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プロフェッショナルとは

ニュースから:コーヒーに浮かぶ妙技 国内初の女性王者、世界へ挑戦

 エスプレッソコーヒーにミルクを注ぎ、ハートやリーフ(葉)などの絵柄を
描く「ラテアート」。ロンドンで6月開かれるその世界大会に、国内初の女性
チャンピオンになった滋賀県近江八幡市、クラブハリエ日牟禮(ひむれ)カフェの村山春奈さん(25)が出場する。繊細な手技と敏感な味覚で、世界に挑む。

 村山さんは、コーヒーを入れるプロの職人「バリスタ」だ。豆から最上の味を引き出すため、産地や焙煎(ばいせん)具合、抽出方法など、広い知識と卓越した技術が必要とされる。お店で接客を担当していたが、2006年に新しいエスプレッソマシンを使いこなすバリスタが必要となり、「やってみたい」と手を挙げた。欠かせないのが、お客さんを目で楽しませるラテアートだ。

 コーヒーに泡立てたミルクを注ぎ、模様を作る。カップまでの高さや揺らし方などで浮かび上がる模様が微妙に違う。「実は絵が苦手」という村山さんだが、見よう見まねでぐんぐん上達。同僚は「手先が器用」と感心するが、マネジャーの玉村亮さん(33)は「仕事を終えてから何時間も練習している」と言う。

 玉村さんが驚いたのは、「実は紅茶党」という村山さんの味覚のセンスだ。「喫茶店でもコーヒーは頼まない」というが、豆の焙煎に応じてひき方を変えると、最もおいしい味を引き出してくる。
(以下略)

(asahi.comより)

 ずいぶん昔のことだが,プロフェッショナルとは何かと言うことを,ソフトウェアエンジニア向けの本で読んだことがある.

プロのすし職人は納豆が嫌いでも「納豆巻き」を完璧に作る.
自分が食べられないものでも,ちゃんとお客様に出せるようにするのが本物のプロフェッショナルだ.

逆に,興味がある(好きな)ソフトウェアのコーディングしかしないのは,「プログラマー」ではなく「アマグラマー」だと書いてあった.
「アマグラマー」と言うのはアマチュアのプログラマーと言う意味だ.

当時ソフトウェアプログラマーが決定的に不足しており,文科系大学卒業生が,いきなりソフト開発部隊に新人配属されたりした.そういうメンバーでも一定の期間の研修を受け,天才的なプログラマーではないにしても,着実なコーディングができるプログラマーになった.
これも一種のプロフェッショナルと言ってよいだろう.

余談だが,私の周りにはロシア語専攻や哲学専攻の女性プログラマーがいた.

もう一つこの記事を読んで思い出したのは,10年ほど前中国のカフェチェーン黎明期のことだ.当時東莞市の郡部にしばしば出張していた.その街に,まともな珈琲を飲ませる店が出来たのだ.名典珈琲と言う名前のその店に,時々通っていた.
ある時若いウェイトレスが,さかんに話しかけてきた.
初めは他愛もない話であったが,その内「名典珈琲の企業文化」をどう思うかなどという質問が,まだ20歳にもなっていないであろう若い女の子の口から出てきて驚いた.
彼女は,珈琲は苦くて飲めないと言っていた.しかし珈琲の味を理解するために毎日少しずつ,ブラックで飲むようにしているそうだ.

紅茶党の村山さんが,バリスタチャンピオンになり世界大会に挑戦する.
ロシア語や哲学を勉強した女性が,ソフトウェアエンジニアになる.
珈琲が飲めない農村出身の女の子が,珈琲の味を理解しようと努力する.

この人たちは,好きだから一生懸命やると言う「アマグラマー」ではない.この人たちのモチベーションを上げるスイッチはどこにあるのだろうか?
モチベーションスイッチの場所が分かれば,あなたの部下もすぐにプロフェッショナルと呼べる人財になるだろう.


