月別アーカイブ: 2020年1月

ナゼ・ナゼ中国

 本日のテーマ「特殊工程の品質評価」で「ナゼ・ナゼ5回」を少しお話したが,中国にいるとナゼを連発することが多い.分からないことだらけだ.

私が住んでいる近所には夜になると露天商がたくさん集まってくるエリアがある.洋服,靴,靴下,巨大なぬいぐるみ,ボールペン,財布,髭剃りの刃などありとあらゆるものを売っている.

当然これらのものを売っている人たちは営業許可を持たず,もぐりの営業だ.しばしば公安が来て取り締まっている.

時々露天商の人たちが,商品を袋やダンボールに入れたままずらりと腰を下ろして並んでいるのを見かける.まるで田舎に帰る人が大きな荷物を持ってバスターミナルでバスを待っているようだ.周りを見渡すと,案の定公安の係官が数人いる.

露天商たちは公安に見つかり,身分証明書を取り上げられしょっ引かれるため公安の収容車を待っている,と思っていた.

しかしどうも様子がおかしい.実は露天商たちは公安が引き上げるのを待っているのだ.公安がいなくなると,露天商たちは一斉に商品を並べ始める.多分公安係官は、彼らが露天商であることはわかっているのだろう。

まだナゼがある.
このようにして公安と一緒に露天商が所在無げに腰を下ろしているエリアからほんの数十メートルはなれたところでは,堂々と店開きしている露天商がいる.

公安の係官は,決められた勤務時間中に決まられた範囲で違法露天商が営業をしていなければそれで仕事を達成したと言うわけなのだろうか?

中国には「上に政策あれば,下に対策あり」とよく言うが,「上」も「下」の事情をよく理解し,政策を柔軟に運用していると言うことなのだろうか?
中国のナゼは奥が深い.

このメールマガジン配信後に、読者様からコメントをいただいた。

  • T様のコメント
    露天商の営業許可証取り締まりは、普通には「工商行政管理局」(通称、工商局)です。
  • I様のコメント
    露天商がいる場所はどこか、その場所の管理者は誰か、その場所における中国人民と管理者との関係、そして法律と一般人民との関係はどういうものか等を考えれば、この謎の現象の答えがでると思います。

公安と工商局を間違えていたようです.係官の制服は似ていますが,胸のマークが違っています.T様ご指摘ありがとうございます.
I様は中国人のモノの考え方を,内関係と外関係に分けて説明するユニークな視点を持っておられます.


このコラムは、2009年11月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第126号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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駅員が施錠し帰宅、乗客30人駅から出られず

駅員が施錠し帰宅、乗客30人駅から出られず

 福島県石川町のJR水郡線磐城石川駅で6日午後8時半ごろ、駅員(53)が過って駅舎出入り口のドアを施錠し帰宅したため、
乗客約30人が15分間、駅構内から出られなくなるトラブルがあった。

 JR東日本によると、郡山発磐城石川行き上り普通列車が終点の同駅に到着し、乗客が駅から出ようとした際、2カ所のドアが閉まっていたという。
乗客が運転士に「駅から出られない」と状況を説明し、運転士が案内した関係者出入り口から外に出た。

 同駅は駅員1人が日勤のみの勤務となっており、午後7時半に帰宅する際にはドアの施錠はしないことになっている。JRによると、駅員は考え事を
していて鍵をかけてしまったと話しているという。

(asahi.comより)

 当事者の方には申し訳ないが,なんとも間抜けなトラブルである.
しかしこの手の「うっかりミス」に再発防止対策を実施しようとすると結構難しいものだ.

この場合あなたならば,どのような再発防止対策を実施されるだろうか.

作業員の「うっかりミス」を流出させてしまった部品メーカから,「作業員に注意しました」「作業員に再教育をしました」こんな再発対策書を受け取ったことはないだろうか?
私は「作業員を配置換えしました」「作業員を解雇しました」などという対策まで見たことがある.
「ついうっかり」が発生しなくする,または流出しないようにする対策が必要だ.

例えば,駅員の帰宅を最終列車が到着した後にする,という対策は道理にかなっているように思える.しかしこれでは再発防止対策にコストがかかってしまう.

このトラブルに対しあなたはどのような再発防止対策を検討されるだろうか.
こんな対策はいかがだろう.

  1. 駅員は関係者出入り口に施錠し退勤する.駅舎出入り口には施錠をしない.
  2. 駅員は施錠をしないで退勤する.最終列車の運転手または車掌が駅舎出入り口を施錠する.

対策1と2の組み合わせもありだ.

今回のトラブルは間違って施錠をしてしまったという「うっかりミス」だが,施錠を忘れるという「うっかりミス」もありえる.
こちらにもきちんと対策を打っておくのが,「水平展開」または「未然防止」となる.


このコラムは、2009年11月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第126号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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特殊工程の品質評価

 作業品質を妥当なコストで検査できない工程を「特殊工程」と呼んでいる.

