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競争優位の源泉

 企業にとって最大の競争優位の源泉は何だろう。
あなたは何だとお答えになるだろうか?
商品?
技術?
顧客?
生産設備?
サービス?

どれも正しい。しかしこれら全てが「人」によって生まれる。
競争優位を作り出す人が、本当の競争優位の源泉だ。
そう言う人を「人財(Human Capital)」という。資産だ。
「人材(Human Resource)」をいかに「人財」に育てるかが、企業発展の鍵と言ってよいだろう。つまり資源を資産に変える事だ。

余談だが、人には4段階ある。
「人財」企業活動の資産となる人。
「人材」企業活動の資源となる人。
「人在」いるだけの人。
「人罪」足を引っ張る人。

人材を人財に成長させる。
人罪や人在はせめて人材に成長させる。
企業活動を突き詰めれば、従業員を育て、従業員により、多くの社会的価値を創造する活動と言えるだろう。その結果企業にも従業員にも繁栄が得られる。

ではどうしたら従業員は育つのか?
人は「場」によって育つ。
「場」とは人が作り出す環境と言ってもいいだろう。「文化」と言い換えると分かりやすいかも知れない。人は人によってしか育てられない。人が育つ環境を企業文化にする事が、最大の競争優位となる。

QCC活動を指導している企業の総経理は、5Sにより従業員の心を変え生産効率を4倍にしている。5Sを企業文化とし、その文化の中で従業員を成長させて来た。更なる飛躍を目指し、従業員を「考える軍団」に成長させるためQCC活動を導入する事にした。毎年春節前に行われている経営計画発表会にて、QCC活動の成果発表会を実施している。先日第二回目のQCC成果発表会が行われた。今回は各チームともに、ダイレクトに業績に結びつくテーマを選定し活動が出来た。
「場」が出来ると企業の成長は加速される。


このコラムは、2017年1月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第521号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

改善活動の役割分担

 QCCによる改善活動と、日常の改善活動には役割分担があってよいはずだ。
大掛かりな改善や、複数の部門の協力がなければ達成できないような改善はQCC活動に任せるのが良い。

QCC活動を指導している顧客で「顧客提供サンプルの合格率アップ」という活動をしているサークルがあった。事務機器業界の顧客には、サンプル提出後一発合格しているのに、
新規業界の顧客向けサンプルは、合格率が低いという。

この手の問題は、顧客の要求仕様を把握する営業、その要求仕様を図面に落とす設計、サンプルを製作する生産技・製造、品質を確認する品証の協力がなければならない。
したがってQCC活動に適したテーマと考えていた。

しかし活動内容の発表を聞いて考え直した。
今まで出荷した試作サンプルは、まだ3件しかないということだ。
ならば、QCC活動でまとめて対策を検討するまでもない。その都度サンプル不合格の原因
調査と再発防止対策を検討する方が効率が良い。それがきちんと回る仕組みを作ればよいのだ。

例えば、サンプルを出荷する前に、営業、設計、生産技、製造、品証でサンプル出荷判定会議をする。サンプルが不合格となったら、このメンバーで原因調査、再発防止をきちんと実施する。

QCC活動では「歯止め」を行う。不具合の再発防止、水平展開、未然防止などをさして「歯止め」といっている。

例えば仕様の確認不足でサンプル不合格となった場合、「仕様確認チェックシート」などを作り仕様確認作業を標準化することである。
しかし一番大きな歯止めは、前述したサンプル出荷判定会議である。

サンプル不合格の原因は、仕様の未確認だけではない。
製造の問題、治具の問題、測定方法などいろいろな問題があるはずである。
それらの問題が出てくるたびに、問題解決の行動を起こすのではない。
問題が発生したら自動的にアクションがとられる仕組みを準備しておくのだ。

こちらもご参考にQCC道場


このコラムは、2011年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第210号に掲載した記事に加筆したものです。

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改善人財の育成

 私の仕事はお客様の生産現場を改善することだ。生産性を上げる、品質を上げる、リードタイムを短縮するなど、お客様のお客様に価値が提供できる事を改善といっている。しかし本来の目的は、ここではない。

