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職位が人を育てる

 よく職位が人を育てるという言い方をすることがある.まだ能力不足と思いながらも一つ上の職位につけると,本人のモチベーションも上がるが,それ以上にその職位に見合った自覚が生まれる.このモチベーションと自覚が成長の助けをしているはずだ.

以前お手伝いしていた工場に若い班長さんがいた.彼は人柄はよさそうだが,あまりぱっとしない人物だった.ミーティングに出席しても何も発言しない.
ある時などは筆記用具を持たずに会議に参加して日本人上司にこっぴどく叱られていた.そして何よりも話をするときの声の小ささが,リーダとして致命的な欠点だと思っていた.

しかしここの経営者はその彼を課長に抜擢した.
他になり手がいなくて苦汁の選択だったのかも知れないが,私には能力不足に思えた.作業員を集めたミーティングでも,声が小さくて何を言っているのかわからない.かなり心配をした.

しかし1ヵ月後に訪問したときにはすっかり変わっていた.
朝礼をしているのを横で聞いたが,しっかりと声が出るようになっていた.

職位を与えられたことにより自覚が出たのと,毎朝の朝礼で訓練されたのだろう.「職位が人を育てる」「仕事が人を育てる」の好例だ.

これを人材育成の仕掛けにしてしまってはどうだろうか.
職位を同じままにして一クラス上の職位の仕事を一定期間代行させる.この期間に能力やモチベーションのアップが見られれば本当に昇進させる.今までと変わらなければ,昇進は取り止めで次の人にチャンスを回す.

昇進をさせていないので「職位が人を育てる」という効果が少し薄いが,うまく能力が発揮できなかったときの「降格」によるマイナス効果を考慮してみた.

組織の中で「降格」がマイナスに受け取られない,敗者復活の道がきちんと用意されている,という組織文化があれば職位も上げてしまった方が効果が高いだろう.
定期的にこのような「役割の変更」が行われていれば,「昇進」も「降格」も単なる役割の変更という組織文化も生まれてくると思うがいかがだろうか.

「昇進」をすると自分が偉くなったと勘違いする人間が多くいる.昇進はただ単にそういう職務を与えられたというだけだ.


このコラムは、2009年11月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第127号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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劣勢ノキア「足場は炎」 打倒アップル、グーグルと火花

劣勢ノキア「足場は炎」 打倒アップル、グーグルと火花

 ますますパソコンに近づくスマートフォン(多機能携帯電話)で米アップルの成功に続くのは、人気の基本ソフトを持つ若い米グーグルか、古兵のノキア(フィンランド)・米マイクロソフト連合か。バルセロナで開催中の世界最大の携帯電話見本市で火花が飛んだ。

(asashi.comより)

 この記事の中で,グーグルの幹部がツイッターで「七面鳥が2羽集まってもワシにはなれない」と発言していることを伝えていた.当然ワシ(イーグル)は,グーグルの事を指している.

グーグル幹部の発言は,グーグル自身は携帯電話を発売したものの,早々に撤退していると言う事実を無視したものだ.

グーグルも1羽で戦っている訳ではない.その点をとりあえず横に置くことにする.
もちろんグーグル対ノキア・MS連合を考えた時,ノキア・MS連合が弱者と言う訳ではないだろう.むしろ後発のグーグルの方が弱者と言ってよい.再びこの点も横に置いて,文字通りワシ対七面鳥の戦いと言う比喩で弱者の戦略を考えてみたい.

さすがに,七面鳥がワシに空中戦で勝利することは,物理的に不可能だ.
ではワシ対ハヤブサの戦いであったらどうだろうか.
2羽のハヤブサは,子供を生んで戦力とすることができる.ハヤブサは一度に3~4個産卵をする.
1羽のワシに対し,5羽のハヤブサファミリィが戦いに挑んだら,ハヤブサ軍が勝利するだろう.

志を同じくする中小企業連合が,大企業に勝利する機会はいくらでもある.

