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群馬県南牧村バス転落

 10日午後2時50分ごろ、群馬県南牧(なんもく)村大仁田の大仁田ダム近くで、マイクロバスが転落したと119番通報があった。富岡甘楽広域消防本部や群馬県警によると、6人を救急搬送したが、命に別条はないという。ほかに13人が村の車で病院に搬送された。

全文

(朝日新聞電子版 より)

 記事によると以下の事実が浮かび上がる。

  • 消防本部への通報によると、登山を終えた登山客がバスに乗り込んでいたところ、バスが突然走り出し、山林の中の崖を10メートルほど落下。
  • バスが動き出した時、運転手は車外で作業中で「サイドブレーキはかけたが甘かったかもしれない」と供述している。
  • 県警は、当時エンジンはかかっていて、ギアはニュートラルに入っていたとみており、事故原因を詳しく調べている。

怪我をされた方だけではなく、過失を問われるだろう運転手も気の毒な事だ。
このような事故が発生しない仕組みはないものだろうかと考えてみた。

運転手は、下山してきた乗客の乗車を手伝うために車外に出ていたのだろう。
停車した位置は、サイドブレーキが甘くてもバスがずり落ちるほどの勾配ではなかった。
乗客がバスに乗り込む時の振動などで、車輪を辛うじて止めていた小石などを乗り越えてしまったのではなかろうか?

  • サイドブレーキをかけ忘れて車外に出る。
  • サイドブレーキの効きが悪くなっている。

このような状態を防ぐ事ができれば、同様の事故は防げそうだ。

サイドブレーキがかかっていないと乗降口が開閉しないようにインターロックをかける。
始業点検時にサイドブレーキ点検を入れる。ただサイドブレーキを引いてみるだけでは点検は不十分だ。後輪をスロープに乗り上げて点検すれば良さそうだ。

現場も現物も見ないで、このような解決案を考えることには意味がないだろう。しかし我々が日々仕事をしている製造現場に置き換えて考える思考訓練をする意味はある。

この事故から学ぶべきキーワードを「安全機能の確認」とする。
例えば、

  • 設備の非常停止ボタンが機能するか。
  • 温度制御装置の上限リミッターは機能するか。
  • X線検査装置の検査品投入口を開けた時にX線の放射が止まるか。

当然設備は安全側に機能するように設計されているはずだ。しかし故障・劣化が発生した状態でも、保護機能が働くかを始業点検で確認する必要がある。


このコラムは、2019年5月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第823号に掲載した記事です。

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続・人為ミスの再発防止

 先週取り上げ「ぴーかんテレビ」の不適切テロップ問題に関する検証番組「検証 ぴーかんテレビ不適切放送~なぜ私たちは間違いを犯したのか~」を東海テレビのホームページで見ることが出来た。

番組では、ミス発生の経緯が明らかにされていた。

直接原因は、タイムキーパがテロップ送出機の操作ミスをし、オンエア画面に不適切テロップを送出してしまったことだ。これは人為ミスの内の「行動ミス」に分類される。

流出原因は、仮テロップの不適切さに気が付いたアシスタントプロデューサの指示がテロップ製作者に対する修正指示が適切に伝わっていなかった。これは人為ミスの内の「認識ミス」に分類される。

また副調整室の誰もが、他の作業に気を取られ、オンエア画面に気が付いていなかったこと。最後の砦の主調整室では、次に送出するCMの確認作業に気を取られ、オンエア画面から目を離したことであろう。

そして問題を発生させてしまった遠因には、職員の放送倫理観、職業人意識の欠落を挙げていた。その誘因として、番組制作のコストダウンによる職員への負担の大さ、現場と経営層の乖離、利益優先の経営方針にも言及していた。

再発防止に関して、緊急対策と共に「再生委員会」を設け恒久対策を実施する、という内容となっていた。

今回の番組では、具体的な内容には触れていないが、今後再生委員会の活動により具体的な是正対策が明らかになってゆくことを期待する。

例えば倫理問題に関しては、社員、製作外注の職員全員に放送倫理研修を毎年実施している。放送倫理ハンドブックを配布してた。それでも不十分だったということだ。何が不十分だったかをきちんと分析し、具体的に研修の内容、やり方を変えなければならない。

