経営」カテゴリーアーカイブ

人口減少

人口が減少すれば、消費が減少する。
だから売り上げが減る。業績が上がらないのはやむを得ない。

しかし本当にそうだろうか?

GDPの60%を占める家計最終消費支出は、2009年3Qと比較して2018年3Qは5.8%増加している。
業界・業種によって条件が異なるのは確かだろうが、マクロに見れば国内市場は成長している。

以前ご紹介したJR東日本の冨田会長は「人口が減っても交流人口は増える」と言っておられる。

第739号「鉄道の安全対策」

つまり人口が少なくなっても交流人口(鉄道を利用する人)を増やせば良い。そのために廃線候補の路線に観光列車を走らせる。駅ナカに商業施設を作れば、鉄道運賃以外の収益が上がる。

私たちはネガティブな状況に出会った時にため息をついてしまう。ため息をつけば消極的な事しか思い浮かばないだろう。

冨田会長の言葉「人口が減っても交流人口は増える」を「〇〇は減っても□□は増える」と一般化して考える。そうすればため息ではなく、アイディアが浮かぶだろう。

例えば「売り上げが減っても利益が増える」と考えれば、

  • 製品の付加価値を高めて売値を上げる。
  • 製品のコストを下げて利益率を上げる。
  • 製品の販路・市場を増やす。

などが簡単に思いつく。ため息などついている暇はない。
(三番目のアイディアは売り上げが上がってしまうのでNGか?・笑)


このコラムは、2018年12月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第759号に掲載した記事に加筆修正しました。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

経営計画

 先週土曜日は朝から一日東莞和僑会の勉強会に参加していた。
朝からお昼を挟んで2時までは、限定メンバーで目標管理勉強会。3時から5時半までは、一般参加者向けの定例会。その後8時過ぎまで懇親会に参加した。

目標管理勉強会は今年から始めた試みだ。年度事業計画を作る事により、目標管理を勉強している。年末までに2016年の事業計画を作成し発表会をやる予定でメンバーの工場持ち回りで勉強会を開催している。第三回の今回は中国人スタッフも参加して、大人数で開催した。

私も前職時代は、品質保証部門長として、毎年年度計画を作成していた。
事業部室から、事業部年度計画作成の為の基礎データとして各部門の計画提出要求が来る。
品質保証部門の年度計画は、協力工場・仕入れ先指導の出張経費、人材育成費用、品質損失コスト程度しか無い。人員の変動はほとんどないので、労務費は前年のコピペで済んでしまう。

これを年度末にやる訳だが、ほとんど私一人で鉛筆をなめながらやってしまう。品質損失の売り上げ比率を、毎年の品質目標にしているので、営業部門の売り上げ計画から計算すれば来年度の品質損失コストの計画(目標)が出る。次年度の協力工場・仕入れ先指導計画だけは、メンバーが集まって各協力工場、仕入れ先の今年のパフォーマンス評価、来年の計画を作る作業をしていた。

事業部全体の事業計画を立てる事は無かったが、自部門の計画作成はこの程度で良いと思っていた。

しかし目標管理勉強会で、これでは不十分だと気がついた。
年度計画の作成は、予算の確保だと言う観点でしか考えていなかった。もちろん毎月のQA会議では、事業部長に目標の執行状況を報告する。品質損失コストの推移、品質指導の出張経費の執行状況、人財育成費用の執行状況により、計画が予定通り執行出来ているかどうか判断出来る。未達の項目が有れば、対策を議論する事になる。

こういう目標管理活動の計画を、自分が鉛筆をなめながらやってしまう。これが間違いだったと気がついた。人材育成計画や品質損失コストの目標達成施策は、予算の承認が降りた後にメンバーと議論していた。これではメンバーの参画意識を高められない。またメンバーに自部門の年間計画作成する訓練が出来ない。

勉強会の講師を勤めていただいている富田氏は、こういう日常業務を通して中国人幹部の育成をしていたのだろう。初めの2、3年は各部長が持ってくる計画はほとんどザルだそうだ。自分自身でザルだと分かっているので、自ら工夫努力する様になる。

