生産改善」カテゴリーアーカイブ

改善リーダ

 生産性、品質不良の改善などをお手伝いするのが私の仕事だ。当然未知の技術分野の生産現場、未体験の生産現場もある。過去に行った改善事例の応用で大抵の問題は解決可能だ。しかしお客様が直面している問題に解決策を100%提供できる訳ではない。

私ができることは、課題を定義する、その課題を解決するアイディアが出易い様に課題を構造化する。そして行動を起こす様に背中を押すことだ。このアプローチで顧客の改善リーダが改善を実践することにより、他の問題も同じアプローチで改善できる様にする事が狙いだ。

改善リーダの過去の経験や今後の経験によりネタは増える。あとは成功率5分ならば行動して見るように、改善リーダに勇気を持たせることだ。

ある日系企業で指導した時の中国人改善リーダは、中国人リーダには珍しく自分の能力を過大評価しない人だった。よく言えば「奥ゆかしい」若者だが、悪くいうと自分に自信がない様に見えてしまう。例えば「自分など能力がないから、ろくな改善ができない」などとよくいう。しかし彼は自分なりの発想で改善ができる。「君がやった改善だから、ちゃんと総経理に報告しなさい」と言っても「いやいや、恐れ多い」などと言っている。

こういうタイプの若者を初めて見る(笑)
どうして彼がこういう態度をとるのか、非常に興味がある。

上司の指導が影響しているのかもしれない。
彼の様に非定常作業で創造的な成果を出してもらいたい人材は、飴と鞭式の管理ではモチベーションは上がらない。失敗は成長の糧になるが、強い叱責は積極性を奪う。金銭的な報酬よりも、自己成長の機会を与える方がモチベーションが上がる。


このコラムは、2017年11月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第594号に掲載した記事に加筆しました。

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人的要因に対する改善

 5月から隔週で開催しているQCC道場が佳境に入っている。対策実施、効果確認のフェーズに入っている。目標を達成すると年間効果額が100万元、200万元と言うチームがある。大変楽しみだ。

今回は人的要因に対する改善対策のノウハウをメルマガ読者様にもお伝えしたい。例えば人為ミスで発生する不具合、技能の熟練不足で発生する不具合、を改善し不良削減や効率改善の対策を考える場合の考え方だ。

原因分析を「人為ミス」「技能不足」で終わってしまうと、往々にして「教育訓練の強化」「作業指導書に厳格に従わせる」などの抽象的かつ効果を実感出来ない対策となる。多分これでも効果は出るだろう。それは効果を測定する際に、サークルメンバーの思いがバイアスとなり作業員が頑張るからに他ならない(笑)この様な効果は長続きしない。

原因分析を「人為ミス」「技能不足」から更に一歩二歩深める事が、より良い対策を見いだすコツだ。

「人為ミス」がなぜ発生するのか?更に掘り下げると、作業方法が不適切とわかる。どのように不適切か?やりづらい、手間がかかる、と更に問題点を掘り下げる。そうすれば、作業方法を変える、治具を作る、自動化するなどのより具体的かつ効果が実感出来る対策を考えつく事が出来るはずだ。

「技能不足」も同様にどの作業のどういう技能が不足しているか、まで分析を深めれば、どんな作業訓練をすれば良いか、又は新人でも作業出来る様にするためにはどうすれば良いか、と言う具体的な課題を見つける事が出来る。


このコラムは、2017年7月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第535号に掲載した記事に加筆しました。

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一番確実な改善方法

今のやり方を変えて改善をする.
これは勇気が要ることだ.

改善できなかったらどうしよう.
前より悪くならないだろうか.
作業員は受け入れてくれるだろうか.
効率が良くなっても,不良が増えないだろうか.

等等不確実なことが山ほどあり,不安になる.この不安が自らの行動にリミットをかけてしまうことになる.

しかしたった一つだけ,確実なことがある.
それは,
「何もしなければ,改善は出来ない」と言うことだ.
これは,絶対に確実だ.

ネガティブな結果となる絶対確実な方法が分かっているのだ.
ならば,その反対をやればよいのだ.

ダメモトで,まずやってみる.これが改善の第一歩だ.
ダメモトとは,「駄目でも元々」,「駄目ならすぐ元に戻す」と言う意味だ.

