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積ん読

 積ん読。読みたいと思って本を買っても、読む時間がなく本棚の肥やしになっている状態をいう。日本に帰ると、古本屋にゆき手当たり次第に本を買い中国に持ち帰っている。そんな本が、アパートだけでなくオフィスまで大量に積ん読状態になっている。
中国では日本の書籍を買えないのだからしょうがない、と思っている。
しかしiPadやiPhoneの中も電子書籍や朗読書籍が積ん読状態となっている。中国にいるというのは言い訳で、私の積ん読病には別の病根がある様だ(苦笑)

積ん読はそのまま「tundoku」として海外にも紹介されているのを見つけた。

記事によると「ビブリオマニア」という言葉は海外にもある。しかしビブリオマニアというのは書籍収集そのものが目的であり、読もうと思っても読めない本がたまるのが積ん読であると解説している。
または恋人がいても、他の女性に興味を持ってしまう浮気症であるとも解説している。

内心ギクリとする指摘である。
しかし積ん読には別の効能もあると主張したい。
書棚の背表紙をぼんやり眺めているだけで、雑多な書名の順列組み合わせから新しいアイディアが出てくることもある。
例えば「研修開発のTQC」「カイゼン活動の進め方」という本が2冊並んでいる。これを眺めていて「研究開発のカイゼン活動」という新しいテーマが思い浮かんだりする。

アイディアが出てくること「も」ある、と弱めの表現をしている。実は意識的にその様なアイディアを求めて積ん読の背表紙を眺めているわけではない。私の場合は、指摘通りただの「浮気症」なのだろう(笑)

■■ 編集後記 ■■

今ワインバーグの「文章読本」を時間をかけて読んでいます。
「時間をかけて」というのは、読んでいる最中に他の事が気になり、別の本を読み始めるということを繰り返しているからです。
やはり私の読書は浮気症なのかもしれません。


このコラムは、2018年8月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第704号に掲載した記事です。

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続・魅力工学

 8月3日配信の第701号「魅力工学」で、婚活サイトのプロフィールが魅力的に見えるキーワードをAIが解析したという事例をご紹介した。

この記事に読者様からメッセージをいただいた。

※Z様のメッセージ

701号のフレーズ 
“私たちに必要なのは「正解」ではなく「新しい答え」だと思う。”
心に刺さりました。
私は、「現在」は「過去の行動」によって作られ、「未来」は「現在の行動」によって変えられると思っています。
ゆえにAIの描く未来は、過去の延長線上のもので、過去を超えることができない。過去を超えるためには、「新しい答え」が必要なのでしょうね。

メッセージをいただいて、「正解」と「新しい答え」についてもう一度考えてみた。

AIは「いいね」をもらった回数とプロフィール中の言葉や写真との相関を求め、相手に好感を持ってもらえるプロフィールや写真を分析した。

例えば平安時代の絵画を見ると、ぽっちゃり系の女性が描かれている。多分当時の絶世の美女は、現在では特定の男性にしかモテないだろう。人の好みは変化してしまう。しかしその変化は急激なものではない。婚活サイトのビッグデータを解析して出た答えは2、3年の単位であれば「正解」だろう。解析を繰り返していれば、AIが出す答えは「より正しい答え」と「新しい答え」を両立させることができるだろう。

失敗事例も過去のデータだ。
10年、20年前の失敗事例が現代に役に立たないかというと、全く逆でいまだに過去の失敗が繰り返されている。しかし失敗事例をビッグデータとしてAI分析したという話は寡聞にして聞いたことがない。

航空機の事故は、徹底的に原因解析され再発防止が徹底される。
しかし他の業界では、類似の事故が再発している。例えば、寿命モードで故障した電子部品が原因で火災事故が発生するような事故は、しばしば発生する。