では飛べない七面鳥には勝機がないのだろうか?
七面鳥は一度に8~15個産卵する.10羽の七面鳥ファミリィがワシに地上戦を挑んだら,七面鳥に勝機があるだろう.

つまり,ワシが不得意な土俵で戦うと言うことだ.

しかしワシが「飛ばない」と言うルールを守って,地上で戦うことを期待することはできない.「フェアプレイ」と言うルールはこの戦いには存在しない.
フェアプライのないルールに従って戦えば,必ず七面鳥は負ける.ワシが飛べないルールで戦わねば,七面鳥は勝てない。

中小企業が大企業に勝つには,大企業が勝てないルールを見つける,または大企業が勝てないルールを作り出すことが必要だ.
この「ルール」は,「マーケット」「商品」と言う言葉に置き換えることができる.


このコラムは、2011年2月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第193号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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LED灯工場訪問

 LEDは,高輝度化,青色LEDの開発により多くの分野で応用されている.
自動車のストップランプ,信号灯,屋外灯など今までLEDが使えるとは思っても見なかった分野でも応用されている.

室内照明も,白熱電球→蛍光灯→LED灯の順に進化し省エネに貢献してきた.

省エネの社会的要求の背景もあり,需要は急速に拡大している.それに伴って,中国華南では,どこもかもLED灯の生産を始めている.以前知り合った自動化機械を作っている中国人社長は,工場のすぐ横にLED灯を生産する工場を開いていた.

LED灯を造るだけならば,LED素子を買ってきて,実装しランプに組み立てればよいだけだ.大きな設備投資なしでも生産が開始できる.そういう新興勢力が一斉に,家庭用の室内LED灯を生産する.価格はあっという間に値崩れし40元を切っている.

儲かりそうだと,あっという間に人を集め工場を立ち上げてしまう.中華系工場経営者の決断の早さには脱帽する.
しかし,後発メーカはそれなりの戦略を持たなければ,不毛な価格競争に明け暮れることになる.その結果忙しければ忙しい程,貧乏になる.悪いことに,同業者も貧乏に巻き込んでゆく.

最後には,資本の力で徹底的に機械化し,生産効率を上げかつ,生産物量を確保できたところだけが生き残る.
まるでチキンレースだ.投資が回収できなかったら?と躊躇した瞬間に負ける.

例えば1個40元のLED灯は造らない.400元で売れるLED灯を作る.
月産10万個の製品は作らない.1個ずつ特殊仕様の製品を作る.
そんなことを考えなければ、あっという間に価格競争に巻き込まれる。
営業効率,生産効率は悪くなる.しかしそれは,月産10万個の工場の構えと、生産方法をそのままにしているからだ.多品種少量生産・販売の仕組みを作れば良いのだ.

ネジや梱包用の段ボール箱など,まとめ買いが当たり前だと考えている製品を一個から受注生産することが出来れば,ビジネスのパラダイムシフトが起きるはずだ.


このコラムは、2011年1月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第187号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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新幹線方式

 以前勤務していた会社の社長が良く「新幹線方式」という言葉を使っていた.
「新幹線方式」というのは過去の方法を捨てて,新しい発想で物事を始めることである.

新幹線は在来線との互換性を捨てて,軌道の幅を広くしている.
昔は車輪と軌道の間に適度なガタがないと列車は脱線すると思われていた.新幹線はこの通説も否定した.新たな発想で高速走行とゆれの少ない乗り心地を実現している.
こういう発想を「新幹線方式」と呼んでいる.

工場の運営も同様に,従来の常識を超えた高みに到達することにより,更に高い生産性・品質・フレキシビリティを確保できる.業界の常識にとらわれていると,業界レベルのそれしか得られないであろう.

例えば電子部品の業界では,出荷不良20ppm以下が要求される.
この電子部品を組み合わせた電子製品の出荷不良を20ppm以下にしたら,顧客の反応はどうなるであろうか.

もちろん100個も200個も電子部品を組み立ててできる電子製品の不良率を電子部品1個のレベルまで下げることはそうは簡単ではない.
一方自動車産業では出荷不良が20ppmなどと言うのはとんでもない,ということになる.常に不良ゼロである事を要求される.