やってみて駄目でも,へこむことは無い.
駄目な方法が一つわかったのだから,改善への道は一歩近づいたはずだ.二回やって駄目ならば,改善への道は二歩近づいたはずだ.
100通りの方法を試しても駄目だったらどうしよう.
心配する必要は無い.100通りやる前にうまく行ってしまうからだ.

人生の中で,貴方に解決できない問題は何一つ発生しない.解決できなかったと思っている問題は,ただ解決する前に諦めただけだ.


このコラムは、2010年11月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第179号に掲載した記事に加筆しました。

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データについて

 科学的なアプローチを取ろうと思えば,データが重要であることは皆さんよくご理解しておられると思う.

しかし何のためにデータを取っているのかが明確になっているだろうか?

班長さんが,本日の生産日報を書く.生産日報には生産投入数,生産完了数,不良数などが記入されており保管される.一ヶ月経つと一月分にまとめてファイルに閉じられる.一年経つとファイルから取り出し,紐で閉じ保管用の段ボール箱にしまわれる.

班長さんが毎日残業して日報を書くのは,段ボール箱に保管するためなのか?

活用されないデータはムダである.こんな極端な例はまれかもしれないが,ほとんど同じと言える例を何度も見てきた.なぜそのようなデータを取っているのかと聞くと「ISOのためです」という答えが返ってくるのが通常だ.

ISO9001には生産日報を記録しろと言う要求事項はない.

データを取る目的を明確にし,最適の方法でデータを残し,分析・活用をする必要がある.

例えば,半田槽の溶融半田の温度を測定するのは,設備が正しく運用されていることを確認する意味がある.しかしそれをエックスバー・アール管理図に書き込むのは全く意味がない.

同じくエックスバー・アール管理図を,部品の受け入れ検査に応用している例を見たことがある.具体的にはコンデンサの容量値を受け入れロットごとに抜き取り測定をし,エックスバー・アール管理図に書き込んでいた.一見統計的手法を活用して,データを管理しているように見える.しかし普通は部品工場での生産ライン・生産設備が毎回同じと特定出来ないので,エックスバー・アール管理図で問題を見つけるのはほとんど不可能だ.

不良手直し件数はあるが,不良内容の記録がない.これではデータは改善の役には立たない.

タッチアップ工程に,修正記録用紙があるがタクトタイムから考えて記録をしている暇がない.この様な工程から出てきたデータを分析に使えば,正しい判断は出来ない.

データを記録するのは,管理や改善のためである.
しかしデータだけを眺めているだけでは何も分からない.
データを採取している現場をよく観察しなければならない.


このコラムは、2010年6月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第157号に掲載した記事に加筆しました。

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QCC活動の指導

 前職時代にQCC活動に初めて触れてから既に37年になる。
独立後QCC活動を指導するようになって、バネのメーカからバスのメーカまで、大小いろいろな企業にQCC活動で生産改善や品質改善を指導して来た。

基本的にQCC活動の指導に必要なのは「管理技術」だ。
新旧QC七つ道具などに代表されるQC手法や、問題発見、課題設定、原因分析、対策検討……というQCストーリィ(活動の進め方)は管理技術に分類される。

しかしこれだけでは、各サークルが抱える問題を解決することはできない。
固有技術が必要となる。つまりQCC活動で成果が出るように指導するためには、管理技術+固有技術が必要となる。

私のような凡人でも、色々な業種でQCC活動の指導で成果を出すことが出来る。実はちょっとしたコツがある(笑)

管理技術については、基本的な使い方ばかりではなく応用に関しても実践的に身についていなければならない。しかし固有技術については、広く浅い知識と特定の分野に絞った狭くて深い知識があれば、なんとかなる。

何故ならば、指導している相手は解決課題の分野においては専門家だ。彼らの経験や知識を引き出すように、思考の道筋を立てて「ヒント」を与えれば良いだけだ。

例えば、光学部品メーカでレンズの『牛頓不良』の改善に取り組んでいる。
まず『牛頓不良』でたじろぐが(笑)『牛頓』がニュートンの当て字である事に気がつけば、『牛頓本数大』はニュートンリングが多い。すなわちレンズの削り過ぎだとわかる。

