タグ別アーカイブ: モチベーション

続・ローパー

 先週の雑感に書いた「ローパー」(ローパフォーマンス従業員)に関するコラムに読者様から以下のメッセージをいただいた。

※T.O様のメッセージ
 今回の雑感「ローパー」についての貴兄のご意見(特に雇用側の義務・責任 に関するご意見)、“したり”とひざを打ちました。2003年から8年余北京の事務所(中国法人)にて知財のアドバイザー(組織内唯一の日本人でした)をし、中国においては知的レベルの高いはずのスタッフや管理職であっても貴兄ご指摘の様な事態があることがわかっていたからです。
尚、いつも読みはじめるのが、このコラム「雑感」です。今後もこのような話題が提起されることを期待しております。

以前メルマガで、マクレガーのX理論、Y理論をご紹介した。中国はX理論に基づく人材マネジメントが多い様に感じる。

つまり人は本来怠け者であり、仕事は嫌い、自ら進んで創造性を発揮したり、責任を取ったりしない。こういう人たちを管理するためには、飴と鞭の管理が必要。と言うのがX理論によるマネジメントだ。
ダニエル・ピンクのモチベーション2.0と同じレベルだ。

好ましい行動を強化するために報酬を与える。
好ましくない行動を抑制するために罰を与える。

実はこのような人材マネジメントは中国企業だけの特徴ではない。中国の日系企業も同様なマネジメントをしている企業が多く有る。

中国人はまじめに働かないから、金で釣る必要が有る。
中国人に規律を守らせるのは罰金が有効。
このようなことを昔から言われ続けており、盲目的に信じ込んだ経営者がX理論マネジメントをしているのだろう。まぁ、中国人経営者が中国人労働者をこのように見ているのだから、日本人経営者もそれを信じてしまうのかも知れない。

ようは経営者が従業員をX型人間と思えば、従業員はX型人間と見える。X型人間として従業員を扱うから、従業員はX型人間になる。それだけの話だろう。(これをピグマリオン効果と言う)

人の可能性を信じそれを引き出す。これが人材マネジメントの基本だと思う。


このコラムは、2016年4月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第470号に掲載した記事に修正・加筆しました。

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モチベーション

 先週末は東莞和僑会の定例会「方針管理・目標管理勉強会」で東莞市黄江鎮の工場に出かけた。2018年の勉強会最終回は来年の経営計画の発表を行った。

午後は一般の参加者も交え会場となった工場を見学した。数ヶ月おきに工場を訪問しているが、そのたびに新たな発見をする素晴らしい工場だ。

今回の訪問では涙が出るほど感動した。

この工場では「気づき提案」制度があり、全従業員から「ここが不便だから直して欲しい」という気づきを上げることができる。提案された案件は、改善チームが必ず検討し、提案を採用するか見送るかを判断し提案者にフィードバックする。多くは作業手順書の誤記の指摘とか、通路の区画線が消えている、などの簡単なものだそうだが、中には予算をつけて本格的な改善活動とする例もあるという。

この制度に昨年は約24万件の提案があったそうだ。従業員500名ほどなので、年間一人平均480件ほどの気づき提案をしていることになる。驚くことに最も多く提案した人は21,000件の提案をしているという。
毎日100件ほど提案していることになる。
最多提案者には報奨金も出るそうだが、大した額ではない。毎日100件も提案を続けるモチベーションはどこになるのか興味を持った。同じ興味を持った人の質問に対し、直接作業員たちと仕事をしている監督職は自分たちのリーダのために気づき提案をたくさん出してくれるのだ、と答えた。

チームリーダーは、業績でチームが評価される。最も生産性の高いチームは3,000元の賞金が出るという。他にも気づき提案の件数も評価の対象となる。チームリーダのため、チームのためという利他の精神を発揮できる従業員が多くいるということだ。以前メルマガに書いたマズローの第六段階「自己超越欲求」だ。

マズロー第六段階欲求

もちろん提案しても何も変わらない様では提案制度そのものが機能しなくなる。
気づき提案全てに対し、改善チームの検討とそのフィードバックがあるというのも、提案件数をあげるモチベーションになっていると思う。しかしこれはネガティブな要因の排除に過ぎない。「チームリーダを喜ばせたい」というポジティブなモチベーションがあるのが大きいはずだ。