放送倫理というものは、毎年変わるものではない。同じ内容を毎年聞かされるだけでは、効果はないだろう。受講者は何かと理由をつけ研修をサボる。会社側もそれを容認する体質が出来上がっていたのではなかろうか?知識を与える研修ではなく、放送倫理に沿った行動が取れるように、行動変容を起こす研修でなくてはならない。

今回の番組では、人為ミスに対する再発防止は全く語られていなかった。
今回の問題は、報道人としてあるまじき行為がまず問われており、人為ミスはさほど重要な問題ではないのかもしれない。

しかしモノ造りをしている我々にとって、人為ミス防止は重要な課題だ。
このコラムでは、ここを少し掘り下げてみたい。

タイムキーパの行動ミスについては、なぜ行動ミスをしたのか更に分析をする。テロップ送出機は2台あり、1台はオンエア画面、1台はスタジオモニターに送出するようになっている。左がオンエア、右がスタジオモニターとなっているだけで、一目見て区別がつかない。オンエアテロップであることが一目で分かるようにすべきだ。

テロップ制作担当者が、APの指示を認識ミスをしたのは、指示が不確かであったからだ。日本のように「あうん」の呼吸で仕事が成立してしまう組織では、軽視されがちだ。特に我々のように中国で仕事をしている者にとっては、軽視してはならない問題だ。

指示は具体的に何時までに、どう直す、ということと、直したら報告をすることを含めておかねばならない。

直したら報告、というのはアシスタントプロデューサの指示すれば、直してくれるだろうという「判断ミス」を補うものとなる。これは同時に、アシスタントプロデューサの報告を受けながら、最終確認をしなかったプロデューサにも当てはまる。

副調整室の誰もが気が付かずに、オンエアが流出した原因を慣れによる油断と片つけてしまうと、対策が難しくなる。
オンエア画面は副調整室の中央に一回り大きなモニターに出ている。これだけではなく、音声担当、スイッチャー、ディレクター、タイムキーパなど全員の手元に小型モニターを準備し、どんな姿勢をとっても目に入っているようにする。
専任の人間を置いて常時監視する、というのは良い方法ではない。

主調整室の業務は、オンエア画面の監視とCM送出の確認だ。
オンエア画面の監視は、人間が張り付く仕事だ。従ってこの作業に別の仕事を入れることが間違っている。CM内容の確認を機械化もしくは外段取り化する必要がある。

コストダウンにより、職員への負荷が多くかかっているというのは言い訳に過ぎない。本番中にやらねばならないこと(内段取り)、本番時間以外でもできること(外段取り)にきちんと分けて、本番時間に余裕のある仕事が出来るようにしなければならない。

コストダウンのために頑張れ、というのは本当のコストダウンではない。

私の推測と違い、当選者テロップは番組開始前に準備できなかったようだ。(たぶん番組中にプレゼント告知をし、番組中に応募を受け付ける形式だろう)しかしその他に、番組開始前にできることはいくらでもあるはずだ。例えば、収録済みビデオをオンエア中に、その後のスタジオ放送のリハーサルをしていたようだが、番組開始前に済ませることができるはずだ。

更に職場を、番組単位の大部屋制とする。
部門毎に別の部屋で仕事をするのではなく、番組スタッフが大部屋に集まって仕事をする。テロップ製作者も自分のデスクではなく、番組の大部屋で仕事をする。こうすることにより、部門間のコミュニケーション不足を解消することができるはずだ。

製造現場で言えば、機能別ショップフロア配置を止めて、ラインフローに合わせた配置にするのと同じだ。


このコラムは、2011年9月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第221号に掲載した記事です。

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人為ミスの再発防止

 東海テレビ「ぴーかんテレビ」で岩手産米プレゼント当選者を知らせるテロップに「怪しいお米・セシュウムさん」「汚染されたお米・セシウムさん」などというテロップを放送してしまう事故が発生した。

東北地方の放射能汚染被害に世間の注目が高まっている中で、この様な不謹慎なテロップを電波に乗せてしまったことは重大な問題だ。社長のお詫び放送くらいでは納まらず、スポンサー企業が続々と番組広告を下りている。

東海テレビでは、事件発生直後の約束どおり、「検証 ぴーかんテレビ不適切放送~なぜ私たちは間違いを犯したのか~」という検証番組を30日午前9時55分から約60分間放送するそうだ。

