タグ別アーカイブ: モチベーション

ボランティアのモチベーション

 先週のメールマガジンに引き続き動機付け(モチベーション)の話だ。
先週土曜日に東莞泗安村に有るハンセン氏病患者快復村を訪問して来た。ハンセン氏病が不治の伝染病と信じられていた頃、世界各国で隔離政策が執られた。中国でも同様に、ハンセン氏病患者は強制的に家族から引き離され、辺鄙な場所に隔離された。家族からも見放され、後遺症により手足を失う失明するなど、隔離された人々の絶望を想像すると胸が痛む。

泗安村は東莞の西端、河の中の中州に有る。今でこそ橋が架かり、往来が可能になったが、外界から隔離された場所にあった。

元患者達を支援するボランティア団体『家(JIA)』を運営しているのが、原田燎太郎さんだ。原田燎太郎さんの活動は以前のメルマガでもご紹介した。

「世界を変える」

中国人ボランティアの活動源泉となるモチベーションはどこから来るのか、それを現場で実際に確認したくて、「家」の1日スタディツアーに参加した。

案内してくれた若者は、二人とも大学生の時に「家」の活動に参加している。卒業後、公益団体の様な所に就職し、泗安の快復村に住み込んで働いている。大学を卒業すれば、もっと華やかな職場で、もっと給料の良い仕事に就けたと思えるが、彼らはこの仕事が使命だと思っているのだろう。とても輝いて見えた。

男性の方は、流暢な日本語を話す。名古屋から来るボランティアの中に美人の女子大生がいるから一生懸命日本語を勉強したのだと、原田さんが耳打ちしてくれた(笑)
もう一人は、終始笑顔の女性だ。私も広東語を勉強しようと思った(笑)
彼女は、元患者の生活を記録する為に、聞き取り調査をしたり、全国の快復村を訪問する調査もしている様だ。

更に2人、海南島でボランティア活動をしている女子大生2人が影の様に我々の体験ツアーをサポートしてくれた。

学生ボランティアが、「家」のワークキャンプに参加してどうに変わるのか、その原動力な何かを知りたくて参加した。しかし私の心をとらえたのは、89歳の黄少寛ばあちゃんだ。黄ばあちゃんは子供の頃日本人に親を殺されたという。その後極貧の中でハンセン氏病を発症し、隔離村に連れて来られた。両足は義足で車椅子で生活をしている。両手には指がない。そんな過酷な人生を送って来たのに、見知らぬ日本人の訪問者に笑顔で話をしてくれた。

そんな彼女の話を、写真と文章で綴った『美女婆婆在泗安』と言う書籍が出版されている。書籍の売り上げは、他の隔離村の元患者に洗濯機などを贈るために使うと言う。壁には、洗濯機を筆頭に10個の目標を書いた紙が貼ってあった。決して裕福とは言えない生活をしているのに、他の元患者を支援する。

ボランティアの若者だけではなく、支援を受けている元患者もボランティア精神を発揮し始める。

私が、四川大地震の時に気が付いた「人は同じ目的・目標に共感した時に高い貢献意欲を発揮する」と言う仮説の証左がまた一つ得られた。これは支援する側だけではなく、支援されている人にもモチベーションを与えるようだ。

企業経営者にとって大きなヒントだと思う。


このコラムは、2015年8月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第435号に掲載した記事に加筆しました。

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モチベーションの源泉

 最近「嫌われる勇気」と言う本を読んだ。ベストセラーだから読んだ訳ではないが、人のモチベーションに関係ありそうな本だったので読んでみた。
哲学者と悩める若者の対話、と言う物語形式で「アドラー心理学」の入門書となっている。馴染みのあるフロイト流の心理学とは、違う視点で人のココロに付いて書いた本だ。

今までアドラー心理学を知らなかった事を悔いた(笑)

「人は感謝された時に、他者に貢献出来たと感じる。そして自分が価値ある存在だと思えた時にだけ勇気を持てる。」
と言う文章を読んで、勇気を持てる状態と言うのが、モチベーションが高い状態だと理解した。だから部下のモチベーションを上げたければ、褒めるより感謝する方が効果が高いはずだ。