コンサルが現場に入って改善する。すぐに成果は出るが、これでは改善が継続しない。得られた改善を維持できないこともありうる。
私の本来の仕事は、お客様の生産現場に改善が定着し、改善が継続するようにすることだと考えている。

従って改善を維持・継続する人財を育成することが、本来の目的になる。

そのために現場での指導では、なるべく教えないようにしている(笑)
「教えない」という言い方は極端だが、改善リーダが自分で改善したと感じれば、リーダの改善意欲は高まるだろう。意欲を高めることができれば、自ら成長する。「馬を水場に連れて行くことはできても、馬に水を飲ませることはできない」というが、馬が自ら水場にゆき水を飲むように仕組むわけだ。

研修でも、講師と受講生との間で一方通行に教えても効果はあまりない。
座って講師の話を聞くだけではなく、頭や手を動かすことで効果が上がる。受講生間での「学び合い」「教え合い」が、研修効果をさらに高めるはずだ。

研修効果に関しては、吉田新一郎氏の著作が参考になる。
社内研修や、会議での部下育成の参考にしていただきたい。

「効果10倍の教える技術」
「『学び』で組織は成長する」

こういう考えで、現場の指導や研修のプログラムを考えている。
そして今年から「QCC道場」を開催することにした。
以前から実践的なQCC研修のプログラムを提供している。

改善リーダ育成のため、QCC活動を実践する研修だ。
QCC活動のスタートアップや、レベルアップのためにご利用いただいている。この研修では、社内から選抜された改善チームをが改善活動を実践する。

新たに開始する「QCC道場」も同様にQCC活動の実践を通して学んでいただく。
通常の研修と異なる点は、違う会社のチームが合同で実践研修するところだ。異なる会社、異なる業種・業界の改善リーダが、一緒に学び合い、教え合う環境でより効果を高めたいと考えている。

改善リーダがチームを率いて参加されるのもいいが、改善リーダでチームを作り参加され社内に戻り、参加者それぞれが自分のチームを作り活動をする、そんなやり方で研修の費用対効果を高めていただくをこと想定している。

QCC道場の詳細はこちらをクリック。

QCC道場

index_sQCC道場の目的

中国工場の改善が進まない。
中国人現場リーダが自主的に改善できない。
日本人幹部が現場で指導しないと改善が進まない。
このような現状を打開するために、
中国人リーダを育成し、問題・課題発見能力、問題解決能力を高めたい。
中国工場の現場を指示待ち集団から考える軍団に変えたい。
このようなお考えの経営者様のために、QCC活動の実践指導を通して現場改善リーダの改善能力育成を目的とします。
QCC改善活動のレベルアップに最適。

index_sQCC道場の研修方法

クオリティマインドの研修会場に5、6社のQCサークルに集まっていただき、QCC問題解決の8STEPを講義をすると共に、実際に各サークルの活動テーマに合わせてQCC活動を実践指導します。

index_sQCC道場の研修効果

改善活動を実践することによる改善効果。
現場リーダの改善能力向上、改善意欲向上による社内改善活動の継続。
改善活動の継続による改善文化の構築。
他社のQCサークルと一緒に活動することにより、他社事例のベンチマーキング・ベストプラクティスが可能となる。
他社と一緒に活動することにより、活動のモチベーションが上がる。
改善リーダによりチームを作ることにより、研修後受講生が社内に戻り各々がサークルリーダとして改善活動を推進することを想定しています。

index_sQCC道場の日程(7日+発表会)

【1日目】講義・演習
講義・演習:

QCCの歴史
QCC活動の目的
QCC活動の応用
STEP1.テーマ選定

【この回で勉強するQC手法】

プロアクティブミーティング
マトリックス図

自主活動

テーマの設定

【2日目】講義・演習
自主活動の発表:

テーマの設定

講義・演習

STEP2.現状把握

【この回で勉強するQC手法】

パレート図
バラツキについて
工程能力指数(Cp,Cpk)
ヒストグラム
層別
アローダイアグラム

自主活動

現状把握
 


【3日目】講義・演習
自主活動の発表:

現状把握

講義・演習

STEP3.目標設定
STEP4. 原因の解析

【この回で勉強するQC手法】

ブレーンストーミング
親和図法(KJ法)
特性要因図
FTA(故障樹法)
連関図法
なぜなぜ5回

自主活動

目標設定
原因の解析

【4日目】講義・演習
自主活動の発表:

目標設定
原因の解析

講義・演習

STEP5.解決策の選定と実行

【この回で勉強するQC手法】

発想チェックリスト
系統図法
M-DM表
ABC分析
PDPC法

 

自主活動

解決策の選定と実行


【5日目】講義・演習
自主活動の発表:

解決策の選定と実行

講義・演習

原因分析・解決策の見直し

自主活動

原因分析・解決策の見直し

【6日目】講義・演習
自主活動の発表:

原因分析・解決策の選定と実行

講義・演習

STEP6.効果の測定
STEP7.歯止め
STEP8.反省と今後の取り組み

【この回で勉強するQC手法】

レーダーチャート

自主活動

効果の測定
歯止め
反省と今後の取り組み
発表準備


【7日目】講義・演習
自主活動の発表:

効果の測定
歯止め
反省と今後の取り組み
発表準備

講義・演習

発表練習

自主活動

発表準備

【8日目】成果発表会(半日)
成果発表会

成果発表
講評
審査結果の発表
表彰式

経営トップ、経営幹部も審査員として参加


index_s開催日程

第一期:2017年4月13日(木)より:開催済み
第二期:2017年9月7日(木)より:開催済み
第三期:2018年4月より:開催済み
第四期:2018年9月より:開催済み
第五期:2019年4月より開催:終了
第六期:2019年9月より開催:終了
第七期:2021年4月より開催:終了
第八期:2021年9月より開催:募集中

QCC道場をご紹介する動画を公開しています。

品質指標

 金属部品加工工場のお客様で、QCC活動の実践研修をしている。
11サークルのメンバーに、課題設定から発表までを、実際に活動する形で指導している。

各サークルとも大変興味深い(成果の出そうな)テーマに取り組んでおり、毎回指導を楽しみにしている。
先週は各サークルから、原因解析のステップを発表してもらった。
「ロット不良の低減」をテーマに取り組んでいるサークルの発表を聞いても、全く理解できない。こういう場合は、研修室を出てすぐ現場に行くことにしている。

4月にロット不良が44件もあった。これを8件までに減らす目標を立てている。
しかしその原因解析が、要領を得ない。
現場で分かったコトは、このサークルは製造部門のサークルではなく、IPQC(工程内品質管理)部門のサークルである。彼らが発見するロット不良を、減らしたいと言うテーマだ。

製造部ならばロット不良を減らすことが目標となるのは分かるが、IPQCがなぜロット不良低減を目標としているのか理解が出来ない。IPQCはたくさん不良ロットを見つけるのが成果だ。ロット不良を減らすのは目標にならない。

理解不能の原因はこの工場のロット不良の定義にあった。
この工場では、自動生産設備が生産している部品を、2時間に一回10個抜き取り検査を行い、不良が見つかるとロットアウトとして廃棄処分をする。しかし彼らはそれをロット不良としてカウントしない。2時間以内に見つけられなかった場合をロット不良として定義している。

IPQC検査員は12台の設備を巡回しながら、抜き取り検査をしている。従って一回の検査を10分以内に完了しないと、12台の設備の抜き取り検査に2時間以上かかってしまう。この時不良を見つけると、ロット不良となる。

考え方としては、IPQCが不良を適時に発見した場合はロット不良としない(製品は廃棄)ということだ。製造部や、設備メンテナンスの部門にとって明らかにロット不良であるが、IPQCがその損失を最小限に抑えたのだから、大目に見るということだろう。

これで全てが見えた。
彼らの活動は、ロット不良を減らす、という品質改善のテーマでは無い。2時間以内に12台の設備の抜き取り検査を終わるようにする、という作業改善のテーマなのだ。

ならば話が早い。
IPQC検査員の作業を見て、二次元投影測定器の操作に個人差があるのが分かる。これを改善すれば良いのだ。特定のIPQC検査員が出来ていないだけなので、この改善で2時間以内は全員が達成できるだろう。