こういう業界にAIによるビッグデータ解析をすれば、未然防止(開発時に対策)することができるのだろうか?AIがこういう方面にも応用できれば、別の意味で「魅力工学」となるだろう。
素晴らしい着想だと喜んだが、5秒後にダメだと悟った(笑)
魅力工学でAIが分析したのは相関関係だ。
しかし事故防止には相関関係は役に立たない、事故と原因の因果関係が必要だ。


このコラムは、2018年8月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第705号号に掲載した記事です。

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魅力工学

 東京大学の山崎俊彦准教授の「魅力工学」という記事を目にした。
婚活サイトのデータを活用しAIで婚活に有効なプロフィールの書き方、顔写真の撮り方を分析したそうだ。

詳細はよくわからないが、婚活サイトでの「いいね」や連絡先の交換の件数を指標にして、多変量分析をしたのだろう。

「いいね」の件数とプロフィールのキーワードとの相関を分析する。
例えばプロフィール内の「海外勤務」というキーワードと「いいね」の件数に相関があることを発見すると、海外勤務の経験がある、または海外勤務中であると結婚の対象として好ましく思う、ということになる。

多変量解析では、キーワードを自分で設定することになるが、AIを使ってキーワードの洗い出しも自動でやってくれるのだろう。

さらに、メッセージのやり取りの件数、間隔までもパラメータとして分析したそうだ。手動でやれば気が遠くなる様な分析だが、AIならば勝手に分析してくれる。

ロボットやAIが人の代わりに仕事をする時代がやがて来ると、予測する人もある。さらに結婚相手もAIが決める時代が来るのだろうか?

しかし冷静に考えれば、AIが猛烈な処理能力と速度で分析するビッグデータは「過去のデータ」だ。未来を創造するのは「過去のデータ」ではないだろう。AIは過去のデータに基づき正解を出すかもしれない。

しかし私たちに必要なのは「正解」ではなく「新しい答え」だと思う。

■■ 編集後記 ■■

「魅力工学」なんとも魅力的な響きを感じます。
当たり前品質から魅力的品質。顧客満足から顧客感動。工学の世界も人の心を取り扱う様になるのでしょうね。


このコラムは、2018年8月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第701号号に掲載した記事です。

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入学式前から…「髪型違反」21人を正座3時間

 長崎県五島市の県立五島高校(前田功校長、602人)で今月3日、髪形などに問題があるとして、教諭らが新入生22人に説教し、うち21人を約3時間にわたり正座させていたことがわかった。女子生徒に「男の気を引きに来たのか」と発言した男性教諭もいたという。同校は8日の入学式後、該当する生徒と保護者に「指導の目的を外れ、無用な痛みを与えてしまった」と謝罪した。

 同校によると、3日は学校生活について説明するオリエンテーションがあり、新入生200人が参加した。生活指導担当を含む教諭約20人が髪形などを検査し、眉毛を細くしたり、長髪を結んでいなかったりして校則に違反する22人を校内のホールに残し、反省文を書かせた。

 22人は男子14人、女子8人。教諭らは、このうち足を痛めていた男子を除く21人を板張りの床に正座させた。全員が反省文を提出するまで、正座は約3時間に及んだという。上田克教頭は「厳粛な入学式をすることが指導の目的だったが、それを外れる結果となり残念だ」と話した。

(asahi.comより)

 まず、入学式前のオリエンテーリングでどうしてこの様な指導になるのか理解に苦しむ。生徒たちはまだ入学しておらず、このオリエンテーリングで、初めて校則を聞かされるのではないだろうか。

だとすると、校則に従っていないと叱られるのは理不尽だ。
まず規則を先に明確にした上で、叱らなければなるまい。

この学校にとって、長髪を許さないということが重要な指導であるのならば、入学試験の前にそれを明確にしておく必要がある。それでも従わない生徒には、反省文など書かせる必要はない。退学若しくは、その場で散髪だ。

長髪を禁止することが、指導のための重要な方法論であるというよりは、教頭の「厳粛な入学式をすることが指導の目的だった」という発言から推測すると、入学式で長髪の生徒がいたら見栄えが悪いという「教師の都合」によるものではないか?

