経営」カテゴリーアーカイブ

完結編・もち吉

今週のメルマガでは,もち吉の従業員が製品に殺虫剤を混ぜてしまった事件を取り上げた.

従業員が自分の仕事に誇りを持っていれば,この様な事件は発生しないはずだ.意識や心のケアが重要である.
しかしちょっとした出来心で,ノイローゼ気味で魔が差した,などというのはきちんとした安全の仕組みと仕掛けで十分防げるはずだ.

と記事に書かせていただいた.

【今週のお題】
 あなたが「もち吉」の製造責任者だとして,どのような再発防止対策を 打ちますか?

 従業員に対する心のケアは別に実施するとして,職場にてこのような事故が発生しないための対策をお考えください.

【私のアイディア】
整理整頓を徹底し,職場には要らないモノをおかない,いつもと違うモノがあればすぐに気が付くようにしておくのがまず基本だ.

作業服のポケットをなくしてしまうなどの工夫により,職場に不要な物を持ち込めないようにする.

工程の「間締め」をして隣同士の作業者の顔が常に見えるようにしておく.
同僚の目が抑止力になりうると考える.
更に生産性の改善にも役に立つ.同僚同士声をかけながら遅れている工程を助けるなど職場内の関係も良くなるだろう.

職場への出入りの際に,持ち物チェックをする,という案もあるが,これは善良な人のモチベーションを下げないように工夫が必要だ.

【H様のアイディア】

  • 制服の確認・改良:異物混入防止のために、ポケットのない制服へ
  • 私物の持ち込み禁止:私物は監督者の目の届く場所に一括で施錠して保管
  • 薬剤保管方法:薬剤はかぎ付き保管倉で。鍵は工場事務所の管理者層が保管。
    使用者はその都度、使用する理由等を告げ鍵を借りる。(貸したものは誰が借りたかを記録)使用者は使用した量と残量を書き実地棚卸をしたうえで、差異がないか確認、上長のダブルチェックをうける。
  • PCO業者:持ち込んだ薬剤、使用した薬剤の名前・量を提出させる。

以上の内容は、現在食品工場ではあたりまえに行われていることだと思いますが、きっとできてない事があったのでしょうね。

従業員以外にも出入りの業者さんも管理をしなければならない.
このあたりのご指摘はさすが専門家だ.
H様は食品業界の専門家だ.食品の安全問題にも造詣が深い.

【S様のアイディア】
今回のお題は難しいです。

問題点が明確にならない(予想出来ない)ことが、問題?です。

  • 従業員が異物を入れてしまう。
  • 心身喪失者の作業許可  異物が作業現場に持ち込める。
  • 現場リーダの目が届かない  作業に入る前にチェックが無い。

対策は、

  • 従業員教育の再構築・日ごろの健康管理・リーダの意識向上
  • 朝礼等での活動フォロー
  • 作業服への着替え時に持ち物チェックする
  • 啓蒙活動(ポスタなど)

でしょうか?
あまり、具体的にはありませんが・・・

違う業界の問題を考えるのはなかなか難しいものだ.
しかし業界を越えて色々な問題点を考える習慣を持っていると,問題が発生したときに解決のための引出しをたくさん持っていることになる.
毎回お題に投稿いただいているS様もそういう習慣をもたれた方だと思う.

【osmiwk様のアイディア】
 一人作業を止め、複数で作業し、お互いに監視できるようにする。
というのが一番良いと思います。
 作業場に私物持ち込み禁止といっても、毎日持ち物検査をするのも大変です。
また、確実に行なえる方法はないと思います。

同僚同士でお互いに監視しあう方法です.
私もこの方法が有効だと思っています.特に今回事件を起こしてしまった人物は職場での孤独感により精神に変調をきたしていたと思われる.
作業が仲間同士でやっていると言う感覚があれば事件そのものが発生しなかったかもしれない.