ポジティブなモチベーションが発揮されるのは、チームリーダとメンバー間の信頼関係に基づいた、貢献と感謝の相互依存があるからだ。


このコラムは、2018年12月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第764号に掲載した記事に加筆しました。

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従業員のモチベーション

 デズニーランドの学生アルバイトは、高いモチベーションを持っているのでゲストに最高の感動を与える事が出来る。
中国のハンセン病元患者支援団体「家(JIA)」の学生ボランティアは高いモチベーションを持っているので、ハンセン病元患者が最高の笑顔になる。

このように考えており、どうしたら高いモチベーションを彼らは持てるのか?と言う事を考え続けている。この秘密が分かれば、組織の力は激増するはずだ。

最近気がついた事がある。ひょっとしたら逆なのではないか?
ディズニーランドを訪れたゲストが最高の感動をするから、学生アルバイトのモチベーションがあがる。
ハンセン病元患者たちが最高の笑顔を見せるから、「家」学生ボランティアのモチベーションがあがる。

誰が言っていたのか忘れてしまったが、「幸せだから笑顔になるのではない。笑顔でいるから幸せになる」と言う言葉を反芻していて気がついた。

鶏と卵の問題のようではあるが、行動や体験がモチベーションを高めるというのはあり得る話だ。今までと少し違うアプローチが見えて来た様な気がする。


このコラムは、2015年11月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第451号に掲載した記事に加筆しました。

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記憶より記録

 先週のメルマガでは,従業員が学習したことを記録することにより,組織の知恵を蓄積する企業文化について書いた.

今週は,上司,指導者の記録について触れる.

従業員のモチベーションに大きな影響を持つ因子に,公平な評価がある.
自分に対する評価に不公平感を感じると,モチベーションが下がり,逆に自分が正しく評価されていると感じると,モチベーションは上がる.

そのため評価を公平にする,公平感があるようにしておくことは重要である.
例えば,達成した業績が数値で計測可能な場合は,公平感を持たすのは簡単だ.また能力も数値計測が可能ならば,公平に評価が出来る.

しかし数値評価が出来ない場合の方が多いだろう.
例えば,「協調性」という能力をどのように公平に測定したらよいだろうか.
あいつは協調性がある;◎
あいつはちょっと協調性に欠ける;△
などという評価をしていたら,評価者ごとに違う結果が出てしまう.なおかつその結果の説明性が,非常に乏しい.これでは公平な評価とは言えない.

つまり公平な評価とは,

  1. 評価者が変わっても,評価結果の誤差が納得できる範囲にある.
  2. 評価結果に対する説明が可能.

評価の再現性と説明性が保証されていれば,公平な評価と感じるだろう.

では実際に「協調性」に対してどう評価したらよいか.
協調性を発揮した場合とられる行動をリストアップする.逆に協調性が不足している場合にとられる行動をリストアップする.

そして普段の行動から,プラス行動,マイナス行動を評価すれば,評価者に依存しない評価の再現性が保てるであろう.そして記憶による評価ではなく,評価対象者の行動を記録しておくことにより,説明性が確保できる.

つまり,上司は部下の行動を記憶で評価するのではなく記録で評価しなければならない.
これは言葉で言うほど簡単なことではない.しかし上司の評価により,部下の収入・生活が変わる.部下に対する評価は真剣勝負でなければならない.


このコラムは、2010年4月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第147号に掲載した記事に加筆しました。

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マズロー第六段階欲求

 先週末は第八期品質道場の最終回「品質意識向上」を開催した。
人の意識・意欲はどの様なメカニズムで動くのか?社会学者や心理学者の実験・研究を紐解き、それを組織の品質意識向上にどう役立てるのか?というテーマで勉強した。

20世紀にはあらゆる角度で人のモチベーションに関する研究が行われその成果が発表されている。しかしその研究成果が十分経営に生かされていないと常々感じている。

例えば「マズローの段階欲求説」は人の欲求を五段階に分け、下位の欲求が満たされると、上位の欲求を望む様になる、という理論だ。
五段階の欲求は以下の様になっている。
第一段階:生理的欲求
第二段階:安全欲求
第三段階:社会的欲求
第四段階:尊厳欲求
第五段階:自己実現欲求