反省文を書かせたとしても、将来始末書を書くのが上手になるかもしれないが、他に意味があるとは思えない。反省文さえ書かせれば、反省し二度としないなどと現場で生徒と接している教師が本当に思っているのだろうか?

私が尊敬する経営者・原田師も、同じように長髪の作業員を指導したがその方法は大違いだ。
原田師は禁止するのではなく、自ら進んで散髪に行くように仕向ける。そしてなぜ長髪にしたいのか、そのココロを理解しより健全、建設的な方法でそのココロを満たしてやる方法を提供する。

こういうのを「説得と納得」の指導という。

床に正座させ反省文を欠かせる。
これは「叱責と服従」の指導だ。この様な指導では人のココロは変わらない。


このコラムは、2010年4月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第148号に掲載した記事です。

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グーグルでないと作れない日本語入力ツールを作った

 グーグルが12月3日に公開した文字入力支援ツール「Google日本語入力」が、大きな注目を集めている。Googleがクロールした大量のウェブデータ元にした豊富な語彙と、変換語を提案するサジェスト機能が目玉だ。

 開発を担当したのは、Google検索で検索語の誤変換を指摘する「もしかして」機能の日本語版を開発した、グーグルソフトウェアエンジニアの工藤拓氏と、同じくソフトウェアエンジニアの小松弘幸氏だ。2人は「20%ルール」と呼ばれるグーグルの社内制度を使い、勤務時間の20%を使ってGoogle日本語入力の開発を始めた。

(CNET Japanより)

 グーグルが日本語入力ツールを作るというのは意外だったが、考えてみればグーグルの強みである「検索」を活用した見事な発想だ。

グーグルでは毎日気が遠くなる量の検索が行われており、そのたびに日本語が入力されている。インターネットをくまなくサーチした日本語キーワードの蓄積がある。これらが日本語変換辞書のリソースとして役に立つ。

また検索時の「あいまい検索機能」も日本語入力ツールには有効だ。
例えば「クオリティーマインド」とか「クォリティマインド」などで検索をかけてみて欲しい。それらの検索結果には「クオリティマインド」という私のホームページがヒットするはずだ。

それよりも注目したいのは「20%ルール」という制度だ。
詳しくは記事だけでは分からないが、業務時間の20%は業務以外の「アンダーベンチ開発」をしても良いというルールだろう。業務以外の創造的な仕事を就業時間中にすることを許す「企業文化」がすごい。このような「遊び」からとんでもないヒット商品が出てきたりするものだ。

有名なところでは、3Mのポストイット、Sonyのウォークマンもエンジニアのアンダーベンチから出てきた製品だ。

こういうことができるのは研究開発・商品開発の部署だけではないはずだ。
工場の中のエンジニア、管理職も同じように業務以外の創造的な時間を確保すべきだ。

私が尊敬している経営者は、管理職の職位にあわせ一日のうちで、部長は4時間、課長は2時間というように「業務をしてはならない時間」を決めている。この工場では、その時間を利用して作られたマニュアル類が膨大な量となり従業員が次々と育つ環境の土台となっている。

今日のニュースからの気付き

  • 会社の資産を新しい目的に再利用できないか
  • 従業員に創造的な「遊び」をすることを推奨しているか

あなたの会社ではいかがだろうか?


このコラムは、2009年12月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第130号に掲載した記事です。

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工場のR&D

 先週の記事「グーグルでないと作れない日本語入力ツールを作った」に読者様からコメントをいただいた。

※T様のコメント
今の日本では、いい品質で安いものでなければ売れないという、悪い風潮が浸透しています。そこにはコストも何もなく、みんな「安さ」にだけ目が行き、われわれは今後何を、どうしたらいいのか、戸惑っています。