【O様のアイディア】
従業員に毎月、その家族・友人も利用できる自社商品券を配る。少額でよい。
自分が製造した商品を身近な人も購入している事を常に意識してもらう為です。
出来心、魔が差すなどの「故意」の事故は防げるのではないでしょうか。

すばらしいアイディアだ.
自分が毒を混ぜてしまった物を親類縁者が食べてしまう危険性があれば,めったなことは出来ないわけだ.


このコラムは、2008年11月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第65号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

餅菓子から基準の7千倍の殺虫剤成分 福岡の「もち吉」

 福岡県は17日、和菓子メーカー「もち吉」(本社・同県直方市)が10月末に販売した餅菓子「えん餅」の小倉あん入りのものから、最大で基準値(0.001ppm)の7千倍の有機リン系殺虫剤フェニトロチオンが検出されたと発表した。健康被害は確認されていないという。
県は食品衛生法に基づき、同社に製品の回収と原因究明を指示している。

(asahi.comより)

 この事件は作業員が故意に殺虫剤を混入させた事が判明している.
この作業員は職場での不満などにより精神的な変調をきたしていたのだろう.事件発覚後自殺をしている.

この会社の幹部は「大切な仲間を失ったのは断腸の思い」と悔やんでいるが,職場での彼の変調を把握できるすべはなかったのだろうか.

自らの希望で配置転換をしてもらった後に事件を発生させている.
常日頃から職場でのコミュニケーション(上司・部下,先輩・後輩,同僚同士)がきちんと出来ていれば,仕事で悩むこともなかったであろう.

人間は機械と違い心を持っている.そのため機械に出来ない仕事も出来る.
一方で心に変調が発生すれば機械がやらないような事をしてしまうのである.

社員全員に企業理念を浸透させ,職場でのコミュニケーションを十分に図る必要がある.

以前に不祥事を発生した不二家は事件後企業理念に「お母さんの気持ち」が追加されている.従来の企業理念と他は殆ど変わっていないのだが,全員が子供を思うお母さんの気持ちで仕事をすれば,期限切れの材料を使う事を現場が許さなかったのではなかろうか.

従業員の仕事に対する誇りを高めなければ,このような事故は完全には防げないだろう.

しかしちょっとした出来心で,ノイローゼ気味で魔が差した,などというのはきちんとした安全の仕組みと仕掛けで十分防げるはずだ.

食品工場に限らず,不良品が出荷品に混入される,という事故は発生しうる.

今回の事例をもとに皆さんの工場でどのような対策が事前に打てるのか検討してみる良い機会だろう.

では今週のお題(笑)
あなたが「もち吉」の製造責任者だとして,どのような再発防止対策を打ちますか?

従業員に対する心のケアは別に実施するとして,職場にてこのような事故が発生しないための対策をお考えください.


このコラムは、2008年11月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第64号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

マルチカラーの時代

 山根一眞さんの「メタルカラーの時代」をもじって「マルチカラーの時代」というテーマを考えてみた.

中国にも「ホワイトカラー」「ブルーカラー」という言葉はある.
それぞれ《白领族》《蓝领族》という。

中国の工場では作業者《蓝领族》と文員・技術者《白领族》がしっかりと分かれているところが多い.作業者から文員への登用の道を用意している会社もあるが,文員になると作業現場には入らなくなってしまう.
又大卒の人間に作業現場研修をさせようとすると辞めてしまう.工場勤務なので作業服を支給すると着るのを嫌がる.ということもあるようだ.《白领族》としての間違った誇りがそうさせるのだろう.

中国では毎年最低賃金が上昇しており,特に沿岸地区では安価な労務費を期待したローコスト生産は難しくなってきている.実際には最低賃金で求人をかけても作業者は集まらない.

これからは作業者一人一人の能力を高め,高品質・高付加価値の生産活動に移行してゆかなければ中国では生き残れないだろう.

この様な考える力を持った従業員に「マルチカラー」という名前をつけてみた中国語に訳すならば《彩领族》とでも言えばよいだろうか.単純に多能工を意味する言葉ではない.
《白领族》が《蓝领族》を管理するという構図ではなく,作業者も作業改善を考える.技術者も作業者と一緒になって作業する中で作業改善,工程改善を考える.この様な人たちを《彩领族》と呼びたい.