中国人従業員のほとんどは、第一段階、第二段階の生理的欲求、安全欲求を満たしている。それでもなお、金銭が労働に対する主要因であると考えている経営者が多くおられる様に感じる。

ほとんどの従業員は、社会的欲求(所属している組織や集団に守られていると感じることができる)、尊厳欲求(仲間や組織が自分を承認していると感じる)を満たしている、または望んでいる段階だと思う。
その上で「自己実現」を目指すことになる。

というのがマズローの段階欲求説だ。
従って、金銭的なインセンティブよりは、より挑戦的な仕事を達成し仲間や上司から賞賛されることの方がモチベーションが上がるはずだ。

ところで「自己実現」を果たしてしまった人は、どこに行くのだろう?
もう死んでもいいという境地になるのだろうか(笑)
達観してしまえば、もうこの世には未練はないのかもしれない、と小人の私は考えていた(苦笑)

マズローは五段階欲求説を発表後、晩年に第六段階の欲求を発表している。
実は恥ずかしながら最近知った。

その第六段階の欲求は「自己超越欲求」と言われている。
自己実現の次は自己超越というとなんだか当たり前の様に思えるが、自己超越とは「利己」を超えて「利他」の境地に至るということだ。

自己実現までの段階はすべて「自分」が中心だ。自己生存欲求、自己成長欲求、自己実現欲求。自己が他人や社会・組織との関係で自己実現するまでの欲求で五段階は終わっている。

その先は他人の利益「利他」を目指す、というのは私たち仏教徒(葬式の時にだけ仏教徒になる潜在的仏教徒を含む)にとってとてもわかりやすい。

つまり自己実現を果たした人は、世のため人のために貢献することを欲求する。
自己超越欲求とは、社会貢献欲求と言い換えてもいいだろう。これには終わりはない。自己実現を果たした後も永遠に続く欲求だ。これなら何歳まででも生きられる(笑)


このコラムは、2018年5月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第663号に掲載した記事に加筆しました。

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ボランティアのモチベーション

 先週のメールマガジンに引き続き動機付け(モチベーション)の話だ。
先週土曜日に東莞泗安村に有るハンセン氏病患者快復村を訪問して来た。ハンセン氏病が不治の伝染病と信じられていた頃、世界各国で隔離政策が執られた。中国でも同様に、ハンセン氏病患者は強制的に家族から引き離され、辺鄙な場所に隔離された。家族からも見放され、後遺症により手足を失う失明するなど、隔離された人々の絶望を想像すると胸が痛む。

泗安村は東莞の西端、河の中の中州に有る。今でこそ橋が架かり、往来が可能になったが、外界から隔離された場所にあった。

元患者達を支援するボランティア団体『家(JIA)』を運営しているのが、原田燎太郎さんだ。原田燎太郎さんの活動は以前のメルマガでもご紹介した。

「世界を変える」

中国人ボランティアの活動源泉となるモチベーションはどこから来るのか、それを現場で実際に確認したくて、「家」の1日スタディツアーに参加した。

案内してくれた若者は、二人とも大学生の時に「家」の活動に参加している。卒業後、公益団体の様な所に就職し、泗安の快復村に住み込んで働いている。大学を卒業すれば、もっと華やかな職場で、もっと給料の良い仕事に就けたと思えるが、彼らはこの仕事が使命だと思っているのだろう。とても輝いて見えた。

男性の方は、流暢な日本語を話す。名古屋から来るボランティアの中に美人の女子大生がいるから一生懸命日本語を勉強したのだと、原田さんが耳打ちしてくれた(笑)
もう一人は、終始笑顔の女性だ。私も広東語を勉強しようと思った(笑)
彼女は、元患者の生活を記録する為に、聞き取り調査をしたり、全国の快復村を訪問する調査もしている様だ。