デリバリィーについても同様である.
業界常識のリードタイム,最小発注量というのがあるが,それを越えてデリバリィーができれば,顧客の利便性は高まる.
例えば今まで1週間かかっていた納期を1日に短縮し,必要な数量だけを納入できたら顧客は部品倉庫がなくてもオペレーションできることになる.

このように業界の常識を超えて,異業種をベストプラクティスとして改善することにより同業者の中で圧倒的に強い競争力を得る事が出来るであろう.

そのためには異業種のベストプラクティスを知り,「新幹線方式」で自社を改善することである.

社長は「新幹線方式」をGEのジャック・ウェルチに話をした事がある.この時ジャック・ウェルチはその日の内にFAXでGEグループの全社長にこの話を伝えたそうだ.さすがはベストプラクティスの本家である.


このコラムは、2008年7月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第41号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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爆発事故

愛知・豊田自動織機の工場で爆発、社員1人死亡

 7日午前5時10分ごろ、愛知県大府市江端町1丁目の豊田自動織機大府工場内で爆発があり、作業をしていた同市共和町の同社員高木甲子朗(こうしろう)さん(24)が全身にやけどを負って病院に運ばれたが、間もなく死亡した。爆発があった建物の屋根が曲がり、窓ガラス約50枚が吹き飛んだ。東海署は業務上過失致死の疑いで捜査している。

(asahi.comより)

壮絶な事故である.
報道によると作業現場は,

「製造ラインから流れてきたアルミ製のピストン部品(長さ12センチ、直径3センチ)を4本ずつ、液体の入ったステンレス製の水槽(長さ1メートル、奥行き60センチ、高さ40センチ)の中に入れ、不良品がないか調べる作業をしていた。
 液体は塩化ナトリウムを液化させたものとみられ、温度は530度に保たれていた」

530℃に加熱され液体となった塩化ナトリウムというのが想像を絶する.固体を加熱すれば液体となるというのは理屈としてわかっていても,食塩が液体になっている様子を想像する事が出来ない.

実際どんな作業なのかは想像ができないが,作業員の安全は十分に考慮されていたのだろうか?

高温の液体塩化ナトリウムの水槽内に何かを入れて,塩素と結合してしまうとナトリウムが単体になってしまう.ナトリウムが高温化で激しく反応したら大変なことになる.化学の知識がないのでこんな想像をしてしまうが,恐ろしく危険な作業をしていたのではないだろうか?

薬剤を水槽に投入後爆発があったと報道されている.
職場に不要な物(あってはならない物)がおいてあり,誤って投入してしまったのではないだろうか?

以前プラスチックケースを組立てる工程に防錆スプレーが置いてあったのを見て班長を叱った事がある.
こちらは作業員が危険になるようなことはないが,防錆スプレーをプラスチック材料にかけたりすると,「油脂クレージング割れ」が発生する.

プラスチックの油脂クレージング割れ

この不良は時間がかかって発生するので,工程の中では発見できない厄介な不良である.
もちろん防錆スプレーがおいてあるだけで,プラスチックに油脂が付着するはずはない.しかし作業員が誤ってこれを使う可能性はある.したがって防錆スプレーはプラスチック組立工程にはあってはならない物なのだ.

この報道の最後に,
「爆発があった工程は当面止まる見込みだが、同社は顧客への供給に影響はないとしている」
と付記されている.若い従業員を亡くしてしまったのに顧客への影響しかコメントはないのだろうかと悲しくなる.


このコラムは、2008年5月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第33号に掲載した記事を改題・修正しました。

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貧乏輸出大国・中国

 先日中国で工場経営をしておられる方からこんな話を聞いた.
中国は廉価大量生産品をどんどん作り輸出することにより,世界中にどんどん貧乏を輸出しているというのだ.

非常に面白い論点だと思う.
安い物を更に安くして,自らどんどん苦しくなっている.更に世界中の競争相手も苦しくしている.「貧乏輸出大国」という表現はなかなか言いえて妙だ.