このコラムは、2010年6月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第157号に掲載した記事を改題加筆しました。

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信頼

 人や組織との良好な関係は「信頼」だと言っても間違いではなかろう。
上司は部下を信じて任ずる、部下は上司の信任に応えて働く。これが信頼関係だ。同僚間、チームと個人、チーム間、会社と個人、会社同士に信頼関係があれば、そこにいる人々は仕事を通して幸福感を感じることが出来るはずだ。

では「信頼」とは何だろうか?
最近読んだ本にはこう書いてあった。
「信頼」とは「約束」と「実行」の積み重ね。

「モチベーション・リーダーシップ」小笹 芳央(著)
 

人は、相手の言葉や容姿を通して信頼できる人かどうか判断している。しかしそれは入り口であり、本当の信頼ではない。約束したことが実行されることにより、期待が実現する。この繰り返しにより信頼が形成される。

例えば「企業経営は人財育成だ」と言っている経営者に対して、信頼できる人かも知れないと言う期待が発生する。その言葉を、経営者が実際に行動することにより、期待が実現し信頼関係が生まれる。

「約束」は明示的な約束だけではない。日頃の言動から発生する暗黙的な約束も含まれる。例えば上記の経営者に対し、自分も育成対象だと言う期待を持つ。この期待が暗黙的約束になる。約束が実行されなければ、失望が生まれ信頼が崩れる。

人から信頼を得たければ、約束を実行する。自分の心情や信念から発生する暗黙的約束を実行し続ける。相手方にとって顕在化されていない約束を実行すれば、信頼度は高くなるはずだ。


このコラムは、2016年2月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第462号に掲載した記事に加筆しました。

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鵜の夏、歩いてたぐり寄せる 和歌山・有田川

 和歌山県有田市の有田川で1日、室町時代から続く鵜飼(うか)いが始まった。鵜匠(うしょう)が川の中に入って鵜を操る、独特の「徒歩(かち)漁法」。鵜がアユをくわえて川面に現れるたびに、屋形船に乗った約300人の観光客から拍手と歓声が上がった。

 県無形民俗文化財に指定された伝統漁法だが、最盛期に90人いた鵜匠はいま4人。鵜を育て、訓練するのは1年がかりの重労働。生計を立てるのも難しく、後継者はなかなか現れないという。

(asahi.comより)

 私は子供の頃に,父親に連れられ長良川の鵜飼いを見に行ったことがある.長良川の鵜飼いは,鵜匠は船上にいて紐で縛られた鵜を何羽も川に放ち,鮎を鵜呑みにした鵜を船上に引き上げ,獲物を吐き出させる.
何羽もの鵜を紐でコントロールする手綱捌きをする鵜匠の腕は見事なモノだ.しかし鵜匠の本当の力量は,鵜が鮎を獲る様に訓練することだろう.

子供の頃は,単純に鵜の働きに感動したが,大学生なって働くということは,誰かにコントロールされることだと考える様になった.サラリーマンのネクタイが鵜の紐の象徴の様に見え,就職活動に全く興味を持てなかった(笑)多分,全共闘世代のただ中で成長した影響だろう.

人も鵜と同じ様に首に紐を付けられ,働かされている.その紐が目に見えないだけだ,と考えていた.

就職をし,人並みに部下を持つ様になって初めてその考え方が間違っていることに気が付いた.

見えない紐が「給料」であると考えると,会社に対する「忠誠心」と引き換えに給料をもらうことになる.こう考えていると,仕事は金銭を得るための「苦役」になる.

苦役であれば,当然楽しくはない.上司の命令に従って成果を出さなければ,給料がもらえない,給料が上がらないという,ネガティブな動機付けで働くことになる.指示されたとおり仕事をこなすのでは,パフォーマンスは上がらない.

見えない紐が「仕事に対する喜び」だとしたら,どうだろう.
鮎を獲るたびに観客から拍手喝采を得る.
二匹一度に飲み込み鵜匠から褒められる.
鮎を獲るたびに自己成長の喜びを感じる.
鵜がこう感じて喜んで働いていると考えるのはちょっと無理がある(笑)が,人には可能だ.

会社や上司は,仕事に対する喜びや自己成長のチャンスを与えてくれる.「会社への忠誠心」ではなく「自己への忠誠心」が働くことの動機付けとなれば,自ら進んで仕事に取り組むことになる.当然仕事のパフォーマンスは上がる.

上司が持っている手綱は,部下をコントロールするためのモノではなく,部下に動機を与え続けるための,エネルギー補給パイプだ.