この放送の中で、今回のミスの再発防止対策も説明する。
残念ながらこの放送を見ることが出来ないが、人為ミスの再発防止をどの様にやるつもりなのか大変興味がある。

私なりに、今回の事故の経緯を推定し、再発防止を考えてみた。

事故発生の経緯はこういうことだろう。

番組のリハーサルまでに、プレゼント当選者のテロップが出来上がっておらず、アシスタントディレクターもしくは放送技術員が、その場で仮のテロップを作成。本番前に正式テロップと差し替えて放送するはずであったが、・差し替えを忘れ、仮テロップをそのまま放送。
・差し替えたが、正式テロップと仮テロップを間違えて放送。
 →仮テロップを消去しなかった。
という人為ミスが発生したのであろう。

こういう分析をすると、「なぜ差し替えを忘れたか」「なぜ消去しなかったか」という問題に再発防止を打つことになる。
人はミスをするものだという前提を考えると、本当に有効な対策を立てるのは困難になる。職員の報道倫理を高める、などという曖昧な対策となる。そのためダブルチェックなどの「流出防止対策」になる事が多い。流出防止対策は、付加価値を生まない仕事を増やすだけだ。
(視聴者やスポンサーの信頼を失うというリスクを考えれば、当然コストが
かかっても流出防止はしなければならないが)

あなたの工場でも、このような場面があるのではないだろうか?

この場合、考えなければならないのは、「仮テロップを作らなければならなかった」という誘因が発生していることだ。仮テロップさえなければこのような事故は発生しない。更に仮テロップを作成するというムダな作業も発生することはなかったはずだ。

プレゼントの当選者が本番直前まで明らかになっていないということは考えにくい。仮テロップを作らねばならなかった原因に対策を打つべきである。

放送という仕事は、色々な工程を経て出来上がる。
例えば当選者は、営業が顧客から当選者リストを受ける。それを報道部に渡し、制作部の技術スタッフに渡りテロップが制作される。というプロセスがあるはずだ。

これは工場の、材料入庫、前加工、組み立て、検査、梱包という工程と同じだ。
どこかでモノの流れが止まっていたから、仮テロップを作ることになったはずだ。そこを見つけ再発防止をしなければならない。

しかしここまでやってもまだ不十分である。
たとえ当選者リストの入稿がリハーサルに間に合わなくても、職員が報道倫理、もっといえば人としてのあるべき姿をきちんと理解していれば、不謹慎なテロップなど書くはずはない。

たとえ誰かが下種な仲間受けを狙って書いたとしても、現場の全員がその様な行動を阻止するような組織でなければならない。

そのためには「報道倫理を向上します」という曖昧な対策ではなく、今までの社員教育に何が欠けていたのか、それを是正するために何をすべきかを提示しなければ、再発が防止されたと実感することは出来ない。

更に与えた知識が、行動になるように仕掛けを作っておく。知識があっても行動が伴わなければ、教育をした意味はない。

地方都市で放送局に務めているということは、光の当たる場所に居て、誇りもあるはずだ。その誇りが驕りになってはならない。放送局の社会に対する使命をきちっと理解していれば、生活バラエティ番組の担当といえど、正しい誇りを持って仕事ができるはずだ。

名古屋出身の私としては、東海テレビがどのように再発防止を考えているのか大変興味がある。


このコラムは、2011年8月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第220号に掲載した記事です。

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続・リスクを見抜く

 先週のテーマで、シリアル番号シールを貼る作業でリスクを見抜き、そのリスクを未然に防止する工程を検討しよう、という提案をさせていただいた。

【別のお客様の製品は、梱包箱、取扱説明書にもシリアル番号をつけてあり、製品と同じ番号の取り説を梱包しなければならなかった。従って製品、取り説、梱包箱のシリアル番号が全部一致していないと不良品となってしまう。
さてあなたならどう工程で保証するだろうか。
梱包箱、取り説。製品に間違いなく同じシリアル番号シールを貼り付けるにはどう工程設計をすればよいか考えてみてください。】