しかし我々はこの競争に巻き込まれるわけには行かない.
良い物を造って,高くても喜んで買っていただける,
こういう戦略で商売をしなければ未来はない.

最低賃金が毎年十数%上昇しても,毎年生産性を30%改善すれば良いだけだ.
工夫に工夫を重ねより高品質・高付加価値の製品を作る.
お客様中心主義で高フレキシビリティ生産をする.
これが日本のモノ造りの心だ.

我々は中国の社会・文化の中でモノ造りをさせていただいている.しかし日本のモノ造りの心だけはローカライズをしてはならない.むしろこういう環境であるからなおさら日本のモノ造りの心を際立たせなければならない.


このコラムは、2008年9月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第51号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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三味線

 防空圏、日米で対応にズレ 民間機の扱い巡り

【ワシントン=吉野直也】米政府は中国が東シナ海上空に設定した防空識別圏を巡り、軍と民間で対応を使い分けている。米軍機は従来通り事前通報なしに飛行を続ける一方、航空会社には事前に中国に飛行計画を提出するよう事実
上促した。不測の事態を回避するため現実的な判断に傾いたものとみられ、日本政府は困惑している。

米国務省は29日の声明で「米政府は国際運航する米航空会社は一般的に外国政府の航空情報に従うべきだと期待している」と指摘。一方で「今回の措置は米政府が中国の要求を受け入れたことを意味するものではない」とも強調し、米軍機は従来通り事前通告なしに飛行させる方針だ。

米メディアは連日、中国の防空識別圏設定を報道し、批判が広がっている。民間機の安全を不安視する声もあり、懸念を無視できなくなった。

日本政府は米側の動きについて「全く聞いていなかった」(政府関係者)と戸惑っている。日本航空や全日本空輸は中国による防空識別圏の設定後にいったん飛行計画の提出を始めたものの、政府の求めで26日夜に取りやめた。政府は方針を堅持し「米側は航空会社に指示したわけではない」としている。

日航と全日空は30日、今後も中国に飛行計画を提出しない方針を明らかにした。「日本政府によって安全は担保されている」(日航)というのが理由だ。政府が注目するのは25日の程永華・駐日中国大使の発言だ。外務省の斎木昭隆次官が「従来通りの運用ルールで対応する」と伝え、程氏は「民間航空機を含め飛行の自由を妨げるものではない」と語った。

(日本経済新聞・電子版より)

このニュースは私たち中国で仕事をしている者に取って非常に関心の高いニュースだ。中国は防空識別圏の設定を、習近平が外遊している最中に発表している。この様な外交上の大事を国家主席不在で決定するとは、思えない。

人民解放軍に対するシビリアンコントロールが正常に機能しているのか心配だ。
人民解放軍は元々、陸軍主体の軍隊だ。昨今海軍が増強され東シナ海、南シナ海で国際的緊張を煽る様な行動に出ている。空軍も最近、無人ステルス戦闘機のテスト飛行に成功したと発表しているが、まだ軍内でのプレゼンスが低いのではなかろうか。
そういう状況下で、空軍がクリーンヒット狙いの独走をしているとしたら、相当ヤバい状況だ。

こういう状況で、シビリアンコントロールがきちんと働いていないと、軍のチョットした勇み足が、後戻り出来ない状況に突入し、坂を転げ落ちる様に最悪事態に向かうことになる。

朝日新聞によると、オバマ大統領の指示で米国民間機が事前に飛行計画を中国に出すことになったと、中国国内では報道されていると言う。それに対し、中国人民はネットで盛り上がっているらしい。世論も軍を後押しする様なことになると、第二次世界大戦開戦前夜の日本と酷似しているのではなかろうか。

ところで、オバマの民間機に対する飛行計画提出要請も、米軍機、自衛隊機に対するスクランブル発進も、実は中国政府の「三味線」ではないのか、という論調を朝日新聞も伝えていた。この様な「大本営発表」が世論を間違った方向に導く事を、我々日本人はよく知っている。

