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挑戦しないと新技術なんてできない

挑戦しないと新技術なんてできない

ホンダ社長 福井威夫氏

普通なら会社が大きくなるにつれて管理が厳しくなる。だんだん時間や予算の管理が厳しくなって個人の自由がなくなり,いちいち上司の了解を取らなければならない。しかし,これではダメ。社員が何もできなくなってしまう。

 ホンダの研究所はそうじゃない。決していいかげんなわけではありませんが,かなりの部分が個人の裁量に任されています。かつて私も相当に自由にやらせてもらった。すべてが勝手に決められるわけではないものの,「会社にとってこれが大切なんだ」と自分で判断すれば,かなりの確率でそのテーマの研究開発ができるのです。そのときはもちろん,会社のお金を使わせてもらう。報告するのは成果が出た後。お金を使った後に,「こういうものができました」とやるわけです。それが許される会社なんです,ホンダは。むしろ,そうでなければ新しい技術なんて生まれてきません。

今回は日経BPのコラムから抜粋した.

最近業績主義の風潮があり,プロセスを評価する事が少なくなってきていると感じている.失敗を評価することもプロセスを評価することになろう.同じシリーズのコラムでキヤノン電子社長 酒巻久氏も「失敗・成功事例集」の作成に力を入れておられるのが紹介されている.

失敗を隠すことで次にまた同じ失敗を繰り返すことになる.失敗の中にこそ次の成功の秘訣が隠れている.99回失敗してもあきらめずに挑戦すれば次の1回で成功する.
エジソンの有名な言葉は,発明は99%の失敗と1%のひらめきから生まれると言い換えても良いだろう.

成果のみに着目すると簡単に成果の出る仕事だけに手を出し,困難が予測される仕事に手を出さなくなる.挑戦する心をなくした組織は,衰退が待っているだけだ.

ホンダ研究所に勤務していた友人は以前ソーラーカーのプロジェクトに手を上げて参加した.ソーラーカーの開発,オーストラリアで行われたレースへの参加.通常の業務から外れてこのプロジェクトに参加する事ができた.

挑戦と失敗が許される組織文化が組織を強くする.

上記のコラムは
「経営者12人の原点 日本,ものづくりの真髄」
という本に紹介されている.


このコラムは、2008年5月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第35号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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災害復旧

 ラジオ番組でジャーナリストが台風19号関連のニュースにふれて、防災だけではなくそのあとの復旧にももっと目を向けるべきだ、という趣旨の発言をしていた。確かに自然災害の防災には限度がある。ならば被災後の復旧のやり方にも目を向けるべきだろう。

ジャーナリストのコメントは、ボランティア活動のノウハウを継承する仕組みが必要だという趣旨だ。

東日本大地震後のボランティア活動のニュースを聞いて目頭が熱くなったのを思い出す。阪神大災害後のボランティア活動がニュースとして着目されるようになったように思っている。

しかし救援に出向いたボランティアを受け入れ側の行政が活用できていない。ならば過去に経験がある人たちを有効活用しよう、とコメンテータは提案していた。

具体的には、過去に被災した地方自治体のOBが、被災地に出向き指導をするようにしてはどうか、というアイディアだ。

確かに過去に経験のない災害に遭った地方行政の職員がテキパキと復興活動を進められるとは考えにくい。被災経験がある自治体で復興活動をした経験を持つ先輩が応援に来てくれたら、心強いと思うだろう。

こういうアイディアに心から賛同する。
ノウハウを人で伝える、という日本的な手法だ。確かにマニュアルにまとめたノウハウにない、文字以上の情報は人を介して伝わるのかもしれない。

禅に「不立文字(ふりゅうもんじ)」という言葉がある。禅の教義は経典など言葉では伝わらない、という意味だ。

「不立文字」

マニュアルでアルバイトの仕事を管理しようとする現代的な考え方とは一線を画す日本的な仕事の伝承方式だと思う。わざわざ「不立文字」などと禅語を持ち出すくらいだから、日本的伝承方式に反対ではない。しかし効率が悪い。

本当にマニュアルではいけないのか?
我々がマニュアルで伝えたいのは、仕事の手順であり、それに関わる考え方である。禅の教義を伝えたいわけではない。

ディズニーランドの学生アルバイトは年間離職率90%でも、マニュアルにより顧客満足の高いオペレーションができている。
良品計画もムジグラムというマニュアルでオペレーションを記述している。