最終的にはA3シート1枚の売り上げ計画が、A3エクセルシート30枚のバックデータを元に作成される。バックデータは顧客の製品別生産計画・新製品投入計画、業界の経済動向および自社の拡販計画が織り込まれている。

製造部門,生産技術部門なども同様に次年度の計画がA3シートで出てくる。

各部門の次年度計画が合体して次年度の事業計画が出てくる。
そこには毎月の人材採用計画、購買計画、設備投資計画が出て来て、それらの計画を実施する為に月次の資金計画が出てくる。

この過程に参加させる事が、最高の人財育成だと感じた。
こういう実戦訓練により経営マインドが育成され、自部門の都合より全体を考える力がつくだろう。

私自身も、そのような心構えで自部門の次年度計画を作っていれば、もっと経営者マインドを高める事がで来ただろう。多分独立後の苦労も少なかったはずだ(苦笑)

東莞和僑会「目標管理勉強会」はさらに進化し「改善交流会」を定例開催している。


このコラムは、2016年5月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第476号に掲載した記事に加筆修正しました。

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「まちかど厨房」の応用

 先週のニュースで、ローソンが店内調理をした総菜やお弁当を販売する、と言う記事をご紹介した。街角にあるローソンを厨房にすると言う「まちかど厨房方式」を製造業で応用出来るか?と言うお題でアイディアを募集した。

今週は締め切りが早かったためか、お一人様しかメールがなかった。
メールを下さったF様、ありがとうございます。
では中国で電子製品製造業にお勤めのF様のアイディアをご紹介する。

※F様のアイディア

私たちは、情報関連製品を生産しています。生産工程の最後で、完成品を梱包してFQC検査の後、製品倉庫に入庫します。

「まちかど厨房」のアイディアは、私たち自身の工場のアイディアではなく、梱包工程を、梱包資材メーカーさんにすべて請け負っていただく、と言うアイディアです。

梱包資材は、組み立ててしまうとかさばり、輸送効率が悪くなり、倉庫での保管場所の確保が大変です。また組み立ててないと、梱包作業者が組み立てをする必要があります。

梱包資材メーカーさんの設備を持ち込むとなると、ちょっと大変ですが、出来上がった梱包資材を組み立てないで持ち込み、製品にビニル袋をかけ、化粧箱に取り説と一緒に梱包、集合梱包の段ボール箱に入れ封をする。

これを梱包資材だけではなく、作業員も合わせて提供していただければ、製品単価プラスアルファでも、ペイすると思います。

こういう発想は、梱包資材を生産しておられる方からは、なかなか出て来ないのではなかろうか?梱包資材を売っていると考えていると、この発想は出ない。「梱包」そのものをサービス提供すると考えるから出る発想だ。

こういう発想は、ユーザ側の方が思いつき易いのかもしれない。

「梱包」をもう少し拡大解釈すれば、製品保管、出荷輸送もサービス範囲に出来る。以前にも申し上げたが、「モノを売る」と言う考えからから、「モノを提供することにより、お客様の生産をサポートする」と言う考えに転換すれば、生産をするサービス業となる。

こういう考え方をすれば、同じ生産量でも売り上げ金額は上がる。

またお客様の現場に、ダンポール箱生産の設備を持ち込んでしまえば、そのお客様内での、シェア比率を上げることができるだろう。特に緩衝材などは、原材料で輸送すれば輸送費用は安くなる。

今回の「まちかど厨房方式」を総括すると、お客様の現場で、お客様の声を聞き、お客様の声にならない要求を見つけること。その要求を満たすことにより、お客様にとって欠かせない存在となることができる。


このコラムは、2013年10月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第333号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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「まちかど厨房」

ローソン、5000店で店内調理 カツサンドなど提供

 ローソンは2015年春までに、カツサンドやおにぎりを店内で調理する「まちかど厨房」を現在の3倍強の5千店に広げる。全店舗の半数にあたる。総菜・弁当工場で作った商品よりも価格、利益率ともに高い。コンビニエンスストアの既存店売上高が苦戦傾向にあるなか、できたての軽食を集客の目玉に据え、カフェやファストフード店から客を取り込む。