ここで想定しなければならないリスクは
・不良によるラインアウトなどの異常時
・シリアル番号シールの貼りそこない
などによるシリアル番号シールと本体の泣き別れだ。

従って、梱包時に本体、取り説、梱包箱に同時にシリアル番号シールを貼ってしまうのがよさそうである。
それに対する制約条件は

  • せっかくシリアル番号があるので、検査データはシリアル番号ごとに保管したい。
  • シリアル番号をオンデマンドで印刷するのに若干時間がかかる。
  • タクトタイム以下で済ませたい

※私のアイディア

  1. 検査ステーションでシリアル番号シールを3枚印刷する。
  2. 検査合格後本体にシリアル番号シールを貼り、残り2枚は本体にテープで仮止めしておく。
  3. 梱包工程にて、取り説と梱包箱にシリアル番号を貼り付け梱包。

検査ステーションでシリアル番号を印刷することにしたのは、検査時間のため比較的タクトタイムが長い、これ以降にシリアル番号を貼り付けると検査データとシリアル番号の関連付けができないため。

これが正解というわけではないので念のため(笑)

以下ご投稿いただいたアイディアを紹介する。

※T様のアイディア

検査完了した製品を梱包する際に

  • 製品のSNをスキャンして工程履歴をチェック
  • 製品SNを元に取り説用と梱包箱用のシリアルラベルをその場で印刷
  • シリアル貼付け及び梱包

とすればよいのではないでしょうか?

前もってプリントしておくとどうしてもヒューマンエラーが発生します。

■製品に初めからシリアル番号を貼っておけば、工程内の履歴もわかりますね。
 貼る場所などを考えるとケース組み立て以降の工程になり、すべての工程内履歴はトレースできませんが、良い考え方だと思います。
 シリアル番号にバーコードが付いていれば、梱包時にスキャンしてすぐにラベル印刷をすれば間違いはなさそうです。
 ラベルプリンターが2台要りそうだということ、梱包作業時にラベル印刷時間が手待ちにならない様に作業を工夫する必要がある。という点に留意すればよいと思います。

※K様のアイディア

取り説がビニール袋に収納されていないことを期待して、かつ工数バランスが不明ですが、それもある程度無視して、3種類のシリアルを1つのシート(台紙)にきりす。  
それを梱包時に1枚ずつ貼らせます。 
貼り終わった台紙は空き箱に台紙面を上にして(皆に見えるように)入れます。
(貼り忘れのポカよけ)
というのはいかがでしょうか。

■ポカ除けまで付いていて感心してしまいました。
集合梱包をする人が、台紙にシールが残っていないのと、自分が梱包した製品台数のダブルチェックができますね。
 この方法だと、シリアル番号と検査データの関連付けができないのが唯一の弱点ですね。工程バランスを考慮する必要があると認識しておられる点など完璧だと思います。

 

※S様のアイディア

私だったたら、シールを貼付する工程を、梱包直前にもっていきます。
工程品質を見る必要があれば、仮NOで運用し、最後にラベルを貼るとかします。
また、部品のキット段階で全て揃えてしまうことでも、運用可能かと思いますが、不良が発生した場合は、キット単位で処理することになりますね。

■最後のほうでシリアル番号を貼り付けるというのは皆さん同じでしたね。キットで準備するというのは、製品トレーなどがあり工程投入時からずっとそのトレーに入れて工程内を流動する場合は使えますね。

工程内を仮番号で管理しておき、最後にシリアル番号と仮番号を関連付ける事ができると良いですね。たいていの場合はケース組み立て以前はプリント基板にしかシリアル番号を貼り付けられない。ケースをつけてしまうと中のシリアル番号がスキャンできない。ということでなかなか実現が難しいです。


このコラムは、2008年10月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第58号に掲載した記事です。

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中国製品の市場回収

 2007年は中国製品の市場回収が多くニュースとなった.記憶にあるものを並べてみると,

  • 「圧力なべ」:取っ手が高温になってやけどの危険性
  • 「IH電磁調理器」:部品不良による発煙の可能性
  • 「たこ焼き器」:電源コード接続部のネジ止め不良による発煙・発火の可能性
  • 「練り歯磨き」:ジエチレングリコールが検出
  • 「土なべ」:鉛の溶出
  • 「おもちゃ」:塗料から鉛が検出
  • 「塩ビのおもちゃ:フタル酸ジエチルヘキシルが検出
  • 「ポータブルDVDプレーヤ」:高熱により変形や発煙・発火の危険性

市場回収が発生すると莫大な費用損失が発生する.そればかりではなく,生産委託したメーカ,輸入商社の信用も大きく損なわれる.回収事故一件で倒産してしまう会社もあるだろう.