以前メルマガで紹介した、障がい者雇用で有名な日本理化学工業のエピソードを思い出した。

日本理化学工業に勤務する知的障がい者のA君は、しばしば無断欠勤をする。
彼はチョークの生産ラインの最後で、ベルトコンベアーに乗って運ばれて来るチョークを梱包する係だ。A君が休むと、監督職がピンチヒッターとして、ラインに入る。そして監督職としての仕事ができなくなる。
困った監督職者は、A君をラインの外に連れ出して、自分がいないラインを見せた。ベルトコンベアーに乗ったチョークは、次々と床の上に落ちてしまう。
A君は、自分が休むと皆に迷惑がかかる事、普段自分が人の役に立っている事を理解出来た。その結果A君は、熱があっても出社してしまう様になる。

健常者も知的障がい者も、モチベーションのあり方は同じだろう。
人から頼りにされている、役に立っていると、実感出来た時にモチベーションは上がる。だから「褒める」より「感謝する」方が効果が高いのだ。

友人の若手経営者は、しょっちゅう従業員に「ありがとう」と言っている。きっと彼も、感謝の力を知っているのだろう。私も小林正観先生の教えに従い「ありがとう」と言っている。相手がいない場合は独り言で「ありがとう」と言っている(笑)

アマゾンの読者書評が、アドラー心理学を上手くまとめていた。以下に紹介しておこう。

「私は、過去にまったくの畑違いの職場に異動となり、これまで築いたキャリアもご破産、周囲の目も厳しく、応援も得られず孤立したので、やがて心身ともに悲鳴を上げ、2回の休職を繰り返してしまいました。それは辛い日々でした。」

そんな私に、これは衝撃の一冊となりました。
さっきの「 」の文章は、本書を読めば、このように書き直さなくてはなりません。

「私は、新しい職場で『役立たず』と人から評価され傷つくことを過度に恐れ、それを回避するため休みました。心身ともに悲鳴を上げたのは、それにより休むことができるからです。辛いですが、休めば傷つかなくて済みます。そして、休むという目的のため、『畑違いの職場への異動』『キャリアがご破産』『周囲の目が厳しい』『応援も得られず孤立』という一連の理由を、後から後から探しました。」

これは衝撃ですよ。衝撃と言わずして何という。(以下略)


このコラムは、2015年2月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第411号に掲載した記事に加筆しました。

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中国人のモチベーション

 読者様からこんなご意見をいただいた.

最近は中国の若者(30代前半から下)と話す機会はありますが、逆に日本の若者と話す機会が少ないです。

中国のホワイトカラーの若者は、収入と同様に自分のスキルアップを考えている人が大半かと思います。会社は給料得る場と同時にスキルを身に付ける場と考えています。
ですから新しい仕事にも貪欲なほど真剣に取り組んでくれますね。
むしろ日本の若者の方が、目先の給与や仕事のラクさで、仕事を選り好みしているように感じます。

私が今駐在している会社の中国人若者には、
「この会社にいる日本人(私以外に3人いるが、その方は皆団塊の世代の方)は、みんな日本の製造業が安かろう悪かろうを売り物にした時代が終焉を迎え、人件費上昇や幾多の不況を技術革新で乗り越え時代を引っ張った人たちです。
その方たちから直接指導を受けられることを幸運だと思って欲しい。
あと10年もしたらこんな機会はカネをだしてもない。もちろん私も幸運に思って指導を受けている。」
と話しています。

私もまったく同感だ.
この読者様が中国人リーダたちにすばらしい指導をされているのが良く分かる.

中国で工場を経営されている方の中には,
「中国人に教育をしてもすぐに辞めてゆく.教育にかける時間もコストももったいない」
「中国人にノウハウを教えてしまうと,自分たちの競争優位点が失われる」
とお考えの方がまだまだいらっしゃる.

しかし逆に中国人幹部の教育に熱心に取り組んでおられる会社ほど幹部の離職率が低い.
中には二番手三番手のリーダに成長の機会を与えるために,ナンバーワン幹部が辞めてゆく仕組みを真剣に考えておられる方もある.

また教えてしまって簡単に真似の出来るノウハウはノウハウとは呼ばない.日本のモノ造りの本当の強みは,毎日改善を続ける「改善体質」にあると考えている.これは簡単には真似が出来ない.

中国人リーダ達の「成長意欲」をモチベーションの源泉とし,成長のための「場」と「機会」を与え続けるのが,経営者や経営幹部の仕事だと思っている.


このコラムは、2008年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第44号に掲載した記事に加筆しました。

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働く意欲

 フォックスコンの自殺騒ぎを何度かこのメルマガでお伝えした.
農村から出稼ぎに来た若者が,孤独感,未来に対する不安に負けて,大切な命を自ら捨ててしまう行為に走っている.