この件に関する議論は、本メルマガにはふさわしくないだろう。専門の評論家・論客の諸氏にお任せしたい。

このメルマガでは、中国の三味線外交について考えてみたい。
相手を惑わす事をよく三味線を弾くとか、口三味線などと言う。
麻雀で、テンパっていないのにテンパっている振りをする、またはその逆。実際の手と違う手でテンパっている振りをする、こういうのを口三味線という。これにより相手を不必要に警戒させたり、油断させたりする訳だ。

私が議論したいのは「悪事」に使う三味線ではなく、組織強化に使う三味線だ。

「瓢箪から駒」と言う言葉がある。何も根拠が無いのに言った事が、現実になる、という意味だ。
中国語に『烏鴉嘴』と言う言葉がある。これは不吉なことを言うと、本当になってしまう、という意味だ。

良い悪い、どちらにせよ、口に出した事が現実化すると言う事だ。
昔は「不言実行」と言う四文字熟語があったが、最近はほとんど使われない。元々の不言実行をもじった「有言実行」が使われる事の方が多い。黙っていては実現出来ない、と言う事に多くの人が気が付いたせいだと思う。

だだをこねる子供に「お兄ちゃんなんだから、お利口だよね」と言うと、子供は言う事を聞く様になる。「だだをこねては駄目」と叱るより効果がある。「お利口だ」と言われたことにより、自分の役割に気が付く。そしてお利口に振る舞おうとする。

警察官になる人は正義感が強いから警察官になる訳ではない。勿論正義感が強く、警察官になりたいと思う人はいるはずだ。しかし警察官と言う職業を得た瞬間に警察官と言う自覚で正義感が強くなるのだ。そして見知らぬ人から「おまわりさん」と呼ばれるたびに正義感が強まってゆく。

時々現役制服警察官が、覗き、盗撮、痴漢行為などの破廉恥行為で逮捕されたと言うニュースを見る。こういう人は、制服を脱いだ時の自己モチベーション管理が不十分だったのだろう。制服着用時は、正義感の高い警察官だったのだろうと思う。

まず言葉がありそれが現実化する。
下手をすると中国の三味線もそのまま既成事実となってしまう訳だ。

三味線は善良な方向で利用すると、経営にも役に立つはずだ。
有名なリッツカールトンホテルのクレド(信条)には「紳士淑女をサーブする私たちも紳士淑女です」と書いてある。これを毎朝朝礼で唱えるから本当にベルボーイも、客室掃除婦も紳士淑女になるのだろう。

これは自分自身にも使える。ワイキューブの元社長・安田佳生氏は、起業して新卒採用を始めてから、新入社員に「自分は従業員を愛している」と言い続けたそうだ。本人の告白によると、従業員を愛してなんかいなかった(笑)しかし言い続けることにより、本当に従業員に対する愛が芽生えたそうだ。

崇高な経営目的・経営理念を決めて毎日口に出して言えば、自分自身も崇高な経営者になる。
誇り高く規律正しい従業員の行動規範を決めて、毎朝朝礼で唱和する。これで従業員は誇りを持ち規律に沿った行動をする様になる。

そんな簡単に行くはずがない、と懐疑的な方はぜひ試してみていただきたい。効果が無くても失うモノは何もないはずだ。
口に出して言うことにより、潜在意識を活性化する。その結果口に出した事が現実となる。良い結果を生む口三味線をぜひ実行していただきたい。

安田佳生の新刊「疑問論」


このコラムは、2013年12月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第338号に掲載した記事を改題しました。

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上り特急停車中の線路に下り特急が進入、緊急停止 佐賀

 22日午後0時20分ごろ、佐賀県白石町坂田のJR長崎線肥前竜王駅で、上りの特急かもめ20号が止まっている線路に、下りの特急かもめ19号が進入し、運転士が手動で緊急ブレーキをかけて止まった。JR九州によると、列車同士の距離は約90メートルで、正面衝突する危険があったという。2本の特急の乗客計約230人にけがはなかった。