不良現象(ニュートンリングが規定より多い)が発生する原理(削りすぎ)を説明し、
それがどうして発生するのか?
どの工程で発生するのか?
と疑問を出す。指導している相手は専門家だ。次々と削りすぎが発生する要因を列挙することができる。その要因を一つ一つ検証して、真の原因を見つけるように指導すれば良いわけだ。

別の例では、DLCコーティングの工場から参加したQCサークルが、設備故障による損失を削減する活動に取り組んだ。
生産中に設備が故障すると、そのロットは全部一度塗膜を化学的に剥がして、再度塗膜を蒸着することになる。従って損失金額は通常の生産コスト以上だ。

私にはDLCコーティングに関する固有技術はない。サークルメンバーも蒸着設備に関しては、素人だ。この故障設備の現物確認により電源内にあるアルミ電解コンデンサの寿命故障と判明した。このサークルに指導したのは「アレニウスの法則」だけだ(笑)

設備を冷却することにより、設備故障は激減した。
十数台ある設備を合わせると、年間効果金額は350万元ほどになった。

問題や現象を物理的法則に従って定義する。問題が発生する条件(要因)を上げる。要因が真の原因かどうか検証する。こう言う手順を踏めば、業界・業種に固有な技術も、共通の物理法則や化学法則で考える事ができる様になる。


このコラムは、2018年8月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第708号に掲載した記事に加筆しました。

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表現力

 独立して13年余り、多種多様な生産現場で改善のお手伝いをして来た。前職勤務時に生産委託先の指導をして来た期間を入れると20年余りになる。

生産委託先の品質・生産性改善指導をしていた時は、自分の中でこのくらいは改善できるだろうと目算し取り組んでいた。リーダシップを発揮し、指導先のリーダを巻き込んで改善する方式だった。

独立してこれでは効率が悪いことに気がついた。目標を提示し、改善方法を教え改善リーダを育成する。その結果業績に貢献し、改善リーダの能力も向上する。しかしそれは「与えられた経験」だ。自ら勝ち取った経験ではない。
そんなことを考える様になった。

問題発見能力・解決能力を高め、継続的に改善活動を進める意欲を高める。
これを効率よくやるためには、自分で問題を発見し解決する。そして達成感を感じることが必要だと考えている。

そんなわけでQCCストーリィを意識した指導をして来た。
改善活動のテーマ・目標も指導先のリーダたちが話し合って決める。もちろん自由気ままに活動してもらうわけではない。業績に直結するテーマを選ぶ様に、成果が出る様に導く。成果が達成感となり、継続の意欲が高まるからだ。

例えば、直行率が80%の工程の改善をする。目標は18%改善、直行率98%にする。こういう目標をメンバーが決めると、指導をするわけだ。

同じ活動テーマでも、言い方を変えれば「20%の不良を1/10に減らす」となる。同じことだが18%改善という目標より、不良を1/10に減少の方がより高い目標の様に感じる。成果も同様だ。達成感が違う。達成感が自信につながる。さらに改善効果を金額換算する。より実感が湧くだろう。

活動の内容も成果も同じだが、表現を変えるだけでメンバーの達成感が上がり、さらに改善を続けようという意欲が湧く。


このコラムは、2018年8月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第702号に掲載した記事に加筆しました。

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中国的QCC事情

 先週土曜日に,広東省質量協会,広東省科学諮詢服務中心主催のQCC成果発表大会「2011科技創新与QC小組成果発表大会」に招待され参加してきた.

1日半で50ほどのテーマ発表をするという,超過密スケジュールだった.
私は,家電メーカ・美的集団,エアコンメーカ・格力,志高,Welling,洗剤メーカ・立白,通信関連・Skywordなど16のテーマ発表を聞いた.全て中国企業のサークルだ.

昔,日本のQCCが活発だった頃を思わせる活気があり,発表者は皆活き活きと発表していた.彼らはまったく原稿を見ずに15分の発表をする.よほど練習をしたのであろう.十分熱意が伝わる発表であった.