このコラムは、2012年6月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第260号に掲載した記事です。

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作業員の評価

 先日、日本人経営者と中国人幹部の作業員評価に関する会議に立ち会った。

日本人経営者は、作業員は「業績評価」より「勤務態度・意欲評価」の割合を高めたいと考えている。
一方中国人幹部は、数値目標を与え、その達成度合いで評価したいと言う。
例えば、標準作業時間で生産出来る数量を目標として、各自の生産良品数で5段階評価する、と言う考え方だ。
この様な評価により、以下のメリットが有ると中国人幹部は考えている。
・評価者ごとのバラツキが少なくなる。
・より公平な評価ができる。
・具体的な目標を与えることにより、達成感を持たせることができる。

その裏には、「協調性」「積極性」「自己成長意欲」と言う評価項目を公明・公平に評価する事が難しいと中国人幹部たちが感じている。当然、作業員全員を自分一人で評価する事は出来ない。普段作業者と一緒に仕事をしている課長、係長が一次評価をする。彼らが、同じレベルで公平に評価出来る様にする自信がないのだろう。
当然評価が不公平だと感じれば、作業員は不満を持ち離職する場合もあり得る。

しかし、数値目標だけを評価基準にしてしまうと、仲間が困っていても自分の仕事を優先する。経営者は多能工化を推進したいと考えているのに、新しい仕事になれば、生産量目標を達成出来ない可能性があるので、多能工研修を拒否する。など経営者が目指す組織とは違う方向性を持った、従業員が高評価を受けることになる。

難しいから「態度・意欲評価」を放棄して、簡単な数値評価をする。その結果経営方針とは違う方向に進んでしまうことになる。
どうすれば「態度・意欲評価」を公平に出来るかを考える方が建設的だ。

例えば「積極性」をそのまま評価しようとするから難しくなる。
まず「積極性が有る行動」「積極性がない行動」を列挙しておく。普段の行動観察により、好ましい行動(プラス得点)と好ましくない行動(マイナス得点)を集計する。このようにしておけば、ある程度客観的な評価が可能となる。
被評価者から評価に関してクレームが有った時に、「こういう行動が有ったので、マイナス評価になった」と説明が出来る様になる。

この様な評価基準を、評価者全員でブレーンストーミングで作っておくと、評価者、被評価者の納得性も高くなるはずだ。


このコラムは、2014年10月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第395号に掲載した記事に加筆したものです。

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仕事の意義

 サイモン・シネックという人のTEDトークを聞いた。
“How great leaders inspire action”で検索すると見つかると思う。

我々が製品やサービスを購入する動機は、そのモノ(製品、サービスを総称して「モノ」と記すことにする)自体(What)を欲しいと思う気持ちばかりではない。そのモノがどのような過程で出来上がったのか(How)、そのモノを作る目的(Why)は何だったのか、ということが購入動機になる。

例えば製品の広告を考えてみたい。

  • 製品の機能・性能・デザインそのものが優れていることを訴求する(What)
  • 製品の優れた機能・性能・デザインを作り込んだ苦労・努力を訴求(How)
  • その製品を販売する目的を訴求(Why)

Whatを強調するよりHowを語った方がより顧客の購買意欲は高まり、更にWhyに共感すれば顧客は友人にも勧めてくれるだろう。

サイモン・シネックは、黒人人権運動の指導者キング牧師を例に、優秀な指導者と並の指導者をこう比較している。
優秀な指導者:I have a Dream.
普通の指導者:I have a Plan.

企業や組織の指導者も同様だ。
計画(What+How)を示さねば組織は動かない。
その計画を達成することの意義・実現したい夢(Why)を共有すれば、メンバーのコミットメントは高まるはずだ。

目標管理がWhatとHowならば、方針管理がWhyだ。
方針と目標はともにあるべきだ。


このコラムは、2017年11月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第584号に掲載した記事です。