この様な弱い気持ちを克服するのは,働く意欲だ.
自分は何のために生まれてきて,何のために働いているのかと言う「夢」を持てなければ,働く意欲はわかないだろう.

一昔前の打工妹たちは,弟や妹の学費を稼ぐため,家族の生活を支えるためと言う強い使命感が,働く意欲を支えていた.
しかし農村も豊かになってきており,80后,90后と呼ばれる若者にはその様な使命感は薄くなってきているのだろう.

残業よりは余暇を好む.故郷に仕送りする必要がなく,高価な携帯電話を持っている.中国の若者が変わってきてしまった.
この様な若者たちにどのような「夢」を与えれば,働く意欲を持たせることが出来るのだろうか.

実はそんなに難しいことではないと考えている.
彼らに必要なことは,仕事を通して成長する,仕事を通して会社や同僚から認められる,仕事を通して自己実現することの喜びを知ることだ.

「自己成長」により自分の夢を実現する.そんな夢が持てれば働く意欲は高まるはずだ.

原田氏の経営哲学・人心活用の基本はここにある.

原田社長の最後の秘書だった閻苗苗さんは,作業員として生産現場で仕事をしていた時のことをこの様に回想している.

一週間の新人研修を経て,配属になった生産ラインからはオフィスが見え,そこには社長秘書が原田総経理や部長たちから指導を受けている光景があった.いつかは自分もあそこに座って仕事がしたいと思った.

そして彼女は,作業の合間に猛然と勉強をし内部登用試験に合格し,めでたく総経理秘書となるのだ.彼女の働く意欲を支えたのは,いつかは直接原田氏や部長たちから指導を受けたいと言う夢だったのだ.


このコラムは、2010年6月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第479号に掲載した記事に加筆しました。

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プロフェッショナルとは

ニュースから:コーヒーに浮かぶ妙技 国内初の女性王者、世界へ挑戦

 エスプレッソコーヒーにミルクを注ぎ、ハートやリーフ(葉)などの絵柄を
描く「ラテアート」。ロンドンで6月開かれるその世界大会に、国内初の女性
チャンピオンになった滋賀県近江八幡市、クラブハリエ日牟禮(ひむれ)カフェの村山春奈さん(25)が出場する。繊細な手技と敏感な味覚で、世界に挑む。

 村山さんは、コーヒーを入れるプロの職人「バリスタ」だ。豆から最上の味を引き出すため、産地や焙煎(ばいせん)具合、抽出方法など、広い知識と卓越した技術が必要とされる。お店で接客を担当していたが、2006年に新しいエスプレッソマシンを使いこなすバリスタが必要となり、「やってみたい」と手を挙げた。欠かせないのが、お客さんを目で楽しませるラテアートだ。

 コーヒーに泡立てたミルクを注ぎ、模様を作る。カップまでの高さや揺らし方などで浮かび上がる模様が微妙に違う。「実は絵が苦手」という村山さんだが、見よう見まねでぐんぐん上達。同僚は「手先が器用」と感心するが、マネジャーの玉村亮さん(33)は「仕事を終えてから何時間も練習している」と言う。

 玉村さんが驚いたのは、「実は紅茶党」という村山さんの味覚のセンスだ。「喫茶店でもコーヒーは頼まない」というが、豆の焙煎に応じてひき方を変えると、最もおいしい味を引き出してくる。
(以下略)

(asahi.comより)

 ずいぶん昔のことだが,プロフェッショナルとは何かと言うことを,ソフトウェアエンジニア向けの本で読んだことがある.

プロのすし職人は納豆が嫌いでも「納豆巻き」を完璧に作る.
自分が食べられないものでも,ちゃんとお客様に出せるようにするのが本物のプロフェッショナルだ.

逆に,興味がある(好きな)ソフトウェアのコーディングしかしないのは,「プログラマー」ではなく「アマグラマー」だと書いてあった.
「アマグラマー」と言うのはアマチュアのプログラマーと言う意味だ.

当時ソフトウェアプログラマーが決定的に不足しており,文科系大学卒業生が,いきなりソフト開発部隊に新人配属されたりした.そういうメンバーでも一定の期間の研修を受け,天才的なプログラマーではないにしても,着実なコーディングができるプログラマーになった.
これも一種のプロフェッショナルと言ってよいだろう.