発表内容は,ほとんどが不良低減など「問題解決型」のテーマであった.しかも全てが製造部門を中心とした発表であり,間接部門の発表はなかった.このあたりも,日本でQCCが活発だった頃と状況は似ている.

取り組んだ内容を見ると,設計問題としか思えない不良がいくつもあった.本来生産前に解消しておくべき問題点が,先送りされ工程内不良として認識され,対策を打っている,という状況にあるようだ.

初歩的な設計ちょんぼが散見され,まだまだ私が貢献できそうな領域が残っていると確信した(笑)

そんな中に1件だけ「課題達成型」といえる発表があった.
問題を解決するのではなく,「生産効率を2倍にする」の様な課題を設定して,それに取り組む活動を「課題達成型」と呼んでいる.したがって原因分析よりは「あるべき姿」を明確にし,現状とあるべき姿のギャップをいかにして埋めるのか,という活動になる.

問題を解消するのではなく,「現状打破」「新規業務」に対する取り組みには,課題達成型の活動が適している.特に間接部門の取り組みは,問題解決型のQCストーリィに違和感があり,課題達成型のQCストーリィで取り組むとうまく行く事例が多い.

今回の発表でも,課題達成型で取り組んだほうがうまく行きそうなテーマが他にも2件ほどあった.
問題解決型で取り組んでいるため,あるべき姿を明確にせずに,原因分析をして,「非要因」「要因」と振り分けてしまっている.「非要因」の中にあるチャンスを捨てることになる.

実は以前勤務していた会社では1990年代に,間接部門の取り組みや,更に大きな成果を目指した取り組みを活発にするために,「課題達成型」「顧客指向型」というQCストーリィを追加し,「問題解決型」QCストーリィと合わせ新しいQCストーリィを再構成した.

中国企業のQCCへの取り組みは,我々の1990年代の取り組みに一歩近づいたといえるだろう.発表会の熱気や,活動メンバーたちの熱意を考えると,日本をキャッチアップするのはそう遠い時期ではないと感じた.

50数テーマの発表の中に日系企業の発表は1テーマしか確認できなかった.うかうかしていられない.日系企業も,中国企業のQCC活動と交流し,刺激を受けた方がよい.

QCC活動の適切な指導をし,成果とともに,人材の育成を図らなければ,日本企業の優位点はあっという間に埋められてしまうという危機感を持った.

こちらの記事もご参照ください.「中国的QCサークル事情」

「課題達成型」「顧客指向型」の新しいQCC活動詳細については,こちら書籍をご参照いただきたい.
続QCサークルのためのQCストーリー入門


このコラムは、2011年4月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第201号に掲載した記事に加筆しました。

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失敗が進歩をもたらす

 市場クレーム、顧客クレーム、工程内不良などの失敗が進歩をもたらす。
クレーム、不良はない方がいいに決まっている。しかしクレームも不良も全くないとどうだろう?

進歩を促す機会が得られないので、組織の成長が得られない。
他社事例から学ぶことができれば、それを「疑似失敗」として成長の糧とすることができるだろう。本コラムは世の中の失敗事例を自社の「疑似失敗」に活用するために、情報提供している。

しかし現実的には、他社の失敗事例を深く解析することは難しい。最近の日産自動車、神戸製鋼所などの事例も、外部の人間が本当の原因を知ることはないだろう。なぜなら「失敗の科学」の著者・マシュー・サイドが指摘する様に、「クローズド・ループ」な社会では、失敗やその原因は隠蔽される。

「失敗の科学」マシュー・サイド著

制御システムの設計者だった私には、マシュー・サイドのクローズド・ループ、オープン・ループの区別が逆の様に思えてならない。制御システム業界では、クローズド・ループは制御が効いている状態を指す。オープン・ループは制御が効いてない状態だ。マシュー・サイドは、情報がオープンとなっている状態をオープン・ループと呼んでいる。

マシュー・サイドが提唱するオープン・ループにより失敗を進歩に変換する事ができるはずだ。この様な失敗が進歩をもたらす組織を構築するためにはどうしたら良いだろう。「失敗から学ぶ」組織はどの様にしたらできるだろう。
今週はこんなことを考えてみた。