更に2人、海南島でボランティア活動をしている女子大生2人が影の様に我々の体験ツアーをサポートしてくれた。

学生ボランティアが、「家」のワークキャンプに参加してどうに変わるのか、その原動力な何かを知りたくて参加した。しかし私の心をとらえたのは、89歳の黄少寛ばあちゃんだ。黄ばあちゃんは子供の頃日本人に親を殺されたという。その後極貧の中でハンセン氏病を発症し、隔離村に連れて来られた。両足は義足で車椅子で生活をしている。両手には指がない。そんな過酷な人生を送って来たのに、見知らぬ日本人の訪問者に笑顔で話をしてくれた。

そんな彼女の話を、写真と文章で綴った『美女婆婆在泗安』と言う書籍が出版されている。書籍の売り上げは、他の隔離村の元患者に洗濯機などを贈るために使うと言う。壁には、洗濯機を筆頭に10個の目標を書いた紙が貼ってあった。決して裕福とは言えない生活をしているのに、他の元患者を支援する。

ボランティアの若者だけではなく、支援を受けている元患者もボランティア精神を発揮し始める。

私が、四川大地震の時に気が付いた「人は同じ目的・目標に共感した時に高い貢献意欲を発揮する」と言う仮説の証左がまた一つ得られた。これは支援する側だけではなく、支援されている人にもモチベーションを与えるようだ。

企業経営者にとって大きなヒントだと思う。


このコラムは、2015年8月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第435号に掲載した記事に加筆しました。

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モチベーションの源泉

 最近「嫌われる勇気」と言う本を読んだ。ベストセラーだから読んだ訳ではないが、人のモチベーションに関係ありそうな本だったので読んでみた。
哲学者と悩める若者の対話、と言う物語形式で「アドラー心理学」の入門書となっている。馴染みのあるフロイト流の心理学とは、違う視点で人のココロに付いて書いた本だ。

今までアドラー心理学を知らなかった事を悔いた(笑)

「人は感謝された時に、他者に貢献出来たと感じる。そして自分が価値ある存在だと思えた時にだけ勇気を持てる。」
と言う文章を読んで、勇気を持てる状態と言うのが、モチベーションが高い状態だと理解した。だから部下のモチベーションを上げたければ、褒めるより感謝する方が効果が高いはずだ。

以前メルマガで紹介した、障がい者雇用で有名な日本理化学工業のエピソードを思い出した。

日本理化学工業に勤務する知的障がい者のA君は、しばしば無断欠勤をする。
彼はチョークの生産ラインの最後で、ベルトコンベアーに乗って運ばれて来るチョークを梱包する係だ。A君が休むと、監督職がピンチヒッターとして、ラインに入る。そして監督職としての仕事ができなくなる。
困った監督職者は、A君をラインの外に連れ出して、自分がいないラインを見せた。ベルトコンベアーに乗ったチョークは、次々と床の上に落ちてしまう。
A君は、自分が休むと皆に迷惑がかかる事、普段自分が人の役に立っている事を理解出来た。その結果A君は、熱があっても出社してしまう様になる。

健常者も知的障がい者も、モチベーションのあり方は同じだろう。
人から頼りにされている、役に立っていると、実感出来た時にモチベーションは上がる。だから「褒める」より「感謝する」方が効果が高いのだ。

友人の若手経営者は、しょっちゅう従業員に「ありがとう」と言っている。きっと彼も、感謝の力を知っているのだろう。私も小林正観先生の教えに従い「ありがとう」と言っている。相手がいない場合は独り言で「ありがとう」と言っている(笑)

アマゾンの読者書評が、アドラー心理学を上手くまとめていた。以下に紹介しておこう。

「私は、過去にまったくの畑違いの職場に異動となり、これまで築いたキャリアもご破産、周囲の目も厳しく、応援も得られず孤立したので、やがて心身ともに悲鳴を上げ、2回の休職を繰り返してしまいました。それは辛い日々でした。」

そんな私に、これは衝撃の一冊となりました。
さっきの「 」の文章は、本書を読めば、このように書き直さなくてはなりません。

「私は、新しい職場で『役立たず』と人から評価され傷つくことを過度に恐れ、それを回避するため休みました。心身ともに悲鳴を上げたのは、それにより休むことができるからです。辛いですが、休めば傷つかなくて済みます。そして、休むという目的のため、『畑違いの職場への異動』『キャリアがご破産』『周囲の目が厳しい』『応援も得られず孤立』という一連の理由を、後から後から探しました。」

これは衝撃ですよ。衝撃と言わずして何という。(以下略)


このコラムは、2015年2月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第411号に掲載した記事に加筆しました。

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中国人のモチベーション

 読者様からこんなご意見をいただいた.