新商品の研究開発には、かなりの研究期間と開発費用がかかります。それら費用を捻出するだけの財源は、私ども中小企業にはありません。

私の記事が舌足らずのところもあり、多くの方がT様と同じ思いを持たれたのではないだろうか。

品質は良くて当たり前、安くなければ売れない、という商品を「当たり前品質」商品といっている。すでにモノがあふれている市場では、「当たり前品質」の商品を量産すれば、貧乏も量産することになる。

「魅力的品質」の製品をお客様の需要に合わせて生産すれば、コスト競争に巻き込まれずに済むはずだ。

当然商品開発には莫大なコストがかかる。
しかし工場のR&Dというのは商品開発とは違うものと考えている。
顧客の価値観を理解してそこを強化するのが工場のR&Dだ。

例えば顧客が、不良が少ないという品質に価値観を持っていれば、徹底的に不良を減らす。もちろん検査コストをかけて不良を除去するという意味ではない。工程で品質を造りこむ上流改善だ。

フレキシブルな納入体制に価値観を持っていれば、徹底的にリードタイムを短くする。
鍋屋バイテックという特殊ネジメーカは「すしバーコンセプト」を実現し、注文生産でネジ1本から翌日納入を可能とした。この様な非常識なリードタイムを実現してしまえば、顧客はコストのことで文句は言わなくなるだろう。

ある電気製品の成型工場では、廃棄処分済の金型を材料として再利用し、金型エンジニアに爪楊枝入れとか、作業員が腰を下ろす小さな椅子を作らせている。
元々金型のメンテナンスしかできなかったエンジニアに対し、金型設計の技能訓練になる。

こういう活動を通して工場の技術力、生産効率、品質を上げてゆくことが工場のR&Dだと考えている。
身近なところにたくさんテーマはあるはずだ。


このコラムは、2009年12月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第131号に掲載した記事です。

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スマイル

 先日は大変気持ちの良い工場を訪問させていただいた。

日系中国工場では就業員が、上司やお客様に挨拶をきちんとするところが多い。しかしこの工場では同じように挨拶をされても、なんだかとても気持ちが
良いのだ。挨拶をされるたびにこちらも思わず微笑が出る。

何が違うのだろうかと考えながら工場を案内していただいていた。ふと見やった工場の壁にその答えがあった。

壁には5Sの標語「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「素養(中国語で躾のこと)」の他に「安全」「微笑」「節約」の3つの標語が掲げられていた。

この「微笑(スマイル)」こそがその答えだった。挨拶をしてくる作業員やスタッフたちは女性も男性も皆微笑みながら挨拶をしているのだ。

笑みをたたえながら挨拶をされれば、こちらも思わず微笑みたくなる。
朝顔を合わせたら微笑みながら「おはようございます」と言う。
仕事がつらくても微笑みながら「お疲れ様」と言う。
上司に叱られても微笑みながら「ありがとうございます」と言う。

スマイルの効果は大きい。
スマイルはココロをポジティブにする。
ポジティブなココロは行動をポジティブにする。
ポジティブな行動はポジティブな成果となりスマイルにつながる。

そしてスマイルは周りに伝染して職場全体が明るくなる。

サービス業ではスマイルが直接顧客満足につながる。工場でもスマイルは従業員満足につながり、規律と生産性・品質の向上に役立つだろう。

以前、私はある工場でこんな指導をしたことがある。
クリーンルーム内で作業者の防塵着の着方に乱れが散見された。不良の原因となっている埃は着衣から出る繊維質のものが大半を占めている。彼らには朝礼のときに2名ずつ向かい合い、お互いに微笑みながら着衣の乱れを直しあうように指導した。

母親が子供のボタンをかけるように、妻が夫のネクタイを直すように、笑みをたたえて着衣の乱れを直してやれば、上司から叱られるより何倍も効果があるだろう。

このような活動の成果は、すぐには見えないかもしれない。しかし確実に良い企業風土を作り上げる。


このコラムは、2009年12月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第132号に掲載した記事に一部加筆修正しました。