 まちかど厨房は、仕入れた食材を店員が店内で調理して販売する。「厚切りカツサンド」は398円と通常のサンドイッチの2倍近いが、厚さ2センチメートルのカツの食べ応えが人気。導入店舗のうち、早朝や夜間の利用も見込める店では調理パンなどのほかに、おにぎりや弁当など最大20品を扱う。

 店内調理品の1日の平均売上高は2万円で、購入した客の平均客単価は購入していない客に比べて2~3割高いという。

 現在は1500店で展開しているが、13年度末に2500店、14年度末には5千店と全店の5割程度に引き上げる。

 導入店では店員の休憩スペースなどを割いて、5~10平方メートルの調理スペースを確保する。年900店程度の新店の大半にはあらかじめ設け、加盟店のオーナーに働き掛けて既存店の改装を促す。費用は200万円程度。

 並行してローソンは、いれたてコーヒーの導入店を13年度末に8千店と現在の2倍に増やす。コーヒー導入店にまちかど厨房を組み合わせ、カツサンドなどとの同時購入を促す。ファストフードやカフェの客を取り込む狙いだ。

 店内で調理したできたて商品の提供では他のコンビニエンスストアにも広がっている。サークルKサンクスは全店舗の4割にあたる約2500店でコロッケや春巻きなど主に揚げ物を扱い、夕食のおかずとしての利用を見込む。ミニストップは全約2200店で、店内で握ったおにぎりや空揚げなどを販売している。ただ、最大手のセブン─イレブン・ジャパン、ファミリーマートは現段階で、店内調理品を手がける予定はないという。

(日本経済新聞・電子版より)

 いつもと毛色の違うニュースを取り上げた。実はこれには、チョットした理由がある。
先週読者様からこんなメッセージをいただいた。

※K様のメッセージ

 大変面白い企画でした。経営コンサルタントをしていますが、企業や経営者が自社の製品・商品が売れないと嘆くだけで、逆に何故売れないのかを考えればその結論の反対をすれば売れる可能性が見えてきます。他社事例では良いアイディアが出るのに、自社については余り真剣に考えていないように感じます。
できればこのような企画を今後も希望します。

先々週「靴下拡販」のお題を出し、読者様のアイディアを先週のメルマガでご紹介した企画に、上記の様なご感想をいただいた。

読者様のご希望があれば、何としてでも応えようと言う姿勢で、メルマガを書いている。と言う訳で、第二弾だ(笑)

コンビニのファーストフード店化は、とどまる所を知らない様だ。
コンビニの淹れたてコーヒーの販売は、ドトールコーヒーやスターバックスにとって脅威だろう。コンビニの場合、コーヒー単体で利益を出さなくても、ついで買いの商品が沢山並んでいる。そう考えれば、戦略的にコーヒーの利益率を下げておくこともできるが、コーヒーショップは、コーヒーがメインの売り物だ。そういう価格競争に乗る訳には行かないだろう。

定食屋「大戸屋」は、セントラルキッチンを持たず、食材のカットから店舗での調理に徹していると聞く。さすがにコンビニでここまでは出来ないだろう。各店舗の厨房に対する投資が大きくなる事と、味を均一に保つ事が難しい。

「まちかど厨房」は他店との差別化、それによる売り上げ・利益率のアップを狙う作戦だろう。

さて、この作戦を我々製造業に応用してみよう。
製造業はほとんどの場合B to Bであり店舗などない。ここで考えを止めてはだめだ。更に一歩深く掘り下げる。

店舗とは「売り場」である。しかしこれは売る側の論理であり、消費者の立場から考えれば、店舗とは「買い場」である。

製造業にこの論理を当てはめれば、「買い場」とは「納入先」であり、お客様の「製造現場」であるはずだ。こう考えた場合、ニュースに取り上げた事例は、製造業にとって、お客様の製造現場で生産する、と言うことになる。

【今週のお題】
「まちかど厨房」のアイディアを製造業に応用してみよう。

ヒントとして実例を挙げよう。
タイヤメーカは、車メーカの組み立てラインの横にタイヤのミニプラントを持ち込み、車にタイヤを組み付けるタイミングでタイヤを生産する。こうすればタイヤの中間在庫は最大で4本しかなくなる。究極のJIT生産だ。ムダな在庫も輸送費もなくなる。

