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RoHS

欧州指令RoHSが7月1日から実施されています.
欧州に輸入される製品に禁止物質が入っていると,即回収をしなければならなくなります.
以前日本の大手電気メーカが欧州に輸出した製品から,カドミュウムが検出され対象製品を全数回収したことがあります.それ以来このメーカが全世界のリーディングカンパニーとして,RoHS対応を進めてきました.
日本のメーカは世界の中でも対応が一番進んでいたのではないでしょうか.大手メーカでは2005年にはもう対応がほとんど済んででいました.
先ほどの例にあるように,禁止物質が見つかると回収騒ぎとなり,中小企業などは一発で倒産してしまいます.
台湾のメーカなどを見ていると,ぎりぎりまで非RoHSの製品を生産・出荷しており,部品の混入など非常に気を使いました.例えばねじ(メッキに六価クロムが入っていることがあります)の一本も混入できない状態です.
ほとんどのメーカは,部品・材料を購入して組み立てるだけなので,自工程では禁止物質を使う必要はないわけです.
このようなメーカには次のように指導しています.

  • 源流管理
  •   グリーンチェーンマネジメントと言う呼び名をつけてみました.部品メーカ,さらにその先の材料メーカにまで指導管理が必要です.

  • 識別管理
  •   倉庫・工程全ての場所で識別がきっちりできていること.不良品の修理ベンチなどが盲点になります.

  • トレーサビリティ管理
  •   万が一の時のために,全ての部品・材料のトレーサビリティを取っておかないと,回収になった場合対象範囲が絞り込めません.
    この三つをきっちり抑え一滴の水も漏れない管理をする必要があります.
    AQLなどと言う生易しい管理では対応できません.
    ロットごとに製品の抜き取りをして成分分析を行う?これでは間に合いません.だから源流管理が必要なのです.
    ところで,中国の生産委託工場,部品メーカに対して,どのような指導をしておられますか?
    化学物質の名前など,英語でもなかなか言えないのに中国語ではもっと辛いですよね.辞書にも出ていない.
    そんな現場で苦労をされている方のために,RoHS使用禁止物質の日・英・中の対語訳のリストを作ってみました.
    このリストで英語,中国語でコミュニケーションができます.中国語は発音がむつかしいですが,漢字を書けば伝わりますから.
    メールをいただければ,折り返しメールに添付してPDSファイルを送ります.
    無料です.
    メールアドレスは,ここをクリックして見て下さい.
    メールの件名に【RoHS】と書いて送ってください.

    なぜ5Sが維持できないのか

    5Sはもともと日本発の品質改善手法ですが、中国の工場でもそのまま通じます。
    整理・整頓・清掃・清潔・躾がみなSで始まるので5Sと呼んでいます。
    当然中国語で発音するとSで始まるわけではありませんが、そのまま日本の5Sを輸入しています。
    しかし本当の考え方を理解していないので、うわべだけの5Sしかできていません。これは本家の日本の工場でもきちんと推進できているところは少ないと思います。
    明日はお客様が来られるので5Sをしておくように。
    これではお客様が来られたときだけきれいになっているが長続きしません。なぜでしょうか。
    本来の5Sの意味を考えて見ましょう。
    整理:
    必要な物と不必要な物を区別し不必要な物は捨てる。
    整頓:
    決められた場所に、決められた量だけ表示をして置く。
    清掃:
     職場、設備をぴかぴかにしておく。
    清潔:
    整理・整頓・清掃が維持できるように仕組みを作る。
    躾:
    全員が決まりを守り実行するよう心を養う。
    これらの本当の意味を理解していないので、5Sが継続できないのです。特に清潔は本来の言葉以上の意味を持たせています。ここがきちんと理解できていないので5Sが継続できないのです。

    5S 整理

    整理の本来の意味は必要な物と不必要な物を区別して、不必要な物を捨てることです。この「捨てる」を行うことがなかなかできない。
    お客様が来られるので、綺麗にしておこう。と言うことでいらないものは一時的にどこかに置いておく(隠しておく)。
    これでは一時的にきれいに見えるだけで問題は解決していません。すぐに元の木阿弥になってしまう。
    このような状態では、
     *作業スペースがどんどん狭くなる。
     *物をあちらにやったり、こちらにやったり無駄な
      運搬がどんどん増える。
     *もっとひどくなると倉庫を借りるようになる。
    このように無駄な経費・作業がどんどん増えます。無駄な場所が必要になり、稼動効率が落ちる。作業スペースが確保できないので品質にも影響を与えます。
    物を、使える物、使えない物、使わない物に分けて使える物以外を捨ててしまうのです。
    捨ててしまうと言うことがなかなかできない。勇気が要ります。
    5Sのしっかりできている工場に行くと、要らない物はきちんと表示(品名、数量、処理方法、期日)をして目立つところに置いてあります。