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コミュニケーション

 毎月セミナーを開催しているホテルから電話があった。
今月の予約は10日になっているがそれで大丈夫か、という確認の電話だ。
何らかの予定変更がないか確認を入れてきたのだと思ったが様子が違う。
会場の机の並べ方は?何時に会場に来る?挙句の果てに今日予約金を持って来いという。

先月も同じ事をやっているのにどうもおかしい。確認をすると案の定前の担当者が退職してどうして良いのか分からないというのだ。引継ぎがきちんとできていない。

前の担当者はもっと良い仕事を見つけて辞職した。だから「没方法」だという。

中国ではこういう事がしょっちゅうある。
従業員側の理由もあるが、経営者側が従業員の能力に不満で解雇してしまう場合もある。

私の場合など、ホテルまで呼びつけられて新担当者への引継ぎを顧客である私が行うことになった。

彼らにとって従業員の退職は日常茶飯事のはずだ。したがって管理職は、こういう場合でも業務に差しさわりが発生しないようにコミュニケーションが日常的に行われる仕組みを作っておかねばならない。

私の場合は毎月定例でセミナーを開催しているわけだから顧客ファイルを作って、どのような準備をしたか、料金はいくらだったか、クレームはあったかを毎月一枚のシートに記録しておくだけで十分であろう。

また非定期で来る顧客に対してもこのような顧客ファイルがあれば、「前回はこういう準備をしましたが、今回も同じで良いですか?」と一言いうだけで顧客が受ける印象は格段に良くなる。

残念ながらこのホテルでは、私の名刺と日本人であるということだけが引き継がれたようである。

コミュニケーションがうまく行かないと嘆くだけではなく、このような記録による非口頭コミュニケーション、蓄積型のコミュニケーションを工夫するべきだと考えている。


このコラムは、2008年9月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第51号に掲載した記事です。

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現場コミュニケーション

 先週は従業員の突然の退職にもきちんと対応できるようにコミュニケーションが普段から行われるような仕組みを構築しましょう、というテーマで「コミュニケーション」というタイトルの記事を書かせていただいた。

コミュニケーションと言うのは会話だけで成り立っているわけではない。
表情・身振り・手振りなどノンバーバル言語、メモ・レポートなどのテキストもコュニケーションの一部である。

以前勤めていた会社では、連絡メモ・レポートは「AOC」と呼ばれていた。
「Avoid Oral Communication」の略である。口頭連絡を避けてきちんとメモによる連絡を徹底しようと言う意思が明確に現れている。

 今週は「現場コミュニケーション」というテーマで記事を書かせていただく。
経営者・管理職の心構えとしてご理解いただけるとありがたい。
今回のテーマは二つの側面がある。
・現場でコミュニケーション
・現場とコミュニケーション
の二つをあわせて現場コミュニケーションと言うタイトルとした。

まず第一に「現場でコミュニケーション」
 経営者・管理職の皆さんは忙しくて執務室に座りっぱなしなんてことは無いだろうか?
コミュニケーションの基本は相互理解である。まず己を知り、相手を知る。
現場に出てゆかなくては相手の本当の顔は見えてこない。
現場に出てゆくことにより現場の声にならない声を聞く。報告されない問題点を見つける。
色々な効果があるはずだが、現場の作業員・リーダとの仕事を通したコミュニケーションは経営理念や経営目標の理解を側面的に助けるはずだ。

一日最低一度は現場を回る。
そのための時間は、自分の生産性改善をして捻出すべきである。
生産性改善は生産現場だけの話ではない、オフィスワークにも生産性改善は必要である。
ご自分でコピーをとったりしていないだろうか?中国人スタッフの目には経営者がコピーを取っていると言うのはものすごく奇異に写っているはずである。何故給与の高い幹部が秘書の仕事をするのかと考えるわけだ。

次に「現場とコミュニケーション」
 現場リーダや職員の話をそのまま100%信じて痛い思いをされたことは無いだろうか?私は何度かある。もちろん部下の指導育成が足りてないと言うこちら側の責任であるが……