読者様の奇抜なアイディアをお待ちしている。


このコラムは、2013年10月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第332号に掲載した記事を改題・加筆しました。

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靴下の拡販

先週のニュースで、国内ががんばり続けている靴下メーカが「滑らない靴下」を受験生マーケットに投入した話を、ご紹介した。
滑り止め機能付きの靴下を受験生に売ると言うアイディアはすばらしいが、市場規模が小さすぎる懸念がある。そこで、日本国内でがんばっている靴下メーカを応援するために、滑らない靴下を拡販するための新たな市場創造のアイディアを読者様に求めた。

二名様からアイディアをいただいた。ご紹介したい。

※上海のN様のアイディア
いつもメールマガジン楽しみ読ませてもらっています。
今回の「滑らない靴下」を継続的に購入して頂ける方法を考えてみました。
なかなか参加できないですが、東莞和僑会メンバーなので投稿します!

  1. 「すべらない靴下」のポイントは「使用者」と「購買者」が分かれている事がポイントだと思います。
    受験生がすべらない靴下を買うと考えると購買機会が限られてしまいます。しかし、両親、祖父母、親戚、友人が「ギフト」として贈ると考えると購買機会はぐっと増えます。特に高齢者に訴求できるように、老人ホームや老人会カラオケサークルや俳句会など高齢者が集まりやすいサークルに絞ってチラシやDMをすれば、販路は広がると思いました。
  2. 靴下全体で継続購入してもらえる付加価値として、最近私は1枚900円の靴下を買った経験があります。ユニクロで買えば三足1000円で買えるこのご時世に1枚900円で買ったのは、ロッククライミングシューズ専用の靴下です。
    素足のように薄く、それでいて縫い目が少なく、汗の吸収性、抗菌性が高い靴下です。ロッククライミング自体は日本ではマイナースポーツですが、世界にはたくさんのプレーヤーがいます。クライミングシューズで有名な企業とタイアップして販売すれば、世界的に自社販売網を持っていなくても、販売しやすいかもしれません。

頭の体操として、こんな方法を考えてみました。

※深センのN様のアイディア
こんにちは。
部外者ですが、宿題をもらいました(笑)
・・・・無料で楽しい話題をいつももらってる引け目もあって(爆)

靴下、くつした、さて自分は靴下をどういう視点で見ているか。

  • 足先と踵の部分が擦り減ってきたらそろそろ何か買うかな。
  • スーツだろうがなんだろうが、オヤジ臭い靴下はイヤだ。
  • 柄は女子にモテル系orウケル系、つまり自分では選ばない。嫁や娘に選ばせる。
  • 夏場は若者風の短いの、冬場は暖かめの。
  • 足が臭い、加齢臭が気になる年頃(笑)

こんなことを考えてみると、『女子が選ぶ、お父さん、お兄ちゃん、弟に、息子に履いてもらいたい靴下』 がキーワードかな。

炭効果で臭い防止みたいな靴下を見たことありましたが、デザインがまったくいけてない。

今回の事例、滑らないということは相手側、つまり靴のインナーへの影響はどうなのだろうか。滑らないということはインナーへの負担が心配。

一方女性陣ではどうだろうか、
男性にもてたい靴下選び、とは思わないだろう。
いかにかわいいか、履き心地がいいか、安っぽい生地はいやだ、そんなところだろうか。
ユニクロのヒートテック靴下・・・・、優れているのにかわいいデザインが揃えられていない。

今回の宿題は 『継続的に購入していただける付加価値』 だ、かわいいだけでは長続きしまい。
やはり機能美を追求したい。

  • 保温性に優れ
  • 生地は薄くても長持ち
  • 相手側の靴の種類を選ばない
  • 加齢臭を抑制できる
  • お客様のデザイン提案に対応できる(デザインオーダーメード)

・・・・過日のシルシルミシルで今は靴下裁縫は自動機なのでデータがあればデザイン対応できると見ている

そんな企画を提案します。

ソーシャルモノ造り分科会のメンバーは,必ず宿題提出などと書いたので誤解をさせてしまったかもしれない(笑)私は、このメールマガジンの読者様全員を、仲間だと思っている。