最近は中国の若者(30代前半から下)と話す機会はありますが、逆に日本の若者と話す機会が少ないです。

中国のホワイトカラーの若者は、収入と同様に自分のスキルアップを考えている人が大半かと思います。会社は給料得る場と同時にスキルを身に付ける場と考えています。
ですから新しい仕事にも貪欲なほど真剣に取り組んでくれますね。
むしろ日本の若者の方が、目先の給与や仕事のラクさで、仕事を選り好みしているように感じます。

私が今駐在している会社の中国人若者には、
「この会社にいる日本人(私以外に3人いるが、その方は皆団塊の世代の方)は、みんな日本の製造業が安かろう悪かろうを売り物にした時代が終焉を迎え、人件費上昇や幾多の不況を技術革新で乗り越え時代を引っ張った人たちです。
その方たちから直接指導を受けられることを幸運だと思って欲しい。
あと10年もしたらこんな機会はカネをだしてもない。もちろん私も幸運に思って指導を受けている。」
と話しています。

私もまったく同感だ.
この読者様が中国人リーダたちにすばらしい指導をされているのが良く分かる.

中国で工場を経営されている方の中には,
「中国人に教育をしてもすぐに辞めてゆく.教育にかける時間もコストももったいない」
「中国人にノウハウを教えてしまうと,自分たちの競争優位点が失われる」
とお考えの方がまだまだいらっしゃる.

しかし逆に中国人幹部の教育に熱心に取り組んでおられる会社ほど幹部の離職率が低い.
中には二番手三番手のリーダに成長の機会を与えるために,ナンバーワン幹部が辞めてゆく仕組みを真剣に考えておられる方もある.

また教えてしまって簡単に真似の出来るノウハウはノウハウとは呼ばない.日本のモノ造りの本当の強みは,毎日改善を続ける「改善体質」にあると考えている.これは簡単には真似が出来ない.

中国人リーダ達の「成長意欲」をモチベーションの源泉とし,成長のための「場」と「機会」を与え続けるのが,経営者や経営幹部の仕事だと思っている.


このコラムは、2008年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第44号に掲載した記事に加筆しました。

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働く意欲

 フォックスコンの自殺騒ぎを何度かこのメルマガでお伝えした.
農村から出稼ぎに来た若者が,孤独感,未来に対する不安に負けて,大切な命を自ら捨ててしまう行為に走っている.

この様な弱い気持ちを克服するのは,働く意欲だ.
自分は何のために生まれてきて,何のために働いているのかと言う「夢」を持てなければ,働く意欲はわかないだろう.

一昔前の打工妹たちは,弟や妹の学費を稼ぐため,家族の生活を支えるためと言う強い使命感が,働く意欲を支えていた.
しかし農村も豊かになってきており,80后,90后と呼ばれる若者にはその様な使命感は薄くなってきているのだろう.

残業よりは余暇を好む.故郷に仕送りする必要がなく,高価な携帯電話を持っている.中国の若者が変わってきてしまった.
この様な若者たちにどのような「夢」を与えれば,働く意欲を持たせることが出来るのだろうか.

実はそんなに難しいことではないと考えている.
彼らに必要なことは,仕事を通して成長する,仕事を通して会社や同僚から認められる,仕事を通して自己実現することの喜びを知ることだ.

「自己成長」により自分の夢を実現する.そんな夢が持てれば働く意欲は高まるはずだ.

原田氏の経営哲学・人心活用の基本はここにある.

原田社長の最後の秘書だった閻苗苗さんは,作業員として生産現場で仕事をしていた時のことをこの様に回想している.

一週間の新人研修を経て,配属になった生産ラインからはオフィスが見え,そこには社長秘書が原田総経理や部長たちから指導を受けている光景があった.いつかは自分もあそこに座って仕事がしたいと思った.