日本の製造業が力を持っていたのは,工場労働者が「マルチカラー」だったからだと考えている.

「痛くない注射針」を作れる町工場,砲丸投げの玉を世界中に輸出している町工場,こういう今でも力のある中小企業は経営者,従業員が全て「マルチカラー」なのだと思う.

中国の工場でも《彩领族》を次々と育て上げる仕組みと仕掛けを作り上げることが,競争優位に立つことになると考えている.


このコラムは、2008年2月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第19号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

外部の力

 北京オリンピックで中国がこれだけ多くのメダルを獲得するとは思っていなかった.

シンクロナイズドスイミングの中継を見た.表彰式ではいつも日本チームがいる場所に中国のチームがいた.中国シンクロチームは日本のシンクロコーチ第一人者・井村雅代氏を監督として招聘したのだ.井村氏は,たった1年半の間に,メダル圏外だったチームに銅メダルを与えた.

日本がメダルを取れなかったことは残念だったが,日本人の監督が中国のチームを勝利に導いたと言うのは誇りに思ってよいだろう.元々日本の敵は中国ではなかったはずだ.スペイン,ロシアに勝たなければ中国と一緒に表彰台にあがることはできない.

中国の五輪チームを見直してみると外国人監督が多いことに気が付いた.
バスケット,フェンシング,ホッケー,女子ハンドボール,馬術,セーリング,自転車,レスリング,野球など.メダルに届かなかった種目もあるが,外国人監督がそこそこに活躍したと評価してよかろう.

オリンピック開催国の面子にかけて,中国が一流のコーチを集めた結果と言うことだろうか.

これは日本の産業界が力をつけてきた過程と同じだ.
欧米の一流企業と技術提携をしたり,合弁会社を作ったりしてその技術力や経営ノウハウを勉強した.それが日本の産業界の基礎になっているといっても良いだろう.

外部の力を借りる,方法を真似ると言うことは悪いことではない.そこから自分たち独自の文化に進化させれば良いだけだ.GEのウェルチが言っている「ベストプラクティス」というのは,よその真似をしようということだ.


このコラムは、2008年8月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第48号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

不況の処方箋・高フレキシビリティ

 2週間続けて世界同時金融不況の逆境の中で,高品質,高付加価値を追求し収益性を上げよう,というテーマで書かせていただいた.

完結編・不況の処方箋・高付加価値
完結編・不況の処方箋・高品質

今週は逆境をチャンスに変えるため「高フレキシビリティ」について考えたい.

高フレキシビリティ:
 マーケットは供給者主権から,消費者主権にパラダイムシフトしている.
従って多様な消費者の要求にフレキシブルに応えられなければ,企業として生き残れない.

これからは廉価品大量生産から多品種少量生産にどんどん置き換わってゆくだろう.モノ造りを消費者のワガママに合わせてフレキシブルにする事が重要となる.

売れるモノを,売れるだけ,売れる時に,作って出荷することだ.

そのためには

  • 徹底的に消費者のワガママを理解し,ワガママに応えられるモノを作り出す.
    モノはその価格や機能だけでは売れなくなってくるだろう.消費者が所有したいと思える「オーラ」を作りこまなければダメだ.
    部品メーカもこういう考え方で,完成品メーカと一緒に売れる部品を開発しなければならない.
  • 必要な量を投入し100%良品を生産する,不良ゼロの工程品質を実現する.
    歩留まりを考慮して余分に材料を投入する.こうして完成した余剰製品は,明日も売れる保証はない.どんどん売れない完成在庫が増えてゆく.
    また歩留まり100%の向こう側,直行率100%を達成すれば,損失コストが削減できる.損失コストは,単純に見積もるよりはるかに大きいはずだ.
  • 徹底的にリードタイムを短縮し納期変更,数量変更に耐えられる工程を作る.
    リードタイムを短くしまとめてドンと作る事を止めれば,マーケットの変動に伴う納期変更・数量変更に対して損失最小限で生産量調整が出来るはずだ.