市場回収となる安全性の欠陥については,商品企画,開発,試作,量産の各段階で事前にリスクをきちんと評価・対策しておかねばならない.予防的品質保証活動が重要である.

他社の事例から自社製品にも同じ問題が発生しないか検討し予防処置をとっておくことが必要だ.
上記の事故事例は過去の問題が形を変えて発生しているだけだ.
日本から製造現場が少なくなってくると,リスクを見抜く力が落ちてくる可能性がある.安易なリストラで設計の検証,協力工場の選定,協力工場の生産管理などの能力をなくしてはならない.

地雷を踏まないように祈りながら歩くのではなく,地雷を取り除いたところに道をつけて走るべきだ.


■今週の雑感

 職業柄市場回収の報道があると,原因を調べずにはいられなくなる.以前最大手の電源メーカがPC用アダプタ電源の回収事故を出したことがある.
その時は回収対象品を中古品市場やジャンクマーケットで探し回った.見つけてきた回収対象品を分解して,回収になるような事故の原因を探った.

そのものずばりの原因は見つけられなかったが,設計的なリスク,製造的なリスクがいくつも見つかった.そういうリスクに対する対策を自社製品に盛り込んでおくわけである.

こういう話を業界の人にすると,そっと本当の原因を教えてくれたりするものである(笑)


このコラムは、2007年12月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第11号に掲載した記事です。

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リスクを見抜く

 昔電源装置を中国の工場に生産委託していた。新工場立ち上げの時からお手伝いとさせていただいた。ここの工場の品質管理責任者には、昔から色々教えていただいた。彼は細部にまで非常にこだわる方であった。

梱包作業者に一台ずつシリアル番号順にきちんと並べて集合梱包するよう指示がしてあった。

この作業指示に対して、私は大先輩に異議を唱えた。
顧客からは何も要求がないので、作業者の負担になることは止めましょう、と提案した。しかし大先輩は、たいして余分な工数がかかるわけではないのでこのままやろうと私の提案は認めてもらえなかった。

大先輩のご意見ではあるが、私には不安があった。

電気検査が合格すると、主銘版、シリアル番号のシールを貼る。
外観検査。
梱包作業。
という順の工程を、じっと見ていた。

案の定外観検査で不良と判定した物の取り扱いがおかしい事を発見した。通常不良品は、修理後前工程に戻し、順に工程を通して再検査することになっているが、班長が不良品を修理工程に持って行きそのまま外観検査工程に戻した。

修理時に故障を造りこんでしまう危険があるため、工程復帰は決められた場所に再投入して、工程内の検査をすべて再度実施する仕組みが崩れてしまったのだ。

決まりどおりの工程を通すと、不良となったシリアル番号の製品は梱包工程に遅れて到着する。そのため梱包作業者はシリアル番号順に梱包できない。集合梱包が出来ないまま次々と完成品が来てしまい工程が混乱してしまう。そのため班長は一刻も早く修理済み品を梱包工程に戻そうと自ら持ち回りで処理をしてしまった。

通常はうまく行っていても、なんらかの異常時には「ダラリ」(ムダ・ムラ・ムリのこと)がある工程では、想定していない事が発生するものだ。工程の中に「ダラリ」がないか良く見て、リスクを見抜かなければならない。

別のお客様の製品は、梱包箱、取扱説明書にもシリアル番号をつけてあり、製品と同じ番号の取り説を梱包しなければならなかった。従って製品、取り説、梱包箱のシリアル番号が全部一致していないと不良品となってしまう。

この仕様の緩和をお願いしたが、お客様の内規でそうせざるを得ないということだった。

このような顧客仕様を満足するために「作業指示書に明記する」「作業員に注意する」だけでは不十分だ。不良が発生しないように工程を設計しなければならない。

さてあなたならどう工程で保証するだろうか。
梱包箱、取り説、製品に間違いなく同じシリアル番号シールを貼り付けるにはどう工程設計をすればよいか考えてみてください。


このコラムは、2008年10月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第57号に掲載した記事です。