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サイモン・シネック

先週のメールマガジン「仕事の意義」でサイモン・シネックのTEDトークをご紹介した。
このコラムにお二人からメッセージをいただいた。

※S様のメッセージ
早速TED動画を見ました。
Why(夢)を語れないばかりに、当社も大きな試練にさらされております。
米国市場に於ける主力製品はアジアOEMメーカーの影響が増々大きくなり、参入障壁も低いことからまさに戦国時代。大手販売店のPBだったブランドにシェアを奪われている状況です。

品質、性能では負けていない自負はあるものの、顧客にそっぽを向かれることはサイモン・シネック氏の言うように、Why(夢)が伝わっていないことがよく分かりました。
販売・宣伝部門にこれをどう伝えるか、考えたいと思います。
意義深く、貴重な情報を提供いただき、ありがとうございました。

※T様のメッセージ
 It was just inspired for me
 on how to proceed with the business performance, thanking
 for your opinion.

お二人のメッセージを読んで大変嬉しく思っている。毎週頭を絞ってコラムを書いている意義を感じることができた(笑)

「Why」を共有した顧客は信者になる。顧客が信者になれば企業は必ず儲かる。
「儲」という字をよく観察していただきたい。分解すると「信者」となる。

与太話はおいて、サイモン・シネック語録をご紹介しておく。

  • TEDで語ったAppleとその他のコンピュータメーカの違い。
    「我々のコンピュータは素晴らしいです。簡単に操作できてデザインも美しいです。」たいていの企業はこう言って売ります。
    でもアップルのような傑出した企業は違います。
    「我々は世界を変えるためにこのコンピュータを作りました。その価値がこのコンピュータにはあると私たちは信じています」
    どうです?興味を惹かれませんでしたか?人々は「何を」売っているかではなく「なぜ」売っているかに興味を持つのです。
  • アメリカの海兵隊では下位の者から食事が配られ上官は最後に配膳されます。
    部下全員に食事が行き渡ってからでなければリーダーは自分の食事をとってはいけないのです。
    最初に自分の食事(利益)をとってしまうリーダーに部下はついていきません。
  • 私利私欲を捨てたリーダーだけが一体感のある強いチームを作ることができるのです。
  • あなたが何をしているかは大した問題ではない。
    なぜあなたがそれをしているかが大事なのだ。
    人々がファンになるのは理由に共感したときだ。
  • キング牧師のほかにも運動家はたくさんいました。
    しかしキング牧師だけが圧倒的な支持をあつめました。具体的にどうすればいいのかなにをすればいいのか、彼は有効なアイディアを出していません。
    ただこう言ったのです。「私には夢があるこんな世界を夢見ている」と。
    「そうしなければならない」では人は動きません。
    「そうしたい」と思ったから動くのです。
    命令されたから従ったわけではありません。
    「信念」を語るリーダーにはみな自分の意思でついていくのです。
  • 傑出した企業に共通しているのは、なぜその事業を行っているかを明確にしている。

私の友人は、中国で工場を立ち上げ毎年業績を上げていた。日本本社からの評価も高い。しかし仕事がむなしく感じたという。彼は仕事の「Why」が明確になっていないからだと気がつき、自分自身の仕事の目的「Why」を明確にすることで、より業績を伸ばした。彼の「Why」は従業員の育成。自分自身の役割を「校長先生」と定義していた。

経営とは、従業員を成長させること。業績はその結果だ。


このコラムは、2017年11月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第587号に掲載した記事です。

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相違点より共通点に着目

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 中国で企業経営をされているほとんどの方は,中国人の考え方がわからないなどの悩みを持たれていると思う.オペレーションを中国人にまかせて,仕事をする訳だから,種々の困難があるだろう.
そのため世の中には,「日中の文化の違い」「中国人の考え方」「中国人管理法」などの書籍が溢れている.

これらの書籍は,中国文化や中国民族性と日本の違いを例を挙げ説明し,どう中国人を管理したら良いかを説いている.
曰く,中国の若者は「反日教育」の影響で,皆反日感情を持っている.
一人っ子政策のため,大事に育てられ,忍耐力や協調性が弱い.
公より私を重視するため,会社より個人を優先する.その結果条件が良ければすぐに転職する.
利己主義が強く,回りに迷惑をかけても気にしない.
などなど上げたらきりがない.

もちろん,中国文化や生活環境を理解することは重要だろう.特に日本の「特殊性」を理解し自覚することが重要だ.