しかし2時間に一回抜き取り検査というのは、自分たちの都合で決めた決まりだ。もし1時間に1回抜き取り検査をすれば、不良損失は半分になる。
本来不良をなくすのが改善だが、IPQCのメンバーにとっては検査時間を半分にするのが改善のはずだ。
こういう話を現場のリーダにすると即座に「不可能!」と答えが返ってくる。それは今の方法でやっているから、不可能なだけだ。方法を変えれば、可能となる。

その方法を教えたいのは山々だが、ぐっとこらえる(笑)
まず2時間以内をIPQC検査員全員が実現することで、達成感を持ってもらう。その次の課題として「検査時間半分=損失半減」と言う改善に取り組んでもらうことが出来ればと考えている。

ところで御社の品質指標にこのような矛盾が無いだろうか?
一度確かめて見るのが良かろう。正しく定義していると思っていても、現場が運用を変えている場合もありうる。

今回のように、製造部とIPQCで正反対の目標(つまり、一方はたくさん良品を造る。他方はたくさん不良を見つける)を持っている場合、適切にその指標を決めてやらなければならない。
正しい意味でロット不良を減らすことは製造部にとっては、努力しなければならない目標だが、IPQCが同じ目標を達成しようとすれば、検査をしなければ良いのだ。一方IPQCが不良を見逃せば、製造部は何の努力も無く改善できた様に見える。

IPQCの指標を「不良適時発見による損失コストの削減」とし、廃棄しなければならなくなった製品が何時間分(少ない方が良い)としてはどうか。
こうすれば製造部は品質を改善してロット不良を減らす。IPQCは作業改善をして、短時間で抜き取り検査を完了することにより、不良を造り続ける時間を減らす。当面は利害が一致するはずだ。

「当面は」と書いたのは、本来は設備を改善して不良を作らなくする、生産中に良品・不良品の判定機能を付加し、不良が発生したら停止する(人偏のある自働化)というのが本質だからだ。


このコラムは、2011年5月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第207号に掲載した記事です。

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“出来ない”を叱らない

 赤字企業再生師・長谷川 和廣氏の「社長のノート」という本を読んだ。

この本の中に「出来る/出来ないを叱らない、やる/やらないを叱る」という言葉が出てきた。

部下に対して「出来る/出来ない」を叱ってはならないということだ。部下が仕事を出来ない、ということは上司に責任がある。上司がきちんと方法を教えていない場合がほとんどだ。

仕事の目的と意義をきちんと教え、作業方法を指導する。初めに手間はかかっても、ここをきちんとやれば、後が楽になるはずだ。

部下の仕事がうまく行っていないときに「頑張れ」と励ましても意味がない。部下は頑張れと励まされても、何をどうしたらいいのか分からなければ、頑張りようがない。ナゼうまく行っていないのかをきちんと分析し、足りない部分を補ってやる。これがOJT(On Job Training)だ。

現場に放り込んで、「頑張れ」と励ましただけではOJTにはならない。放っておいて「仕事が出来ない」と叱るのは、おかしい。

特に中国で仕事をしている場合、あなたの部下はあなたが想定している以上に分かっていないことが多い。

農村から出てきた作業者が、コンピュータのキーボードを水が滴る雑巾で拭き掃除をしても、叱ってはならない。コンピュータを初めて見る人間に、「掃除をしておけ」と作業指示だけした上司の方が間違いだ。掃除の仕方から教えないといけない。

学歴や経験のある職員でも、同様なことはある。例えば「QC七つ道具を知っている」という職員を集めて、何かやらせてみてもうまくは行かない。「知っている」と「使える」は全然別の事だ。
「生産が間に合わない」という問題の原因として「注文が多すぎる」という分析をしたりする。
※これは実は日本人でもしばしば間違う。本当の原因は「注文が多すぎる」ではなく「生産能力が足りない」だ。

日本でもQCC活動が下火になり、工場勤務の日本人若者にもQC七つ道具が使えない人が多くなっていると聞いている。そういう人たちに「出来る」を一方的に期待するから、失望と不満が発生する。これが往々にして怒りとなり、部下を叱ることになる。

出来ないことがあれば、教えることにより成長する。チャンスだと思えば失望や不満は発生しない。もちろん出来るのにやらない場合は、きちっと叱らねばならない。叱るという行為は相手の成長を願ってするものだ。