  1. 失敗を隠蔽しない組織文化。
     失敗に対して過度な叱責、懲罰を科す組織は失敗を隠蔽する。(既に公知となり、有効な対策があるにも関わらず、同じ失敗を繰り返す者は論外だが。)
    航空業界は第三者が事故原因の検証に入る。失敗を隠蔽する余地はない。
    医療業界は病院ぐるみで医療過誤を隠蔽する傾向がある。
    飛行機に乗るより医者にかかる方が危険だ。
  2. 失敗原因を究明する。
     失敗の真の原因が分からねば、有効な対策が打てない。失敗原因の分析力が不足していると、繰り返し問題は再発する。
  3. 失敗の原因分析・対策検討のプロセスを共有する。
     失敗を隠さず、真の原因を究明し、有効な対策を実施する。この情報を組織内で共有する。単純に「結果」を共有するのではない。その結果に至る考え方、検証方法などの「プロセス」を共有する。
    問題解決の「結果」(原因、対策)を共有すれば同様の問題に対する水平展開、新製品立ち上げ時の未然対策などが可能になる。しかしこれだけでは不十分だ。
    問題の原因をどのように分析し、どの様に対策を検討したかと言う問題解決のプロセスを共有する事が出来れば、次に発生する未知の問題にも対応可能になるはずだ。

このコラムは、2017年10月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第580号に掲載した記事に加筆しました。

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続・問題解決の心得

 先週配信のメールマガジンで問題解決の心得について考えた。
「問題解決の心得」

先週はその事例になりそうな問題が発生したので、今週は続編として問題解決の心得について考えてみたい。

オフィスのネット接続に問題が発生した。
調べ物をする必要があり、検索サイトにアクセスした。検索サイトからの応答がなくアクセスできない。VPNを介してアクセスしようと考えたが、VPNも接続できない。こういうことは、中国の長城ファイアウォールの内側にいると、しばしばある(苦笑)

まずはWifiの管理画面を開いてみる。
ここですぐに原因がわかった。Wifiルーターが応答していない。
原因はわからないが、こういうことがしばしばありWifiルーターをリセットで対処していた。(固有技術はないが、経験的対処法がわかっている状態)

その結果Wifiの管理画面を開くことができた。
管理画面から、ISPのサーバに接続できていないことがわかった。
同様にISPにつながっているモデムもリセット。しかし復旧はしない。
ISPのサービス窓口に電話すると、こういう場合の問題点は次の3つだ、と指摘された。
1)ISPサーバへのログインIDが間違っている。
2)ISPサーバへのパスワードが間違っている。
3)モデムが壊れている。

当然1)と2)は問題ない。電話の向こうのサービス担当者は、モデムが壊れているから買い換えろという。

どうも納得できないが、既に7年も使っているモデムだ。そういうこともあろうと、近所の電気屋に行くことにした。サンプルとして使っているモデムを持参することにした。
モデムを持ち出す時に気がついた。モデムとWifiルーターを接続しているケーブルが抜けかかっていた。

ケーブルを挿し直して、問題は解決した。

問題解決をステップに分けると、以下の様になる。
1)問題の把握
2)解決課題の設定
3)問題発生の要因を列挙
4)要因から問題発生の原因を絞り込む
5)対策検討・実施
6)効果の確認
7)歯止め

今回の問題は、問題発生の要因列挙が不足していた、ということになる。
全ての要素を挙げて、可能性のある故障モードを全てあげる。
ISPのサーバ→電話回線→モデム→Wifiルーター→PC
それぞれに、ハード、ソフトの要因がありうる。
さらに一つの要素を掘り下げる。
例えばモデムならば、以下の要素があるはずだ。
・電源
・電話線(RJ11コネクタ)
・イーサネット線(RJ45コネクタ)
・モデム本体
それぞれに故障原因となる要因があるはずだ。
この様に全ての要素を分解して故障要因を挙げれば、漏れはなくなる。

ISPのサービス窓口担当者がこういう発想を持っていれば、もっと適切な対応ができただろう。

今回の原因は、私が粗忽にも過去の経験からいきなりWifiルータのリセットをした際にモデムのRJ45コネクタが外れかかってしまったことだ。次回から問題発生時の点検手順を変更しなければならない。