余談だが,私の周りにはロシア語専攻や哲学専攻の女性プログラマーがいた.

もう一つこの記事を読んで思い出したのは,10年ほど前中国のカフェチェーン黎明期のことだ.当時東莞市の郡部にしばしば出張していた.その街に,まともな珈琲を飲ませる店が出来たのだ.名典珈琲と言う名前のその店に,時々通っていた.
ある時若いウェイトレスが,さかんに話しかけてきた.
初めは他愛もない話であったが,その内「名典珈琲の企業文化」をどう思うかなどという質問が,まだ20歳にもなっていないであろう若い女の子の口から出てきて驚いた.
彼女は,珈琲は苦くて飲めないと言っていた.しかし珈琲の味を理解するために毎日少しずつ,ブラックで飲むようにしているそうだ.

紅茶党の村山さんが,バリスタチャンピオンになり世界大会に挑戦する.
ロシア語や哲学を勉強した女性が,ソフトウェアエンジニアになる.
珈琲が飲めない農村出身の女の子が,珈琲の味を理解しようと努力する.

この人たちは,好きだから一生懸命やると言う「アマグラマー」ではない.この人たちのモチベーションを上げるスイッチはどこにあるのだろうか?
モチベーションスイッチの場所が分かれば,あなたの部下もすぐにプロフェッショナルと呼べる人財になるだろう.


このコラムは、2010年6月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第157号に掲載した記事を改題加筆しました。

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信頼

 人や組織との良好な関係は「信頼」だと言っても間違いではなかろう。
上司は部下を信じて任ずる、部下は上司の信任に応えて働く。これが信頼関係だ。同僚間、チームと個人、チーム間、会社と個人、会社同士に信頼関係があれば、そこにいる人々は仕事を通して幸福感を感じることが出来るはずだ。

では「信頼」とは何だろうか?
最近読んだ本にはこう書いてあった。
「信頼」とは「約束」と「実行」の積み重ね。

「モチベーション・リーダーシップ」小笹 芳央(著)
 

人は、相手の言葉や容姿を通して信頼できる人かどうか判断している。しかしそれは入り口であり、本当の信頼ではない。約束したことが実行されることにより、期待が実現する。この繰り返しにより信頼が形成される。

例えば「企業経営は人財育成だ」と言っている経営者に対して、信頼できる人かも知れないと言う期待が発生する。その言葉を、経営者が実際に行動することにより、期待が実現し信頼関係が生まれる。

「約束」は明示的な約束だけではない。日頃の言動から発生する暗黙的な約束も含まれる。例えば上記の経営者に対し、自分も育成対象だと言う期待を持つ。この期待が暗黙的約束になる。約束が実行されなければ、失望が生まれ信頼が崩れる。

人から信頼を得たければ、約束を実行する。自分の心情や信念から発生する暗黙的約束を実行し続ける。相手方にとって顕在化されていない約束を実行すれば、信頼度は高くなるはずだ。


このコラムは、2016年2月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第462号に掲載した記事に加筆しました。

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鵜の夏、歩いてたぐり寄せる 和歌山・有田川

 和歌山県有田市の有田川で1日、室町時代から続く鵜飼(うか)いが始まった。鵜匠(うしょう)が川の中に入って鵜を操る、独特の「徒歩(かち)漁法」。鵜がアユをくわえて川面に現れるたびに、屋形船に乗った約300人の観光客から拍手と歓声が上がった。

 県無形民俗文化財に指定された伝統漁法だが、最盛期に90人いた鵜匠はいま4人。鵜を育て、訓練するのは1年がかりの重労働。生計を立てるのも難しく、後継者はなかなか現れないという。

(asahi.comより)

 私は子供の頃に,父親に連れられ長良川の鵜飼いを見に行ったことがある.長良川の鵜飼いは,鵜匠は船上にいて紐で縛られた鵜を何羽も川に放ち,鮎を鵜呑みにした鵜を船上に引き上げ,獲物を吐き出させる.
何羽もの鵜を紐でコントロールする手綱捌きをする鵜匠の腕は見事なモノだ.しかし鵜匠の本当の力量は,鵜が鮎を獲る様に訓練することだろう.

子供の頃は,単純に鵜の働きに感動したが,大学生なって働くということは,誰かにコントロールされることだと考える様になった.サラリーマンのネクタイが鵜の紐の象徴の様に見え,就職活動に全く興味を持てなかった(笑)多分,全共闘世代のただ中で成長した影響だろう.