このコラムは、2010年8月に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第165号に掲載した記事です。

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究極を目指す

 欧米の契約社会が目指すモノは「合格点」だと思う。
欧米発の品質管理基準ISO9000では、顧客満足とは、顧客の要求をもれなく定義しそれを過不足なく満たすことだ。いわば「合格点主義」

一方本来の日本のモノ造りは「究極主義」だと思う。
不良は究極まで減らし「ゼロ」を目指す。
ほぼ1日かかっていた自動車ボディのプレス金型の段取り換え時間を3時間に短縮し、更に3分まで短縮してしまう。

こういう「究極主義」がなければ、田口メソッドの「損失曲線」という概念は生まれないだろう。

随分昔の話だが、シンガポールのハードディスクドライブ組立工場を見学した事がある。

工程を見て直行率が低そうに思えたので、質問をしてみた。責任者の話では普通は80%代、90%に達したら工程改善をしないそうだ。その改善リソースは次世代機立ち上げに振り向けるという。

いかにも合理主義的な考えである。
しかしこれは現場に改善エンジンを持たない者の「敗者の戦略だ」というと言過ぎだろうか。

日本のモノ造りの現場には、改善エンジンが仕込まれている。QCサークルのような現場の改善チームもそのエンジンのうちの一つだ。この改善エンジンが、モノを作り続ける限り改善をし続ける原動力となる。


このコラムは、2009年2月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第81号に掲載した記事です。

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QCC活動の運用について

 先週はメルマガ読者様から、こんなご相談をいただいた。

週二回1時間と時間を決めて、就業時間内にQCC活動をやっています。
スタッフの自主性に任せ、日本人幹部は口を出さない様に気をつけています。
しかしなかなか成果が出なかったり、歯痒くなり口を出したくなります。
どのように活動を継続させて行くのが良いでしょうか?

日系企業の総経理様からのメールだ。この方は日本でQCC活動を経験されており、指導者的立場だった方だ。

私は、経営者、経営幹部が積極的にQCC活動に参画した方が良いと考えている。

本来QCC活動は従業員の自発性を尊重し、自主的活動が原則となっている。このため管理職は、サークル活動には口出しをしないことになっている。しかしこれが、日本のQCC活動が衰退してしまった遠因だと私は思っている。

1985年日本が絶好調だった時にQCサークルは日本全体で約27,000サークルあった。それが2000年には3,000サークルほどに激減している。

QCC活動の成果として、サークル数、活動件数を重視したため、各サークルに年間活動件数○件と言う目標が課せられた。その結果、簡単に完結出来るテーマが選ばれたり、既に結果が見えている活動にQCストーリーを当てはめるだけ、などと言う成果実感のない活動が増えて来た。

私はそれらの活動を
・ドブさらいQCC
・ままごとQCC
・なんちゃってQCC
と呼んでいる(笑)

少々厳しい評価かもしれないが、
「事務仕事の効率化を図るためファイルキャビネットを整理しました」
「ミスを防ぐために○○の勉強会を全員でしました」
業務として取り組んだ生産性向上、不良削減活動にQCストーリーを当はめるこんな活動ばかりになって来た。

これでは残業代を支払って、ムダな事をさせている様な物だ。サークルメンバーの方も、達成感がなく、やらされ感しかない。

こういう経緯で、バブル崩壊後活動サークル数は1/10近くまで急降下した。

私はこの頃に、前職で事業部内のQCC推進者として関わっていた。私がいた事業部は、製造部門のないファブレス事業部だったので、営業、設計等、余りQCC活動に積極的に取り組まない部署ばかりを抱えており、上記の様な現象をまさに体験していた。

全社のQCC推進部署も同じ問題を共有しており、再活性化の方策として、管理職のQCC活動への参画をする事とした。

勿論活動そのものは、自主性を尊重する。
しかしテーマ選定には、職場の管理職が積極的に関与する。職場の方針・目標を共有する。テーマ選定時には管理職も参加し意見を言う。こういう方式に変更し、上述の様なメンバー・上司双方の不満の解消をした。