不況で生産量が落ちている時こそ,こうした基礎体力を磨くチャンスだと思う.


このコラムは、2008年12月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第74号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

完結編・不況の処方箋・高付加価値

【今週のお題】
不況に打ち勝つため,高付加価値にするための工夫やアイディア

【私のアイディア】
本編では

  • 高品質にこだわることにより,顧客での受け入れ検査省略などの付加価値を付ける.
  • 顧客が部品を生産現場に投入する時の利便性を考えて梱包形態を変更する
  • 次世代売れ筋商品(高付加価値商品)の生産技術開発
  • 顧客心理を捉えた接客

などのアイディアを書いた.

別の切り口から考えてみよう.
「オーラを造りこむ」
モノにはモノそのものが持つ機能や価値以外にモノから発せられるオーラがある.造り手のモノづくりの思いを込めてオーラ造りこむ.モノづくりのストーリィそのものが,広告になる.
例えば岡本雅行さんの「痛くない注射針」はそのモノづくりの技術もすごいが,その完成ストーリィを聞くと,思わずその注射針で注射してほしくなる(笑)
これも「付加価値」になると思うがいかがだろうか.

【S様のご意見】
違う視点で考えることができ、ためになっています。
品質管理畑を長年やっていたため、中々アイデアがありません。
QCD以外の観点がないか?もう少し考えてみたいと思います。

S様いつもご投稿ありがとうございます.
品質管理屋だから思いつく付加価値もあると思う.
Qに関して言えば,受入検査が省略できる製品というのは「高付加価値」と言ってよいだろう.
Cに関してはメーカ側の都合なので,顧客にコストで「高付加価値」を提供するのはちょっと難しいかもしれない.むしろ「高付加価値」によりコストにかかわらず高値で売れる製品・サービスを考えたい.
Dは業界の常識を超える短納期を提供できればそれが「高付加価値」になる.

【K様のご意見】
自社製品やサービスの付加価値を上げるための工夫ですが、私の工場では全ての客先に対して同じ品質管理をしています。
日本の本社以外の独自の仕事もしているのですが、ヨーロッパ系の客先からの品質要求は厳しくありません。しかし、日本の客先と同じ品質管理で生産をしています。工数はアップしますが、製品の付加価値を上げる為に、厳しい基準での生産を行なっています。
このおかげでこの客先からのクレームは全然発生していませんし、新たな受注にも繋がっています。
以上、ありきたりな内容ですが、投稿させて頂きます。

ありきたりと謙遜されているが,普遍的な考え方だと思う.
中国で車を買う場合,購入費用が高くても国産車より日本車を選ぶと言う人は増えている.メンテナンスなどの生涯コストを考えると,日本品質の車を買ったほうが
 安くなるからである.日本品質が世界品質だと思われる時代が来るに違いないと思っている.
日本の自動車メーカは更にその上で,ヨーロッパ車のような「高くても乗りたい」というオーラを持った車を開発できれば,鬼に金棒だ.


このコラムは、2008年12月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第73号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

不況の処方箋・高付加価値

 先週は世界同時金融不況の逆境の中で,高品質にこだわり収益性を上げようというテーマで書かせていただいた.

今週は逆境をチャンスに変えるため「高付加価値」の追求について考えたい.

高付加価値:
「高品質」も一種の付加価値になりうる.従って先週の記事とダブるところはある.
例えば不良が極端に少なければ(狭義の高品質)顧客は受け入れ検査を省略できるであろう.これは物そのものの品質ではなく物を使う際に発生する付加価値といって良いだろう.

顧客が部品を生産現場に投入する時の利便性を考えて梱包形態を変更するという事例も高付加価値の実現だ.

この事例のように物の付加価値を上げることは,開発設計が伴わなくても可能だ.

工場で製品の開発をするということはあまりないかもしれない.しかし工場が開発機能を持たなくて良いということではない.物を作りながら(今日のメシの種)新しいモノ造りの技術(明日のメシの種)を開発すべきだと考えている.

次世代主力になるであろう製品を作るための技術を先駆けて開発しておく.
これはOEM工場でも採れる戦術だろう.

