版ラベルの貼り方向が間違っている,というクレームだ.

ちょうど国慶節休暇の最中であったが,彼は休暇中どこにも行くあてがなかったので(笑)即バスと電車を乗り継いで顧客の工場に出向いた.

顧客側はすぐ来てくれるとは考えていなかったようで,休暇中の訪問を大歓迎してくれた.
彼は叱られると覚悟をしていったのが,嬉しい肩透かしであった.
しかも帰りには,次のロットからシェアを上げてもらえる,という約束をもらって帰ってきた.
営業がいくら頑張ってももらえなかったシェアをいとも簡単にもらえた.
そんな事を嬉しそうに話してくれた.

しかし喜んでばかりはいられない.
原因の特定と再発防止が必要である.例によって「作業者に注意します」という報告書を書くつもりだったようだが(苦笑)事情を聞いてみると,最初の仕様決めのときに問題があったようだ.

OEMユーザの図面にはラベルの方向が明示してなかった.

彼には受注時に,顧客仕様が製品設計に十分な情報が揃っているかどうかもレビューするようにアドバイスした.

顧客不良に対するアフターフォロー(後始末)も大事だが,不良を発生させないビフォアフォロー(前始末)はもっと重要だ.

以前開発のエンジニアをしていた時に,新製品に某OEMメーカのCRTディスプレイを採用した事がある.
採用決定後OEMメーカの品証部から最終完成品を見せてくれと申し入れがあった.OEMメーカの品証エンジニアは我々の製品をチェックし,高電圧(25kV)のアノードキャップから25mm以内に金属筐体があるので設計変更をしてくれと申し入れてきた.

アノードキャップは絶縁体でできており,アノード電極(25kV)がむき出しになっているわけではない.従って筐体を設計変更する必要はないと感じたが,OEMメーカの心意気に感心した私は,すぐにメカ設計チームに設計変更を要求した.

こういうのが本当の品質保証活動だと思うのだ.


このコラムは、2008年11月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第59号に掲載した記事です。

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データは現場・現物で見る

 不良の低減とか生産性の改善をする場合,データは重要な鍵になる.しかしデータから見えてくることだけでは改善はできない.

例えば工程間の作業バランスを改善するために,各工程の作業時間を測定し机上で検討してもあまり良いアイディアは出ない.
つまり計測した作業時間データは,今の作業方法によるデータでありそれをいくらひねっていても大きな改善にはならない.

作業時間と仕上がり数量から平均作業時間を求めても何も分からない.このデータからは,作業者ごとの作業時間のばらつき,作業者間の作業時間のばらつきは見えてこない.

作業現場を良く観察することにより改善するポイントが分かる.着眼点はばらつきだ

理論的な作業時間分析どおりに作業ができていることはあまり無い.作業時間のばらつきから無駄な動作が見えてくる.作業者間のばらつきから,習熟度に依存してしまう作業や,細かな作業方法の違いによる効率の差が見えてくる.
これらは現場でしか分からない改善ポイントだ.

不良統計データも現場・現物で見直す.同じ不良現象の中に,別の原因が含まれている事がある.
例えば異物や傷による外観不良は統計データだけでは,改善ポイントは見えない.現場・現物を見ることにより初めてどこで,どうして異物や傷が発生しているかがわかる.

データを取る事が無駄というわけでは無い.悪さ加減を知る,改善効果を測定するためにもデータは必要だ.改善に役に立たないデータの収集や加工はやめる.その時間があれば現場に出かけるほうが効果が高い.


このコラムは、2009年7月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第107号に掲載した記事です。

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続・改善のコツ

 先週のコラムで「改善のコツは,解決すべき真の課題を見極めること」と申し上げた.例えば不具合が発生した場合などは,解決すべき課題が間違っていると,更に大変なことになる.

レストランで,料理に異物が混入しているのをお客様が見つけたとする.この時の優先解決課題は,異物混入防止ではない.まず優先して解決する課題は,目の前で怒っているお客様の不満足を解消することだ.