この様な経験もあり、中国でQCC活動をやる時は管理職もテーマ選定までは、積極的に参画する方法をお勧めしている。また全員が初めてQCC活動をする様な状況では、指導者がいなければ何をしたら良いかさえ分からないだろう(笑)

更にQCCを人財育成のOJTとして活用するために、サークルリーダやテーマリーダも経営者・経営幹部が指名した方が良いと考えている。勿論、公平・公明な人財育成計画の元でやらねば、メンバーの反発を買う事になる。

活動そのものは、定期的にリーダ会議などを開催し進捗を確認しアドバイスをする程度にする。経営者・経営幹部が口を出すのは最初だけ、後は自主性に任せるスタイルにするのが良いと考えている。

この様な活動にすれば、活動の成果、メンバーの成長、チームワーク、改善意欲の向上、現場経験技術の蓄積等の結果がすぐにでも見えて来るはずだ。

私たちは、QCC活動を初めてする企業、まだ数回しかしていない企業、相当活動経験がある企業(日本本社の発表会に参加して最優秀賞をとるレベル)ともに、QCC活動の指導経験がある。どのタイプの企業にも、テーマ選定までは上司が参画する方式が有効だった。


このコラムは、2013年12月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第341号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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QCC活動の役割分担

 QCCによる改善活動と、日常の改善活動には役割分担があってよいはずだ。
大掛かりな改善や、原因がよくわからない問題の改善は、QCC活動に任せるのが良い。複数の部門の協力がなければ達成できないような改善は、複数部門で改善プロジェクトを起こす。単純な改善活動は、日常業務として取り組めば良い。

指導先で「顧客提供サンプルの合格率アップ」という活動をしているサークルがあった。事務機器業界の顧客には、サンプル提出後一発合格しているのに、新規業界の顧客向けサンプルは、合格率が低いという。

この手の問題は、サンプル不合格となった原因を整理・分析し対策を検討する。さらに顧客の要求仕様を把握する営業、その要求仕様を図面に落とす設計、サンプルを製作する生産技・製造、品質を確認する品証の協力がなければならない。したがって、関連部門でチームを作りQCC活動をするのが良さそうだ。

しかし活動内容の発表を聞いて考え直した。
今まで不合格となった試作サンプルは3件しかないということだ。ならば、QCC活動でまとめて対策を検討するまでもない。その都度不良の原因調査と再発防止対策を検討する方が効率が良い。それがきちんと回る仕組みを作ればよいのだ。

例えば、サンプルを出荷する前に、営業、設計、生産技、製造、品証で出荷判定会議をする。サンプルが不合格となったら、このメンバーで原因調査、再発防止をきちんと実施する。

例えば仕様の確認不足でサンプル不合格となった場合、「仕様確認チェックシート」などを作り仕様確認作業を標準化することである。

サンプル不合格の原因は、仕様の未確認だけではない。製造の問題、治具の問題、測定方法などいろいろな問題があるはずである。それらの問題が出てくるたびに、問題解決の行動を起こすのではない。問題が発生したら自動的にアクションがとられる仕組みを準備しておくのだ。

道具にはそれぞれそれに適した仕事がある。プラスネジをマイナスドライバーで締めることはしない。改善という仕事にも、日常改善、プロジェクト改善、QCC活動を課題に合わせて使い分けるのがよかろう。


このコラムは、2011年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第210号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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QCC成果発表交流会

2016年12月16日にQCC成果発表交流会を開催しました。
5チームのサークルから発表をいただき、50名弱の皆さんとその活動成果を共有しました。
その概要をご紹介します。

  • 検査課チームimg_1482s
    テーマ:完成品の運搬効率改善
    活動内容・成果:
    FQC検査時に完成品を運搬する無駄、完成品梱包箱を積み上げる重量物作業を改善するテーマに取り組み成果をあげた。

    • FQC検査を製造現場端で行うことにより、完成品梱包箱の運搬、開梱、再梱包作業をなくした。
    • 運搬台車を自作し、パレットへの積み替えをなくした。

    コメント:自部門の効率改善ばかりでなく、出荷品の保管方法を改善し、出荷作業も改善する素晴らしい活動であった。

  • 活力チームimg_1483s
    テーマ:投資効率450倍!生産性改善活動
    活動内容・成果:
    理論上の生産台数423台/日に対し300台/日しか生産できていない。営業の要求400台/日を目標にして改善活動。
    以下の改善を実施し、目標を達成