たかが靴下、それをどうすれば売れるか考える。
良い頭の体操になったのではないかと思う。

お二人に共通している「靴下は使用者本人が買うのではない」と言う指摘は、なるほどと関心した。何度か靴下を自分で購入したことがあるが、出張中・単身赴任のため、やむを得ず自分で購入した。普段は家内が買って来る。と言う事は男性用靴下を選択しているのは、女性が大半を占めていると考えた方が良いかもしれない。

私の場合、衣類もほとんど女性陣が選んでいる。家内、娘だけではない、母親も含まれる。推定年齢88歳の母親でさえ、未だに「かわいい」は重要らしい。靴下にも、女性目線の「かわいい」を入れる事は重要かもしれない。

靴下のデザインは女性がした方が良い。と言うのが結論になろうか(笑)
デザインに関しては「個」への対応がキーワードになると思っている。世界に一つしかない靴下だ。IT技術と、生産の電脳化が出来れば、意外と簡単だろう。

もう一つのお二人の共通点は「機能」だろう。
スポーツへの応用は、クライミングだけではなかろう。ランナーも靴の中が蒸れる対策を必要としている。私は蒸れるのを通り越し、汗で濡れてしまう。これを解決すれば、ランナー市場が手に入る。

これを解決出来れば、受験生市場よりは大きな市場となろう。しかもリピートが期待出来る。受験生市場では、リピートは考え難い。幼稚園のお受験を入れたとしても生涯5回しかない。しかも途中で失敗すれば、残りのリピートはない。受験生の合格不合格は企業にとって神頼みであり、企業が努力しても改善出来る話ではない。

保温に着目すれば、スノボー、スキーにも使える。昔はウールの厚手の靴下を着用したモノだが、最近はブーツのインナーが改善されており、薄手の靴下の方がフィット感は良い。

スポーツへの応用を検討する、と言うのが二番目の結論か。

靴下が滑って困ると言う経験をした事がないが、運動能力が低下している老人には良い機能かもしれない。デイケアセンター、老人ホーム等館内はスリッパ着用となっている所も多い。スリッパを止めて、滑らない靴下着用とする。と言うアイディアを思いついた。

最後の結論は、お年寄り御用達。

大変面白い議論が出来たと思う。こんな所から実ビジネスのアイディアに発展すれば、もっと面白いが、少なくとも頭の体操が出来た。頭も筋肉も、使えば使うほど鍛えられる。またこんな企画を考えてみたい。


このコラムは、2013年10月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第331号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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「滑らない」靴下

受験「滑らない」靴下、本当に滑らない 特殊技術に自信

 【小林正典】受験生に「滑らない」靴下を──。靴下の産地、奈良県大和高田市にあるメーカーが「合格印ソックス」を開発した。単なるだじゃれにあらず。特殊な滑り止めの技術は共同特許申請中。地元の神社で合格祈願してもらった「ほんまもん」だ。

 靴下の滑り止めは従来、足裏部分に外側から樹脂のいぼを付ける手法がほとんど。ただ、長時間歩くと足裏が痛くなることも多い。ポツポツの浮かぶデザインがやぼったい、と若者にも敬遠されがちだった。
 「西垣靴下」では、滑らない素材、ポリウレタンを編み込む新技術を素材メーカーなどと開発。滑らない糸は編み機に引っかかりやすく、編むのが難しいとされてきたが、この技術により靴下の中でも足が泳ぎにくくなった。

 技術を生かすアイデアは若手社員から出た。3月の開発会議で、当時入社1年目の雁野(がんの)ほのかさん(23)が「滑らないといえば受験」と提案。地元の神社「龍王宮」の協力も取り付けた。白と紺のほか、アーガイル柄4色の計6種類。神社名にちなみ、昇り竜の銀色のマークを付けた。
 雁野さんは「私も受験の時は苦労した。靴下は実際に身につけて臨めるので、心強いはず」。関連会社「エコノレッグ」がインターネットを中心にミニ絵馬とセットで販売中だ。限定400足で、価格は1509円(税抜き)。