CDドライブを搭載した廉価音響製品を作っていたあるOEM生産工場は,DVDを搭載した高級製品をばらして作り方を研究していた.今その工場は超高級音響製品を生産している.

OEM供給先の要求に先駆けて生産技術を蓄えておけば,こちらから商品企画の提案もできる.顧客・ベンダーの主従関係から,パートナー関係に転換できる.

生産量が落ちている時ほど「重要だが急がない案件」に取り組むチャンスである.

製品やサービスの付加価値を高めるためには,必ずしも製品の開発設計は必要ではない.自社ブランド製品がない工場でも応用は可能なはずだ.

製造業以外でも応用可能だ.
例えばレストランで店員が顧客の名前を覚えて名前で呼びかける.
たったこれだけで顧客のリピート率は上がるはずだ.
石龍にあったレストランは私を名前で呼んでくれた.
たったこれだけのことで,私は毎日通っていた(笑)

ハンバーガチェーンのように「こちらもいかがですか?」と芋フライを勧めても顧客ロイヤリティは上がらない.


このコラムは、2008年12月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第72号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

天職について

 先週のニュースからのコラムに読者様からメッセージをいただいた.

※N様のメッセージ

車椅子つくりに専念したことに感動。
仕事を始めてから 40年にもなるが、”天職”とは何か?
判らんが、今やっていることが ”天職”と信じて 残りの時間を仕事に専念したい。残り少ない時間ではあるが。

このところ「天職」を考えるテーマが続いている.
私自身は,製品の設計者から,ひょんな縁で品質保証を担当することになった.若い頃は,製品設計の仕事に誇りを持っており,違う仕事をするくらいならば転職をしようと考えていた.

しかしその頃,既に守らなければならないモノをたくさん抱えてしまい(笑)
転職をする勇気はなかった.ところが品質保証の仕事をしてみると,これが実に面白く感じた.二流の設計技術者でいるよりは,よほどやりがいのある仕事であり,品質保証の仕事が天職だと思うようになった.

そして独立をするに当たり,次の世代に仕事を通して学んだことを伝えてゆくことが自分の使命であり天職だと気が付いた.

いささか場当たり的ではあるが,私もN様と同じように,人生の残り時間を天職を全うするために時間を使いたいと思っている.


このコラムは、2011年1月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第188号に掲載した記事を修正・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

亡き弟の姿胸に、電動車いす開発40年 京都の技術者

 進行性の難病だった幼い弟のため、父と電動車いすを作った兄がいた。弟は19歳で世を去ったが、兄は40年たった今も車いすを作り続ける。

 「オメガ・スリー」。ジョイスティックを指で傾けると六つのタイヤが動き出し、約10センチの段差を軽々と乗り越えた。悪路にも対応した機動性と安定性に乗り心地の良さを兼ね備えた電動車いすだ。

 作ったのは京都府宇治市で有限会社「アローワン」を経営する西平哲也さん(58)。社員と2人で、車いすをオーダーメードする。室内型の「くるくるマウ」、座席が床まで下がる「エフ・エックス」もある。障害の状態に合わせた特注のため1台200万円以上するが、脳性まひや筋萎縮性側索硬化症の人たちを中心に全国で約200人が利用している。

 1967年、九つ年下で当時6歳だった弟守儀(もりよし)さんが全身の筋力が低下する筋ジストロフィーと診断された。3年後には自力で車いすを動かせなくなった。電動車いすは高価な輸入車しかなかった時代、工業高校に通っていた西平さんは木材加工職人の父と一緒に開発に乗り出した。

 室内で使うにはシートの高さが変わらなければ不便だ。そこでシートの昇降やリクライニング機能をつけた。病状に合わせて10号機まで作り、守儀さんは亡くなる直前までわずかに動く指で車いすを操り、趣味の絵を描いた。

 西平さんは弟の死後、担当だった理学療法士に「必要としている人は他にもいる」と励まされ、車いすを作り続けた。しかし、東京・深川で会社は98年に経営が行き詰まった。知人の紹介で福祉機器販売会社の研究拠点があった宇治市に移り、修理と改造を主にして再出発した。