    • 作業員の目標意識の向上
    • ライン長の離席者補助の遅延をなくす
    • 作業員の離席管理改善
    • ロット切り替え時間の短縮
    • その他6項目の改善

    コメント:
    対象の生産ライン(U字セルライン)はラインバランス99%とというほぼ理想的なラインだが、理論通りの生産量が上がらない要因15個をあげ優先順位をつけて4項目の重点改善、6項目の改善を実施。
    テーマ選定、対策実施を優先順位をつけて活動できた。
    改善効果を他のセルラインにも展開し、歯止めもよく行っている。

  • 冲锋チームimg_1485s
    テーマ:I042不良率削減
    活動内容・成果:
    加工要因による不良(6.98%)の原因を洗い出し、対策を実施。
    不良率3.01%まで改善。
    コメント:
    サークルメンバーと部門長が問題点としてあげた項目を1項目ごとに議論し、「すぐやる」「今回はやらない」「QCCで解決する」に分類して活動テーマを決定している。このようなやり方により、会社方針、部門方針にマッチした活動が可能になる。
    特性要因図によりあげた不良要因を、EDS分析、FTIR分析などの科学的ツールを活用し検証している。
  • TEAM広東img_1486s
    テーマ:金型交換80%短縮
    活動内容・成果:
    段取り替え時間短縮活動により、金型交換時間81分→16分(80.2%削減)176分→35分(80.1%削減)することができた。これにより少ロット生産が可能となり、中間在庫が削減できた。
    コメント:
    「問題解決型」のQC活動ではなく、課題を設定し現状とのギャップを埋める「課題達成型」で活動すると、ストーリィの展開がスムーズになる。また中間在庫の削減も大きな成果(スペースの削減、運転資金の効率向上)になっているはずなので、成果にカウントするとなお良い。
  • 先鋒サークルimg_1489s
    テーマ:モータ絶縁不良の改善
    活動内容・成果
    工程内で発生した絶縁検査不良をゼロにする活動。6項目の改善対策を実施し、3ヶ月約90万個生産し絶縁不良ゼロを達成した。
    コメント:
    QCサークル活動を開始してまだ1年足らず。初めての活動で立派な成果をあげることができた。
    対策を検討するときは、発生原因と流出原因に分けて検討すると良い。
    絶縁不良の原因となる金属異物の発生を防ぐのが原因対策。金属異物を除去する、検査するのは流出対策。
  • 表彰式
    参加者の採点により、以下のサークルが表彰されました。

    優秀賞第一位:検査課チーム 発表テーマ:完成品の運搬効率改善

    qcc1

    優秀賞第二位:活力チーム 発表テーマ:投資効率450倍!生産性改善活動

    qcc2

    優秀賞第三位:冲锋チーム 発表テーマ:I042不良率削減

    qcc3

    優秀賞:TEAM広東 発表テーマ:金型交換80%短縮

    qcc4

    優秀賞:先鋒サークル 発表テーマ:モータ絶縁不良の改善

    qcc5

  • 懇親会
    成果発表交流会後の懇親会で、他社のサークルメンバーと交流できました。
    私は、「金型交換80%短縮」を発表したTEAM広東を派遣してくださった総経理から、こんな話を伺いました。
    金型交換時間が1/5になったことで、少ロット生産が可能になり、生産現場のスペースが節約できた。それ以外にも大きな成果があった。事例発表は成型部門のリーダが担当したが、日本語の通訳を後工程の組み立て工程のリーダが担当した。実はこの二人は仲が悪かった(笑)前後の工程には何かと確執があるモノだ。会社代表として二人が発表する事になり、発表練習でお互いの立場をより理解出来たようだ。特に通訳を担当したリーダが遅くまで練習しており普段とは違う一面を見ることができた、と総経理は話してくださいました。
    QCC活動には、サークルや職場のメンバーのチームワークや人間関係改善の効果があります。サークルや職場を超えて協力関係が構築されるのを、総経理は狙ったのかもしれません。

今回事例発表サークルを派遣してくださった企業様