しかし日中の相違点にばかり注目しても,有効な答えは見つからないだろう.
相違点を理解して,「だから駄目なのだ」と分かったとしても,どうすれば良いかと言う答えは見つからない.

反日教育を変えることは我々には不可能だ.
「私より公を重要視する」「忍耐力」「協調性」「利他主義」などは,日本人が持っている「特殊性」だと思っている.それは日本と言う国が「均一性」を前提として成り立っているからだ.
実はこれらの特性は,日本の中でも我々ロートルの常識であり,若い人たちにとっては非常識なのかもしれない.

相違点を探し,違いに着目するよりは,共通点を見つけ,それをマネジメントした方が,ずっと楽で効率的なはずだ.
つまり中国人と日本人の違いに着目するのではなく,人間としての共通点に着目すると言うことだ.

日本でも,中国でも「幸せになりたい」と言う願望は同じだろうし,そのため「自己成長」を目指すことになる.
この共通点をマネジメントすれば,「自己成長」を求心力として.従業員のモチベーションを高めることができるはずだ.

公より私を重視する人たちに,「愛社精神」を説いても,心には響かない.「愛社精神」は古き良き時代の日本的特殊性だ.それよりは「自己成長」と言う共通性でマネジメントをした方が,より効果的だと考えている.


このコラムは、2012年11月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第284号に掲載した記事に加筆したものです。

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TED Talks

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 TEDと言う言葉をお聞きになったことがあるだろうか?
広める価値のあるアイディアを、T(テクノロジー)E(エンターテイメント)D(デザイン)の分野で、世界中の人々がプレゼンテーションをする、という趣旨で活動している人達だ。
年に一度TEDカンファレンスを開催している。
その広める価値のあるアイディアのプレゼンテーションをインターネット上で拡散しているのがTED Talksだ。

先週たまたまPodcastの番組を探していたら、TED Talksの日本語字幕付きの動画を見つけた。その中でアレックス・ラスキーと言う人が「行動科学で電気代が安くなる」と言うテーマで講演している動画を見つけた。彼は米国で、節電を促進する啓蒙活動をしている様だ。

講演の中で面白い事例があったので、皆さんにご紹介したい。

カリフォルニア州サンマルコで行動科学の実験が行われた。
調査を行った大学院生達は、近所の家庭を回り、エアコンを止めて扇風機を使って節電する様に訴えるチラシを配布した。そのチラシは以下の4種類あり、それぞれ同数ずつ配布した。

  1. エアコンを止めて扇風機にすれば1ヶ月で54ドル節約出来る
  2. 環境保護に関するメッセージ
  3. 節電をして善良な市民になろう

1.のチラシは具体的な節約金額も入っており、効果がありそうに思える。
しかしこれら3つのチラシはどれも、全く効果がなかった。

効果があったのは4番目のチラシだけだった。
4番目のチラシにはこう書かれていた。
「調査の結果、ご近所の家庭の77%がエアコンを切って扇風機を回しています」

日本人は個より全体を重視する傾向にある。従ってご近所が皆節電していると分かると、自分もやろうとする。こういう心理や行動は理解出来る。しかし日本人よりはずっと個を大切にする米国人にも、効果があると言うのは意外だった。

余談だが、最近米国の中国駐在大使が辞任して本国に帰国したそうだ。
理由は「家族のため」と公表している。しかし本心は「PM2.5がひどくてもうヤダ」と言う事の様だ(笑)日本人のメンタリティとは随分違っている。

そういう米国人でも「ご近所が……」と言うと行動を起こす、これは驚きだ。
そして、中国人にも、こういうアプローチが有効かもしれないと気が付いた。

好ましい行動を促進するために「周りの人は皆そうしているよ」と動機付けをする。中国人の部下をお持ちの方は、ぜひお試しいただきたい。
バレバレな「皆そうしてる」は逆効果かもしれないが(笑)
ぜひ試してみた結果をお知らせいただきたい。

「皆そうしてる」は、行動心理学では社会的証明と言われており、成果が期待できそうだ、ということを一言付け加えさせて頂く。


このコラムは、2013年11月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第337号に掲載した記事に加筆したものです。