そして彼女は,作業の合間に猛然と勉強をし内部登用試験に合格し,めでたく総経理秘書となるのだ.彼女の働く意欲を支えたのは,いつかは直接原田氏や部長たちから指導を受けたいと言う夢だったのだ.


このコラムは、2010年6月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第479号に掲載した記事に加筆しました。

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プロフェッショナルとは

ニュースから:コーヒーに浮かぶ妙技 国内初の女性王者、世界へ挑戦

 エスプレッソコーヒーにミルクを注ぎ、ハートやリーフ(葉)などの絵柄を
描く「ラテアート」。ロンドンで6月開かれるその世界大会に、国内初の女性
チャンピオンになった滋賀県近江八幡市、クラブハリエ日牟禮(ひむれ)カフェの村山春奈さん(25)が出場する。繊細な手技と敏感な味覚で、世界に挑む。

 村山さんは、コーヒーを入れるプロの職人「バリスタ」だ。豆から最上の味を引き出すため、産地や焙煎(ばいせん)具合、抽出方法など、広い知識と卓越した技術が必要とされる。お店で接客を担当していたが、2006年に新しいエスプレッソマシンを使いこなすバリスタが必要となり、「やってみたい」と手を挙げた。欠かせないのが、お客さんを目で楽しませるラテアートだ。

 コーヒーに泡立てたミルクを注ぎ、模様を作る。カップまでの高さや揺らし方などで浮かび上がる模様が微妙に違う。「実は絵が苦手」という村山さんだが、見よう見まねでぐんぐん上達。同僚は「手先が器用」と感心するが、マネジャーの玉村亮さん(33)は「仕事を終えてから何時間も練習している」と言う。

 玉村さんが驚いたのは、「実は紅茶党」という村山さんの味覚のセンスだ。「喫茶店でもコーヒーは頼まない」というが、豆の焙煎に応じてひき方を変えると、最もおいしい味を引き出してくる。
(以下略)

(asahi.comより)

 ずいぶん昔のことだが,プロフェッショナルとは何かと言うことを,ソフトウェアエンジニア向けの本で読んだことがある.

プロのすし職人は納豆が嫌いでも「納豆巻き」を完璧に作る.
自分が食べられないものでも,ちゃんとお客様に出せるようにするのが本物のプロフェッショナルだ.

逆に,興味がある(好きな)ソフトウェアのコーディングしかしないのは,「プログラマー」ではなく「アマグラマー」だと書いてあった.
「アマグラマー」と言うのはアマチュアのプログラマーと言う意味だ.

当時ソフトウェアプログラマーが決定的に不足しており,文科系大学卒業生が,いきなりソフト開発部隊に新人配属されたりした.そういうメンバーでも一定の期間の研修を受け,天才的なプログラマーではないにしても,着実なコーディングができるプログラマーになった.
これも一種のプロフェッショナルと言ってよいだろう.

余談だが,私の周りにはロシア語専攻や哲学専攻の女性プログラマーがいた.

もう一つこの記事を読んで思い出したのは,10年ほど前中国のカフェチェーン黎明期のことだ.当時東莞市の郡部にしばしば出張していた.その街に,まともな珈琲を飲ませる店が出来たのだ.名典珈琲と言う名前のその店に,時々通っていた.
ある時若いウェイトレスが,さかんに話しかけてきた.
初めは他愛もない話であったが,その内「名典珈琲の企業文化」をどう思うかなどという質問が,まだ20歳にもなっていないであろう若い女の子の口から出てきて驚いた.
彼女は,珈琲は苦くて飲めないと言っていた.しかし珈琲の味を理解するために毎日少しずつ,ブラックで飲むようにしているそうだ.

紅茶党の村山さんが,バリスタチャンピオンになり世界大会に挑戦する.
ロシア語や哲学を勉強した女性が,ソフトウェアエンジニアになる.
珈琲が飲めない農村出身の女の子が,珈琲の味を理解しようと努力する.

この人たちは,好きだから一生懸命やると言う「アマグラマー」ではない.この人たちのモチベーションを上げるスイッチはどこにあるのだろうか?
モチベーションスイッチの場所が分かれば,あなたの部下もすぐにプロフェッショナルと呼べる人財になるだろう.


このコラムは、2010年6月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第157号に掲載した記事を改題加筆しました。

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