    5S 整頓

    整頓とは
     決められた物を
     決められた場所に
     決められた量だけ
    置いておく事です。そしてきちんと表示をして見えるようにしておくことです。一種の標準化です。
    作業をするときの動作を分解してみると、
     工具・材料を探して取り上げる。
     作業をする。
     工具・材料を元に戻す。
    となります。
    整頓がきちんとできていると、探す時間が少なくなります。誰でもすぐに作業ができるようになります。
    きちんと並べておくだけではないのです。使いやすいように配置しておく。
    例えば事務室の机を見てみましょう。
    電話を左側に置いておくのは受話器を左手で取って、必要があれば右手でメモをとるためです。
    右手で受話器を取ると、メモをとるときに受話器を持ち替える無駄な動作が出ます。
    また右側に電話機が置いてあると左手で受話器を取る動作に無駄が出ます。
    作業をよく観察することにより本当の整頓ができます。
    決められた量だけ置く。こうすることにより、材料の補給タイミングが目に見えるようになります。
    きちんと表示をして置く。作業開始前に必要な工具が揃っていることが一目瞭然になります。
    例えばねじを5本締める工程があったとします。作業前にねじを5本取り置く。こうすることにより、ねじの締め忘れ、ねじの製品内への混入が防げます。

    5S 清掃

    清掃とは読んでそのままの意味です。
    綺麗にしておく。でも5Sの清掃はそれだけの意味ではありません。
    清掃は、心の準備。清掃は予防保全なのです。
    朝仕事を始める前に、清掃をする。これで心の準備ができます。
    仕事が終わったら清掃をする。これで今日の仕事の点検ができます。
    設備をぴかぴかになるまできれいにしておく。これで設備の不調をいち早く知ることができます。
    東京デズニーランドでは、清掃係が毎日ベンチを拭き掃除するそうです。雨の日もです。雨の日は誰も屋外に置かれたベンチには座りません。それでもきちんと拭き掃除をする。それはベンチを綺麗にしておくためだけではないのです。拭き掃除をすることにより、ベンチにがたがないか、釘などが出ていないか調べているのです。
    工場も同じです。
    掃除をきちんとしておけば、ねじが作業台や床に落ちているのがすぐに見つかります。ねじが落ちていると言うことは、締め忘れをした可能性があるわけです。いつも床にねじが落ちているような工場では、このような不良は見逃してしまう可能性が高いのです。
    機械がいつも油で汚れていれば、ちょっとした油の漏れは見つかりません。早く見つけていれば、簡単な修理で済むのに、発見が遅れると大修理が必要になり生産が継続できなくなる可能性もあります。
    全ての仕事は清掃で始まり清掃で終わるのです。

    5S 清潔

    5Sの清潔は国語辞典に出ている意味とはちょっと違います。整理・整頓・清掃が維持できる仕組みを作る、と言う意味です。言い換えると予防整理・予防整頓・予防清掃なのです。
    なぜ整理をしなければいけないのでしょうか、使わない物、使えない物があるからです。ならば使わない物を買わない。使えない物を作らない。と言う仕組みを作ればよいのです。
    例えば工程改善をして今まで1時間に100個しか作れなかったものが110個できるようになりました。でも今までどおり1時間かけて110個作ってはだめなのです。使わない10個が余ってしまいます。これは後で整理をしなければいけなくなる。
    不良を見込んで余分に生産投入する。生産を順調にする為に必要なことのように見えますが、これもだめです。順調な生産の陰に隠れて、ずっと不良を作り続ける。改善のチャンスを見逃してしまいます。この不良品も後で整理をしなければなりません。
    なぜ整頓をしなければならないのでしょうか。使ったものを元の場所に戻さないからです。使った後自動的に元の場所に戻る。と言う仕組みを作ればよいのです。
    昔の八百屋さんは天井からゴムで笊がつるしてあり、この中に釣銭用のお金が入っていました。釣銭のありかは一目瞭然。釣銭を取り出したら、手を離すだけで元の位置に戻ります。
    なぜ清掃をしなければならないのでしょうか。ごみが出る、汚れるからです。ごみを出さない、汚さない。と言う仕組みを作ればよいのです。
    過剰な包装はごみになります。輸送方法を改善して包装を不要にする。
    例えばスーパーマーケットの商品移動用の台車の下にモップをつけておく。こうすると商品の補充陳列の時に自動的に床の拭き掃除ができてしまいます。

    5S 躾

    躾。これは読んでそのままの意味です。
    5Sの標語を貼り出し、ルールも作る。清潔の仕組みも作る。でもこれだけでは不足です。最終的にこれらのルールを守り実行するのは人だからです。
    デズニーランドはごみひとつ落ちていない。ある人が清掃作業員は何人いるかたずねたところ、5000人と言われたそうです。500人の聞き違いだろうと思ったのですが、これは従業員全員がごみを見つけたらすぐに片つける、と言う意味です。
    只教えただけではここまではできません。従業員に自分達の仕事に対する誇りを植え付けることが重要だと思っています。
    5Sの意味を会議室で説明するだけでは不足です。現場でどんどん指導をする。
    会社のトップが本気であることを示す。これがきちんとできなければ、只のお題目になってしまいます。会社のトップが5Sの効果を信じて、率先して取り組まないといけません。5Sは品質改善の基本なのです。