 奈良県靴下工業協同組合によると、県の2012年の靴下生産量は、全国の約57%を占め、全国トップ。だが1991年のピークからは約4分の1に減った。西垣和俊社長(55)は「海外の製品と価格競争するのではなく、この商品を入り口に、メードイン奈良の靴下の良さを認識してもらいたい」と話した。

(日経新聞電子版より)

 靴下と言えば、既に中国生産を通り越えてベトナムに行ってしまっただろう。コストだけを考えていれば、こうならざるを得ない。製品の付加価値をいかにして高めるか?と言うのが課題になる。

付加価値と言うのは、機能価値の事だけではない。例えば滑らない靴下が、通常品の倍の値段で売れるか?私自身靴下が滑って困ると言う経験をした事がない。滑り止めと言う機能には、倍の価格を支払う付加価値はないだろう。

ファッション性、話題性など機能とは別の所にも付加価値が生まれる。

靴下と言うのは、実に地味な商品だと思う。文字通り足元を支える物であり、靴下が主役になる事はほとんどない。

以前山梨にある機械メーカを訪問したことがある。駅から工場まで乗ったタクシーの運転手さんが、鮮やかな黄色の靴下をはいていた。ファッション的には,常識はずれのひどい選択だ。目的地の工場に到着して分かった。この街を本拠地としている機械メーカの企業色が黄色だったのだ(笑)社屋の外壁が全部黄色だった。

靴下が自己主張する場面と言うのは、極わずかだろう。
そんな気の毒な靴下に機能以外にアイデンティティを与えたのが受験靴下だ。しかし残念ながら、ビジネスとしての規模を持てるかどうかはかなり微妙だ。受験生向けの商品で話題を作り、会社を認知していただく。その後継続的に買っていただける商品を開発する事が必要だ。

さて、靴下と言うコモディティ商品をどうしたら継続的に購入していただける付加価値を持たせることができるだろうか?あなたもぜひ思考訓練をしてみていただきたい。
アイディアはこのメールに返信する形で送っていただきたい。優れたアイディアは、このメールマガジンで紹介したい。

なお、ソーシャルモノ造り分科会のメンバーは率先してアイディアを投稿いただきたい。一人一件ノルマだ(笑)


このコラムは、2013年10月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第330号に掲載した記事を改題・加筆しました。

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アメーバ経営

 偉大な日本人経営者の名前を挙げるとすると、松下幸之助、盛田昭夫,本田宗一郎、稲盛和夫の4人だろう。起業した会社を日本を代表する大企業に育てている。多くの日本人経営者は、自分の「生業」ともいうべき事業の経営で成功しておられる。しかし経営四天王の内最も若い稲盛氏は,セラミック、光学機器,通信事業、航空運輸と全く違う業態の経営を成功させている。

いってみれば、事業技術ばかりではなく経営技術に長けた経営者と言えば良いだろう。日本人にも,企業再生、拡大を請け負う経営のプロがいらっしゃるが、殆どの方が外資系企業出身者だ。

米国では経営のプロが,ソーダ水の次はコンピュータを作る、そんな経営者が普通に活躍している。

稲盛氏は、本業からは離れなかったかも知れないが、どのような業態、業種の経営も対応出来る経営のプロといってよかろう。その秘訣はどこにあるのか、考えてみた。

三田工業や日本航空の再建時に、稲盛氏は「フィロソフィ」と「アメーバ経営」を持って来たと言っている。アメーバ経営とは会社を小さな単位(アメーバ)に分け,アメーバ単位で経営責任を持たせる経営手法だ。日本航空では、路線単位で採算を管理し、不採算路線は廃止または他社との共同運行に切り替える、などの改革を行い一気に業績回復している。

アメーバ経営は、従業員全体の主体性を高める効果がある。パイロット,客席乗務員から整備工まで全ての従業員が,経営者の一員として働くのだ、これで組織が活性化しないはずはない。全従業員が主体性を持ち、活性化すれば業績は改善する。