上手くいっているマニュアルと、残念なマニュアルの違いはどこにあるか?
確信があるわけではないが、マニュアルの作成・改定にマニュアルを使う人の関与がどれだけ反映されているか、というところが境目のような気がしている。

つまりマニュアルの作成や改定にどれだけ実作業者たちを巻き込めるかということに関わっていると思う。神託のごとく与えられたマニュアルより、自分たちの体験を元に作り、日々改定しているマニュアルの方が、きちんと守られるのではなかろうか。

10年前に決められたマニュアルでは、自分たちが作ったマニュアルとは言えない。しかし10年前に作ったマニュアルでも、自分たちの意見が反映され、日々進化しているのならば、それは与えられた(押し付けられた)ものではなくなるはずだ。


このコラムは、2019年10月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第892号に掲載した記事に加筆しました。

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注意喚起と再発防止徹底

 名古屋市は24日、昨年5月に病死した同市中村区の男性(63)について、区役所職員が遺族への連絡を怠り、遺体が半年以上引き渡されずに放置されていたと発表した。職員が男性の遺品を無断で廃棄していたことも判明、市は職員の処分を検討している。

 発表によると、連絡を怠るなどしたのは、同区保健福祉センター民生子ども課の男性職員(40)。昨年5月25日、生活保護受給者の男性が病院で死亡した際、戸籍を調べて速やかに遺族に連絡すべきだったのに、放置。同12月10日になって大阪府に住む遺族に手紙で連絡し、遺族によって葬儀が行われた。市によると、親族と連絡が付かない場合、生活保護受給者の遺体は、生活保護法に基づき自治体が埋葬することになっており、遺体はこの間、葬儀業者が冷凍保管していた。

 また、職員は今年3月、病院から預かった男性のスマートフォンや車検証などを、市の規定に反し、遺族の了承を得ずに廃棄していた。8月に遺族からの問い合わせで判明した。

 職員は連絡の遅れについて「他の仕事で忙しかった」とし、遺品は「家族と話す機会がなく、処分に困って廃棄した」と話したという。同課は「重大なミスで心からおわびする。職員全員に注意喚起し、再発防止を徹底する」としている。

(読売新聞オンラインより)

 「ミス」などという言葉で済ませているが、信じられない仰天事件だ。
当然葬儀業者から遺体の保管料金を毎月請求されていたはずだ。担当者が忘れていても、経理担当者は気がつかなかったのだろうか?数ヶ月間も遺体保管費の支払いが続いたところで、おかしいと気がつくのが普通だろう。不明な請求が半年以上続いていても疑問を持たない。言い換えると税金で運用されている組織にありがちなコスト意識の欠落だ。

他部門の仕事には口を挟まない、仕事ではなく作業をこなしているだけ。
金曜日配信の連載小説「山本品管部長奮闘記」に出てくる経理部、人事部の中国人幹部と同じレベルではないか(笑)
(注)上記の中国人幹部は、その後の展開で大きく成長しています。

区役所は「職員全員に注意喚起し、再発防止を徹底する」と釈明しているが、「注意喚起」では再発防止の効果は期待できない。

根本的には部署間の敷居を下げ、相互にコミュニケーションしながら仕事を進める組織文化を作るべきだ。しかしこれには、働く人々の意識変革が必要であり、時間がかかる。まず即効性のある対策を考えねばならない。

まずは進行中の仕事をすべて可視化する。
すべての仕事の進捗を計画、実績が目に見えるようにすることだ。これを全員が見られるようにする。この予定・実績を全部署全員が閲覧できるようにする。こういう仕組みを作っておけば、止まっている仕事は一目瞭然となる。

部門リーダは、この予定・実績ボードで部門の進捗状況、他部門との協調が確認でき適切な指示、支援ができるはずだ。
各作業に担当者が割り振られており、毎朝自分の仕事を確認することができる。計画が遅れていれば担当者宛にアラートが出る仕組みも簡単だろう。


このコラムは、2019年10月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第895号に掲載した記事に加筆しました。

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認識力

 知識を学習するだけでは不足だ。知識を能力に変換し、能力により行動を起こすことで、初めて価値を生む。と何度かメールマガジンに書いた。

第382号「知識より経験」

第460号「知識より体験」

第683号「知識より行動」

最近中村天風師の言葉を写経のように書き写している。写経といっても墨と筆を使って書いているわけではない。キーボードを叩いてクラウドに文章を保存している。何らかの意義や価値を感じているわけではなく何となく始めた(笑)
本日は「知識より認識力を鍛えよ」という天風師の言葉を書き写した。