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歩留まり率と直行率

 歩留まり率と言うのは、投入した部材に対して良品がいくつ取れたかを示す。100個分の部材を投入して良品が99個取れれば歩留まりは99%だ。
一方直行率は作ったものが一発で良品になる率を示す。すなわち100個投入して99個が検査を一発で合格すれば直行率は99%だ。

歩留まり率と直行率のどこが違うかというと、100個作ったときに直行率が99%でも、検査で不合格になった1個を修理して良品になれば歩留まり率は100%となる。

すなわち歩留まり率というのは不良がいくらあろうが、修理して良品になればOKという発想である。言ってみれば出荷台数確保を優先する考えかただ。

一方直行率の方は、不良は不良としてカウントされる。したがって直行率を良くしようということは不良を作らない決意となる。

歩留まり率だけを見ていると、工程の品質改善はできない。直行率を指標として品質改善を図るべきだ。

ある経営者がこんな話をしてくれた。工程内検査で必ず見つかるはずの不良品が顧客より返却されてくる。修理品の検査が十分ではなく不良品が出荷されると推定し、修理を禁止にしたらぴたりと不良返却がなくなったというのだ。
つまり余分に投入した部材やその加工賃を犠牲にして、品質の確保を優先されたわけだ。

この工場では、不良品はラインアウトしておき出荷台数が足りなくなると班長さんが修理し自分で検査して出荷品に追加していた。

電気検査などの機能検査は問題ないが、通常ライン内で行われる目視検査などが一切行われないことになる。班長さんと言えども出荷のプレッシャーの中で、目視検査で不良としなければならないものを見逃してしまうのだろう。

これも出荷台数確保の歩留まり率的発想といって良いだろう。

不良品はその場で工程に戻し全ての工程を再度通過させる事が必要だ。これをやらなければ、不良を作りこんだ作業員は知らずに不良を作り続ける可能性もある。

直行率を指標とし、不良が出るたびに原因解析と対策をする。これにより直行率を向上させなければならない。歩留まり率だけを指標としていると、こういう発想にならない。


このコラムは、2009年2月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第85号に掲載した記事です。

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人を責めるな、方法を攻めろ

 改善の定石に「人を責めるな、方法を攻めろ」という言葉がある。
ミスや不具合が発生した時に、その責任を人に求めても改善は出来ない。その発生原因を追究し、ミスや不具合が発生しない様に方法を改善しよう。という意味だ。

例えば、ネジ締め工程でネジの締め忘れが発生したとする。
作業員を責めると、その再発防止対策は「作業員に注意を喚起した」「作業員に再教育をした」という効果を実感できない方法となる。中には「作業員を替えた」という対策まで見たことがある。

作業員を取り替えたところで、不具合が発生しなくなるとは思えない。誰がやっても締め忘れのない方法を考え、対策としなければならない。

ネジを定量供給し、作業が終わった時にネジの過不足がないことを確認する。というように作業方法を変更すれば、不具合の発生は激減するだろう。これでもまだ「人の判断」が入ると不安ならば、締め付け用の電動ドライバーから締め付けトルクに達した信号を受け、ネジ締めの回数をカウントする。締め付け回数が所定の回数に達したら作業が完了する様にすれば、ほぼ完璧だ。

検査を追加するというのは、あまり良い方法ではない。付加価値を生まない工程をひとつ追加することになる。検査治具を作り、ナガラ化することは可能だ。AOI(画像認識検査装置)を導入するよりは圧倒的に、安価に治具を作ることが出来る。しかし機種ごとに専用治具を作らねばならない。

不具合が顧客に流失してしまった時には、検査追加を安易に考えがちだが、一度顧客と検査追加を約束してしまうと、簡単には追加検査を止められなくなる。不具合発生工程に対し原因対策を取れる方法を考えなければならない。

究極の改善は、設計を変更してネジ締めをなくすことだろう。


このコラムは、2011年7月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第215号に掲載した記事です。

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データセンター電源障害の原因は製造時の組み立てミス

 さくらインターネットは6日、同社の西新宿データセンターにおいて2008年12月に発生した電源障害の原因と再発防止策について発表した。

 この障害は12月19日12時35分ごろに発生。電源設備からの発煙により一部電源の供給が停止し、収容しているインターネットサービスに影響が出た。SNS「GREE」やブログサービス「SeeSaaブログ」なども利用できない状態になり、同日19時30分に復旧した。