人も鵜と同じ様に首に紐を付けられ,働かされている.その紐が目に見えないだけだ,と考えていた.

就職をし,人並みに部下を持つ様になって初めてその考え方が間違っていることに気が付いた.

見えない紐が「給料」であると考えると,会社に対する「忠誠心」と引き換えに給料をもらうことになる.こう考えていると,仕事は金銭を得るための「苦役」になる.

苦役であれば,当然楽しくはない.上司の命令に従って成果を出さなければ,給料がもらえない,給料が上がらないという,ネガティブな動機付けで働くことになる.指示されたとおり仕事をこなすのでは,パフォーマンスは上がらない.

見えない紐が「仕事に対する喜び」だとしたら,どうだろう.
鮎を獲るたびに観客から拍手喝采を得る.
二匹一度に飲み込み鵜匠から褒められる.
鮎を獲るたびに自己成長の喜びを感じる.
鵜がこう感じて喜んで働いていると考えるのはちょっと無理がある(笑)が,人には可能だ.

会社や上司は,仕事に対する喜びや自己成長のチャンスを与えてくれる.「会社への忠誠心」ではなく「自己への忠誠心」が働くことの動機付けとなれば,自ら進んで仕事に取り組むことになる.当然仕事のパフォーマンスは上がる.

上司が持っている手綱は,部下をコントロールするためのモノではなく,部下に動機を与え続けるための,エネルギー補給パイプだ.


このコラムは、2012年6月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第260号に掲載した記事です。

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作業員の評価

 先日、日本人経営者と中国人幹部の作業員評価に関する会議に立ち会った。

日本人経営者は、作業員は「業績評価」より「勤務態度・意欲評価」の割合を高めたいと考えている。
一方中国人幹部は、数値目標を与え、その達成度合いで評価したいと言う。
例えば、標準作業時間で生産出来る数量を目標として、各自の生産良品数で5段階評価する、と言う考え方だ。
この様な評価により、以下のメリットが有ると中国人幹部は考えている。
・評価者ごとのバラツキが少なくなる。
・より公平な評価ができる。
・具体的な目標を与えることにより、達成感を持たせることができる。

その裏には、「協調性」「積極性」「自己成長意欲」と言う評価項目を公明・公平に評価する事が難しいと中国人幹部たちが感じている。当然、作業員全員を自分一人で評価する事は出来ない。普段作業者と一緒に仕事をしている課長、係長が一次評価をする。彼らが、同じレベルで公平に評価出来る様にする自信がないのだろう。
当然評価が不公平だと感じれば、作業員は不満を持ち離職する場合もあり得る。

しかし、数値目標だけを評価基準にしてしまうと、仲間が困っていても自分の仕事を優先する。経営者は多能工化を推進したいと考えているのに、新しい仕事になれば、生産量目標を達成出来ない可能性があるので、多能工研修を拒否する。など経営者が目指す組織とは違う方向性を持った、従業員が高評価を受けることになる。

難しいから「態度・意欲評価」を放棄して、簡単な数値評価をする。その結果経営方針とは違う方向に進んでしまうことになる。
どうすれば「態度・意欲評価」を公平に出来るかを考える方が建設的だ。

例えば「積極性」をそのまま評価しようとするから難しくなる。
まず「積極性が有る行動」「積極性がない行動」を列挙しておく。普段の行動観察により、好ましい行動(プラス得点)と好ましくない行動(マイナス得点)を集計する。このようにしておけば、ある程度客観的な評価が可能となる。
被評価者から評価に関してクレームが有った時に、「こういう行動が有ったので、マイナス評価になった」と説明が出来る様になる。

この様な評価基準を、評価者全員でブレーンストーミングで作っておくと、評価者、被評価者の納得性も高くなるはずだ。


このコラムは、2014年10月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第395号に掲載した記事に加筆したものです。

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仕事の意義

 サイモン・シネックという人のTEDトークを聞いた。
“How great leaders inspire action”で検索すると見つかると思う。

我々が製品やサービスを購入する動機は、そのモノ(製品、サービスを総称して「モノ」と記すことにする)自体(What)を欲しいと思う気持ちばかりではない。そのモノがどのような過程で出来上がったのか(How)、そのモノを作る目的(Why)は何だったのか、ということが購入動機になる。

例えば製品の広告を考えてみたい。

  • 製品の機能・性能・デザインそのものが優れていることを訴求する(What)
  • 製品の優れた機能・性能・デザインを作り込んだ苦労・努力を訴求(How)
  • その製品を販売する目的を訴求(Why)

Whatを強調するよりHowを語った方がより顧客の購買意欲は高まり、更にWhyに共感すれば顧客は友人にも勧めてくれるだろう。

サイモン・シネックは、黒人人権運動の指導者キング牧師を例に、優秀な指導者と並の指導者をこう比較している。
優秀な指導者:I have a Dream.
普通の指導者:I have a Plan.