知識を持たなくて良い、というわけではない。しかし知識を増やすことに拘泥していては豊かな人生は送れない。物知りは一目置かれるかもしれない。しかし物知りと認めれれても、浅薄な虚栄心を満たすだけだ。

知識は知れば知るほどさらに奥深くキリがない。知識そのものは能力ではない。知識を極めたところで何も起きない。学者も研究で得られた知識を応用する事で初めて成果が得られる。

認識力が高まれば、経験・体験を知識として認識できるようになる。
状況を認識できれば、行動を起こせるだろう。


このコラムは、2019年11月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第900号に掲載した記事に加筆しました。

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続・働かせ方と働き方

 先週の雑感で取り上げた「働かせ方と働き方」に読者様からメッセージをいただいた。

※Z様のコメント

本来の「働き方改革」は労働の成果を如何に上げるか、という働く本人の課題と考えるべきだ。
そのために政治や企業が支援できることを考えるのが本筋だ。

まさにおっしゃられる通りだと思います。
経営側に近い与党の発想だと、こうなっちゃうんでしょうが、
その視点の誤りに対して、何も言わない野党も野党ですね。
ハイスペック人材の時間外労働時間制限の撤廃といった類の話じゃないですね。
今後とも宜しくお願い致します。

コメントありがとうございます。
確かに与党の政治姿勢は経営者よりかもしれない。しかしそれは景気をよくし国民の生活をよくするための手段として、企業が利益を上げるように政策の舵を取っているからだろう。
最近は経営者vs労働者というステロタイプな対立関係で情勢を理解できなくなっていると認識している。例えば私の世代は学生が最も急進的な左翼だったが、今では求人率の高まりを歓迎して、自民党支持の学生が増えていると聞く。

「働き方改革」の迷走は政府・与党ばかりの責任ではないと思う。非本質的議論ばかり繰り返す野党にも責任はある。最大のガンは、デタラメなデータを上げてくる役所ではなかろうか?

残業時間等に関するいい加減なデータを上げて役人がどういうメリットがあるのか不明だが、ひょっとして役所も「働き方改革」を阻止しようと考えているのだろうか(苦笑)

財務省などは「財政健全化」「国の赤字を子孫に回すのな!」などのお題目で消費税アップを狙っている。

確かに我々の家計で借金があれば問題だ。
しかし銀行融資ゼロという企業は、真面目に発展を考えているのだろうか?
ゼロ金利の時代に銀行から金を借りて将来のために投資をしようと考えるのがまともな経営者だ。バブル期に土地やゴルフ会員権を買いあさって失敗した経営者も多くいたが、これは投資ではなく投機だ。

国の借金が「悪」であると考えるのはおかしい。誰に借りているのかを考えれば自明だ。
例えば生活費が足りなくて借金をする。高利の街金融から借りるのなら問題だ。
奥さんが旦那に生活費を借りる。しかも旦那はお金を稼げる。これならなんら問題にはならない。

今の財政赤字は、政府(妻)が日銀(旦那)に生活費を借りているだけだ。日銀(旦那)は余分にお金を刷って国債を(妻から)買えばいいだけだ。

ちょっと本論から外れてしまった(苦笑)が、役人が政治を歪めているように思える。

ところで役人の「働き方改革」を阻害しているのが国会である、というのも笑えない事実だ。国会答弁の質問は、本来前々日までに提出する約束になっているそうだ。それは関連省庁から事実関係のレクチャーを受け国会で答弁するための準備時間を見込んでいる。しかし与党からの質問は、前日の夕方にしか出てこないそうだ。当然役人は徹夜で答弁原稿を作成することになる。


このコラムは、2018年7月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第695号に掲載した記事に加筆しました。

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働かせ方と働き方

 先週の編集後記で、製造現場の監督職を平日の研修に参加させるのに消極的な中国人経営幹部をご紹介した。

班長の能力を上げ、生産品質を安定させたい、生産効率を上げたい、という欲求は当然だ。先週ご紹介した経営幹部もそれを理解しているから、私の話を聴きに来たのだろう。しかし目の前の納期に間に合わせ得るため、生産は止められない。班長不在のまま生産するのは不安だ。

