先週は米子空港の自衛隊輸送機のオーパーラン事故、福岡空港の大韓航空機緊急着陸と立て続けに航空機事故が発生した。両事故ともに負傷者もなく重大事故とはならなかったが、ヒヤリハット事故として原因を究明の必要がある。
自衛隊機は減速、操舵の操作が出来なかった。大韓航空機は操縦席内で発煙を確認。とそれぞれの直接の事故原因は報道されているが、真因はまだ判明していないようだ。
現時点で再発防止や、水平展開を議論してもあまり意味がなかろう。
本日は1994年4月26日に名古屋空港で発生した中華航空の着陸失敗事故を検討してみよう。
事故発生の経緯。
- 着陸態勢に入った後副操縦士が、ゴーレバー(出力最大)を誤操作。
- 機長が気がつきゴーレバーの解除を指示するが、解除されず。
- 航空機(エアバス)は着陸やり直しモードに自動で切り替わり上昇を開始。
- 副操縦士は自動着陸モードをオンにし機首下げ操作をする。
- 着陸やり直しモードの自動操縦装置が反発し機首を上げようとする。
- 機長が操作を変わり、着陸やり直しのためゴーレバー作動、機首上げ操作。
- 機体が急激に機首上げし、失速墜落。
- 乗客乗員264名死亡、7名重傷。
この事故の発端は副操縦士の誤操作であるが、操縦の矛盾(着陸やり直し時で機首下げ操作)時に自動操縦を優先する設計思想になっていた事で、失速してしまった。緊急時には、人よりコンピュータの方が冷静に判断出来る、と言うのがエアバス社の基本設計思想だった。一方ボーイング社は、人の操作を優先する設計思想になっていた。今回の事例で言えば、着陸やり直しモードで機首下げ操作をすると、着陸やり直しモードは解除される。
確かに人はミスをする。しかし自動制御が万全かと言うと、そうではない。プログラムにはバグがつきものである。更に制御プログラム設計時に想定できない事象が発生する事もあり得る。そう考えると、最後の砦は人の判断になる。
この問題は、機長の指示に対して副操縦士が従わず最大出力のまま着陸モードにした所が発端だ。普通に考えると、複数人で操作をする場合は、指示に対し復唱と確認は必須だ。コックピットの中で指示、復唱、確認の手順が遵守されていなかったのではなかろうか?
我々の仕事にも、指示、復唱、確認が必要な場面は多くありそうだ。
特に中国人スタッフに指示を出す場合、より復唱、確認が重要になる。
このコラムは、2017年6月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第532号に掲載した記事を修正・加筆しました。
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