 さくらインターネットによると、消防庁の現場検証やメーカーによる解体調査、成分分析調査、再現試験などの結果、製造時において発生した組み立てミスにより電源設備が局部的に過熱したことが原因との結論を得たとしている。

(INTERNET Watchより)

 この記事だけを見ると、何が不良だったか分からないがさくらインターネットのホームページによると、電源の中に使われている変圧器の巻き線が設計どおりに作られていなかったため内部で発熱し発煙に至った、とある。
変圧器の巻き線の位置がずれていたために変換効率が落ち、ロスしたエネルギーが熱となって変圧器の内部温度を上昇させたものと思われる。

サーバは24時間365日連続で稼動しなければならない。電源の故障は即機能停止につながる。従って電源の信頼性設計は非常に重要になる。そのため高信頼性のサーバは電源が冗長化してあったりする。すなわち電源を複数台用意しておいて1台が壊れても他の電源でバックアップする様になっている。

更に電源の故障は容易に発煙・発火につながる。安全性設計も重要だ。

電源にとって変圧器は安全性・性能に大きな影響を持つキーコンポーネントだ。変圧器内部の巻き線位置がずれれば、効率や電磁波ノイズに影響を与える。製品の製造工程では検査しにくい項目だ。

今回の事故は製造での組み立てミスということになっているが、設計的な配慮が足りていないといわざるを得ない。このような重要部品を作業者の注意力だけに頼って生産するというのはムリがある。巻き位置を固定するには位置出し様にダミーのテープを貼っておけば良いだけだ。

ダミーテープのコストをケチっても、このような不良が発生すれば節約したコストの100倍は損失が発生するだろう。またこの先回収修理などをすれば節約コストの1000倍の損失が発生する。


このコラムは、2009年3月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第88号に掲載した記事に加筆したものです。

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大飯原発配管にひび、深さ15.5ミリ以上 再開は未定

 定期検査のため運転を停止している関西電力の大飯原発3号機(福井県おおい町、118万キロワット)で、1次冷却系配管(肉厚74.6ミリ)の内部でひびが見つかり、15日までの関電の調査で深さ15.5ミリ以上あることが判明した。5月下旬の予定からずれ込んでいる運転再開時期の見通しは立っていない。

 国は、この配管の肉厚が53ミリ以上あれば安全に問題はないと判断している。ひびの深さが21.6ミリ以上になると、この肉厚を確保できなくなるため、配管取り換えなどの本格修理が必要になる可能性もある。

 関電によると、ひびは原子炉容器に近い大型口径配管の溶接部分で3月に見つかった。当初は深さ3ミリ程度と推定し、研磨して消す方針だったが、予想以上の深さだった。さらに配管を削ってひびの深さを特定する。

(asahi.comより)

この記事の論調に違和感を感じるのは私だけではないと思う。

配管溶接部分にひびが見つかり、深さ3mm程度と推定しひびを研磨しようとした。たとえ深さが3mmであってもその原因が不明なのに研磨してひびをなくしても、原因が取り除かれていなければ、ひびはまた発生する。

安全に影響のないひびの深さと比較して問題なしとする考え方は大変危険だ。点検メインテナンスは24時間リアルタイムに行われているわけではない。例えば月曜の朝問題がない深さだとしても、次の点検時に問題がないという保証はない。

安全に影響のないひびの深さという基準は、点検時点から過去にさかのぼって安全に影響はなかったと保証できるだけである。

配管を削ってひびの深さを調べるとしているが、本当に調べなければならないのはひびの深さではなく、ひびの発生原因である。この発生原因に対して発生予防対策ができて初めて、将来に対し安全に影響はないという保証ができる。

皆さんの工場では点検・メンテナンスにこういう考えを入れておられるであろうか?

例えば倉庫の温湿度管理のための点検記録表はどこの工場に行っても、大抵は備わっている。しかし温湿度が管理限界を超えたときにどのようなアクションを取るのか明確になっている工場は少ない。


このコラムは、2008年8月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第47号に掲載した記事に加筆したものです。

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