これは製造業でも同じだ.
顧客工程で不良品が見つかった時に,お客様は同一ロットの部品を使って生産を継続してよいかどうか,まず悩むはずだ.それに対して適切な解決策をまず提供することが必要だ.顧客のラインが止まっているのに,再発防止対策の話などしても顧客不満足は解消できない.

不具合発生に対し,不具合が発生しないようにするのが解決課題ではあるが,それが第一優先の解決課題でないことは,顧客視点で考えれば明白だ.

まずは「応急処置」をする.その上で,不具合が発生しないように改善する.
その改善の着眼点は,

  1. 原因を除去する.
  2. 原因があっても影響が出ないようにする.
  3. 影響を軽減する.

例えば,購入したプリント基板のダンボールを開梱する時にプリント基板のパターンに傷をつけてしまい,部品実装後に機能不良が見つかる不具合があったとする.

パターンに傷をつけてしまう原因は,カッターナイフで段ボール箱を開梱するからだ.

  1. 原因を除去する.
    納入用の梱包を,コンテナ通い箱にする.
    開梱にカッターナイフを使用しなくて良くなる.
  2. 原因があっても影響が出ないようにする.
    段ボール箱の上下に,段ボール紙を敷く.
    ダンボールに傷がつくだけでプリント基板には影響なし.
  3. 影響を軽減する.
    最上段のプリント基板は,部品面を上にする(片面基板の場合)
    傷がついてもパターンは断線しない(ただし外観不良になる可能性はある)

これは過去に遭遇した工程内不良の事例だ.
当時私が取った対策は,カッターナイフで開梱するのを止める,だった.プラスチック片の先端を切り落とし,尖った形状にしてカッターナイフの代わりとした.これならば梱包用の透明テープは切ることが出来るが,銅箔には傷がつかない.


このコラムは、2011年8月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第217号に掲載した記事です。

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改善のコツ

 「人生を変えるほんの小さなコツ」という本が8月8日に出版される.

この書籍は,「たった一つの小さなコツがあなたを変える」というメールマガジンで小さなコツを配信し続けている野澤卓央氏が書かれたものだ.毎日メルマガを書き1500個以上のコツを配信されている.

私たちにも大いに参考になるコツが出ている.

「大きなことを達成したければ,
 大きなことをしようとせず.
 些細な習慣を身につけたほうがいい」

改善も同じである.
いきなり大きな改善を達成しようとしても,困難なことが多い.
もちろん困難であればあるほど,改善がうまく行ったときの達成感は大きくなる.しかし成功体験がまだ少ない場合,改善メンバーの心が折れてしまうのが一番怖い.

まずは,小さな改善を毎日継続することだ.小さな改善を積み重ねることによって,その次にある大きな目標も見えてくる.

このようなことは教えて分かることではない.毎日改善を繰り返すことで,気が付くモノだ.

「人を育てるコツ
 大切なことは教えるのではなく気付かせる」

改善をする時には,適切な相談相手を持つことが重要だ.

「相談相手を選ぶコツ
 夢のない人があなたの夢を笑う」

適切な相談相手でなければ,あなたが達成しようとしている状態を理解できない.つまり相談しても,得られるものはない.逆にそれは無理だと笑われる.

しかし専門家に相談すればよいということではない.
最近,完成品倉庫が狭くて困っているという相談を受けた.
これをMRPの開発をしているシステム屋さんに相談すれば,MRP導入のアドバイスがもらえるであろう.しかし完成品倉庫が狭いというのは,出荷量よりたくさんモノを造るからだ.この問題を解決せずにMRPを導入しても,問題解決にならないばかりか,生産改革のチャンスを失う.

「完成品倉庫が狭い」という問題は,必ずしも解決課題ではない.
完成品倉庫が狭いのはなぜか?という問題の深掘りをし本当の解決課題を見つけなければならない.

では最後に私の改善のコツを

「改善の最大のコツは
 解決すべき真の課題を見極めること」


このコラムは、2011年8月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第216号に掲載した記事です。

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