例えば,半田付け作業はその品質を保証しようとすると半田結合点の結合強度を検査しなくてはいけない.これでは破壊検査になってしまい,生産したものが出荷できなくなってしまう.そのため通常は目視検査で半田フィレットの形状,表面光沢などの「代用特性」で検査している.

このような工程が「特殊工程」だ.
では特殊工程の品質保証をどうすれば良いのか.

作業者の技能で品質を保証する.そのため特殊工程作業に従事する作業者は技能訓練を受けた有資格者であることで作業品質を保証している.
その品質保証の記録が,教育訓練記録となる.また使用した治工具の条件・点検記録も品質保証の記録である.

ある工場で部品Aと部品Bを貼り合せる作業があった.
貼り合わせが正しく行われたかどうかは、引き剥がし強度を測定しなければならない。従って、この作業も「特殊工程」に該当する.貼り合せ作業品質の代用特性として部品A,Bのギャップを外観検査で目視検査していた.
貼り合せ作業は治具化をして,作業者は操作スイッチを押すだけ.
従って作業者のばらつきは作業品質には影響しないと考えてよい.
この場合作業者に特殊工程作業者としての教育訓練,資格認定は必要ない.(目視検査の検査員資格は必要だが)

重要となるのは治具の加工精度・能力だ.
この工場では,始業点検で加工治具の貼り合せ押し圧と,押し付けの均一性を感圧紙により検査・記録していた.
品質保証ストーリィとしては問題はないのだが,目視検査で貼り付け不良が多発している.

そこで貼り合せ治具の始業点検記録を見せてもらうと,感圧紙検査の結果が均一になっていない.
始業点検で押しつけの不均一を発見すると、その都度テープを貼って調整していた,と言うことが分かった.しかし均一に押せていない不具合に対して原因対策がされていない。押し付け不均一を発見すると、テープを貼り付けると言う「対処」が行われているだけだ。

「ナゼ・ナゼ5回」とよく言うが,ここでは「ナゼ」を発する前に始業点検を合格させることに集中してしまっていた.
現場のエンジニアに,作業方法と共に作業の目的・意義をきちんと指導しておくことが重要だ.


このコラムは、2009年11月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第126号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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君子は自責で考え、小人は他責で考える

yuē:“jūnqiúzhūxiǎorénqiúzhūrén。”

《论语》卫灵公第十五-21

素読文:
わく:“くんこれおのれもとめ、しょうじんこれひともとむ。”

解釈:
君子は何事も自責で考え、小人は何事も他責で考える。
自責で考えるから解決方法が見つかる。他責で考えれば解決方法はなく、己の不運を嘆くだけとなる。

例えば会社の経営がうまくゆかないのは不景気のせい(他責)だと考える経営者(小人)は、自分では景気を改善することはできず、不景気を呪うのみである。
会社の経営がうまくいかないのは、自分の経営方法が悪いから(自責)だと考える経営者(君子)は、経営方法を改善する努力により経営を立て直すことができる。

劣勢ノキア「足場は炎」 打倒アップル、グーグルと火花

劣勢ノキア「足場は炎」 打倒アップル、グーグルと火花

 ますますパソコンに近づくスマートフォン(多機能携帯電話)で米アップルの成功に続くのは、人気の基本ソフトを持つ若い米グーグルか、古兵のノキア(フィンランド)・米マイクロソフト連合か。バルセロナで開催中の世界最大の携帯電話見本市で火花が飛んだ。

(asashi.comより)

 この記事の中で,グーグルの幹部がツイッターで「七面鳥が2羽集まってもワシにはなれない」と発言していることを伝えていた.当然ワシ(イーグル)は,グーグルの事を指している.

グーグル幹部の発言は,グーグル自身は携帯電話を発売したものの,早々に撤退していると言う事実を無視したものだ.

グーグルも1羽で戦っている訳ではない.その点をとりあえず横に置くことにする.
もちろんグーグル対ノキア・MS連合を考えた時,ノキア・MS連合が弱者と言う訳ではないだろう.むしろ後発のグーグルの方が弱者と言ってよい.再びこの点も横に置いて,文字通りワシ対七面鳥の戦いと言う比喩で弱者の戦略を考えてみたい.

さすがに,七面鳥がワシに空中戦で勝利することは,物理的に不可能だ.
ではワシ対ハヤブサの戦いであったらどうだろうか.
2羽のハヤブサは,子供を生んで戦力とすることができる.ハヤブサは一度に3~4個産卵をする.
1羽のワシに対し,5羽のハヤブサファミリィが戦いに挑んだら,ハヤブサ軍が勝利するだろう.

志を同じくする中小企業連合が,大企業に勝利する機会はいくらでもある.

では飛べない七面鳥には勝機がないのだろうか?
七面鳥は一度に8~15個産卵する.10羽の七面鳥ファミリィがワシに地上戦を挑んだら,七面鳥に勝機があるだろう.

つまり,ワシが不得意な土俵で戦うと言うことだ.