    中小企業卓越品質国際論壇

    11月3日に2005中小企業卓越品質国際論壇にて講演をしてきました。このフォーラムは主催:台湾経済部中小企業庁、開催:中国生産力中心で台湾高雄市にて開催されました。
    私は「企業文化をコアコンピタンスにして経営革新を」というタイトルで講演をさせていただきました。
    130名ほどの聴講者がありましたが、サービス業・流通業の参加者が多いと聞いて前日に急遽話の内容を調整しました。
    聴講者のアンケート結果を見せていただきましたが、1人だけ「普通」でその他の方は「非常満足」「満足」でした。従って99%以上の方にの方に満足いただいたようです。わざわざ台湾高雄まで出かけて恥をかかなくて済みました(笑)
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    講演の後に中国生産力中心の林協理からクリスタルの楯をいただきました。

    Image
    これがいただいた楯です。

    トランス業者の指導(その2)

    トランス業者の指導の続きです。
    前回は半田ボールの話をしましたが、今回は線屑がコイルに巻き込まれていた不良について、どのように品質とコストを同時に改善する指導をしたかお話します。
    トランスの不良と言うのは電源メーカにとっては致命的故障です。電源の特性に重要な影響を持っている。不良が絶縁不良(安全故障)につながる可能性がある。
    したがってAQLで受け入れ検査をしていますが、1個でも不良があっては困るわけです。
    抜き取り検査では100%良品(少なくとも絶縁不良ゼロ)を保証することはできません。業者さんの工程が100%良品を保証できる工程になっていることを確認しないといけません。
    今回のような線屑がコイルに巻き込まれているような不良は容易に絶縁不良につながるので、1個でも発生を許してはいけません。
    この業者さんの工場は見かけは比較的きれいに整理整頓ができている工場でした。
    しかし巻き線工程の作業台を良く見ると、そこここに線屑が散らかっています。品証担当の説明によると、巻き線工程ではワイヤを切らないから線屑は発生しないはずだと言います。しかし現実に線屑がある。
    作業台のうえにある線屑はトランスの絶縁テープの粘着部分に付着してコイルに巻き込まれる可能性があります。これを見逃してはいけません。
    ここの工程は1次巻き線、2次巻き線、1次巻き線と一層ずつ一人の作業者がまいて、最後にリードにからげたワイヤをカットすると言う4人一組のラインになっています。このワイヤカットの工程で発生した線屑が飛び散ったり、半完成品を入れているトレーに入って巻き線工程に散らかっているわけです。
    ワイヤカット工程を巻き線工程からはなれたところにおけば、線屑混入の危険性は減らせます。幸いなことにこの4人の工程は、巻き線工程が遅いため、ワイヤカットの工程が閑です。巻き線工程2組に対してワイヤカットを1にしてワイヤカット工程を離れた場所におけば、作業者は1人減らせる上に線屑混入の危険性も減ります。
    すなわち品質をよくして、コストも安くできるわけです。
    またトレーに入ってくる線屑は、空いたトレーをひっくり返しておく習慣をつけてやれば、うんと減らせます。これはコストをかけずに品質が向上します。
    このような観点で作業現場を良く見てゆくと、不良を作りこまない工程が出来上がります。

    トランス業者の指導(その1)

    先日受け入れの抜き取り検査で、トランスに半田ボールが付いている、巻き線の中に線屑が入っているのが見える、などという不良が見つかったのでロットアウトの処置をしました。
    しかしトランスの業者さんは逆切れして、それなら納入しないと言い出しました。
    困ったものですが、台湾系の部品業者さんは値上げ交渉(または値下げ交渉防止)の為にしばしばこの手を使ってきます。またいつものことだと取り合いませんでした。
    しかし購買担当の経理、工場長からいっせいにクレームが来ました。曰く、品質とコストのバランスを考えないといけない。受け入れ品質基準を緩めるべきだと言うのです。
    私からは品質とコストのトレードオフが発生するような状況を作ってはいけない、品質とコストは同時に改善できる、と主張しました。残念ながら私の中国語の問題か、相手の考え方の問題かわかりませんが、理解していただけませんでした。
    ならばと即そのトランス業者さんの工場に出向き、現場指導をしました。
    彼らの言い分は、半田ボールを除去するのにたくさんの工数がかかる、今の納入価格では耐えられない、と言うものです。
    こういう考え方だから、品質とコストのトレードオフになるのです。
    現場では、半田ボールを除去する努力をするのではなく、半田ボールが発生しないように工夫しましょう、と指導をしました。
    現場を見ると案の定、半田ボール発生の影響因子に対し何も管理していません。フラックスの濃度、吸湿などどのように管理するのか一つ一つ指導をしました。
    このようにして半田ボールの発生を抑えることができれば、半田ボール除去の作業員を減らすことができます。また半田ボール除去の為のツールも一工夫すると効率よく半田ボールが除去できます。(彼らは歯ブラシで一生懸命磨いていました)
    結果として品質とコストは同時に改善できるわけです。