誰もが自分の理解(または思い込み)で現実を見ている。
したがって報告される事実は彼の眼鏡を通した現実である。
オフィス職員の中には現場を見ずに班長の報告を只そのまま上司に転送する者がいる。班長の職責で理解できる現実とオフィス職員の職責で理解できる現実は別ものだ。

現場のことは「者に聞くな。物に聞け」
現場に行き現場で確認を徹底したい。


このコラムは、2008年9月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第52号に掲載した記事に一部加筆修正しました。

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現場力

 読者様から「現場力」に関する記事を紹介していただいた。

 問題を解析し、知恵やアイデアを出し、粘り強く改善するのは、あくまで人間である。この現場力こそが、日本の競争力の源泉である。
日本企業の競争力は、現場をたんなる「コスト」として見てこなかったことから生まれている。

困れば知恵が出る。そして、それが現場力強化につながる。その際に、現場だけを困らせるのではなく、経営トップも一緒になって困ることが肝心だと大野(耐一)氏は指摘する。

「変動費化」という甘い言葉が、現場の品質を毀損させているという現実を、経営者は直視しなければならない。経営の目的は、変動比率を高めることではなく、現場の競争力を高め、そこから生み出される付加価値を高めることなのである。

○○と他のスーパーの最大の違いは、仕入れにある。大手スーパーが集中購買を指向する中で、○○は鮮魚、精肉、青果といった生鮮食品の仕入れ担当者は、各店舗に配備されている。

「競争戦略」と「オペレーション」の両輪が揃ってはじめて卓越した競争力は生み出される。

競争戦略が合理的であることの最も重要な要素のひとつは、自社の「身の丈」に合っているかどうかである。ビジネスとしての可能性があるからといって、あれもこれも漫然と手を出していたのでは、資源配分が分散してしまい、優位性構築に結びつかない。

人づくりのための投資とは、お金をかけることではなく、経営幹部がどれだけ自らの時間をかけたかである。

ボトムアップという現場力のエネルギーは、じつはトップダウンからしか生まれない。

企業活動における「よい行動」とは、「しつけ」と「くせ」の2つで成り立っている。

「見える化――伝わる化――つなぐ化――粘る化」

サービス業や流通業においては、過度な分業・分散化は、顧客満足の低下をもたらす。

いま、後輩たちに遺さなければならないのは、たんなる機械の使い方や作業手順ではない。「なぜこの機械が生まれたのか」「なぜこの作業手順が必要だったのか」そんな根源的な経験則こそが、継承されなければならない。それこそが「スピリット」である。

90年代、バブル崩壊で日本的経営に自信をなくした経営者達が、こぞって米国流経営手法を真似をした。

株主重視主義により短期経営数字を追いかけ現場を変動経費化した。このため現場の力が代々伝承していく仕組みが失われた。
成果主義に偏りすぎたため従業員にOUTPUTばかりを求め、人財育成が不十分となった。

このような問題を抱えた組織が、バブル崩壊以降未だにテイクオフできていないのではなかろうか。

ところで90年代に力を取り戻していた米国は、実は70年代から日本に追い上げられジリ貧状態であった。80年代になり更にそれが顕著になり、日本式経営の強さの秘密が研究された。

そこで注目を浴びたのがデミング博士である。
デミング博士が戦後の日本に品質管理を教え、そこからモノ造りの日本が急成長したのを突き止めたのだ。デミング博士は全米で再評価され多くの経営者がデミング経営哲学を取り入れた。フォードもGMもデミング博士の直接指導を受けて当時復活している。

バブル崩壊時に日本式経営を真似をした米国の強い企業は実はこうして蘇ったのである。
シックスシグマ、TQM、マルコムボルドリッジ品質賞など日本式経営を研究した結果米国に取り入れられたものである。

現場の力を大切にしてきた日本式経営をもう一度取り戻す必要がある。


このコラムは、2009年2月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第84号に掲載した記事に一部加筆修正しました。

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