 同社によると、19号は線路の分岐点から約40メートル進んで止まった。速度は「最大で時速35キロ」としている。ATS(自動列車停止装置)は異音で停車した場所より手前にあり、作動する状況になかった。運転士が気付かなければ正面衝突の可能性があったという。

 19号と20号はもともと、隣の肥前鹿島駅ですれ違う予定だったが、19号の異音トラブルでダイヤが乱れたため、肥前竜王駅ですれ違うことになった。当初は、両列車とも肥前竜王駅の2番線を通過することになっていたため、JR九州の博多総合指令(福岡市)は、上りの20号が1番線に入るようプログラムを変更。20号は先に1番線に入って停車した。

 JR九州によると、19号は異音トラブルの際、線路の分岐点の手前にある信号を数メートル過ぎて止まったが、総合指令は信号の100メートル手前で止まったと認識していた。このため、総合指令は列車を信号まで進ませてから、分岐点を1番線から2番線に切り替えるつもりで進行を指示。しかし実際は信号を過ぎていたため、19号はすぐ分岐点を過ぎ、1番線に進入したという。

 国の運輸安全委員会は、このトラブルを深刻な事故につながりかねない「重大インシデント」と認定し、鉄道事故調査官2人を現地に派遣した。23日に、JR九州関係者から詳しく事情を聴き、現場を視察する。

(朝日新聞電子版より)

 米国で大きな列車事故が有ったが、日本の鉄道では久々の「ヒヤリ・ハット」事故ではないかと思う。

単線区間なので、列車は駅ですれ違う。すれ違いのために停車していた上り列車のいる線路に下り列車が進入し、あわや衝突という所で緊急停止した。

本来、もう一駅上り寄りの駅ですれ違う予定だったのが、下り列車の運転手が異音に気付き停車、10分遅れたため、一駅下り寄りの駅ですれ違う事となった。

上り列車を肥前竜王駅の1番線に入線させ、下り列車を2番線を通してすれ違うようダイヤ変更をした。しかし上り側のポイントが1番線側になっていたため下り列車が1番線に入線してしまった。

現場直前のATSの列車検出器で下り列車を捉え、その後に肥前竜王駅手前のポイントを2番線側に切り替える予定で準備していたが、異音点検で停車した位置が列車検出器を通り越していたので、通過信号が得られず、ポイントの切り替えが出来なかった、と言うのが新聞記事から読み取れる事故の経緯だ。

しかし何事もなければ、一駅下り寄りの肥前鹿島駅ですれ違いを済ませ、上り下り列車ともに、肥前竜王駅の2番線を通過することになっていた。従って何もしていなければ、肥前竜王駅上り側のポイントは2番線側になっていたはずだ。

上り列車を1番線に入線させる際に下り側ポイントを1番線側に倒せば、上り側ポイントも1番線側に自動的に切り替わる、などの事情が有るのかも知れない。残念ながら鉄道マニアではないのでこの辺りの事情は不明だ。

いずれにせよ、普通ならば下り列車が10分遅れたくらいで大騒ぎせず、上り列車を予定通り肥前鹿島駅で待機させておくだろう。日本の鉄道でなければ、この様な事をしないと思う。現場が臨機応変に対応し、遅れ時間を最小に出来る。そして現場が、遅れ時間を最小にしようと言う情熱を持っているからこそ発生した事故だと思う。

しかし憂慮しなければならない事は、我々が信じて疑わないJRの現場力が健在なのか?と言う事だ。日本の鉄道はATS/ATCシステムによって、安全運行が行われる様になっている。都内の列車は3分間隔と言う過密ダイヤでも事故が発生しない。以前工事車両が原因で事故が発生したが、工事車両はATS/ATCで制御出来ない。システムに頼りすぎて、本来現場力で対処出来ていた部分が脆弱になりつつ有るのではなかろうか?