 5年前、堺市内で開かれた福祉機器の展示会で、大阪市西淀川区の福祉コンサルタント栂(とが)紀久代さん(58)と出会ったことが転機となり、新車づくりを再び始めた。

(asahi.comより)

 西平氏にとっては酷な言い方かもしれないが,弟さんの難病のおかげで天職に就けたとは言えないだろうか.難病の弟のために,高校生の時から車椅子を造る.大学でも機械工学科で,車椅子の研究をしている.そして卒業してからも一貫して車椅子に関連した仕事をしてこられた.

利用者に対する愛情があるから,素晴らしい製品を作ることができる.
その製品の一つ一つは,彼の一生をかけた天職によるものだ.そして弟の夢を,他の車椅子利用者に託す希望だ.

お金儲けのために,何かを造ろうというのとはまったく方向性の違う事業だ.お金儲けが卑しいものだというつもりはない.しかし,まず困っている人を助ける.そしてそれが収入となる.これが本来の順番だと思うのだ.

○○が売れそうだから,工場を建てる.というよりは,○○で困っている人がいるから工場を建てる,というアプローチの方が,人々の共感を得られる.

どのように考えようが,それはそれで,その人の人生だ.
しかし自分の人生ならば,仕事そのものが夢であり,人々から共感を得て支援される仕事に就きたいと考えている.

西平氏は「夢が叶う魔法の翼―電動車イスは移動の自由だけじゃなく、心の自由も与えてくれた!」という本を書かれている↓

アマゾンの読者書評欄には,西平氏の車椅子ユーザと思われる方の書評もあり胸を打たれた.

車椅子ユーザは,オフィスで働こうと思っても,コピーすら思うように取れない.そういうことが健常者には分からない.西平氏の車椅子には,座席の高さを上昇下降する機能もある.これでコピー機に原稿を載せ,コピーをとることができるようになる.

お客様の要求や言葉にならない願望を実現し,お客様の役に立とうとする事により,初めてお客様や社会から必要とされる企業になることが出来る.


このコラムは、2011年1月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第187号に掲載した記事を修正・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

空港でカートが暴走、係員が別車両で突っ込み阻止

 米シカゴのオヘア国際空港で9月30日、ケータリング用のカートが制御不能になって暴走する騒ぎがあった。カートは駐機場にあった機体に衝突する目前で、アメリカン航空の誘導員が暴走を食い止めた。

 (中略)

カートは円を描いて暴走しながら、近くにあった航空機の機首の方へと徐々に近づいていた。そこへアメリカン航空の誘導員が別の車両に乗って現れ、カートに突っ込んで暴走を食い止めた。

 (中略)

アメリカン航空は声明を発表し、カートを止めた従業員の素早い行動を評価した。暴走したカートはアクセルが引っかかって制御不能になっていたことが判明。同航空の従業員にけがはなかったが、便の出発には10分の遅れが出た。

(CNN.co.jpより)

 詳細は報道されていない。推測すると、旅客機に機内食を積み込む作業中にカートのアクセルペダルが戻らなくなり、制御できなくなった。カートに搭乗していた作業員は危険を感じて飛び降りた?飛び降りる際にハンドルを切り速度を落とそうとしたのではなかろうか。
ハンドルが切ってあった事が幸いし、別の車両でカートを停止させる事ができた。またはハンドルから手を離すと、ハンドルが片側にロックし同じ場所を旋回するように安全設計がされていたのかもしれない。

根本原因に対する対策を考えると、アクセルペダルが引っかからないように設計する。引っかかった場合安全側に停止する仕組みを入れる、などが思いつく。
しかし「引っかかったことを検出して…」と考えると、複雑になってしまう。
こう言う仕組みは単純なほど良い。今回の事例では、主電源を落とす非常停止ボタンをつければ良いだろう。

工場の設備も問題が発生した場合、安全側に停止する仕組みを組み込んでおくべきだ。


このコラムは、2019年10月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第886号に掲載した記事に修正加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】