しかしワシが「飛ばない」と言うルールを守って,地上で戦うことを期待することはできない.「フェアプレイ」と言うルールはこの戦いには存在しない.
フェアプライのないルールに従って戦えば,必ず七面鳥は負ける.ワシが飛べないルールで戦わねば,七面鳥は勝てない。

中小企業が大企業に勝つには,大企業が勝てないルールを見つける,または大企業が勝てないルールを作り出すことが必要だ.
この「ルール」は,「マーケット」「商品」と言う言葉に置き換えることができる.


このコラムは、2011年2月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第193号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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CT写真の表裏見誤り、手術で頭に穴 名古屋の市立病院

CT写真の表裏見誤り、手術で頭に穴 名古屋の市立病院

 名古屋市立東部医療センター東市民病院(名古屋市千種区)で昨年10月、患者のコンピューター断層撮影(CT)写真の表裏を見誤って、本来とは反対の左側の頭部に穴を開ける手術をしていたことが18日、病院への取材で分かった。病院は患者に謝罪し、同市千種保健所に届け出た。

 病院の説明によると、患者は80代の男性。慢性硬膜下血腫のため、市内の他病院から紹介されて入院した。側頭部の左右両側に血腫があり、脳神経外科の主治医が緊急で手術が必要と判断。入院翌日に手術をした際、前の病院で撮影したCT写真の表裏を見誤り、右側頭部の血腫を取り除くはずが、左側頭部の骨に直径1センチの穴を開けた。左側の血腫が小さかったために誤りに気付き、すぐに穴を閉じ、右側を手術した。患者に手術による後遺症はないといい、すでに退院した。

 同病院管理部は「あってはならないミスで大変申し訳ない。緊急の場合でも、院内の電子カルテに写真を取り込んだ上で、手術室の全員で確認するなどの再発防止策を徹底した」と話している。

(asahi.comより)

 初歩的な医療ミスだと思う.左右非対称な部位ならば,間違うこともなかろう.脳などは左右対称なので,写真の裏表を間違えれば,このような事故につながる.

紙焼きではなくフィルムなので,裏表どちらからでも見えてしまう.医療関係には詳しくないが,当然間違いがないようにフィルムには裏表が分かるようなマークが入っていると推測する.

このような失敗を「ポカミス」と言う.

電子カルテに取り込んでディスプレイで見れば,CT写真を裏から見てしまうことはないだろう.しかし電子カルテに取り込む時に裏表を間違えてスキャンしてしまえば,同じミスが発生する.

従ってこの再発防止対策は,ミスが発生する場所を他に移しただけと言える.

手術には,執刀助手,麻酔医,看護師など複数のスタッフが参加するはずだ.これらの人達が,CT写真を見ながら,事前ミーティングをしていれば,クロスチェックが働き,この様なミスは発生しないだろう.

私の偏見かもしれないが,医療現場というのは主治医・執刀医の独断が通ってしまう様に思える.
高度な専門家ほどこのような状況に陥り,ごく初歩的なミスを犯してしまう事があるのではないだろうか.

リーダであればこそ,部下のミスを叱る前に,自分もミスを犯す可能性があることを認め,部下の意見に耳を傾ける必要がある.これは自分の権威を落とすことにはならない.意見を述べさせることは,部下育成には必要なことだ.

そのためには日頃から「ホウレンソウ」環境を整えておかねばならない.
部下からの意見が上がって来なくなれば,「裸の王様」と同じだ.
部下が上司の意見に異を唱えない環境では「ホウレンソウ」は育たない.

ホウレン草が「酸性土壌」では育たないのと同様に,
ホウレンソウも「賛成土壌」では育たない.


このコラムは、2011年1月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第189号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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周辺技術の重要性

 メルマガ187号の今週の雑感で,中国人経営者は機を見るに敏で,儲かると思うとすぐに工場を作ってしまう,という事例を紹介させていただいた.

メルマガ187号:LED灯工場訪問

その中国人経営者が作っているLED灯は,LEDチップは買ってくればOKだ.
DC電源回路と,ランプの設計が出来れば,生産できるような気になる.
しかしそのような設計技術だけでは,モノ造りは出来ない.

まず,品質を作りこむモノ造りの技術が必要だ.
更に製品の寿命を保証する信頼性技術.DC電源の設計にも,部品の技術,故障を発生させない予防的設計技術.更に製品を安全に輸送するための,梱包設計技術.
などなど必要な周辺技術が,思いつくままにいくつも上げられる.

当然このような周辺技術だけでは,製品設計は出来ない.製品の機能実現のためのキーとなる設計技術が必要だ.しかし,お客様に安心・満足していただくためには,この様な周辺技術は欠かせない.

今生産している製品がどんなに簡単な部品であっても,その周辺技術が幾つもあるはずだ.華やかな技術ではないかもしれない.しかしそのような地味な技術をしっかり磨くことで,お客様の安心・満足を得られる.

そういう周辺にしっかり目をやる気配りと,その気配りを製品に反映する技術を差別化要因にすることが出来るはずだ.


このコラムは、2011年1月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第189号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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