企業や組織の指導者も同様だ。
計画(What+How)を示さねば組織は動かない。
その計画を達成することの意義・実現したい夢(Why)を共有すれば、メンバーのコミットメントは高まるはずだ。

目標管理がWhatとHowならば、方針管理がWhyだ。
方針と目標はともにあるべきだ。


このコラムは、2017年11月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第584号に掲載した記事です。

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サイモン・シネック

先週のメールマガジン「仕事の意義」でサイモン・シネックのTEDトークをご紹介した。
このコラムにお二人からメッセージをいただいた。

※S様のメッセージ
早速TED動画を見ました。
Why(夢)を語れないばかりに、当社も大きな試練にさらされております。
米国市場に於ける主力製品はアジアOEMメーカーの影響が増々大きくなり、参入障壁も低いことからまさに戦国時代。大手販売店のPBだったブランドにシェアを奪われている状況です。

品質、性能では負けていない自負はあるものの、顧客にそっぽを向かれることはサイモン・シネック氏の言うように、Why(夢)が伝わっていないことがよく分かりました。
販売・宣伝部門にこれをどう伝えるか、考えたいと思います。
意義深く、貴重な情報を提供いただき、ありがとうございました。

※T様のメッセージ
 It was just inspired for me
 on how to proceed with the business performance, thanking
 for your opinion.

お二人のメッセージを読んで大変嬉しく思っている。毎週頭を絞ってコラムを書いている意義を感じることができた(笑)

「Why」を共有した顧客は信者になる。顧客が信者になれば企業は必ず儲かる。
「儲」という字をよく観察していただきたい。分解すると「信者」となる。

与太話はおいて、サイモン・シネック語録をご紹介しておく。

  • TEDで語ったAppleとその他のコンピュータメーカの違い。
    「我々のコンピュータは素晴らしいです。簡単に操作できてデザインも美しいです。」たいていの企業はこう言って売ります。
    でもアップルのような傑出した企業は違います。
    「我々は世界を変えるためにこのコンピュータを作りました。その価値がこのコンピュータにはあると私たちは信じています」
    どうです?興味を惹かれませんでしたか?人々は「何を」売っているかではなく「なぜ」売っているかに興味を持つのです。
  • アメリカの海兵隊では下位の者から食事が配られ上官は最後に配膳されます。
    部下全員に食事が行き渡ってからでなければリーダーは自分の食事をとってはいけないのです。
    最初に自分の食事(利益)をとってしまうリーダーに部下はついていきません。
  • 私利私欲を捨てたリーダーだけが一体感のある強いチームを作ることができるのです。
  • あなたが何をしているかは大した問題ではない。
    なぜあなたがそれをしているかが大事なのだ。
    人々がファンになるのは理由に共感したときだ。
  • キング牧師のほかにも運動家はたくさんいました。
    しかしキング牧師だけが圧倒的な支持をあつめました。具体的にどうすればいいのかなにをすればいいのか、彼は有効なアイディアを出していません。
    ただこう言ったのです。「私には夢があるこんな世界を夢見ている」と。
    「そうしなければならない」では人は動きません。
    「そうしたい」と思ったから動くのです。
    命令されたから従ったわけではありません。
    「信念」を語るリーダーにはみな自分の意思でついていくのです。
  • 傑出した企業に共通しているのは、なぜその事業を行っているかを明確にしている。

私の友人は、中国で工場を立ち上げ毎年業績を上げていた。日本本社からの評価も高い。しかし仕事がむなしく感じたという。彼は仕事の「Why」が明確になっていないからだと気がつき、自分自身の仕事の目的「Why」を明確にすることで、より業績を伸ばした。彼の「Why」は従業員の育成。自分自身の役割を「校長先生」と定義していた。

経営とは、従業員を成長させること。業績はその結果だ。


このコラムは、2017年11月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第587号に掲載した記事です。

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