そんな気持ちは理解できるが、目前の短期課題を満足させるために長期課題に目をつむる状態になっている。

班長の代理が出来る人材を育成しておく必要があるはずだ。
班長が研修を受けている間は、班長代理が現場を取り仕切る。そして実力がつけば班長は昇格。代理経験を積んだ班長代理はすんなり昇格出来る。
そして、次の班長代理候補が作業者から選ばれる。このようなキャリアパスが出来ていれば、意欲のある作業者はさらに意欲を上げるだろう。
このように予備軍が順次育つ環境を作っておかねば、突然班長が離職すると大混乱になるはずだ。

経営幹部もこれを自分のことに当てはめて考えれば理解できるはずだ。
課長の仕事をいつまでも自分がやっていれば部長にはなれない。部下が課長の仕事ができるようになって初めて自分が部長になれるのだ。

日本で議論が迷走している「働き方改革」は、如何に長時間労働を減らすかという「働かせ改革」にすり替わっているような気がする。本来の「働き方改革」は労働の成果を如何に上げるか、という働く本人の課題と考えるべきだ。そのために政治や企業が支援できることを考えるのが本筋だ。

くだんの経営幹部も班長の「働かせ方」ではなく自分自身の「働き方」に着目すれば、班長の育成にもっと積極的になるのではなかろうか?


このコラムは、2018年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第692号に掲載した記事に加筆しました。

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学ばざるもの食うべからず

 以前このメルマガで、二宮尊徳の言葉をご紹介した。

「遠きを見て計る」

本日ご紹介するのは二宮尊徳翁の遺訓だ。

人、生まれて学ばざれば、生まれざると同じ。
学んで道を知らざれば、学ばざると同じ。
知って行うことを能はざれば、知らざると同じ。
故に、人たるもの、必ず学ばざるべからず。
学をなすもの、必ず道を知らざるべからず。
道を知るもの、必ず行はざわるべからず。

僭越ながら解釈すると、
人として生まれたからには、学ばねばならない。
学んだからには、道理を知らねばならない。
道理を知り行うことができねば、知らぬと同じ。
ゆえに、人として生まれたからには学ばざるべからず。
学を志す者、道理を知らざるべからず。
道理を知る者、道理を実践せざるべからず。

「道」は老子が説いた「道(タオ)」のことだと思う。道理と訳すのは安直かも知れないが、「宇宙の理り」とでも解釈したらいいだろう。無限の広がりと過去から未来の無限の時間における「絶対真理」と私は解釈している。

「学ぶ」とは学校での勉強はほんの入門であり、学校では学ぶ方法を教わるだけだ。ほとんどのことは社会に出てから学ぶことになる。

「働かざる者食うべからず」とともに「学ばざる者食うべからず」だ。

そして私たちは学習者であるとともに教育者でもある。道を知り行うことの一部は、部下や後進の育成だ。


このコラムは、2018年5月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第668号に掲載した記事に加筆しました。

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ペットを飼う理由

 メールマガジンを斜め読みしていて「なぜ、人間はペットを飼うのか? その理由が納得すぎて笑った!」という気になるタイトルを見つけた。

「まんしょんオタクのマンションこぼれ話」

NHKのバラエティ番組で、人がペットを飼う理由を解説していたという。
多くの人はペットに対して「癒し」を求めているという。東日本震災でペットと離れ離れになっている人々も、涙ながらに再会を喜び、災害の苦難をペットにより支えられているという。

ではなぜペットに対して癒しを感じ、苦難の支えになっているのか?
それは、人が原始時代から群れで生活をして来たDNAの記憶によるという。天候や天災などの自然や、外敵から身を守るために人は群れを作って暮らしていた。群れの生活で「弱いものを守る」という本能が深く刷り込まれている。個を守ることにより、群れが滅びることなく繁栄した。

弱いものに餌を分け与え、世話をする。それによって群れを守る。ヒトという種が滅亡せずに繁栄できたのは、弱いものに心から愛情を与えることがDNAに刷り込まれているからだろう。

犬や猫も元はと言えば、群れで暮らした動物だ。彼らもまた命を守るため群れの中で庇護を得る代償として、癒しを与えることがDNAに刷り込まれているのだろう。

企業も同じではなかろうか?
経営者と従業員、上司と部下。報酬を与える見返りに労働を提供するという利害関係だけではなく、同じ群に属するものとして、互いに与え、与えられるものがあるような気がする。