このコラムは、2017年7月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第540号に掲載した記事に加筆しました。

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問題解決の心得

 工程内不良の改善活動を指導していて、しばしば感じる事がある。
問題の原因を「経験」から判断し、決め打ちで対策を考える傾向がある様に感じる。

例えば。機械加工で寸法不良が多発する。その原因を加工設備の精度不足が原因と決め打ちし、その他の要因を考えない。対策として高価な加工設備を導入することになる。たいていの場合ここで改善活動は頓挫する。特に加工設備に関する固有技術がない場合はこういう傾向が強い。

しかし寸法不良が発生する要因は他にもある。
・加工原点がずれている。
・設備の使い方に問題がある。
・加工材料に問題がある。
・測定方法に問題がある。

まずは設備の加工精度を仕様書で確認するのが第一歩だろう。その上で、考えられる要因を一つずつ確認していく。
この様なアプローチが必要だと考えている。

今QCC活動を指導しているお客様で、設備不良による工程内不良の改善に取り組んでいるサークルがある。彼らは製品の加工法などに関しては固有技術がある。しかし設備内の電源故障が設備不良の大部分を占めている。電源に関する固有技術は残念ながらない。設備メーカも、電源は購入している。自ら設計する能力はない。

しかし電源に関する固有技術がないからと言って諦める訳には行かない。
故障のたびに電源メーカに修理を依頼する。しかしこれは現状復帰の処置だ。改善をしなければ、電源は再び故障する。いつ故障するか分からなければ、工程内不良を改善する事は出来ない。

まずは不良の現物を見る事だ。
今までは修理だけしていたので、不良現物の内部は見た事がない。不良現品の写真が残っていたので観察してみる。すると電源内の部品が破損しているのが分かる。
ではその部品が破損する原因は何か?
破損した部品(電解コンデンサ)の周辺を観察すると、プリント基板が変色し、銅箔の回路パターンが腐食している。電解コンデンサの寿命モードの故障と推定出来る。寿命モード故障に大きな影響を与えるのは、温度だ。ここまで分析が進めば温度が上昇する要因を検討すれば良い。
・周辺の環境温度が高い。
・部品自体が温度上昇している。

部品自体の温度上昇は、設計に依存する要因だ。電源に関する固有技術が必要となる。ここからはこの事実を元に電源メーカと原因追及を進めることになる。
原因追及を電源メーカだけに任せるのではなく、一緒に議論する。初めは何も分からないかも知れない。しかし「信頼性技術」はどんな製品にも共通する技術だ。固有技術がない分野であっても得られる知見は多い。電源を設計する事は出来なくても、どんな電源を選ぶべきかは分かるはずだ。

別の企業では、リチウム電池不良が多発しておりリチウム電池を供給しているメーカのエンジニアが、工程に貼り付いて選別・調整していた。しかし自社のエンジニアは現場にはいない。この企業の技術部門長には、自社のエンジニアも現場に貼り付ける様に指導した。リチウム電池や充電回路に関する固有技術はなくても、少なくともどんな電池を採用してはいけないかは分かる様になる。

私自身も前職時代に周辺装置を担当していた事がある。周辺装置に関する固有技術は社内にはない。周辺装置は全て購入品だ。しかし問題が発生するたびに購入先の品質エンジニア、設計エンジニアと一緒に原因分析、対策の検討に立ち会った。この経験が社内や自分自身への信頼性技術蓄積に貢献したと考えている。

上述のQCC活動に取り組んだサークルはとりあえず電源の環境温度を下げてみることにした。他の熱源から距離を置く、冷却ファンを設置する、などの対策を試している。即座に改善は出来ないかも知れない。しかし寿命モードの故障はアレニウスの法則に従って故障間隔は伸びるはずだ。これで一件落着とはならないかも知れない。設備メーカ、電源メーカとともに更に原因究明を深める事が必要だろう。これらの経験から得られた知見を蓄積する事により、設備導入時の選定基準を持つ事が出来る様になる。

実際には、上記の活動後設備故障は激減し、加工不良が発生したロットの損失金額(修復および再処理費用)は、年間で350万元程度節約できた。


このコラムは、2017年7月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第537号に掲載した記事に加筆しました。

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