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生産性は朝礼で決まる

 先週は第一回中国華南モノ造り交流会を開催した。
志の高い方々に集まっていただいた。上海から参加いただいた方もあり、交流会の発案者としては、大変うれしかった。

参加された経営者が「生産性は朝礼で決まる」と言っておられた。
私も同感であり、改めて朝礼の効能を実感した。メルマガ読者様にもシェアしたい。

彼はもう7年間も朝礼を毎朝している。全社員が部門別の朝礼に参加する。持ち回りで1分間スピーチをしたり、各部が工夫を凝らして毎朝開催する。

1分間スピーチは、各自が工夫して話をする。
ある者は将来の夢を語り、ある者は今日やるべき仕事を発表する。発表した者は、それを達成しなければ、格好がつかない。努力をすることになる。

笑顔で挨拶訓練も朝礼でやる。
お互いに向かい合って、大きな声で挨拶をしあう。たったこれだけの事だが、馬鹿にしてはいけない。大きな声を出せば、ココロが晴れやかになる。晴れやかなココロは、行動を溌剌とさせる。行動が溌剌となれば、生産性が上がる。

今日一日の仕事の発表をしているので、朝礼後すぐにエンジンがかかる。間接職員の生産性が、目に見えて上がる。

毎朝朝礼をやっていると、徐々にマンネリ化するモノだ。
しかしこの経営者は、朝礼をマンネリ化させず、進化する仕掛けを用意している。定期的に「朝礼大会」を開催している。「朝礼大会」とは各部署が自部署の朝礼を競い合う発表会だ。一番感動する朝礼に賞が与えられる。


このコラムは、2012年6月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第262号に掲載した記事に加筆したものです。

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人の心を計る

 人の心の状態はどう計ったら良いのだろうか?
私は、こういうテーマについて色々考える事が多い。

会社の業績は、従業員の仕事の成果によるモノだ。その成果は、従業員一人ひとりのモチベーションに大きく左右される。従って、どうすれば従業員のモチベーションを高められるかを、考えることになる。考えた結果を試してみる。それがうまくいっているのかどうかを計測し、更に改善する。

そのため、モチベーションの高い低いを計測する事が必要になる。普通の物理量であれば簡単に測定出来る。ノギス、ストップウォッチ、電圧計など測定器具が有る。しかしモチベーションの高低は、物理量とは言い難い。人の心の状態を測定するのはそうは簡単ではない。

最近の脳科学は核磁気共鳴MRIにより「観測・測定」が可能になり、格段に進歩したと聞く。しかし我々が、そんな高価な測定装置を使う事は出来ない。

ではどうすれば良いか。
私はこんなアプローチで考えている。
モチベーションを上げて得たい結果は何か?この結果で計測するのが一番だ。モチベーションを上げた結果、作業効率を上げたいのであれば、作業効率を計測すると言う事だ。

モチベーションとその結果(作業効率)に強い相関が有れば、こういう考え方で良かろう。しかし相関が弱い場合は、モチベーション向上施策と効果の関係が曖昧になる。

例えば、モチベーションと離職率の間に相関があるのは確かだろう。しかし相関の強弱は良く分からない。
福利に対する満足度が離職率との相関が強い場合もあり得る。この場合は、モチベーションを測定するよりは満足度を測定しなければならない。

実際には、離職する人の心理にはモチベーションも福利に対する満足度も影響を与えているはずだ。そうは単純に人の心を測定出来ない。

こういう場合は、離職を考えている人はどういう行動をとるか、を考える。例えば、離職を考えている人は職場内でコミュニケーションが少なくなる。と言う傾向が観察されるとすれば、コミュニケーションの量を測定すれば、離職者の予測が出来る様になる。

行動は、物理量で測定可能だ。上述の例で言えば、報告の頻度、同僚や関係者に対するE-mailの回数、分量などで計測可能となる。

つまり人の心の状態は、行動に置き換えれば測定が可能になる。

責任感が有る、リーダシップがある、積極性が有るなど従業員として好ましい状態だが、全て心の状態だ。公平な測定(評価)が難しい。これも全て行動に置き換えることにより、測定することができるはずだ。


このコラムは、2014年5月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第361号に掲載した記事に加筆したものです。

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