経営者や上司は、部下に成長のチャンスを与えることにより、業績を上げる。
従業員や部下は、与えられたチャンスに応え自己成長により、業績に貢献する。
このようなギブアンドテイクの関係と考えたらよかろう。


このコラムは、2018年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第665号に掲載した記事に加筆しました。

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四川省大地震

 日本でも報道されているが,5月12日14時28分に発生した四川省汶川のマグニチュード7.8の大地震は救助活動が進むにつれ死者の数が増加している.ほぼ3万人の死者が出ているようだ.山間部などまだ救助が進んでいない被害地での状況が判明してくると更にたくさんの方が犠牲になっている事がわかってくるだろう.

連日TVで報道されている被災地の救助活動を見ていると,大変悲惨なモノであり,心が痛む.

中国指導部の対応は大変すばやかった.
温家宝首相は12日夕方には現地に入って陣頭指揮をしていた.被害に遭った人たちの間に入って,語りかけ勇気付けている.多分家族を全て失ってしまい泣きじゃくっている女の子の手をとり,「泣かないで.君の生活は中国政府が保証するから」と慰めているのが印象的であった.

それにも増して感動的なのは,被災者を助けようとする動きが中国全土に瞬く間に広がったことだ.

12日当日は成都の市民が夜遅くまで献血の列を作っていた.
被災地の近所の住民は炊き出しをして被災者に食事を運んでいる.
企業からの義捐金だけではなく,個人で100元札を何枚も献金しているのがTVで報道されていた.街中の市民も募金箱に長蛇の列を作って募金をしている.

今まで中国人は個人主義的な人が多く,他人のことよりも自分の利益を優先する人が多いと感じていた.今回の地震で中国人も条件さえそろえば我々日本人と同じように他人を思いやり,他人に尽くす事が出来る心を持っていると再認識できた.


このコラムは、2008年5月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第34号に掲載した記事に加筆しました。

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失敗を糧に 疲れたときにこそ技術は身につく

 中国で仕事をする様になってプロ野球を見る事は無くなってしまった。もうじきWBCが始まるらしい、という程度であり野球ファンとは言えない状態だ。本日のタイトルは、日経新聞に出ていたキャンプ中のバッファローズ二軍監督田口壮さんの記事だ。

失敗を糧に 疲れたときにこそ技術は身につく

グランドで実践練習中にミスをすると、反復練習をすると言う。例えば、送りバントを失敗すると、屋内練習場に移動しバントだけを練習する。その練習が5時間に及ぶと言う。さすがに職業野球選手の世界だ。手を抜けば収入が無くなる。そう言う覚悟が出来ている人だけが生き残れるのだろう。

実は若い頃職場のメンバーと草野球チームを作り、地域のリーグ戦に参加していた。普段練習などしない。いきなり集合して試合をする。そんなチームだ。
多分私が一番練習量が多かっただろう。土日に近所のバッティングセンターで練習をしていた。外角の球を右方向に流し打ちをする、などとテーマを決めてバッティング練習をしていた。他の人たちは、バットを長く持ち思いっきりスイングをして長打を狙う。流し打ちばかりしている人は異様に見えたかも知れない。テニスの練習マシンで守備練習もした(笑)
しかし練習量はせいぜい30分。5時間もバント練習だけをやるというのは想像すら出来ない。そのくらい練習をしなければ、プロとして満足のゆくプレーは出来ないのだろう。

さて、我々製造業の職場での仕事の練習はどうだろう。
作業ミスをしたら、5時間作業訓練をさせる。こんな事をしたら作業員は一人もいなくなるだろう(笑)第一それでは生産効率が悪くて会社がつぶれる。そんな練習をしなくても、仕事ができる様に生産方法や製造工程を設計する。効率よく作業訓練が出来る様に、作業指導方法を考える。

我々の場合は、選手一人ひとりが激しい訓練をするのではなく、経営者や幹部が従業員一人ひとりが成果を上げられる様に考え抜く、という事になるだろう。会社にいる8時間だけではない。四六時中考えていなければならない。夢の中で改善のアイディアがひらめく様になれば、一人前だ(笑)


このコラムは、2017年3月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第518号に掲載した記事に加筆しました。

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