福岡航空重大インシデント

 2018年3月24日(土)に福岡空港で関空発のピーチA320-200機が着陸後、前脚タイヤが横を向き動けなくなり滑走路上に停止する重大インシデントが発生。本件に対する調査情報が運輸安全委員会から公表されている。

「福岡空港で発生したピーチアビエーション機の重大インシデントに関する情報提供」

調査報告書によると前輪ユニットを構成する部品・トルクリンクのピンが消失しており、前輪の操舵ができなかったようだ。

報告書の図面によると、上下のトルクリンクを締結するピンはナットで固定され、ナットの緩み止めロックプレートが連結ピンにボルト留めされている。さすがに絶対外れてはいけない部品である。点検用のアイマークが付いているだけでは不十分だ。
どのように点検作業をしていたのかは不明だが、報告書の図面を見るとトルクリンクの締結部はタイヤの直径よりわずかに上にあり、締結ボルトのロックプレートは簡単に点検できる位置にある。

製造業で使用する設備も、締結部分(ボルト・ナット)が緩んでいないか目視点検したり、ビビリ音がないかなどの点検をすることがある。
この重大インシデント情報から我々も以下のことを学ぶことができる。

  • ナットの緩み留めにロッププレートを使用する。
  • 締結部を点検しやすい位置にする。

締結部が緩んだ時のリスクに合わせ未然防止対策を検討すると良かろう。


このコラムは、2018年12月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第757号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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離陸機が緊急停止=日航機、滑走路へ進入―上海

 【上海時事】中国民用航空局によると、上海浦東国際空港で13日昼(日本時間同)ごろ、米デトロイト行きデルタ航空の旅客機が離陸に向け速度を上げていたところ、滑走路に日本航空の旅客機が進入、急ブレーキで緊急停止した。

 中国メディアによると、急ブレーキの影響でデルタ機のタイヤが破損。非常事態に備え、消防車がタイヤに向かって放水した。けが人などは出ていない。中国当局が緊急停止の原因を究明するため、両社のパイロットや管制官から事情を聴いている。 

(時事通信より)

 英国でJAL機副機長飲酒問題が起きたばかりだ。今度はJAL機が上海で離陸中の旅客機の前方を横切るという重大インシデントを起こしている。

中国ではあまり報道されていないようだ。中国百度検索で「上海浦東机場」を検索すると当該インシデントは3件しかヒットしない(15日午前現在)

事故原因調査に国土交通省運輸安全委員会が関与するのかどうかはわからない。いずれにせよすぐには何があったかはわからないだろう。

管制官(中国人)JALパイロット(日本人)DELTAパイロット(米国人)が英語でやり取りをしていて、聞き間違いがあったというのがもっともらしい原因かと思う。しかしこれでJALパイロットが免責となるわけではない。管制官にミスがあったとしても、DELTA機に緊急ブレーキを踏ませたのはJAL機だ。

例えば、信号交差点で横断中に信号無視の乗用車にはねられ即死たとしよう。
当然歩行者には何ら法的な責任はない。しかし一番重い「罰」を命と引き換えに背負うのは被害者である歩行者だ。

いくら管制システムが機械化されようが、自動航行技術が発達しようが、最後の砦は、管制官やパイロットの「勘」だと思う。「勘」というと伝承不可能な属人的能力のように感じるが、事故の予兆とか潜在事故と言い換えれば「勘」は訓練で身につくはずだ。

例えば今回のインシデントで言えば、上海浦東空港では2本の滑走路で離着陸する。駐機場もしくは離陸滑走路にタクシングする場合、他方の滑走路を横断しなければならない。従って離陸機と着陸機が同時にある場合は両機の挙動に注意を払う、というのが上海浦東空港での潜在事故に対する予防保全行動になる。

ベテランの「勘」も言葉に置き換えることができれば、新人に教育可能ということだ。

このコラムを書くためにネット上の情報を検索した。
ドクターヘリの元パイロットの方が「ヘリを離陸させる時は、ホバリングのまま90度旋回して後方確認をした上で上昇するものだ」と書いておられた。なるほどなぁと感心した。

「勘を働かせろ」と指導するより「ホバリングで90度旋回し後方確認せよ」と具体的行動を指導する方が効果があろう。その上でこういう行動が危険を予知する「勘」であると指導するのがよかろう。


このコラムは、2018年11月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第748号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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