しかし一方で、アメーバ経営を実現困難とする要因もある。
その一つは、経営に関して素人の従業員に経営を任せること。
もう一つは、アメーバの部分最適になりがちな事。

アメーバ経営のうわべだけを真似しても、上記の様な問題点が浮上し上手く行かないだろう。トヨタのかんばん方式だけを真似しても、かえって生産効率が下がるのと同様だ。

稲盛式アメーバ経営が上手く行く理由を考えてみた。

アメーバ経営のKPIを正確さよりは、公明・公正・公平に基軸をおいて、簡単化する。
そして短期間でKPIのレビューをし,速くPDCAを回す。期単位、月単位のレビューでは、KPIへの影響因子が複雑になる。そのような状況下で正確な経営判断を下すのは、経験のある経営者でも困難だろう。短期間でPDCAを回せば、施策と結果の因果関係が単純になり、経営判断がより簡単になるだろう。

「フィロソフィ」を全従業員に徹底浸透させる事により、部分最適ではなく、全体最適にベクトルを合わせる。

以上の二点を基本として、施作を展開しているのだろうと推測している。


このコラムは、2017年1月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第510号に掲載した記事です。

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アメーバ経営の舞台裏 JAL再生の第一歩は意識改革

 京セラ創業者の稲盛和夫名誉会長が、2010年1月に会社更生法の適用を申請した日本航空(JAL)の経営を引き受け、その後、短期間で高収益企業によみがえらせたことは、すでに、さまざまなメディアで報道されています。私、森田直行(KCCSマネジメントコンサルティング会長)も稲盛さんの補佐役としてJALに乗り込み、副社長として経営改革の一端を担わせていただきました。JALでは当事者も驚くような、すばらしい成果をあげることができたのですが、その原動力は京セラで稲盛さんが長年実践してきた「アメーバ経営」です。私はJAL再生に3年間携わり、「アメーバ経営」により、JALがどんどん変わっていく姿を目の当たりにしてきました。ここでは、JALの経営改革がどのように行われたのかをあらためて振り返りつつ、「アメーバ経営」の要点を紹介します。

(以下略)
全文

(日本経済新聞電子版より)

 日経新聞電子版は有料購読だが、無料登録をすると、1ヶ月10本まで記事を読める。ぜひ参考にしていただきたい。

コラム執筆者の、森田直行氏は鹿児島大学を卒業し、京セラに入社している。稲盛さん直系の弟子と言って良さそうな方だ。

「全員で稼ぐ組織 JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書」森田直行著

稲盛氏はJAL再建に乗り込んだ時に「僕は、航空業界は何も知らない素人です。僕が持ってきたのは2つだけ。1つは、フィロソフィ。もう1つは、部門別採算制度です」と言っている。

「京セラフィロソフィ」稲盛和夫著

「アメーバ経営」稲盛和夫著

稲盛氏は「フィロソフィ経営」を経営幹部ばかりでなく、現場の職員にも説いて回っている。
京セラフィロソフィとは、極論すれば人の心を理解し、人を幸福にする事を目指した経営だ。これは手法と呼べるモノではなくまさに「哲学」だ。私自身も稲盛氏の「京セラフィロソフィ」をiPhoneに入れていつも持ち歩いている(笑)

JALの再建メンバーは「京セラフィロソフィー」に習って「JALフィロソフィー」を制定している。

JAL企業理念
JALフィロソフィー

JALが倒産に至った原因が、親方日の丸意識による官僚組織、コスト意識よりは予算の執行を優先すると言う体質に有った事は想像に難くない。

そこに全社全部門全員に、コスト意識を要求するアメーバ経営を持ち込んだ。JALが倒産する前ならば、この様な改革は不可能だっただろう。チョットした腹痛を訴える患者は、医者の指示に従わない事がまま有る。しかし流血し、今にも死にそうな患者は、助かりたいと言う願いさえ有れば、医者の指示に従うだろう。

JALは稲盛経営哲学を取り入れるタイミングが整っていた。しかしそんなに簡単な事ではない。多くの職員を解雇している。植木社長は、そんな苦悩の折に稲盛氏にこういわれている。

「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり。非情でも大善をなすべきだ」
「大義を背負ったときに、人間は1番強くなれる」

植木社長は稲盛氏にこう聞いている。
「安全が大事なんですか、利益が大事なんですか」
それに対し稲盛氏は「両方だ」ときっぱり答える。
「安全なくして、この会社が存立するわけがない。安全は1番大事なんだ。だけど、その大事な安全を守るためにはお金がかかるだろう?だったら、安全を守るためには、利益も生まないとダメなんだ」

コストと安全、コストと品質がコンフリクトする所に本当の答えはない。アインシュタインが言う様に、問題が発生したレベルでは問題は解決出来ない。問題を解決するためには、問題が発生したレベルより高い所に行かねば駄目だ。

植木社長のコラムも参考にされたい。
稲盛和夫の教え「フィロソフィ」と「部門別採算」

余談だが、植木社長の父上が片岡千恵蔵だと初めて知った。しかも、植木社長は私と同じ歳(笑)


このコラムは、2014年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第372号に掲載した記事です。

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割れ窓理論

 建物の窓ガラスが割れている、壁面や地下鉄の落書き、ゴミのポイ捨てなどがあると、犯罪が増加し治安が悪化するというのが「割れ窓理論」だ。1980年代アメリカ有数の犯罪多発都市ニューヨークの治安回復に、割れ窓理論を取り入れたルドルフ・ジュリアーニ市長が治安回復を果たした事で有名になっている。

それ以前は、犯罪者の人格、性格、環境要因が原因となって犯罪を起こすという「犯罪原因論」や犯罪の機会を減らす事で犯罪を減らそうという「犯罪機会論」が主流であった。
人の性格や人格、貧困などの経済状態を短期間に変えることは困難である。犯罪機会を減らすために警察官のパトロールを増やす、銀行に警備員を置く、などの対策もコストがかかる。

それらに代わり窓ガラスの修繕や路上の清掃などにより犯罪を減らそうとした。その結果5年間で犯罪の認知件数は殺人が67.5%、強盗が54.2%、婦女暴行が27.4%減少し、治安が回復した。コミュニティの縄張り意識、当事者意識などにより住民が街の秩序を高めた結果、犯罪を抑止出来たと考えられている。

10年ほど前に指導していた日系工場では、従業員が製品を不正に持ち出さないように、生産ラインの出入り口に常時保安係がいて、出入りする従業員の身体チェックをしていた。
別の工場は、廃品回収業者とグルになり、梱包材料に製品や部材を混入させて廃棄することを心配し、保安係が立ち会って検査していた。

いずれも、人は悪さをするという「犯罪原因論」に基づき、監視・管理を強化する「犯罪機会論」で対応していたと言えるだろう。

では工場にとって「割れ窓理論」とは5Sであると考えてみてはどうだろう。
整理・整頓・清掃が整っていれば、何がどこにいくつあるか明確となる。上記のような不正を働くことは難しい。従業員の躾が徹底していれば、不正を働こうという気持ちにならないだろう。


このコラムは、2019年1月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第774号に掲載した記事です。

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意識

 「品質意識を高める」「安全意識を高める」こんなスローガンや講話を多用していないだろうか?

確かに意識が低い状態で仕事をしていれば、不良や事故が発生する。しかし「品質意識を高めろ」「安全意識を高めろ」と言えば従業員全員の意識が高まるだろうか?
「意識を高めろ」言われた方は何をすれば良いか判断できるだろうか?

意識が高まっている状態が可視化できなければ、「意識を高めろ」と指示した側も意識が高まっているかどうか判断できない。

意識が高まっている状態ではどの様な行動をとるのか?

例えば、品質意識が高まっている作業員は、設備の点検をもれなくしている、工程内で発生した不良の報告が早い、などの行動をとる。安全意識が高まっていれば、安全防具の着用が徹底している、危険箇所の点検に漏れがない、などの行動をとる。

この様に意識が高い行動、意識が低い行動を定義して、それらの行動が行われているか、行われていないかで意識のレベルを評価する。

この様な仕組みを作っておけば「意識を高めろ」という抽象的な指示をせずに具体的な行動を指示できるはずだ。

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このコラムは、2019年1月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第773号に掲載した記事です。

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